笠原一輝のユビキタス情報局
2画面スマホ「Surface Duo 2」が1月11日から国内販売開始
2022年1月7日 11:15
日本マイクロソフト株式会社は7日、米国で昨年(2021年)9月に発表されたSurface製品のうち、Surface Laptop Studioを除き、既に米国で発売されている製品を、1月11日から国内でも順次販売する計画であることを明らかにした。
この中には、Android OSベースの2画面スマートフォン「Surface Duo 2」も含まれており、ストレージが128GBのモデルが18万4,580円、256GBのモデルが19万6,680円、512GBのモデルが22万880円という価格設定になっている。そうした日本版の発売前に、米国版を入手したので実際に1カ月使ってみてどんな用途に使えそうかチェックしたことをお伝えしていきたい。
Surface Laptop Studioを除く、昨年9月に発表されて未発売だったSurfaceデバイスが一挙登場
今回日本マイクロソフトが発表したのは、昨年の10月に米国で発表された同社のSurfaceブランド製品のうち、これまでに発売されておらず、2022年に入ってからの販売が予告された製品になる。既にSurface Pro 8およびSurface Go 3のWi-Fi版に関しては既に販売が開始されてきたが、今回は残りの製品のほとんどが販売開始になることが明らかにされた。ただし、Surface Laptop Studioは含まれておらず、今後、今年のどこかのタイミングで製品投入が行なわれることになる。
PCという意味ではSurface Pro XのWi-Fi版とSurface Go 3のLTE版(Surface Go 3 LTE Advanced)が追加されている。従来モデルのSurface Pro Xは、すべてのSKUでセルラーモデムが内蔵されており、SIMカード(Nano SIMカード)ないしはeSIMで契約情報を入れることで携帯電話回線を利用してインターネット常時接続が可能になっていた。
セルラーモデムを利用すると、常にPCがインターネットに接続している状態で利用できるため利便性は高いのだが、その代わりに製品自体の価格、Wi-Fiルーターで複数のデバイスを1つの回線でカバーする場合に比べて複数の契約が必要になるので月々の通信費が上がってしまうという弱点がある。
そのあめ、Wi-Fiモデルで十分というユーザーが多いのが現状だ。そこで、Surface Pro XのWi-Fiモデルではセルラー回線の機能を削ってモデム内蔵モデルより若干安めの価格に設定されている。例えば、CPUがMicrosoft SQ2、メモリ16GB、ストレージが512GBというモデルはLTEモデムありが21万9,700円となっており、今回発表された同じメモリ、ストレージのWi-Fiモデルは20万2,180円となっており、17,520円ほど安価に設定されている。
ブランド | スペック(CPU/メモリ/ストレージ/カラー/OS/付属ソフト) | 提供時期 | 参考価格 |
---|---|---|---|
Surface Pro X | SQ1/8GB/128GB/プラチナ/Windows 11 Home/Office Home and Business 2021 | 1月11日発売 | 12万5,180円 |
SQ1/8GB/256GB/プラチナ/Windows 11 Home/Office Home and Business 2021 | 1月11日発売 | 15万0,480円 | |
SQ2/16GB/256GB/プラチナ/Windows 11 Home/Office Home and Business 2021 | 1月11日発売 | 17万5,780円 | |
SQ2/16GB/512GB/プラチナ/Windows 11 Home/Office Home and Business 2021 | 1月11日発売 | 20万2,180円 | |
Surface Go 3 LTE Advanced | Core i3/8GB/128GB/プラチナ/Windows 11/Office Home and Business 2021 | 2月8日 順次出荷 | 10万7,580円 |
Surface Duo 2 | Snapdragon 888/8GB/128GB/グレイシア/Android 11 | 1月11日発売 | 18万4,580円 |
Snapdragon 888/8GB/128GB/オブシディアン/Android 11 | 1月11日発売 | 18万4,580円 | |
Snapdragon 888/8GB/256GB/グレイシア/Android 11 | 1月11日発売 | 19万6,680円 | |
Snapdragon 888/8GB/256GB/オブシディアン/Android 11 | 1月11日発売 | 19万6,680円 | |
Snapdragon 888/8GB/512GB/オブシディアン/Android 11 | 1月11日発売 | 22万880円 |
Surface Duo 2本体だけでなく関連周辺機器も同時に発売される、悩むのはペンの選択
今回の発表の目玉は2画面スマートフォンのSurface Duo 2の日本での販売開始となる。MicrosoftのSurface Duoシリーズは2019年にニューヨークで行なわれた発表会で初代モデルが発表され、2020年に米国など限られた市場で出荷が始まっていた。初代では日本市場には投入されなかったのだが、2代目となったSurface Duo 2では日本で2022年初頭から販売が行なわれる計画であることが明らかにされており、それが今回発売日は1月11日と明らかにされた形だ。
用意されているのは表1に示した5つのSKUで、CPUはすべてSnapdragon 888、メモリ8GB、OSはAndroid 11と同等のスペックになっているが、ストレージが128GB、256GB、512GBの3種類が用意されており、128GBと256GBにはグレイシア(白系の外装)とオブシディアン(黒系の外装)の2色展開で、512GBはオブシディアンのみとなっている。なお、512GBモデルはMicrosoftストアのみでの提供となり、家電量販店などの一般の流通経路では販売されないモデルとなる。
製品名 | 提供時期 | 参考価格(税込) |
---|---|---|
23W USB-C電源アダプター | 1月11日発売 | 4,480円 |
Surface Duo 2バンパー オブシディアン | 1月11日発売 | 4,480円 |
Surface Duo 2バンパー グレイシア | 1月11日発売 | 4,480円 |
Surface Duo 2バンパー ライトブルー | 1月11日発売 | 4,480円 |
Surface Duo 2バンパー ダークオレンジ | 1月11日発売 | 4,480円 |
Surface Duo 2ペンカバー オブシディアン | 1月11日発売 | 7,920円 |
Surface Duo 2ペンカバー グレイシア | 1月11日発売 | 7,920円 |
Microsoft Complete Duo2年 | 1月11日発売 | 23,980円 |
Surface スリム ペン 2 | 発売済み | 15,950円 |
Surface スリム ペン充電器 | 発売済み | 4,290円 |
今回同時にSurface Duo 2用のアクセサリも発売になった。バンパーは本体の傷つきやすい部分である縁を保護するもので、傷が気になるユーザーが選択すべきアクセサリになる。ただし、本体のパネル部分は保護されないので、今後サードパーティーなどから販売される保護フィルムなどと併せて利用するのがいいだろう。
ユニークなのはSurface Duo 2ペンカバーだ。Surface Duo 2では標準で使えるペンとして、既にSurface Pro 8用として先行で発売されている「Surface スリム ペン 2」を利用してペンに対応したAndroidアプリケーション(例えばOneNoteなど)でメモを取ったりすることが可能になっている。
ただし、このSurface スリム ペン 2、マグネットで本体に吸着する仕様になっているのだが、そのままでは充電されない。ところが、Surface Duo 2ペンカバーを装着すると、本体からSurface スリム ペン 2に給電して充電できるようになるのだ、Surface スリム ペン 2をよく使うユーザーであれば、バンパーではなくこちらのオプションを選択しておくといいだろう。
いずれにせよペンはマグネットで本体の外側にむき身でついているだけで、簡単に外れてしまう。このため、鞄の中に入れておくと、確実にバラバラになってしまって、鞄の中をごそごそする羽目になることは必至だ。筆者も、1度ペンを落としてしまい、あれと思ったら近くに落ちていたということを経験している。
1万5千円もするペンをなくすとショックがでかいので、どうせ本体にがっちりつかないなら、ほかのペンでいいやと考えることも可能だ。このSurface スリム ペン 2はMPP(Microsoft Pen Protocol)に対応したペンになるので、MPPに対応したペンなら使える可能性が高い。個人的にはSurface Pro 8に乗り換えて使わなくなったSurface Pro 7以前用のSurfaceペン(1万2,980円)を使っている。Surface Pro 7以前用のSurface ペンはMPPのペンであり、今の所問題なく使えている。
別途単6電池は必要になるが、そうした電池さえ予備を持って歩いていれば充電が必要がないというのもメリットだと感じている。価格は2千円しか違わないので、今からそっちを買うメリットがあるとはあまり思えないが、筆者のようにSurface Pro 7以前のSurfaceペンを使うというのはありかもしれない。もちろんMicrosoftのサポート範囲外で、購入したり使う場合には自己責任となるのでご注意いただきたい。
【お詫びと訂正】初出時に単5電池と書いておりましたが、正しくは単6電池です。お詫びして訂正させていただきます。
なお、Surfaceシリーズではおなじみの追加保険となる偶発的な損傷と拡張保証をセットにしたMicrosoft CompleteのDuo版も2年版(製品に付属の1年保証+1年の拡張保証)の提供も開始される。あくまで筆者個人の意見だが、決して安い買い物ではないため、何かがあったときに保証をしてもらえる拡張保証はモバイル機器には必要だと考えている。
その意味で、Surface Duo 2を購入する場合には導入を検討してみるといいだろう。価格は2万3,980円で、Microsoftストアでの購入時か、一般の流通経路で購入した場合には本体の購入から45日以内なら Microsoft公式ストアから購入できる。以前はオンラインで購入できたが、今はMicrosoftストアに電話して契約する形になるので、Microsoftアカウントにクレジットカードなどをあらかじめ紐付けておくと話早く契約することが可能だ(Surface Duo 2に限らず、Surface全般に関わる話だが)。
2画面だからこそ本当の意味でのマルチタスクでアプリを使える、高い生産性がSurface Duo 2の特徴
そうしたSurface Duo 2だが、製品としてレビューは既に甲斐祐樹氏による記事が非常に詳しく製品を紹介している。率直に言って筆者が付け加えることはほとんどないと思えるくらいのレビューであり、製品の詳細について知りたい場合には、以下の記事をお読みいただきたい。
筆者も甲斐氏と同じく米国版のSurface Duo 2(Snapdragon 888/8GB/256GB/オブシディアン)を入手し、それを12月から1カ月にわたって実際に使用してみた。
上記の甲斐氏の記事に書かれていないことで筆者が気になったのは1つで、OOBE(Out-Of-Box Experience、箱から出した後の体験のこと)の時に、Googleアカウントでアクティベーションできるのはもちろんだが、同時にマイクロソフトアカウントをAndroid OSにアカウントとして登録することができるようになっている。しかし、この時に利用できるのはマイクロソフトアカウントだけで、Microsoft 365 Business/Enterpriseの契約者が利用しているAzure ADは同時に登録できないのだ。
Azure ADの登録をデバイスに許可するには、裏側でIntuneのようなMDM(モバイルデバイス管理)のツールが動作している必要がある。AndroidのOOBEの状態ではそうしたIntuneなどが有効になっていないなどの問題があるのかもしれないが、筆者は自分のビジネスにはAzure ADのアカウントを使っているだけに、それが最初に設定できないのはやや残念だと感じた。ぜひ将来のアップグレードなどでAzure ADアカウントもOOBEから登録できるようにしてほしいところだ。
なお、Microsoftアカウントの登録をスキップしてOOBEのセットアップを終えてから、ほかのAndroidデバイスと同じようにIntune関連のツール(ポータルサイトなど)をGoogle PlayストアからインストールすればAzure ADのアカウントでOutlook、OneDrive、OneNoteなどのツールをAzure ADアカウントで利用することができる。
使い始めてから感じたことは、2画面のスマートフォンは非常に生産が高いなということだ。本誌をご覧いただいている方にはご存じのことかもしれないが、今筆者は2年ぶりに対面で開催されたCES 2022を取材している。そうした取材活動にこのSurface Duo 2を利用して非常に役立っている。
例えば以下のシーンは、12月に京都伏見にある老舗の酒造会社である松本酒造を取材した時にメモを取っている様子だ。上の画面で写真を撮りながら、下の画面ペンを使ってメモを取っている。従来のペン付きスマートフォンOneNoteでメモを取っている時には、カメラで撮影するときにはアプリを切り替えないといけないため、シャッターチャンスが来てもすぐに対応できなかったが、Surface Duo 2を使い出してからは、1画面はメモ、1画面はカメラという使い方ができている。
そしてもう1つのシーンは、まさにCESでの取材シーンで、とある自動車のパーツメーカーを取材しているところだが、左の画面でOtter(AIを利用したクラウドベースの英語の文字起こしツール)を起動して録音しながら文字起こしをして、右側の画面ではOneNoteでメモを取っている。Otterはバックグラウンドに回っても録音と文字起こしを継続してくれるのだが、バックグラウンドや本当に録音して文字起こしできているのか不安になる。しかも、これだと母国語ではない英語で話された内容がすぐに文字になるので、ちょっと聞き逃して文字にできなかったところをさっと文字で確認して手書きメモの方に反映できる。
このように、既にSurface Duo 2は、取材のお供として欠かせないデバイスになりつつある。ただ、正直にいって、スマホはこれ1台で済むのかと聞かれれば、正直そうではないなと感じている。というのも。スマートフォンモードにしたときでも、片手で操作するのはやや横幅がありすぎだからだ。
今筆者はiPhone 13 Proを使っているが、右手で持つと、左端にはギリギリ指が届くが時々押せないときがある。写真で見て分かる通り、片手で操作するのはもはや無理な横幅と言える。例えば、電車に乗っていて、左手でつり革につかまり、右手だけでスマートフォンを操作したいというシーンはままあると思うが、そうした操作にはあまり向いていておらず、やはり両手でもってという形になる。片手で使いたいというスマートフォンの代替にはならないなと感じている。
その意味では、スマートフォンやタブレットなどの間を埋める、第3のデバイス、というのがこのSurface Duo 2の立ち位置かなと筆者は感じている。そうした3番目のデバイスとして選択して、生産性を向上させるツールとして使うのであれば、今の所Surface Duo 2最強のデバイスではないかと感じている。価格は決して安くないが、筆者が現場取材でカメラとメモを同時に起動する、あるいはAI文字起こしツールとメモツールを起動するなどで生産性を向上させたように、ビジネスにこうした機器を利用することで生産性を向上させることができれば、十分ありなのではないだろうか。