PC短評

Ryzen AI搭載で仕事も遊びもこなせる万能14型2in1「HP OmniBook X Flip 14」

日本HP「HP OmniBook X Flip 14-kc(AMD)」(直販価格36万3,000円)

 日本HPの「HP OmniBook X Flip 14-kc(AMD)」は、360度回転する14型タッチディスプレイを搭載したコンバーチブルPC。通常のノートPCスタイルに加えて、ディスプレイを回転させることでスタンド、テント、タブレットと用途に合わせて変形できる。

 今回試用したのは、Ryzen AI 7 450、32GBメモリ、1TB SSDを搭載するパフォーマンスモデル。ディスプレイには2,880×1,800ドットの3K OLEDを採用し、直販価格は36万3,000円である。

360度回転ディスプレイで利用スタイルに柔軟に対応

 本製品最大の特徴は360度回転可能なディスプレイ。一般的なノートブックモードに加えて、キーボード面を下にして動画視聴に適したスタンドモード、省スペースで設置できて放熱にも有利なテントモード、ディスプレイを完全に折り返したタブレットモードで利用できる。

ノートブックモード
動画視聴に適したスタンドモード
設置面積を抑えて放熱にも有利なテントモード
ディスプレイを360度回転させればタブレットとして活用できる

 タッチ操作だけでなくペン入力にも対応。Webページの閲覧や動画視聴だけでなく、手書きメモやイラスト作成などにも利用できる。机ではノートPC、ソファではタブレットというように、場所や用途に合わせてスタイルを変えられるのが便利だ。なお、スタイラスペン「HP 700リチャージャブルマルチペン」(9,900円)は別売りとなっている。便利なアイテムだけにぜひ同梱してほしかったところだ。

 本体サイズは約313×218×14.4mm、重量は約1.4kg。剛性の高いヒンジ機構やタッチ対応ディスプレイを搭載しているぶん、1kg前後の軽量モバイルノートPCと比べれば明確に重い。とは言え、それでも厚みを14.4mmに抑えている。個人的にはバックパックなどに入れるのであれば、毎日の通勤や通学で携帯する分には支障のない重量とサイズだと思う。

本体のフットプリントは約313×218mm
底面には大きく放熱口が開けられている
左側面と右側面。高さは約14.4mm
正面と背面
実測重量は1,422g
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測162g

Ryzen AI 7 450、32GBメモリ、1TB SSDと余裕あるスペック

 パフォーマンスモデルに採用されているプロセッサは「Ryzen AI 7 450」。8コア/16スレッド、最大5.1GHzで動作するプロセッサであり、最大50TOPSのNPUを内蔵している。GPUはプロセッサ内蔵の「Radeon 860M」だ。メモリは32GB(LPDDR5X-8533)、ストレージは1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)を搭載している。

 32GBのメモリ容量は、WebブラウジングやOfficeアプリを利用するだけなら使い切れないが、写真や動画編集などでは非常にメリットがある。複数アプリを同時起動して作業したり、クリエイティブワークにも活用したいユーザーにはもってこいのシステム構成だ。

AMD Ryzen AI 7 450、32GBメモリ(LPDDR5X-8533)、1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)を搭載

 ディスプレイは14型3K(2,880×1,800ドット)OLEDを採用。OLEDならではの高いコントラストで、広色域を備えており、写真や動画などの編集、色調整に適している。輝度は500cd/平方m、色域カバー率はDCI-P3 100%だ。

 また、最大120Hzのリフレッシュレートは3Dゲームの快適さだけでなく、Webページのスクロールやウィンドウ操作でも恩恵を受けられる。加えて、可変リフレッシュレート(VRR)もサポートしている。ディスプレイについてはかなり欲張った仕様だ。

タッチ、ペン対応の14型3K OLEDを搭載
ディスプレイの詳細設定画面。30~120Hzの可変リフレッシュレートに対応しており、一定の省電力性も備えている

 キーボードはバックライト付きの日本語配列。キーピッチは実測19.2mm、キーストロークは実測1.4~1.5mm。打鍵感はしっかりとしたクリック感を備えつつ、普通に底打ちしただけなら打鍵音も低めだ。一部記号キー以外はすべて等幅にそろえられており、フルスピードで入力できるキーボードだと感じた。唯一の難点と言えば上下カーソルキーの奥行きが狭いことだが、軽く触れて位置を確認してから押せば、特に押し間違えることはないだろう。

 一方、タッチパッドは全体が沈み込む従来型のダイビングボード構造を採用。サイズは実測125×80mmと広く、ジェスチャー操作がしやすい。マウスカーソル操作もスムーズで、こちらも扱いやすいポインティングデバイスに仕上がっていると感じた。

キーピッチは実測19.2mm、キーストロークは実測1.4~1.5mm
キーボードはバックライト付き
タッチパッドのサイズは実測125×80mm

インターフェイスはUSB Type-CとType-Aを左右に1つずつ搭載

 インターフェイスはUSB4(Power Delivery 3.1、DisplayPort 2.1、給電対応)2基、USB 3.2 Gen 2 2基、HDMI 2.1、3.5mmコンボジャックを装備する。USB Type-CとType-Aが左右に1つずつ搭載されているので、どちら側からでも充電でき、モバイルディスプレイなども接続できる。高速インターフェイスを左右に振り分けると基板の設計は複雑になるが、ここでコストを削らないところに、HP設計陣のいい意味での生真面目さが感じられる。

右側面にはUSB4(Power Delivery 3.1、DisplayPort 2.1、給電対応)、USB 3.2 Gen 2を用意
左側面にはUSB 3.2 Gen 2、HDMI 2.1、USB4(同)、3.5mmコンボジャックを配置

 ディスプレイ上部には、Windows Helloの顔認証に対応した「5MP IR AIカメラ」とデュアルマイクを搭載。また、物理的にカメラのレンズを遮断するプライバシーカメラスイッチも用意されている。正面から見るとスイッチがやや小さくて見づらいので、色を変えるなど、もう少し目立たせたほうがよいと感じた。

ディスプレイ上部に、顔認証に対応した「5MP IR AIカメラ」とデュアルマイクを搭載

 付属ACアダプタは65W出力のUSB Type-C接続タイプ。GaN(窒化ガリウム)や折りたたみプラグを採用しており、サイズは65×32×32mmと非常にコンパクトだ。その一方、USB Type-Cケーブルは200cmとかなり長い。また、約45分で50%まで充電できる「ファストチャージ」に対応している。これだけコンパクトなACアダプタであれば、わざわざ小型の他社製品を買い足す必要はないだろう。

付属ACアダプタは65W出力のUSB Type-C接続タイプ。GaN採用でコンパクトだ

設定を選べば重量級ゲームもプレイ可能。動画書き出しも実用的

 最後にパフォーマンスを確認する。ベンチマークテストはHPアプリの「パフォーマンスコントロール」を「パフォーマンス」に設定して実施している。

ベンチマークテストは「パフォーマンス」モードで実施

Cinebench 2026

 CPU性能を計測する「Cinebench 2026」では、CPU(Multiple Threads)が3,079pts、CPU(Single Core)が620pts、CPU(Single Thread)が464ptsとなった。

「Cinebench 2026」

CrystalDiskMark

 ストレージはSK hynix製「SK hynix PVC10 HFS001TEM9X173N」(PCIe Gen4 x4接続)を搭載。「CrystalDiskMark 9.0.1」ではシーケンシャルリード7,063.57MB/s、シーケンシャルライト5,901.14MB/sを記録した。写真や動画編集でも、ストレージ速度に不満を感じることはまずないだろう。

「CrystalDiskMark 9.0.1」

ゲーム

 3Dグラフィックス性能については、「3DMark」の「Steel Nomad Light」が2,405、「Solar Bay Extreme」が1,393、「Time Spy」が2,962、「Fire Strike」が6,794となった。ディスクリートGPUを搭載するゲーミングノートPCほどではないが、プロセッサ内蔵GPUの「Radeon 860M」は3Dゲームを動かすのに十分な描画性能を備えている。

「3DMark」のSteel Nomad Lightは2,405
Solar Bay Extremeは1,393
Time Spyは2,962
Fire Strikeは6,794

 さて、ベンチマークスコアだけでは分かりにくいと思うので、実際のゲームとして「サイバーパンク2077」を試してみた。まず2,880×1,800ドット、プリセット「レイトレーシング: 低」では平均11.08fpsとなった。さらに1,920×1,080ドットに解像度を下げても、平均19.86fpsにとどまった。さすがに内蔵GPUでレイトレーシングまで利用するのは荷が重い。

 しかし、1,920×1,080ドットで「Steam Deck」プリセットを選択すると、平均38.70fps、最低30.64fps、最高49.77fpsのフレームレートを記録した。この設定ではAMD FSR 2.1が「バランス」、レイトレーシングとフレーム生成はオフとなる。画質設定を適切に調整すれば、「サイバーパンク2077」のような重量級タイトルでも30fps以上を維持してプレイできるわけだ。

 実際に10分ほどプレイしてみたが、もちろんヌルヌルとは言わないものの、実用的なフレームレートで遊べる。さらに快適さを求めるのであれば、解像度を下げるという手もあるだろう。

「Steam Deck」プリセットを選択すると、平均38.70fps、最低30.64fps、最高49.77fpsのフレームレートを記録

クリエイティブ

 クリエイティブ用途では、「Premiere Pro」で約1時間のフルHD動画を用意し、Adobe Media Encoder 2026からH.264形式で書き出したところ、11分26秒で完了した。1時間の動画を10分台前半で書き出せるのであれば、フルHD動画を日常的に編集する場合でも、現実的な待ち時間と言えよう。

Premiere Proで約1時間のフルHD動画をH.264で書き出したところ11分26秒で完了した

AI

 AI処理性能については、まず「Geekbench AI 1.7.0 Pro」をRadeon 860M、ONNX、DirectMLの組み合わせで実行した。その結果、Single Precision Scoreは6,798、Half Precision Scoreは10,469、Quantized Scoreは5,549となった。

「Geekbench AI」

 次に、Ryzen AI 7 450に内蔵されたNPUの性能を確認するため、UL Procyonの「AI Computer Vision 2.0 Benchmark」をNPUで実行したところ、スコアは1,214となった。Geekbench AIとはベンチマーク自体が異なるため、GPUとNPUのスコアを直接比較することはできない。あくまでも参考値としてご覧いただきたい。

「UL Procyon AI Computer Vision 2.0 Benchmark」

バッテリ

 最後にバッテリ駆動時間を「PCMark 10」のModern Officeで計測したところ、バッテリ残量100%から3%になるまで17時間24分動作した。公称値の最大24時間には届かなかったものの、実使用を想定したテストで17時間以上動作しているのだ。外出先でバッテリ残量を気にせず使い倒せるだけのスタミナ性能を備えていると言えよう。

「PCMark 10 Modern Office」で、バッテリ残量100%から3%になるまで17時間24分動作

1台ですべてをこなしたい人に向く「万能機」

 「HP OmniBook X Flip 14-kc」は、タッチ対応14型3K OLEDと360度回転ヒンジ機構に、高性能なRyzen AI 7 450と32GBの大容量メモリを組み合わせた、汎用性重視のノートPCだ。約1.4kgという重量は1日中持ち歩く用途には向かないが、通勤や通学で1時間ぐらい持ち運ぶのであれば許容範囲だろう。

 1台で仕事、写真や動画編集、コンテンツ視聴、そして3Dゲームまでこなせる活用範囲の広さは、携帯性の弱点を補って余りある。用途ごとに端末を用意するのではなく、すべてをシンプルに1台でまかないたいという方に、本製品はピッタリとはまる「万能機」と言えるだろう。