西川和久の不定期コラム

ASUS「TransBook T100 Chi」

~Atom Z3775搭載10.1型フルHDの2-in-1!

TransBook T100 Chi

 ASUSは2月13日、12.5型/10.1型/8.9型で2-in-1のタブレットを発表した。各モデルは1月7日(現地時間)の米国での記者会見で明らかにされたが、その日本国内版が投入されるわけだ。2月20日よりの順次発売に先駆け、10.1型が編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

Atom Z3775と10.1型IPS式フルHDを搭載した2-in-1

 13日に発表があったのは、12.5型2,560×1,440ドット(WQHD)または1,920×1,080ドット(フルHD)でCore Mを搭載した「TransBook T300 Chi」、10.1型1,920×1,080ドット(フルHD)でAtom Z3775を搭載した「TransBook T100 Chi」。そして、8.9型1,280×800ドットでAtom Z3775を搭載した「TransBook T90 Chi」の3モデル。いずれもBluetooth接続のキーボードドックが付属する2-in-1だ。

 このキーボードドックは、Surface Proのように本体側にスタンドがあり、単に付くだけのタイプではなく、磁石でくっつき、折り畳み可能なヒンジを搭載。合体時にはクラムシェルのように運用できるタイプとなる。特に膝上での使用にこだわりを持つユーザーには、ポイントが高いと言えよう。

 今回送られてきたのは、10.1型の「TransBook T100Chi」。主な仕様は以下の通り。

ASUS「TransBook T100Chi」の仕様
SoCAtom Z3775(4コア4スレッド、クロック 1.46/2.39GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2W)
メモリ2GB(LPDDR3-1066)
ストレージeMMC 64GB
OSWindows 8.1 with Bing(32bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Micro HDMI
ディスプレイ光沢タイプIPS式10.1型フルHD(1,980×1,080ドット)、10点タッチ対応
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS
インターフェイスMicro USB 3.0、Micro USB 2.0、microSDカードスロット、音声入出力、カメラ(前面200万画素/背面500万画素)。キーボードドック側に充電用のMicro USB 2.0
センサー加速度センサー、ジャイロスコープ、環境光センサー、磁気センサー
サイズ/重量(本体)265×174.5×7.2mm(幅×奥行き×高さ)/約570g
サイズ/重量(キーボード)265×174.5×6mm(同)/約510g
サイズ/重量(ドッキング時)265×174.5×13.2mm(同)/約1,080g
バッテリ駆動時間約8.7時間
そのほかOffice Home and Business 2013搭載
価格73,800円前後

 SoCはAtom Z3775。4コア4スレッドで、クロックは1.46GHzから最大2.39GHz。キャッシュは2MBでSDPは2W。最近よく見かける8型タブレットに搭載されているのは、Atom Z3735F(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz/1.83GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2.2W)なので、若干性能は上となる。メモリは、SoC自体は4GB(2ch)対応だが、2GBに抑えられている。ストレージはeMMCで少し余裕のある64GB。OSは32bit版のWindows 8.1 with Bing。

 グラフィックスはSoC内蔵Intel HD Graphics。外部出力用としてMicro HDMIを装備する。ディスプレイは、光沢タイプでIPS式の10.1型。解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。10点タッチ対応だ。

 インターフェイスは本体側に、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS、Micro USB 3.0、Micro USB、microSDカードスロット、音声入出力、カメラ(前面200万画素/背面500万画素)。Micro USBは充電を兼ねている。キーボードドック側はMicro USBのみ。本体との接続はBluetoothなので、このMicro USBポートは充電専用となる。

 センサーは、加速度センサー、ジャイロスコープ、環境光センサー、磁気センサーを搭載している。

 バッテリ駆動時間は約8.7時間。キーボードドックとは物理的に接続していないため、PCとしては本体側のバッテリのみで駆動する。

 サイズと重量は、本体が265×174.5×7.2mm(幅×奥行き×高さ)/約570g。キーボードドックが265×174.5×6mm(幅×奥行き×高さ)/約510g。ドッキング時が265×174.5×13.2mm(幅×奥行き×高さ)/約1,080g。

 ドッキング時に1kgを少し超えているのは惜しいものの、そこそこ軽量級に仕上がっている。価格は、Office Home and Business 2013搭載で73,800円前後。米国における1月の記者会見では下位モデルに相当する1GB/32GBのモデルもあったが、国内では見送られたようだ。

前面。パネル中央上に200万画素カメラ。Windowsボタンは無い
左側面/下側面(本体)。左側面に上から音量±ボタン、Windowsボタン、スピーカーのメッシュ、音声入出力、Micro USB 2.0(充電用兼)。下側面はキーボードドック用の凹が2つ見える
右側面/上側面(本体)。右側面にmicroSDカードスロット、Micro USB 3.0、Micro HDMI、スピーカーのメッシュ。上側面に電源ボタンとLED
斜め後ろから。本体側右上に500万画素カメラ。トップカバーも含め、全体的に質感はなかなか良い。キーボードドックの左側面に充電用のMicro USBがある
キーボードドック。アイソレーションタイプのBluetoothキーボード。左上に電源スイッチなどがある。キーピッチは若干狭いものの、いびつな部分は無く、入力しやすい
キーボードドック裏。4つのゴム足のみ。ヒンジの部分が可動式になっているのが分かる
ドッキング部分。Bluetooth接続で物理的なコネクタは無く、キーボードドック側に2つの凸と本体側に2つの凹があるだけ
キーピッチは実測で約18mm
付属のACアダプタ。サイズは50×42×25mm(同)、重量65g。入力100~240V、出力5V/2A
重量/単独。実測で575g
重量/キーボードドック。実測で534g
重量/ドッキング時。実測で1,110g。

 筐体は液晶パネルのフチ以外、ブルーが少し混じったブラックに細かいラメが入った感じだ。さすがに数万円の8型タブレットと比較するとかなり高級感がある。また、約1kgにも関わらずズッシリ重く感じる。見た目の雰囲気と重量がアンバランスなのかも知れない。

 本体側の前面には、液晶パネル中央上に200万画素カメラ。左側面に音量±ボタン、Windowsボタン、スピーカーのメッシュ、音声入出力、Micro USB 2.0(充電用兼)、右側面にmicroSDカードスロット、Micro USB 3.0、Micro HDMI、スピーカーのメッシュ。上側面に電源ボタンとLED、下側面にはキーボードドック用の凹が2つ。背面は500万画素カメラを配置。ドッキング時、充電用のMicro USBポートが下側にくるのでケーブルが邪魔にならない。

 キーボードドック側は左側面に充電用のMicro USBがあり、バッテリの残量は後述する「Chi Keyboard Power」でモニタリング可能だ。アイソレーションタイプで主要キーのキーピッチは約18mm。いびつな並びも無いので快適に入力できる。タッチバッドは物理的なボタンがない1枚プレート型。小型のBluetoothキーボードとしてはクオリティが高い方だろう。

 付属のUSBタイプのACアダプタは、サイズ50×42×25mm(同)、重量65g。入力100~240V、出力5V/2Aと小型だ。

 光沢ありのIPS式10.1型フルHD液晶パネルは、さすがに同じIPS式でも安価な8型に搭載しているものと比較して、明るさ・コントラスト・発色全てワンランク上の雰囲気。10点タッチも良好に反応する。ただSurface 2の10.6型フルHDに慣れている筆者にとっては(意外とこの0.5型差は大きい)、若干デスクトップは文字などが細かく見にくい感じもするが、この点は個人差だろう。

 発熱や振動、ノイズに関しては、試用した範囲では全く気にならないレベルだった。サウンドは、本体の左右にスピーカー用のメッシュがあり、それなりにステレオ感が得られる。十分とは言わないまでも、パワーや音質もサイズを考えれば頑張っている方だ。

 カメラは一般的なWindowsマシン搭載機と同レベル。競合機種と変わらないので特にデメリットにはならないと思われる。

 気になる点は、スリープからの復帰時、キーボードやタッチパッドが一瞬反応しない点だが、これは本機に限らずBluetoothタイプ全般の話だ。もう1点は、パネルが冒頭の写真の角度で最大なこと。膝の上などで作業する時は、少し角度が足りない可能性がある。この辺りは量販店などで確認して欲しい。

 同社はかなり前から10.1型のノートPCや2-in-1を開発しているだけあって、「TransBook T100 Chi」にもそのノウハウが活かされている印象を受ける。このクラスでパッケージから取り出した時、「お! カッコいい!」と思ったのは久々だ。ただ2-in-1とは言え、Atom搭載機で価格73,800円前後は少し強気の設定だが、価格優先で作られたPCより、明らかに満足度は高いと思われる。

Atom Z3735F搭載機より全体的に高性能

 OSは32bit版のWindows 8.1 with Bingを搭載している。メモリは2GBだが、ストレージが64GBあるので、多くの8型タブレットより余裕のある運用が可能だ。「powercfg/a」で確認したところInstantGoに対応している。

 初期起動時のスタート画面は3画面。ASUSアプリ以降がプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルな構成だ。

 ストレージはeMMCで64GBの「Samsung MCG8GC」を搭載し、C:ドライブのみの1パーティションで約48GBが割り当てられ空きは44GB。またBitLockerで暗号化されている。回復パーティションは約10GB。元々容量が少ないだけにこの割り当ては少し痛い。

 Wi-Fi、Bluetooth共にBroadcom製が使われ、キーボードドックは「ASUS T100CHI DOCKING」、そのほかセンサーやTPM 2.0搭載なのが分かる。

スタート画面1。Windows 8.1標準
スタート画面2。ASUSアプリ以降がプリインストール
スタート画面3。ASUSアプリ以降がプリインストール。Microsoft OfficeとASUS Installはデスクトップアプリだ
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプルな構成
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはeMMCで64GBの「Samsung MCG8GC」。Wi-Fi、Bluetooth共にBroadcom製が使われ、キーボードドックは「ASUS T100CHI DOCKING」となっている
C:ドライブのみの1パーティションで約48GBが割当てられ、またBitLockerで暗号化されている。回復パーティションは約10GB

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「ASUS LifeCam」、「ASUS PhotoDirector」、「ASUS PowerDirector Mobile」、「ASUS WebStorage」、「Flipboard」、「LINE」、「NAVITIME」、「TripAdvisor Hotels Flights Restaurants」、「Twitter」、「Zinio Reader」など。同社のアプリが含まれているものの、一般的な構成だ。

アプリ画面1
アプリ画面2
アプリ画面3

 デスクトップアプリは、「ASUS Install」、「ASUS Live Update」、「ASUS On-Screen Display」、「ASUS Screen Saver」、「Chi Keyboard Power」、「eManual」、「Splendid Utility」、「WebStorage」、「WinFlash」と言った同社のお馴染みのツール系と、「i-フィルター6.0」、「Realtek Audio Manager」、「マカフィーリブセーフインターネット」、そして「Office Home and Business 2013」となる。

 ストレージが64GBと言うこともあり、16または32GB搭載機より、Windowsストアアプリも含め若干多めにインストールされている。

ASUSインストールウィザード
ASUS LIVE UPDATE
ASUS Splendid Technology
ASUSオンスクリーン・ディスプレイ
Chi Keyboard Power
Realtek HDオーディオマネージャ

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 4.2。プロセッサ 6.8、メモリ 5.5、グラフィックス 4.4、ゲーム用グラフィックス 4.2、プライマリハードディスク 7.15。PCMark 8 バージョン2は1208。CrystalMarkは、ALU 26400、FPU 22901、MEM 23089、HDD 12380、GDI 5343、D2D 3580、OGL 3637。参考までにGoogle Octane 2.0は4,233だった。

 8型タブレットなどでよく見かけるAtom Z3735Fより、どのテストもスコアが高いのが分かる。プロセッサ 6.8、メモリ 5.5、プライマリハードディスク 7.15もあれば、通常用途なら十分な性能だ。

 BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残0%で46,203秒/12.8時間。何と12時間を超えてきた。いつもの5%では約8.5時間だった。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.2。プロセッサ 6.8、メモリ 5.5、グラフィックス 4.4、ゲーム用グラフィックス 4.2、プライマリハードディスク 7.15
PCMark 8 バージョン2は1208
BBench。バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果。バッテリの残0%で46,203秒/12.8時間
CrystalMark。ALU 26400、FPU 22901、MEM 23089、HDD 12380、GDI 5343、D2D 3580、OGL 3637

 以上のようにASUS「TransBook T100Chi」は、10.1型IPS式のフルHD液晶ディスプレイ、Atom Z3775、2GB/64GBを搭載した2-in-1だ。BBenchで12時間超えとバッテリ駆動も余裕がある。また合体時は、折り畳み可能なヒンジでクラムシェルとして運用できるのも魅力的だ。

 激安の8型タブレットが溢れる中、Office搭載とは言え、7万円超えは少し高い気がするが、筐体の高級感も含め、安価な8型タブレットでは満足できないユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/