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Samsungが3D XPoint対抗の次世代SSD「Z-SSD」を展示

~Samsung SSD Global Summit 2016レポート

Samsung SSD Global Summit 2016は、ソウルの「新羅ホテル」で開催された

 韓国Samsung Electronicsは9月21日(現地時間)、ソウルにおいてSSDに関するカンファレンス「Samsung SSD Global Summit 2016」を開催した。Samsung SSD Global Summitは2012年から毎年開催されており5回目となる。

 今回はSamsung SSD Global Summitに合わせて、最新SSD「960 PRO」および「960 EVO」が発表され、既にレポートを掲載しているが、ここでは、それ以外のカンファレンスの内容や展示製品をお伝えする。

この5年間のSSDの成長率はスマートフォンの2.8倍

 カンファレンスは3つのセッションに分かれており、最後のセッションが新製品「960 PRO/960 EVO」についてであった。その内容については既にレポート済みなので、最初のセッションと2つ目のセッションの概要をレポートする。

 最初に、ブランドプロダクトマーケティングディレクターのウィロー・ユー氏が「The SSD Market Growth and Evolution」と題した講演を行なった。ウィロー氏はまず、2012年から2016年のSSDの年平均成長率は54%にもなり、これは同時期のスマートフォンの約2.8倍であり、その間GB単価も69%下がったと述べた。

 NANDフラッシュメモリの用途別シェアにおいても、SSDのシェアが年々増加しており、2018年の予測では46%に達する。さらに、ノートPCにおけるSSDの装着率も2015年は30%だったが、2018年には55%になると予想されている。また、エンタープライズ市場のSSDも急成長が予想されており、データセンターにおいてHDDとSSDのトータルコストを比較すると、SSDは容量当たりの単価は高いが、故障しにくく、消費電力やサイズが小さいという利点があるため、それらを加味したトータルコストでは、40%もSSDの方が低くなると指摘した。

ブランドプロダクトマーケティングディレクターのウィロー・ユー氏
2012年から2016年のスマートフォンの年平均成長率が19.1%なのに対し、SSDの年平均成長率は54%にもなる
SSDのGB単価は、2012年には1.17ドルだったが、2016年には69%安くなり、0.36ドルになった
NANDフラッシュメモリの用途別シェア。SSDは、2013年には23%だったが、年々増加しており、2018年には46%になると予想されている
ノートPCにおけるSSDの装着率。2015年は30%だったが、2018年には55%になると予想されている
エンタープライズ市場のSSDも2016年以降急成長が予想されている
データセンターにおけるHDDとSSDのトータルコストの比較。SSDは容量当たりの単価は高いが、故障しにくく、消費電力やサイズが小さいという利点があるため、それらを加味したトータルコストでは、40%もSSDの方が低くなる
インターフェイスの進化。SATA時代は最大550MB/sだったが、PCI Express+NVMeにより、2,500MB/sを実現
SSDの多様なフォームファクタ

SSDの最後の課題であった「価格」も2017年以降順次解決される

 次に、NANDプロダクトマーケティングディレクターのライアン・スミス氏が「SSD Technology Trend and Samsung leadership」と題した講演を行なった。

 ライアン氏はまず、グローバルIPのトラフィックは年々増加し、データの重要性が高まり、データが新しい通貨となっていると語った。また、PC向けSSDの性能は、2013年まではインターフェイスがSATAだったため頭打ちであったが、2014年にPCI Express対応製品が登場したことで、SATAの限界を超えて、性能が大きく向上したことを示した。

 さらに、SSDはHDDに比べて、騒音、消費電力、信頼性、形状の多様性、容量の全ての面において上回っており、導入にあたっての壁を次々と倒してきたと語った。SSDに残された最後の課題は「価格」だが、その価格の壁が倒されるのも目前であり、SSDの大量採用の最初の波は2017年に来るとし、2017年には500GB HDDの価格を128GB SSDの価格が下回るようになり、128GB SSD搭載機が一気に増えるという。さらに、2017年から2018年にかけて、1TB HDDと256GB SSDの価格が逆転、2020年には1TB HDDの価格を512GB SSDの価格が下回るため、こうして価格の壁も打ち破られることになると述べた。

NANDプロダクトマーケティングディレクターのライアン・スミス氏
グローバルIPトラフィックは、2015年から2020年にかけて年平均23%で増加し、2020年には194EBになると予想されている
データは新しい通貨となっている
PC向けSSDの性能トレンド。2010年から2013年まではインターフェイスがSATAだったため、性能が頭打ちになっていたが、2014年にPCI Express対応になり、SATAの限界を超えて性能が大きく向上している
SSDとHDDを比べた際のメリットの1つが騒音の小ささである。SSDは機械的に動作する部分がないので、動作時も無音である
SSDは、HDDに比べて消費電力も遙かに小さい。アクティブ時の消費電力はHDDが1.7Wなのに対し、SSDは0.25Wである
SSDは、HDDに比べて信頼性も高い。HDDは2年保証で動作温度範囲が0~60℃なのに対し、SSDは10年保証で動作温度範囲も0~70℃と広い
フォームファクタについても、HDDよりもSSDの方が多様かつサイズが小さい
容量についても、エンタープライズ用HDDが10TBなのに対し、エンタープライズ用SSDは32TB、クライアント用HDDが2TBなのに対し、クライアント用SSDが4TBと上回っている
2016年に、TLC(3bit MLC)の出荷がMLC(2bit MLC)を上回った
リテール向けSSDの容量トレンド。2014年にそれまでもっとも売れていた128GB品を256GB品が上回り、2016年に256GB品を512GB品が上回った
SSDは、性能、騒音、電力、信頼性、フォームファクタ、容量の全ての壁を倒してきた。最後に残った壁が、価格である
128GB品が、大量採用の最初の波となる。2017年には500GB HDDと128GB SSDの価格が逆転する
次の2つの波が256GB品と512GB品である。2017年から2018年にかけて、1TB HDDと256GB SSDの価格が逆転する
さらに2020年には、1TB HDDの価格を512GB SSDの価格が下回るようになる

Z-SSDの技術的詳細については語られず

 続いて、ライアン氏は、DRAMと従来のSSDの間に大きな性能のギャップがあることを示し、このギャップを埋める新メモリ「Z-NAND」について言及した。Z-NANDは、2016年8月に開催された「Flash Memory Summit」におけるSamsungの講演の中で明らかにされたもので、Intel-Micron連合の3D XPointメモリに対抗するものである。

 Z-NANDを採用したZ-SSDは、PRAMベースのストレージよりもシーケンシャルリード性能が高く、ランダムリードのレイテンシは、PRAMベースのストレージと同等(つまり、従来のSSDよりも遙かにレイテンシが短い)ことを示したが、技術的な詳細については、Flash Memory Summitと同じく解説されなかった。おそらく3D V-NANDベースの高速フラッシュメモリと、新コントローラを採用したものだと思われるが、出荷時期は2017年とのことで、来年(2017年)のSamsung SSD Global Summitで詳細が語られる可能性が高い。

 なお、展示会場には、Z-SSDの試作品も展示されていた(展示会場については後述)。その試作品の容量は1TBだが、ユーザーエリアは800GBとされており、960 EVOのIntelligent TurboWriteを発展させたような技術が採用されているのかもしれない。

SamsungのSSDポートフォリオ。リテールからOEM向けまで、数多くの製品を取り揃えている(960 PRO/960 EVOはこの時点では発表されていなかったので、書かれていない)
メモリ階層をピラミッドで表すと、DRAMとSSDの間に大きな性能のギャップがあった。ここを埋めるのが、Z-NANDである
Z-SSDは、PRAMベースのストレージよりもシーケンシャルリード性能が高く、ランダムリードのレイテンシは、PRAMベースのストレージと同等である
NVMe対応SSDのシェアのトレンド。2016年では、SATA対応SSDが5,600万台に対し、NVMe対応SSDは3,300万台だが、2018年にはSATA対応SSDが2,300万台に減少するのに対し、NVMe対応SSDは1億1,100万台と大きく増える予想だ

Z-SSDやBGA SSDの実物も展示

 カンファレンス会場の隣は、製品展示会場となっており、SamsungのSSD製品が一堂に会していた。普段、あまり見掛けないエンタープライズ向けSSDや2017年登場予定の次世代高速SSD「Z-SSD」の試作品、SSD版SoCとでもいうべき、1チップSSDを実現したBGA SSDなどが展示されており、注目を集めていた。

カンファレンス会場の隣が、製品展示会場となっていた
PCクライアント向け内部接続用SSDの展示コーナー
2.5インチSATA接続の低価格モデル「750 EVO」。容量は120GB/250GB/500GBで、3bit MLC NANDを採用。コントローラはMGXで、シーケンシャルリードは最大540MB/s、シーケンシャルライトは最大520MB/s。4KBランダムリードは最大98,000IOPS、4KBランダムライトは最大88,000IOPSである
2.5インチSATA接続のハイエンドモデル「850 PRO」。容量は256GB/512GB/1TB/2TBで、MLC NANDを採用。コントローラはMGX/MHXで、シーケンシャルリードは最大550MB/s、シーケンシャルライトは最大520MB/s。4KBランダムリードは最大10,000IOPS、4KBランダムライトは最大90,000IOPSである
M.2フォームファクタNVMe対応のハイエンドモデル「950 PRO」。容量は256GB/512GBで、MLC V-NANDを採用。コントローラはUBXで、シーケンシャルリードは最大2,500MB/s、シーケンシャルライトは最大1,500MB/s。4KBランダムリードは最大300,000IOPS、4KBランダムライトは最大110,000IOPSである
2.5インチSATA接続のメインストリーム向けモデル「850 EVO」。容量は250GB/500GB/1TB/2TB/4TBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはMGX/MHXで、シーケンシャルリードは最大540MB/s、シーケンシャルライトは最大520MB/s。4KBランダムリードは最大98,000IOPS、4KBランダムライトは最大90,000IOPSである
mSATA対応のメインストリーム向けモデル「850 EVO」。容量は250GB/500GB/1TBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはMGXで、シーケンシャルリードは最大540MB/s、シーケンシャルライトは最大520MB/s。4KBランダムリードは最大97,000IOPS、4KBランダムライトは最大88,000IOPSである
M.2フォームファクタSATA対応のメインストリーム向けモデル「850 EVO」。容量は250GB/500GB/1TBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはMGXで、シーケンシャルリードは最大540MB/s、シーケンシャルライトは最大520MB/s。4KBランダムリードは最大97,000IOPS、4KBランダムライトは最大89,000IOPSである
USB 3.0経由で接続するポータブルSSD「T3」。容量は250GB/500GB/1TB/2TBで、一般的な外付けHDDよりも4倍高速である
PCクライアント向けBGA SSDの展示コーナー
BGA SSDの「PM971」。容量は128GB/256GB/512GBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはPhotonで、シーケンシャルリードは最大1,500MB/s、シーケンシャルライトは最大900MB/s。4KBランダムリードは最大200,000IOPS、4KBランダムライトは最大37,000IOPSである
PM971の表面。1チップにNANDフラッシュとコントローラ、バッファ用DRAMが統合されている
PM971の裏面。BGAの半田ボールが並んでいる
エンタープライズ向けSAS対応SSDの展示コーナー
2.5インチSAS対応のエンタープライズ向けモデル「PM1633a」。容量は480GB/960GB/1.92TB/3.84TB/7.68TB/15.36TBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはREXで、シーケンシャルリードは最大1,350MB/s、シーケンシャルライトは最大1,300MB/s。4KBランダムリードは最大20万IOPS、4KBランダムライトは最大3万7,000IOPSである
エンタープライズ向けNVMe対応SSDの展示コーナー
HHHLフォームファクタNVMe対応の高速SSD「PM1725a」。容量は1.6TB/3.2TB/6.4TBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはEpicで、シーケンシャルリードは最大6,400MB/s、シーケンシャルライトは最大3,000MB/s。4KBランダムリードは最大1080,000IOPS、4KBランダムライトは最大170,000IOPSである
2.5インチフォームファクタNVMe対応の高速SSD「PM1725a」。容量は800GB/1.6TB/3.2TB/6.4TBで、3bit MLC V-NANDを採用。コントローラはEpicで、シーケンシャルリードは最大3,300MB/s、シーケンシャルライトは最大2,900MB/s。4KBランダムリードは最大800,000IOPS、4KBランダムライトは最大160,000IOPSである
2.5インチフォームファクタSATA対応のSSD「SM1725a」。容量は240GB/480GB/960GB/1.92TBで、MLC V-NANDを採用。コントローラはMercuryで、シーケンシャルリードは最大520MB/s、シーケンシャルライトは最大485MB/s。4KBランダムリードは最大97,000IOPS、4KBランダムライトは最大29,000IOPSである
2.5インチフォームファクタSATA対応のSSD「PM863a」。容量は240GB/480GB/960GB/1.92TB/3.84TBで、MLC V-NANDを採用。コントローラはMercuryで、シーケンシャルリードは最大520MB/s、シーケンシャルライトは最大485MB/s。4KBランダムリードは最大97,000IOPS、4KBランダムライトは最大29,000IOPSである
エンタープライズ向けZ-SSDの展示コーナー
Z-SSDの試作品。Phoenixと名付けられた新コントローラを採用しており、容量は1TBだが、ユーザーエリアは800GBとなる。シーケンシャルリードとシーケンシャルライトはともに最大3.2GB/sで、4KBランダムリードは最大750,000IOPS、4KBランダムライトは最大160,000IOPSと、従来のNVMe対応SSDと比べても格段にランダム性能が高い

Samsungの歴代PCクライアント向けSSDの展示も

 また、これまでにSamsungから登場したPCクライアント向けSSDが登場順に並んで展示されており、2010年4月のSSD 470から2016年9月の960 PROにいたるまでの、わずか6年半でのSSDの急速な進化が実感できた。

2010年4月に発表された「SSD 470」。3GbpsのSATA II対応で、容量は64GB/128GB/256GBである
2011年10月に発表された「SSD 830」。6GbpsのSATA 3.0対応で、容量は64GB/128GB/256GB/512GBである
2012年9月に発表された「840」と「840 PRO」。第1回のSamsung SSD Global Summitに合わせて発表された。どちらもSATA 3.0対応で840の容量は120GB/250GB/500GB、840 PROの容量は128GB/256GB/512GBである
2014年1月に発表された「840 EVO」。SATA 3.0対応で2.5インチモデルの容量は120GB/250GB/500GB/750GB/1TB、mSATAモデルの容量は120GB/250GB/500GBである
2014年7月に発表された「850 PRO」と「850 EVO」。850 EVOは、世界初の3bit MLC V-NAND採用SSDである。850 PROの容量は128GB/256GB/512GB/1TB/2TBであり、850 EVOの容量は2.5インチモデルが120GB/250GB/500GB/1TB/2TBで、mSATAモデルが120GB/250GB/500GB/1TB、M.2モデルが120GB/250GB/500GBである
上が2015年10月に発表されたNVMe対応の「950 PRO」。下が2015年1月に登場したポータブルSSDの「T1」。950 PROの容量は256GB/512GBであり、世界初のV-NANDベースのNVMe対応SSDである
上から順に2016年9月に発表された「960 PRO」、「960 EVO」。2016年1月に発表されたポータブルSSD「T3」
960 PROの容量は512GB/1TB/2TBで、960 EVOの容量は250GB/500GB/1TBである