瀬文茶のヒートシンクグラフィック

サイズ「スサノヲ」
~10cm角ファン4基の超大型トップフローCPUクーラー



 今回は、2011年2月にサイズから発売された超大型CPUクーラー「スサノヲ(SCSO-1000)」を紹介する。特価で販売されていたため、今回の購入金額は3,980円(×2)だった。

●microATXマザーボードを覆い隠すほど巨大なヒートシンク

 スサノヲの特徴は、なんといってもその大きさである。これまで紹介してきた各社のハイエンドCPUクーラーも大型の製品だったが、スサノヲのヒートシンクはmicroATX規格のマザーボードの大部分を覆うほどであり、他のCPUクーラーと一線を画す大きさである。

 ヒートシンクの構成を確認していこう。CPUから熱を受け取るベース面には、めっきにより鏡面仕上げを施した銅板を備え、そこから12本の6mm径ヒートパイプによって放熱部へと熱を輸送する。放熱部は、大型の放熱フィン42枚で構成されたブロックと、小型の放熱フィン26枚で構成されたブロックの2ブロック構成で、CPUに向かってファンの風を吹き付けるトップフロー型に分類される形状である。

 放熱部には100mm角25mm厚のファンを4基搭載する。各ファンは3pinコネクタにより電源供給を行なう回転数固定タイプのファンだが、専用の4chファンコントローラにより回転数を600rpm±30%~2,000rpm±10%の範囲で回転数を制御可能だ。スサノヲ専用の4chファンコントローラは拡張スロットへ取り付けるタイプのもので、電源は4ピンペリフェラル端子で行ない、回転数検出用の信号ケーブルを備える。

スサノヲのパッケージ
スサノヲ本体
付属品一覧
スサノヲの大きさはmicroATX規格のマザーボードを覆うほど
ベースの表面はメッキ処理によって鏡のような鏡面に仕上げられている
ヒートパイプとベースユニットの接続部。ヒートパイプは1列6本の2段重ねで挟み込まれており、上段の6本は小型の放熱部へ、下段の6本は大型の放熱部へとそれぞれ接続されている
100mm各ファン4基で構成されるファンユニット
専用の4chファンコントローラ

 オリジナルCPUクーラーに和風な製品名をつけることの多いサイズブランドの製品であること考えると、スサノヲというネーミングは、ヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治した神話で知られる三貴神の一柱スサノオノミコト(素戔嗚尊)にちなんだものであることが伺える。このネーミングは、スサノヲが2008年にサイズから発売された「OROCHI(大蛇)」(SCORC-1000)が確立した超巨大ヒートシンクの流れを組む製品であることを意識してのものだろう。

 OROCHIもスサノヲもCPUクーラーの枠を超えるほど巨大なヒートシンクを備える製品だが、ファンレス志向の設計がなされていたOROCHIとは対照的に、スサノヲでは4基のファンを搭載することにより、CPUのみならず周辺コンポーネントの冷却をも担うシステムクーラーとしての役割を付与されている。冷却において両製品の性質は対象的である。


●本体サイズ同様、トップフロー型CPUクーラーの枠を超える冷却性能

 冷却性能のテストについては、これまでと同じ条件で行なった。ファンの回転数については、専用ファンコントローラを使い、最高速時と最低速時のCPU温度をそれぞれ測定した。

 検証結果を見てみると、3.4GHz動作時は最高速時に55℃、最低速時に60℃を記録し、リテールクーラーより20~25℃低い温度をとなった。また、4.4GHz動作時は、最高速時に65℃、最低速時に71℃をそれぞれ記録している。純粋なCPU冷却性能においては、サイドフロー型CPUクーラーに及ばない製品の多いトップフロー型CPUクーラーながら、今回の測定結果から伺える冷却性能はなかなか優秀である。

 動作音については、100mm角のファンであっても2,000rpm近い回転数になると風切り音も大きく、高速設定時の動作音はかなりうるさく感じる。一方で最低速時の動作音は極めて小さく、ほとんど気にならないレベルだった。ファンの回転数はファンコントローラで自由に設定可能なので、トレードオフの関係にある静音と冷却のバランスをユーザー側で制御できる。

 CPU周辺コンポーネントとの干渉については、意外とクリアランスが確保されているため、先にメモリやビデオカードを取り付けてしまえば干渉問題についてはクリアできる場合が多そうだ。一方、問題となるのはケース側との干渉問題である。microATXマザーボードを覆うその幅もさることながら、全高がトップフロー型CPUクーラーとしては非常に高い160mmもあるため、ケースのサイドパネルとの距離についても注意が必要である。

 スサノヲは、実際にPCに組み込んで利用しようとした場合、かなり環境を選ぶことになる製品である。実用性を考えてパーツを選択すればまず選ばれることの無さそうな製品だが、スサノヲのように何か突き抜けた方向性を持った製品を敢えて活用することは、自作PCならではの楽しみである。見かたによれば、スサノヲは「CPUクーラーを中心にその他のパーツ構成を考える自作」のやりがいがある希有な製品なのである。

 近年はCPUクーラーの形状も洗練され、どこか似通った形状の製品が市場に溢れて久しい。このような市場だからこそ、今後もスサノヲのような尖った製品の登場に期待したい。

【グラフ】温度測定結果

サイズ「スサノヲ」製品スペック
メーカーサイズ
フロータイプトップフロー型
ヒートパイプ6mm径×12本
放熱フィン42枚 + 26枚
サイズ210×210×160mm(幅×奥行き×高さ)
重量1,565g
付属ファン100mm角ファン×4
電源:3pin(専用ファンコントローラ付属)
回転数:500rpm±30% ~ 1,200rpm±10%
風量:50.05 ~ 200.21CFM
ノイズ:9.42 ~ 37.69dBA
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1