やじうまミニレビュー
XPPenのダイヤル+ショートカットキーデバイス、汎用性大でめっちゃいい!
2023年6月22日 06:18
キーボードとマウスの補助的な操作手段として最近注目を集めているのがショートカットキーデバイス。有名どころだとElgatoの「Stream Deck」がそうだし、Microsoftの「Surface Dial」もその1種だ。別名「左手(片手)デバイス」と言われることもあるが、左手でマウスを握っているユーザーにとっては「右手デバイス」になるし、マウスも片手デバイスなので、ここではとりあえずショートカットキーデバイスと呼ぶことにしよう。
さて、そんなショートカットキーデバイスに、コストパフォーマンスに優れる製品が登場した。ペンタブレットでおなじみXPPenの「ACK05 ショートカットリモート」だ。ペンダブレットのようなクリエイティブ製品をメインに展開するXPPenだからなのか、ボタンに加えてダイヤルも装備する本格的なクリエイター向けデバイスとなっていて、それなのに実売6,000円弱とリーズナブルだ。これは気になるではないか。
接続は有線・無線両対応、最大40個のアクションを1台でカバー
ショートカットリモートはダイヤルと10個のボタンを備えるショートカットキーデバイス。ダイヤルの左右回転やボタンそれぞれに機能を割り当てることで、アプリケーションで頻繁に行なう操作を最小限のアクションで実現できるというものだ。
1番の特徴は、接続方法が3パターン用意されていること。USB Type-CケーブルでPCと接続して使えるだけでなく、付属のドングルを使えば2.4GHzの無線接続ができ、さらにBluetooth接続にも対応する。無線接続時は充電式内蔵バッテリでの動作となり、最大300時間稼働するとしている。
Windows、macOS、Linuxの各プラットフォームに対応しているので、複数のPC環境を使い分けている人にも適している。たとえばWindowsは無線接続で、macOSはBluetooth接続、Linuxは有線接続する、というようにすれば、1つのショートカットリモートを共用することも可能だ。このあたりはUSB接続しかできないほかのショートカットキーデバイスに比べて大きな強みと言えるだろう(ただし、筆者が確認したところ手元のWindows 11マシンではBluetooth接続ができなかった)。
ダイヤルやボタンなど各キーへの機能割り当ては専用ユーティリティを使う。ボタンはダイヤル中央にあるものも含めると計11個だが、そのうちダイヤル中央ボタンともう1つのボタンは機能割り当てが実質的に固定となるので、ダイヤル回転とボタン9個、合わせて10個のキーに機能割り当て可能、ということになる。
ただ、ダイヤルについては中央ボタンを押すことで計4つの機能に切り替えることができ、ボタンの方もプロファイルを4種類保持して切り替えて使えるので、「4+9×4」でトータル40種類のアクションを1つのデバイスでまかなえる。しかも現在アクティブなアプリケーションに応じてキー割り当てを変化させることも可能(最大7個のアプリケーションそれぞれに固有の設定を持たせられ、それ以外のアプリケーションで共通の割り当て設定が1個用意されている)。これはなかなかに応用しがいのあるデバイスでは?
たとえばショートカットリモートを活用することで、Adobe Photoshopの使用中にダイヤル操作で画像をズームイン・アウトしたり、中央ボタンで機能を切り替えたのち画像の回転操作やスクロールをしたりする、といったことが可能。さらにボタンを一度押下するだけで「ファイル保存」や「やり直し」など、デフォルトで用意されているキーボードショートカットを実行することもできる。
それらデフォルト設定されている基本的なショートカットキーだけでなく、ユーザー自身が独自に作成したキー・マウス入力のショートカット、言い換えるとキーボードマクロみたいなものをカスタム設定することも可能だ。そこにアプリケーションのキーボードショートカットなどを割り当てれば、動画編集ソフトのタイムラインのズームイン・アウト、あるいはフレームスキップのように、まさにダイヤル操作向きの機能をサクサク効率よく使えるようになる。
クリエイティブ系はもちろんビジネスアプリでも活躍
クリエイター向けを意識した製品ということもあるのか、ショートカットリモートを役立てられそうなシーンとしては、やはり写真や動画を編集するアプリケーションになるものと思われる。ブラシサイズの変更といった機能もデフォルトで用意されているので、ペイントソフトでも大いに活躍してくれるだろう。
ただ、ショートカットキーが充実していないアプリケーションだと、それがたとえクリエイター向けのものだったとしても有効活用は難しい。たとえば筆者がよく使っているRAW現像ソフト「DxO PhotoLab」は、細かな画質調整に関わる機能がほぼ全てマウス操作前提となっているため、ショートカットリモートの出番はほとんどない。
反対に、クリエイターではないユーザーでも、ショートカットキーの細かな設定が可能なアプリケーションを使っているのであれば活躍の機会はある。たとえばビジネスシーンだと、Web会議ツールの音声のミュートや画面共有の開始、画面レイアウトの切り替えなどに使えるし、キーボードマクロ的な使い方という意味では、ゲームでの特定の操作を簡略化する際にも役立つ。
WebブラウザのGoogle Chromeならタブ切り替えやスクロールをダイヤル操作することが可能だし、ページ内のリンク箇所にジャンプするショートカットキー(Tab)などと組み合わせれば、ほとんどショートカットリモートだけでWebブラウジングできる。だらだら掲示板などを眺めるときにも便利かもしれない。
とはいえ、Webコンテンツごとにショートカットキーが変わる可能性があるChromeのようなWebブラウザだと、いくら40種類のショートカットを割り当て可能なショートカットリモートと言えども不足する恐れがある。これは、設定の切り替えがあくまでもアプリケーション単位までで、そのなかのタブ(Webページ)ごとには切り替えられない仕組みだからだ。
特にダイヤル部分の割り当て設定は中央ボタンやアプリケーション単位での切り替えは可能なものの、ほかの10個のボタンのように4つのプロファイルを切り替えるような機能がないため、すぐに足りなくなりがち。汎用性の高いショートカットリモートではあるけれど、だからといって一般のアプリケーションの機能をあれもこれもと割り当てていけるほどではない、という点は頭に入れておきたい。
UI上の細かな課題はあるが、汎用性も満足度も高いショートカットキーデバイス
ショートカットキーデバイスとして考えると、機能豊富で、PCとの接続性という意味でも汎用性高く使え、しかもライバル製品と比較して安価なプライスに設定されているショートカットリモートは、かなりお買い得なアイテムと言える。
ネガティブな点を挙げるとすれば、ユーザー自身がカスタマイズしたショートカットキー設定がユーティリティ内で保持されないところ。どういう意味かというと、たとえばあるボタンにカスタマイズで割り当てたショートカットキー設定を、別のボタンにも同じように割り当てようと思うと、改めて同じカスタマイズ設定を1からやり直す必要があるのだ(あくまでカスタマイズ時のみ。デフォルトで用意されているショートカットキーはリストから選べる)。
なので、「一度はこっちのボタンに割り当てたけれど、やっぱりこっちのボタンにしよう」みたいに思ったときは、設定が記憶されていないのでもう一度設定し直しということになる。長い文字列入力が伴うキーボードマクロのような設定内容だったりすると再設定が面倒なのではないだろうか。ユーティリティのアップデートでこのあたりの仕様が改善されることに期待したいし、他社製品のようにメーカー自身がアプリケーションごとに適したプロファイル設定を配布するような動きもできればあってほしいところだ。