瀬文茶のヒートシンクグラフィック

ZALMAN「CNPS12X」
~3連ファンを備える大型サイドフローCPUクーラー



 今回はZALMANのフラッグシップCPUクーラー「CNPS12X」を紹介する。購入価格は9,980円だった。

●3連ファンを備える大型サイドフローCPUクーラー

 CNPS12Xは、特徴的な円形状の放熱部に3基の120mmファンを搭載し、350W以上のCPUに対応すると謳う、ZALMAN製CPUクーラーのフラッグシップモデルである。現時点でTDP 350WのCPUは存在しておらず、この数値は発熱が増加するオーバークロック状態での使用を意識していることが伺える。

 まずはヒートシンクの構成を確認していこう。CNPS12Xのベース面は、ヒートパイプが直接CPUに接地する仕様を採用している。ZALMANが「W-DTH (Whole-Direct Touch Heatpipe)」と呼ぶこのベース面では、間隔を詰めて配置された6本の6mm径ヒートパイプがCPUから直接採熱し、放熱部へと熱を伝える。放熱部は56枚の放熱フィンからなる2ブロックの放熱フィンブロックで構成され、フィンブロックの中心と両端にファンを配置する。

 CNPS12Xが備える3基のファンは、半透明な羽根と青色LEDを備える120mm径ファンである。放熱ブロックに直接固定された専用品であるため、市販のケースファンなどとの交換はできない。3基のファンは纏めて1系統の電源コネクタから給電を行なう。給電用コネクタの形状はPWM制御非対応の3ピンタイプを採用する。

CNPS12Xパッケージ
CNPS12X本体
付属品一覧
ヒートパイプの間隔を詰めて配置したW-DTHベース
円形状の放熱部と3連ファン

 CNPS12Xは、ZALMANらしい円形状の放熱部が目を引くCPUクーラーだ。「CNPS9900シリーズ」を始めとする、かつての同社製フラッグシップモデルで伝統的に採用されてきた形状なのだが、従来の製品が円形状に変形させたヒートパイプに放熱フィンを配置することで、放射状にフィンを配置した放熱ブロックを形成していたのに対し、CNPS12Xではサイズの異なるフィンを階段状に配置することで円形状の放熱ブロックを形成している。外観は似ているが、従来のフラッグシップモデルとは似て非なる設計である。

 ZAMANの持つ技術の粋を集めたフラッグシップモデルらしく、組立の精度は高く、表面に施された光沢のあるニッケルめっきも美しい。一般的なヒートパイプより50%以上熱伝導率を向上させたという「コンポジットヒートパイプ」や、他社製品より間隔を詰めてヒートパイプを配置したW-DTHベースなど、使用している素材や技術を強くアピールしているのも印象的だ。


●美しい仕上げが印象的なCPUクーラー

 冷却性能のテストについては、これまでと同じ条件で行なった。CNPS12Xには抵抗ケーブルが同梱されているが、それだけでは回転数を約100rpm引き下げる効果しかないため、ファンスピードをマザーボードのユーティリティソフト「ASUS Fan Xpert」で回転数を60%(約860rpm)に電圧制御した際の結果を合わせてグラフ化した。

 検証の結果を見てみると、3.4GHz動作時はフル回転の1,200rpmで56℃、860rpm動作時は58℃という結果となった。リテールクーラーに対しては22~24℃の差をつける結果だ。4.4GHz動作時では1,200rpm動作時に67℃、860rpm動作時は70℃という結果となった。良好な結果ではあるのだが、350W対応を謳う製品としては少々物足りないように感じる。テストに使ったLGA1155 CPUのヒートスプレッダ面積が小さかったことで、CNPS12XのW-DTHベースがマイナスに働いた可能性もありそうだが、そうだとするとプラットフォームによって得手不得手があるということになる。

 動作音については、フル回転時の1,200rpm動作では、それなりのノイズが発生している。140mmファンの1,200rpmに比べれば静かだが、静音とは言えず、少々耳障りである。電圧制御で860rpmに抑えるとノイズはかなり減少するのだが、同時に青色LEDの輝度も減少してしまう。光り物としての魅力と静音動作がトレードオフなのは残念なところである。

 その他、気になった点としては、メモリとヒートシンクのクリアランスが少ない点だ。ヒートスプレッダを含めた全高が40mmを超えるメモリの場合、内側のスロットには取り付けられない可能性が高い。メモリとのクリアランスについては、ほとんどの大型サイドフロークーラーが抱える問題であるが、CNPS12Xの場合、ファンの位置をずらして取り付けるなどの回避策が取れないため、あらかじめ注意しておいた方が良いだろう。

 冷却性能については少々スッキリしない結果となったが、きわめて美しく仕上げられたヒートシンクが印象的なCPUクーラーだった。CPUクーラー本来の目的はもちろんCPUの冷却だが、洗練された外観を愉しむのもまたヒートシンクの愛で方の1つである。CNPS12Xとサイドパネルにアクリルの窓が付いたPCケースを組み合わせ、見た目にこだわったPCを作ってみるのも面白そうだ。


ZALMAN「CNPS12X」製品スペック
メーカーZALMAN
フロータイプサイドフロー型
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン56枚×2ブロック
サイズ132×151×154mm(幅×奥行き×高さ)
重量1,000g
付属ファンΦ120mmファン×3
電源:3ピン
回転数:1,200rpm±10%(抵抗ケーブル利用時:1,100rpm±10%)
ノイズ:24dBA±10%(抵抗ケーブル利用時:22dBA±10%)
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1