PC短評

使って再認識したWindowsタブレットの良さ。絶妙スペックの「CHUWI Ubook XPro」

CHUWI Ubook XPro(本体のみ)

 CHUWIから着脱式の2in1「Ubook XPro」が発売された。価格は5万4,900円だ。キーボードを外せば純粋なタブレットとして使え、Windowsタブレットという意味では近年珍しくなってきている。今回サンプルを入手したので、試用した印象をお伝えしよう。

 CHUWIと言えば基本的に10万円以下のデバイスを数多くリリースしているメーカーなのだが、本製品も当然のようにその範疇。あえて「最新」とか「最速」を追求せず、絶妙な“ちょい古”スペックでコストパフォーマンスを追求するのが同社のユニークな点だったりするわけだが、本製品もこの路線を踏襲している。

 たとえば、CPUは2019年第3四半期にリリースしたCore i5-10210Y。4コア/8スレッドで1~4GHz、TDP 7Wというスペックは当然最新でも最速でなく、下手したら最新のローエンド向けCPUであるAlder Lake-N(Intel Processor N100)より遅いのだが、普段遣いには困らないのも確かで、“最新のローエンドより1世代前のミドルレンジ”という絶妙なチョイスだ。

PCMark 10の結果は2,693。今どきのローエンドのN100を搭載したものに劣るが、普段遣いに困る性能ではないのも確か。Webブラウジングなどはキビキビ動作する
Cinebench R23はシングル651、マルチ1,257
3DMarkのNight Raid Scoreは3,200
3DMarkのWild Life Scoreは1,810
3DMarkのFire Strikeは697

 液晶も同様に、2,160×1,440ドット(アスペクト比3:2)表示対応の13型。これがプレミアムラインの「Surface Pro 8」ならより高精細な2,880×1,920ドットだし、安く済ませたいだけなら量産効果が一番現れるであろう1,920×1,080ドットを選ぶだろうが、ちょっと高解像度/使いやすいと価格を両立させたものであろうパネルが採用されている。この絶妙なバランスがいかにもCHUWIらしい。

液晶は映り込みがするものの、視野角や視認性は良い
本体背面はシンプルなデザイン
ワンポイントのWebカメラ

 ちなみにメモリは8GBと必要最小限、SSDは512GBと比較的余裕がある。Web、写真、動画、文書の閲覧に適しているというのは言うまでもないが、ちょっとした文書作成や、簡単なクリエイティブな作業はこなせる印象だ。

 使い勝手のほうだが、本体に内蔵されたU字型のキックスタンドが内蔵されているおかげで設置の自由度は高い。公式で謳われてはいないが、実測約95~165度の間で倒すことができた。本体やキックスタンド部はやや華奢な印象を受けるが、乱暴に扱わない限り問題はないだろう。ちなみに重量は実測で951gとなっている。

キックスタンド内蔵で自立する
約165度倒すことができる
重量は実測で951gとやや重い

 液晶は光沢で映り込みがやや激しいが、視認性や視野角は上々だ。電源ボタンと音量調節ボタン、microSDカードスロットは本体上部に搭載されている。左側面にはUSB 3.0と3.5mmミニジャック、右側面にはDC入力、Micro HDMI出力、USB 3.0、USB Type-Cを搭載。DC入力は丸形で3.5mmと間違いやすいのが難点だが、本製品はUSB Type-CによるUSB PD充電もサポートするので、普段はそちらを使ったほうがいいだろう。無線LANはWi-Fi 5、Bluetooth 4.2までの対応だ。

本体上部は電源ボタン、音量調節、microSDカードスロット
右側面にDC入力、Micro HDMI出力、USB 3.0、USB Type-Cを搭載
本体底面にキーボードカバーのポゴピン
本体左側面にUSB 3.0と3.5mmミニジャック

 なお、負荷時は本体右上後部が熱くなるので、ここにプロセッサが内蔵されていると見ていい。Cinebench R23で負荷かけながらサーモグラフィで見たところ42℃前後だったため、熱くて触れられない程度にはならない。Core i5-10210Yで十分温度は抑えられていると言っていい。

負荷時、右上の温度は約42℃になる

 別売りのキーボードはポゴピンで接続するタイプ。キーピッチは18.5mm確保されており、やや硬めのキーストロークだが、Enterキーの右側に1列のキーがあることを除けば一般的な英語配列で比較的クセは少なく誤操作は少ない。タッチパッドも十分広く取られており、操作感に問題はない。カバー表面はファブリック仕上げやさしい手触りだ。

 4,096筆圧レベル対応のワコム製スタイラスペン「H7」も別売りで用意している。超低遅延などが謳われているのだが、筆者が試した限りではそこまで低遅延というイメージではなかった。細かい描画も不得手という印象が拭えず、あくまでもスケッチもしくはメモ書き用途と割り切ったほうがいいだろう。

別売りのキーボードとペン。キーボードはEnterキーの右側に一列のキーがあるが、その他の配列は一般的
キーピッチはほぼ19mm
タッチパッドは約110×66mmで、比較的余裕のあるサイズ

 ちなみにWindows 11ではタブレット向けへの最適化が結構なされているため、従来のWindows 8や10と比べると操作性はいい。たとえば作業中、タスクバーは常に隠れていて、下からのスワイプインで現れ、そのスワイプインの距離を増やせばスタートメニューが現れるといった仕組み。また、スケーリング100%の状態でも、アイコンの間隔は適切に調節されていて、指で押しやすいようになっている。

 一方でキーボードカバーを付けると即座に普通のWindows 11になる(つまりタスクバーは常時表示/アイコンの間隔が狭まる……)、といった具合だ。タッチキーボードは相変わらず使い勝手イマイチ(たとえばメールアドレス入力欄の時自動的に半角英字にならなかったり、ソフトによっては1文字入力すると英字入力モードが解除されたり)なのだが、全体的には使い勝手が改善されている。

 振り返ってみれば、Windowsタブレットは約10年前となる2013年に8型が大流行した。システム一式で5万円台ながらWindowsがそこそこ快適に動作するBay Trail(特にAtom x5-Z8350)プロセッサの登場に加え、PCでしか動作しないAdobe Flashを使ったゲーム「艦隊これくしょん(艦これ)」が起爆剤となり、市場は大いに盛り上がった。

 しかしそれ以降、各メーカーは安価なタブレットを出すということはめっきり少なくなった。そもそもWindowsのUIがタッチ向けではなかった、Microsoftの「Surface」シリーズというプレミアムラインの立ち上がった、Atomラインナップの縮小……など、さまざまな要因が絡んでいると思われる。

 かくいう筆者も2013年にASUSの「VivoTab Note 8」を買って以降、一切Windowsタブレットを購入しておらずタブレットから離脱した組であるのだが、Ubook XProを使ってみて「キーボードなし」で「キックスタンド内蔵」という、Windowsタブレットならではのフォームファクタの良さに気付かされた。

 たとえば動画観たりする際は立てて、ペンやタッチ操作を中心にする際は横に寝かせて設置。キーボードがあるノートPCよりグッと画面が近くなって、没入感もペン/タッチの操作感も向上する。また、縦にしてA4紙の資料を見る、相手にプレゼンをする際もキーボードは不要なはずだから、タブレットの方がノートPCより理にかなっている。Windows 11におけるタブレット最適化がさらに進んでいけば、まだまだウケる要素があるのではないかと感じたのであった。

音楽制作アプリなどとはなかなか相性がいいかもしれない

【7月25日訂正】記事初出時、キーボード付属としておりましたが、正しくは別売りです。お詫びして訂正します。