やじうまミニレビュー

半額で売ってたAmai ketoの「ファン付きベスト」を買ったら世界が変わった

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。

 先月、弊誌PC Watchを拝見していたら、ファン付きベストが半額、という記事が目に留まった。いわゆる「冷風服」や「冷房服」と言われるジャンルの製品で、袖のないベストの背中の部分にファンを仕込んだ夏用のデジタル衣料品の1つだ。これまで買ったことのないジャンルの製品ということもあり、何も調べずに勢いで購入してみた。

ファン付きベスト……の歴史

 購入して数日使用して楽しんでいたが、本稿にてレビューを執筆するということになったので改めて調べてみると、ここ数年のうちに目にすることが増えてきたこのジャンルの製品だが、紐解くとその歴史は意外と古く、製品として登場したのは20年近く前のことだったようだ。

 当時は電池で動作していたこともあり、風量が足らず、あまり効果がないなどの理由もあってあまり伸びなかったようだが、その後、モバイルバッテリの普及や、それに伴う性能の強化などもあり、ここ10年くらいは各社からさまざまな製品が発売されるようになっているようだ。

 業界内での最大手は、10年以上「空調服」の名前で製品を販売してきた株式会社空調服で、「空調服」についての数多くの特許や実用新案登録を行なっている。なお、「空調服」は同社の登録商標だ。

 また、「空調服」については、本来製造委託を受けていた株式会社サンエスが逆に株式会社空調服を訴えたという裁判と、その顛末をまとめた以下の記事がとても面白いので、興味のある人はチェックしてみてほしい。

 現在ではこうしたファン付きのウェアはワークマンやビバホームなどで販売しているほか、アイリスオーヤマといった家電メーカーまでも参戦している状況だ。それに加えて今回紹介する「Amai keto」などの中国メーカーも多くの製品を販売しており、モバイルバッテリが付属しない製品であればさらに低価格で購入することも可能だ。

 筆者はこれまでも冬用のヒーター内蔵防寒服はプライベートで数多くチェックしてきたが、夏用のファン付きベストの類はノーチェックだった。理由は簡単で夏の暑さを肌で体感するのが好きだからだ。一方で近年の都会の暑さは体調を崩すレベルの過酷な状況が続いており、ファン付きベストに興味を示す人も増えている。

 そこで今回は20,000mAhバッテリ付属ながら5,990円(現在は9,280円で販売中)、Amai ketoのファン付きベスト「空調作業服」について、使用感などを語っていきたい。また、比較用として、ビバホームで販売していた同社ブランドの「空調ウェア」についても買って試してみたので参考にしてみてほしい。

 なお、本来であればオリジナルの「空調服」も試して比較するべきだが、時間と予算の都合で実現できていない点はお詫びしたい。

Amai ketoのファン付きベスト「空調作業服」。背面部にファンを取り付け、服の中の空気を循環させる仕組み

付属バッテリは専用品。19V出力で高回転を実現

 「空調作業服」はかなりシンプルな小型の箱で届けられた。この手の服を購入すると、大体大きめの袋に折り畳んで入れられた服がやって来ることが多かったので、箱1つで届くとは予想外だった。箱を開けると折り畳まれた「空調作業服」のほか、充電ケーブル、専用バッテリ、ファンユニット(2個)、洗濯ネットなどが同梱されている。

パッケージはコンパクトな小箱のみとシンプル
同梱品一覧。洗濯用のネットなども付属するのはユニーク

 ファンは自分で取り付けることになるが、ベストの背面に備える穴に対して、挟みこむように、ファンの蓋と本体を取り付ける。構造がシンプルなのであまり迷うことなく簡単に取り付けが行なえる。ファンの外径全体に溝が切られており、蓋をねじのように締める仕組みのため、稼働中にファンの羽が外に触れたり、利用中に外れにくい仕組みになっている。

 ファンを取り付けたらあとはバッテリを充電して、ファン側から伸びている専用のコネクタと接続する。ここで重要な点が1つ、コネクタが専用の形状となっているため、いわゆる一般的なモバイルバッテリで運用することはできないこと。つまり、バッテリが付属しているというよりは、専用のバッテリが必須なのだ。

 なお、専用コネクタの出力は定格19V/1.5A、隣には汎用のUSB Type-A端子も備えており、5V/2.4A出力でほかの機器の充電なども行なえる。また、側面にはUSB Type-C端子も備えるが、こちらは充電専用となっており、この端子からほかの機器の充電などは行なえないようだ。

 これについて他社製品などを見ていると、アイリスオーヤマの「クールウェア」や空調服の「空調服」、ワークマンのファンウェア「WindCore」など、いずれも専用のバッテリが必須と表記されている。Webサイトの写真から全てが専用のコネクタを採用しているかは不明だが、いずれも専用バッテリでの利用しか保証していないわけである。

 専用バッテリを使う理由はいくつかあるが、1つは一般的なUSB出力よりも高電圧での出力を行なうことから、汎用のモバイルバッテリでは正常に動作しない場合があるため、あえて専用バッテリを用意しているようだ。また、夏場に使用する想定の製品であるため、バッテリの品質に各社とも非常に神経を使っており、自社で品質管理したバッテリを使うことで安全面も考慮しているというのも理由の1つのようだ。

ベストに空いた穴に対して外側と内側からファンで挟み込むようにして取り付ける。ファンの外径部に溝が切られており、蓋を締める感覚で装着する
付属バッテリは容量20,000mAhの「空調作業服」専用の物
バッテリ天面部にはUSB Type-A端子と「空調作業服」のファンを取り付ける専用端子を装備
側面には充電専用のUSB Type-C端子を備える
背面にはバッテリの仕様が記載されている。USB Type-A端子からの出力は最大5V/2.4A
バッテリの重量は実測で416gとそれなりに重い

 専用バッテリを装着していざ稼働。電源のオン/オフはバッテリ側のスイッチを押してバッテリを起動してから、ベスト表面に備えるスイッチを押すことでファンが起動する仕組み。専用バッテリを使っているのだから、この辺りはスイッチ側から制御してほしかったところだ。スイッチがオンになると赤色のLEDが点灯、ファンが回転を開始する。風量については4段階から調節が可能だ。

 冷却性能について言うと、屋外を歩く際の体感は衝撃的! とまでは言わないが、それなりに涼しくなる感覚が味わえる。最大風量で使用すると、見た目的には風が体内を循環するのが分かるくらいにベスト全体が風で膨らみ、さながら着ぐるみのようなビジュアルになるのが面白い。

 体内を循環した風は首周りの隙間から抜けていくが、この風が顔に当たるとかなり気持ちよく、涼しさを体感できる。この際、リュックや肩掛けカバンを使用している場合、体内の風の循環を遮ってしまうため、100%の風量が体感できなくなるので、体を圧迫しないタイプの手持ちカバンなどを使うのがおススメだ。

 実際に平日午前の渋谷で駅から5分くらい外を歩いてみたが、普段なら到着後に汗が流れるくらい暑さを感じるが、風量最大で稼働させてみたところ、到着後に汗がじんわり頭に浮かぶレベルまで抑えられていた。この辺りの体感は個人差もあるため、参考程度にしておいてほしい。

バッテリは側面の電源スイッチでオンにする必要がある。電源が入るとLEDで状態が分かる
実際に着て外出してみた状態。最大風量だと風の力で服全体が膨らんでいるのが分かる

 一方で製品の仕組み上、外気を吸気して体内を循環させて、排気するという動きとなる以上、屋外での冷却性能に過信は禁物だ。たとえば、実際に屋外のテラスがある店でランチを取る機会に、風量全開で稼働させながら食事を取ってみたが、風による涼しさは感じつつも、吸気する空気が熱いため、それほど涼しくならない状態だった。逆にエアコンの効いた部屋で数分稼働させてみたが、涼しい風を吸気するため、風量を最小にしていても、むしろ冷えすぎて寒くなるレベルまで体が冷やされた。

 屋外での対策としては、ベスト内部に備えるポケットなどに保冷剤を入れたり、冷たいドリンクを入れておくなどすることで、冷媒が加わるため、多少涼しくなる。このように冷却性能についてはさらに向上できる余地は多そうだ。

 そして気になるファンの回転音についてだが、正直なところ風量最大にすると相当にうるさい。屋外を歩いていても、気になるレベルの風切り音が響き渡るし、そのまま室内に入ると、明らかに怒られるレベルの騒音をかき鳴らす。この辺りのコントロールは特に神経を使っていきたいところ。

 風量を最小にした場合はかなり音が静かになるが、それでも無音の空間ではそれなりに音が気になる。オフィスなどの場合、空気清浄機が稼働していたり、電話がジャンジャンなるような賑やかな場所なら気にならないが、試験会場や図書館のような静寂の中では確実に音が聞こえるので、その利用には注意が必要だ。

 なお、バッテリ駆動時間については、普段の風量は最弱(約11時間)、屋外の移動のみ最大(約1時間)にした状態でおよそ12時間くらい連続駆動が可能だった。

屋外のテラスで優雅にローストビーフ丼を食してみた。涼しい気もするが、思ったほど涼しくならない。ローストビーフ丼は美味であったが、風量最大時はとにかく音がかなり派手に鳴り響く
ファンをコントロールするスイッチはポケットの奥にある。緑は風量最低、赤が最大でボタンを押すごとに風量が弱くなる

ケーブルがウェア内蔵のため、交換不可なのが難点

 今回購入したAmai ketoのファン付きベスト「空調作業服」だが、冷却性能やファンの騒音以上に最大の問題点を1つ抱えている。それはベストとしてのデザインがダサすぎることだ。筆者が過去にAliexpressなどで輸入したヒーター内蔵防寒服についてもそうだったが、中国製のこの手のウェアはとにかくデザインがダサい。さらに本製品については、冷却ファンとバッテリを繋ぐケーブルがベストに内蔵されているため、ファンとケーブルを外して他社のウェアなどに移植ができない仕組みとなっているため、八方塞がりだ。

とにかくデザインが気に入らない! 外のボタンのデザインもヒーター内蔵防寒服の頃から何も成長していない……
ファンを取り外して別のウェアに移植しようにもケーブル類が全てウェアに内蔵されている
バッテリ専用のポケットが用意され、そこまでケーブルが伸びているので、外そうとするとウェア自体に手を入れる必要がある

 ここで他社の動向を見てみると、前述の国内メーカーの製品はいずれもカラーバリエーションを豊富に用意するほか、ベスト以外に長袖のパーカーなどウェアのデザインが豊富に用意されており、好みに応じてさまざまなウェアが選択できる。また、ファンとケーブルが着脱可能な仕組みになっているので、対応するウェアであれば自由にファンを付け替えることも可能だ。

 一方で「空調作業服」の一体型の仕組みは冷却性能に恩恵があるのかが気になったので、着脱可能な製品の代表として、近所のホームセンター、ビバホームにて同社が展開する「空調ウェア」についても購入してチェックしてみた。

 「空調ウェア」はセット商品も用意されているが、冷却ファンとケーブルのセット、専用バッテリ、ウェアがそれぞれ別売になっており、必要な物のみを単体で購入することも可能だ。バッテリとの接続端子はUSB Type-Aのため、汎用のバッテリでの利用が可能な点が魅力だが、動作保証はないようだ。さらに同社のファンは2種類用意されており、より多くのモバイルバッテリで動作できる低電圧のファンと、高出力(12V/1.5A)のハイパワーなファンも用意されている。高出力のファンについては出力の低いモバイルバッテリでは正常に動作しない旨を購入時に注意するようにしているという。

 ウェアの種類は豊富に用意されていたので、今回は長袖のパーカー型のウェアと高出力対応のハイパワーファンをそれぞれ買って試した。冷却ファン装着の仕組みは同様だが、ファンからバッテリへのケーブルはシンプルに背中の部分で取りまわすのみ。ケーブルの長さにはゆとりがあるため、そのままぶら下げていると着ている時に腰などに引っかかる場合があるので、内部に備えるマジックテープなどを使って短くまとめたり、バッテリを内ポケットではなく、外のポケットに収納するなどケーブルのゆとりをなるべく減らす工夫が必要だ。

 実際の稼働状態を見ると、出力は12V/1.5Aと「空調作業服」よりも低電圧ながら、最大風量で動作させるとかなりの風量が吸排気される。ウェアのデザインもカッコいいのが嬉しい。体内の循環効率はあまり高くないようにも感じるが、誤差の範囲とも言える。

 もちろん最大風量で動作させると、騒音も凄まじい。どこかで聞いたことのあるような音がするなと思ったら、ドローンのプロペラ回転時のような回転音が鳴り響くため、こちらも注意が必要な点は言うまでもない。

我慢できずに買ってしまった、ビバホームにて購入した「空調ウェア」用の冷却ファンセット(バッテリは付属しない)
背面には出力12V/1.5A以上のバッテリが必要な旨が記載されている。汎用USB Type-A端子で接続が可能なので、幅広いバッテリで使える
ウェアへのファン取り付けの方法はこちらも同様で、ウェアの穴に対して外部と内部からファンを挟み込むようにして取り付ける
服の中のケーブルの取りまわしはマジックテープを使ってある程度の調整が可能
出力条件さえ合えば、市販のバッテリがそのまま利用できるのはうれしいポイント
実際に着てみたところ。これがアリかナシかは好みもあると思うが、ウェアが自由に選べるのはありがたい。なお、本来は長袖だが暑いのでちょっと肘まで捲って着用している
ファン操作はバッテリと接続したケーブルにスイッチが用意されている

デザイン以外は文句なしだが、屋外利用の場合、過信は禁物

 以上、Amai ketoのファン付きベスト「空調作業服」を簡単にレビューしてみた。屋外での仕事など、見た目を気にせず冷却性能を求めたいなら選択肢としてはアリな製品と言える。国内製品以上の定格19V出力での冷却ファン駆動とケーブルが一体となったベストはケーブルの取り回しなどを気にせず端子を繋ぐだけで使えるため、かなり使い勝手はいい。バッテリ容量が20,000mAhとかなり大容量のバッテリが付属して1万円未満な点も嬉しいポイントの1つと言える。

 一方で、ウェアの交換が効かない点はとにかく残念ポイントだが、使いやすさとのトレードオフと考えると致し方ない面もある。

ファンの部分が全てネット越しに奥に配置されているため、一切干渉しない作りになっているのもポイント
バッテリ専用のポケットが用意されている点も魅力の1つ

 今回、記事を書くにあたって他社の製品をあれこれ調べてみたが、各社ともウェアのバラエティの豊富さにはとにかく力を入れている印象が強かった。中には現場の作業服ライクな物もあるが、アウトドアなどで着るのに適したクールなデザインの物も多く見受けられ、市場の広がりが感じられるが、いずれもトータルで見ると性能面で不足が感じられたり、価格面で割高になってしまう物が多く見られた印象だ。

 たとえばオリジナルの「空調服」については専用バッテリと冷却ファンがセットになった「スターターキット」が2万円以上する。定格出力は最新2023年モデルでは、最大18Vまで上げることが可能となっており、なかなかの高出力が期待できる。ただし、実際の利用にはさらにウェアを購入する必要があるため、トータルコストはかなり割高になってしまう。

【14時15分訂正】記事初出時、空調服の2023年モデルのバッテリの出力を14.4Vとしておりましたが、正しくは18Vでした。お詫びして訂正します。

 一方でアイリスオーヤマの「クールウェア」はファンやバッテリ、ウェアなどを単体で販売するほか、全てがセットになったフルセット商品も多く用意されており、こちらは全部まとめて7,980~1万6,800円くらいの価格で購入できるのでかなり低コストになっている。また、ウェア単体での商品も多く用意されている点は嬉しいところ。一方でバッテリの定格電圧は7.4V、容量は6,500mAhと性能面ではやや物足りない印象を受ける。

 今回筆者が購入した「空調ウェア」については、長袖パーカーのウェアの価格が3,980円(税別)、ファンとケーブルのセットが2,980円(税別)、合計7,656円(税込)とかなり安く購入できたが、こちらはバッテリを含まない価格となっている。

 なお、余談を2つほど。1つはトイレでの利用についてだが、これについては正直めちゃくちゃ気持ちいい。個室のトイレなどで風量を最大にして使用すると、露出した下半身がウェアの下部から出る風でめちゃくちゃ涼しくなるからだ。

 またもう1つ、今回ビバホームでの購入に際して、従業員さんと会話したのだが、同社では2018年頃から「空調ウェア」の製品を販売しており、年々利用者も増加傾向にあるという。また、シーズンとしては既に7月末で完了しており、これ以降の商品の入荷は行なわれず、新製品の入荷はまた来年になるようだ。なお、このコメントはあくまでも店舗で働く従業員さんのコメントであり、ビバホームを運営するアークランズ公式のコメントではない点は予めご了承頂きたい。

 ファン付きベストについてまとめると、冷却性能については文句なく、いつでもどこでも涼しいわけではないが、ないとあるとでは明らかに効果が高いのは明白だ。一方で電車やオフィスなど冷房の効いた場所が活動の中心となるなら、ちょっとの移動時に使うメリットがあるかと問われるとなかなか悩ましい。だが、熱中症などが問題視されている昨今、屋外での作業や外出が多い人は1着備えておくと比較的涼しい気分で外出が楽しくなるかもしれない。

余談ついでに、記事冒頭で紹介したBABUTENLOの「冷風服」も購入してみた。価格は当時の割引価格で3,499円、現在は5,080円で販売されている。バッテリが別売のため格安だった。なお、コントローラを見てみると、どこかで見たことのある形状だった、というかビバホームの「空調ウェア」と同じ物が出てきた(笑)