■山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ■
Windows 7の一般向け発売から約3カ月が経過した。次第にその評価も定まってきたようだ。おおむね好意的に迎え入れられているようだが、Vistaのマイナーバージョンアップと揶揄されることも少なくないのも事実。そこで、今回から、Windows 7の実際の具体的な利用スタイルについて、連載で紹介していくことになった。新しいOSは、新しい作法で使うべきかどうか。さまざまな観点から考えていくことにしよう。
●すべての起点はデスクトップだがその実態は違うWindowsは、XPからVista、そして、今回の7になっても、基本的にできることが増えているわけではない。ただ、実際には、機能が発見しやすくなっていたり、より直感的な操作で特定の作業ができるようになったり、堅牢性、安定性が向上していたりと、移行によるメリットは少なくない。以前のOSから大きな違和感なく移行できるというのも大事なことだ。
まず、初回の今回は、個人用フォルダについて見ていこう。
PCを使う一般のユーザーにとって、OSとはシェルでありファイルシステムだ。OSのファイルシステム上にファイルを作ったり、既存のファイルを編集したりといったことをアプリケーションを使って実践していく。もちろんアプリケーションもまたファイル、あるいはファイル群だし、設定等を記録したレジストリデータベースもファイルだ。そして、個人用フォルダは、いわば、ホームディレクトリともいえる、さまざまな作業の起点となるフォルダだ。
Windows的には、すべての作業の起点をデスクトップとしたいようだ。見せ方としてもデスクトップの下に個人用フォルダがぶらさがっているようにもなっている。でも、この見せ方には無理がある。というのも、個人用フォルダの中には、デスクトップというフォルダがあり、その内容はデスクトップそのものだからだ。
個人用フォルダ内にデスクトップフォルダがあるが、Windows的にはすべての起点をデスクトップとしておきたいようだ |
個人用フォルダはスタートボタンをクリックしたときに、スタートメニューの右上に表示されるユーザー名をクリックすると開く。既定では、下の11個のフォルダが用意される。
アドレス帳 - Contacts
お気に入り - Favorites
ダウンロード - Downloads
デスクトップ - Desktop
マイドキュメント - Documents
マイピクチャ - Pictures
マイビデオ - Videos
マイミュージック - Music
リンク - Links
検索 - Serches
保存したゲーム - Saved Games
個人用フォルダには11個のシェルフォルダが既定で用意される |
これらのフォルダは、一般のフォルダと区別され、特別な機能を持っている。ファイルシステム上の名前も実際には併記した英語名のものが翻訳されてそれぞれの日本語名フォルダのように見えるようになっている。このおかげで、フォルダ名を決め打ちした古い多国語版プログラムでも問題が起こりにくくなっている。
個人用フォルダ内には各種のシェルフォルダが用意されるが、これらは日本語ではなく英語名となっている |
さて、個人用フォルダには、これら以外にも隠しファイルが用意される。具体的には、
AppData
Application Data
Cookies
Local Settings
My Documents
NetHood
PrintHood
Recent
SendTo
Templates
スタート メニュー
といったフォルダが用意される。末尾を見ればわかるようにAppData以外はフォルダではなく、ジャンクションで別のフォルダにリンクされている。これは、XPまで使われていたフォルダを互換性のために再現するためだ。XPまでは、システムドライブのルートにDocuments and Settingsという名前のフォルダが用意され、その中に個人用フォルダがあり、その直下に、各種のフォルダが用意されていた。それらが決めうちで指定されても対応できるようにジャンクションで本来のフォルダにリンクされているわけだ。実際には、ジャンクションとして用意されたフォルダの多くはAppDataの下部にぶらさがる形となっている。
●個人用フォルダ下だけを使おう個人用フォルダには、ユーザーが任意のフォルダを通常の手順で作成することができる。だが、作成したフォルダはあくまでも通常のフォルダで、既定で用意された各フォルダとは振る舞いが異なる。
大きな違いは、そのプロパティを開いたときに「場所」というタブがあるかどうかだ。これらのスペシャルフォルダは別のドライブ、またはネットワーク上の別のコンピュータ上の任意のフォルダに変更できるようになっている。
シェルフォルダのプロパティでは場所タブが用意され、そのフォルダの場所を任意のフォルダ、またはネットワークフォルダ等に指定することができる |
このシカケはVistaと同様で、巧妙にXP時代のフォルダツリーを偽装できるようになっている。ただ、Vistaでは、特別なフォルダには「マイ」がつかず、ミュージックやドキュメントといった素の名称だったが、7では、「マイ」が復活し、XP時代に立ち戻った形となっている。
これらの特別なフォルダは「シェルフォルダーズ」と呼ばれ、目に見えるこれらのもの以外にも、システムに密着して機能する特別なフォルダ群とその場所がレジストリに記録されているが、各フォルダに「マイ」が復活したのには理由がある。「マイ」のつかないドキュメントやピクチャ、ビデオ、ミュージックは、ライブラリとして、一般のフォルダと区別する必要があったからだ。ライブラリについては、後日、さらに詳しくつっこんでいくことにして先に進もう。
個人用フォルダ内の各用途別フォルダの場所を変更すると、どのように使い勝手が変わるのだろうか。
たとえば、マイドキュメントの場所を、システムに装着したUSBメモリ内の任意のフォルダに指定したとしよう。すると、以降、マイドキュメントに保存するファイルは、すべてUSBメモリに保存されるようになる。もちろん、ネットワークでつながったNASでもかまわないし、WebDavなどで接続できて共有フォルダに見えるのであればクラウド上のストレージでもかまわない。
自分が使うすべてのPCを同じ設定にしておけば、すべてのPCで同じマイドキュメントが使えるようになり、あのファイルはどこにいった、といった失敗がなくなる。もちろん、USBメモリをマイドキュメントにした場合、メモリ媒体を携帯するのを忘れてしまった場合、にっちもさっちもいかなくなるが、こればかりは仕方がないだろう。
Vista以降、個人用フォルダそのものは、ユーザー名がそのまま使われ、システムドライブのルートにあるusersという名前のフォルダに置かれるようになり、7は、その構造を踏襲している。
また、このUsersにはPublicという名前の特別なユーザー用フォルダが用意され、そのPCを使うすべてのユーザーが自由にアクセスできるパブリックフォルダとして利用できるようになっている。
ちなみに、Usersフォルダには、
All Users - システムドライブのProgramDataへのシンボリックリンク
Default - 既定で使われるフォルダ
Default User - 上記Defaultフォルダへのジャンクション
といった隠しフォルダが用意され、とにかく、何があってもXPと互換性がとれるように工夫されていることがわかる。
基本的に、自分が扱うすべてのファイルは個人用フォルダ以下に置く。古いプログラムなどで、自分自身が置かれたフォルダに設定ファイルやデータファイル等を配置し、随時、それらのファイルを書き換えるようなものは、システムドライブルートのProgram Filesにはインストールせずに、個人用フォルダ下に適当な名前のフォルダを用意して、そちらにインストールするようにすると、権限等のトラブルが起こることがなくなるので覚えておいてほしい。
ということで、初回は、Windows 7のフォルダ構造について、ザッと見てきた。この連載は、今後、基本的に隔週月2回の頻度で連載していく予定だ。Windows 7の新たな機能を利用した新しいデバイスの紹介や、ベンダー各社の取り組みをインタビューするなど、いろいろな展開を考えている。おそらくWindows 7は、相当長く使われるOSになるだろう。この機会に、その振る舞いを理解しておくと、あとあと役に立つかもしれない。ぜひ、ご期待いただきたい。よろしくどうぞ。