やじうまミニレビュー
電源搭載でOCuLink/USB4両対応、むき出しで使うワイルドなeGPUドック「GTBOX G-DOCK」
2025年6月5日 06:11
GTBOXが展開する「G-DOCK」は、デスクトップ向けビデオカードをノートPCやミニPCでも使えるように外付けにする、いわゆる“eGPUドック”と呼ばれる製品だ。現在直販サイトにおいて239.99ドルで販売されており、レジで使えるクーポン「OFF10」でさらに10ドル安くなる。今回サンプルを入手したので、簡単にご紹介しよう。
G-DOCKの最大の特徴は、ビデオカードをむき出しで使う点だ。eGPUドックの代表作と言えばRazerの「Razer Core」などが挙げられるが、基本的にビデオカードを電源ユニットや変換基板とともにケース内に収めるタイプとなっている。ところがG-DOCKは電源ユニットと基板部こそ小さなケースにまとめられているが、ビデオカードそのものはむき出しだ。
この構造は必然的に動作中の衝撃に対して弱くなるし、ファンに指などが当たらないよう注意しなければならなくなる。当然、ビデオカード自体から発せられる電磁波への対策も「なにそれおいしいの?」レベルになるであろう。
代わりに、ビデオカードのサイズに対する制限は事実上なくなり、冷却面でも心配をしなくても良くなる。このところ静音性と冷却性のバランスを採るために大型ヒートシンクを採用するメーカーが増えたため、3スロット以上を占有するビデオカードもめずらしくなくなった。こうしたビデオカードはRazer Coreシリーズには入らない可能性が生じてくるが、G-DOCKなら問題ない、というわけだ。
また、PCとの接続インターフェイスとしてOCuLinkおよびUSB4の両方に対応しているのも特徴の1つ。前者はPCIe x4の信号をほぼそのまま通すだけなので帯域幅が広く、Ryzen搭載でOCuLink端子付きミニPCとの親和性が高い。後者は帯域幅こそ狭いが、Thunderbolt 3/4/5とも互換性があり、ノートPCで使えるのが魅力的だ。G-DOCKではUSB4でノートPCに対して100Wの給電も可能なので、対象範囲が広く利便性が高いのがポイントである。
ここでちょっとしたマメ知識。先述の通りOCuLinkはPCIe信号そのものなので通常はホットプラグはできず、本製品にも必ず電源をシャットダウンしてから接続するような注意書きのシールがOCuLinkポート付近に貼られている。しかし中国のLenovoが発売したノートPC「ThinkBook 14+ 2024」には、OCuLinkと同等の「TGX」ポートが搭載されており、この製品に限りホットプラグが可能とのことだ。
そしてもう1つ。ビデオカードがGeForceの場合は、ドライバインストール後に正しく動作せず、デバイスマネージャーで「コード43」というエラーが出ることがあるという。これは説明書にも記載があり、有志が作成したパッチを適用する必要がある(記載はないがURLはこちら)。
実際に筆者が試してみたところ、ポータブルゲーミングPC「GPD WIN Mini 2024」でこの不具合が再現し、パッチ適用による解消を確認できた。一方、今回ベンチで使うMINISFORUMの「AtomMan X7 Ti」ではそもそも問題が発生しなかった。
さて、ビデオカードを囲むシャーシを省いた大胆な設計の本製品だが、本体サイズは225×110×60mmとかなりコンパクト。ミニPCなどと並べて使用しても圧迫感がない……と言いたいところだが、実際はビデオカードそのまま露出させるため、特にハイエンドなビデオカードを載せた際の見た目のインパクトがかなり強く、「どっちが本体だっけ」とはなるので注意しよう。
なお、ビデオカードはブラケットの下部をネジで固定し、逆側はネジで高さ調節できるステーで重さを支える構造となっている。このためファン側やバックプレート側の上部からの力に若干弱くなるのは致し方ない。
そのほかの付属品はPCIe 8ピンケーブルが3本、USB4ケーブル、OCuLinkケーブル、電源ケーブルとなっている。GeForce RTX 40以降の12VHPWRケーブルはないが、これは変換を使えということだろう(手元のGeForce RTX 40シリーズは8ピンが4基必要な4090しかないので、今回はテストを見送った)。
本製品には800W電源が搭載されている。補助電源コネクタは8ピン×3で、GeForce RTX 40(要変換ケーブル)およびRadeon RX 7000シリーズ以降、最大650WまでのGPUに対応できると謳われている。ファンが40mm角程度なので、騒音が結構するのでは……と当初は懸念していたが、GeForce RTX 3080 Ti程度の消費電力ではまだ余裕があるようで、結果的にビデオカードのファンの騒音の方が目立った。
なお、製品ページのタイトルではHuntkey製電源とされているが、サンプルに搭載されていたのはGrate Wall製の「GW-CRPS800」だった。いわゆるサーバー向けのリダンダント電源(単体ではリダンダントではない)だが、ラベルには中国のサーバーベンダー大手の波潮(Inspur)と共同開発したとされているほか、80PLUS Platinumも対応しているという、なかなかの実力派である。
電源を外したついでに内部を分解したところ、USB4/ThunderboltコントローラにはASMediaの「ASM2464PDX」が採用されていたことが確認できた。筆者的には初見である。また、USB PDバルクブーストコントローラにはRichtekの「RT6190」、ペリフェラル制御用と思われるITEの「8857FN」、PCIe 4.0対応のDiodes製8→4差動チャネルマルチプレクサ/デプレクサスイッチ「PI3DBS16412」の実装などが見え、そこそこコストが掛かってるように思えた。
今回はこのドックに先述のGeForce RTX 3080 Ti GameRock OCを搭載し、MINISFORUMのCore Ultra 9 185Hを備えたミニPC「AtomMan X7 Ti」に接続してベンチマークしてみた。ベンチのパターンとしては4通りやってみた。使用したベンチマークは3DMarkである。
- OCuLink接続、ビデオカードから画面出力
- OCuLink接続、Core Ultra 9 185Hから画面出力
- USB4接続、ビデオカードから画面出力
- USB4接続、Core Ultra 9 185Hから画面出力
結果としては想像の通り、ビデオカードから画面を出力した方が性能が出る。描画したデータがOCuLinkやUSB4を介して内蔵GPUに戻ってくる必要がないためだ。ただ、ノートPCではあえて外付けモニターを利用しないというパターンもあるため、参考までに掲載した。特に負荷が軽いWild Lifeは大差がついているが、これは3080 Ti直出力時にフレームレートが500fpsを超え、一方画像をiGPUに戻すと最大80fps前後に制限されるためだ。ただ、ゲームの種類によってはこれで十分という人もいるだろう。
一方、USB4に対してのOCuLinkのアドバンテージだが、確かにPCからビデオカードまでの帯域幅は2倍近く増加しているものの、スコア的にそこまで差が開かないパターンがあるといったところ。VRAMに対して大量転送を行なうLLMのイニシャライズ段階などでは体感差が生まれそうだが、一般的なゲームではあまり影響がないかもしれない。
本機はあくまで自作が前提でビデオカードは別売だ。Ryzen環境とUSB4の組み合わせでは有志パッチを当てる必要があるなど、ある程度の知識とスキルも求められる。しかし、コンパクトで静音な800W電源付き、そしてOCuLinkとUSB4両対応、かつコンパクトなeGPUドックが約3万3,000円で買えるというコストパフォーマンスの高さは抜群だとは思う。
ノートPCやミニPCのGPU性能を向上させたいユーザーだけでなく、OCuLink対応ミニPCと組み合わせて、生成AI用PCやゲーミングPCを組むといった、一風変わったエンスージアストにとって、本機は最有力の選択肢となるだろう。