■西川和久の不定期コラム■
9月22日、日本ヒューレット・パッカードはワークステーション向けのプロフェッショナル液晶ディスプレイを4機種発表した。全モデル、ホワイトLEDバックライトとIPSパネルを採用しているのが最大の特徴となる。今回はその中からフラグシップとなる27型の「ZR2740w」タイプが送られてきたので、試用レポートをお届けする。
●27型IPSパネル2,560×1,440ドット
9月22日に発表されたのは、2,560×1,440ドット表示の27型「HP ZR2740w」(65,100円)、1,920×1,200ドット(WUXGA)表示の24型「HP ZR2440w」(39,900円)、1,920×1,080ドット(フルHD)表示の21.5型「HP ZR2240w」(26,250円)、1,600×900ドット表示の20型「HP ZR2040w」(19,950円)の4機種。価格も結構お手頃だ。
すべてIPSパネルで、ホワイトLEDバックライトと言うのは冒頭に書いた通りであるが、インターフェイスの仕様が若干異なり、全機種DisplayPortとDVIは標準搭載しているものの、24型と21.5型ではこれに加えてHDMI、20型ではミニD-Sub15ピンを装備している。今回届いたのは27型の「HP ZR2740w」だ。主な仕様は以下の通り。
【表】HP「ZR2740w」の仕様 | |
最大解像度 | 2,560×1,440ドット |
スクリーンサイズ | 27型(非光沢/IPS/白色LEDバックライト) |
色度域 | NTSC比72% |
視野角 | 水平178度/垂直178度 |
応答速度 | 14ms(中間色12ms) |
輝度 | 最大:380cd/平方m、最小:50cd/平方m |
コントラスト比 | 1,000:1 |
入力信号/端子 | Dual Link DVI-D×1、DisplayPort×1、USB 2.0 Hub×4、電源入力 |
スピーカー | 無し |
最大消費電力 | 120W(工場初期設定95W) |
サイズ/重量 | 646×235×440~540cm(幅×奥行き×高さ)/10.5kg |
直販価格 | 65,100円 |
スクリーンサイズは27型。解像度は一般的なPC用としては最大級の2,560×1,440ドットとなる。パネルは非光沢のIPSだ。従って映り込みは無く、視野角も水平/垂直ともに178度と広い。特にサイズが大きいと中央から普通に見ても両サイドはそれなりに角度が付き、視野角が広いのは重要だろう。輝度は50cd/平方mから380cd/平方mと十分。色度域NTSC比72%、応答速度14ms(中間色12ms)、コントラスト比1,000:1は無難な値と言える。
実際の発色は派手でもなく、地味でもなく、何かに色が偏っているいるわけでもなく、割と素直。デジカメで言うところの「素材性重視」と言った感じだ。エッジは若干強めに出る。
インターフェイスは、Dual Link DVI-D×1、DisplayPort×1、USB 2.0×4、USBアップリンク×1、電源入力。中間クラスの2機種にHDMI付きの3系統あるだけに、少し物足らない感じがするのが残念なところ。またDisplayPort使用時、ビデオカードやOS、アプリケーション側が対応していれば10億色(10bit)表示が可能となる。
チルト角は-5~+35度、高さは10cm、そしてスイベル範囲は-45~+45度。参考までに扉の写真は最大の45度回した状態で撮影している。パネルが大きいので、動き出すまでは若干力が必要ではあるが、一旦動き出すとスムーズでかつがたつくこともなく、決めたい位置にパシッと止まる。加えてピボット回転にも対応し、1,440×2,560ドットの縦表示も可能だ。
サイズは646×235×440~540cm(幅×奥行き×高さ)、重量は10.5kgと、液晶ディスプレイとしては重量級。簡単に移動できる重さではないものの、持った感じは意外とそこまで大変と言う雰囲気でもなかった。
デザインはほとんど全てがつや消し黒。フチの側面だけメタリックなシルバー。ご覧の様に裏側もスッキリしているので、何処に設置しても合いそう。フチの幅も20mmと、27型としては薄い方だ。
各コネクタのほとんどは裏側の下側面に主電源スイッチ、電源コネクタ、DisplayPort、DVI-D、USBアップリンク、USB 2.0×2の順で配置されている。加えて左側面にはUSB 2.0×2のポートがある。
余談になるが、量販店などで見かけるPC用の液晶ディスプレイは、ツヤあり黒など、どちらかと言うと家電っぽいデザインの物が多く、個人的にはもう少し落ち着いた(?)事務機器っぽい雰囲気のものが欲しく、セカンドディスプレイにデルの「U2211H」を購入した経緯がある。このHP「ZR2740w」も同じことが言え、事務機器っぽい雰囲気。こちらの方が落ち着いた感じで好みとの人も意外と多いのではないだろうか。
スイッチ類は、電源コネクタの横に主電源、そしてパネル右下に、入力切替/輝度±/電源スイッチと並んでいる。輝度に関しては、最大時と最小時に電源LEDが点滅する。また同時に発表された他の機種は不明だが、このZR2740wにはOSDが無く、下位モデルに付属する輝度/コントラスト/色温度などを調整可能な「HP Display Assistant」も無い。以前「HP ZR30w プロフェッショナル液晶モニタ」を試用したときも同様で驚いたのを思い出した。プロフェッショナル仕様として割り切った設計になっているのだろう。
付属するカラープロファイル「HP_ZR2740w.icm」は、掲載したチャートからも分かるように、sRGBと完全一致。従ってsRGB専用ディスプレイとなる。ただしより正確さを求めるのであれば、ソフトウェア・キャリブレーションと併用した方がいい。
少し使いにくい点としては、輝度調整が視覚的に数字で現れないため、例えば日中は明るめに設定、夜は暗らめに設定したいケースでは、勘に頼るしかなく、確実に同じポジションに戻せないこと。最上位なだけに、入力系統の少なさも含め惜しい部分だ。
●より取り扱を安易にする技ありのアイディアケーブルマネージメントは去年新しくなった方式をそのまま引き継ぎ、スタンドに空けられた穴にケーブルを通す形となっている。裏側はそれなりの大きさだが、アタッチメント式になっている表側のスリットは結構狭く、あまり多くのケーブルを通すのは難しそうだ。ただ、本機に関してはDVI-DとDisplayPortの2系統だけと言うこともあり、問題にならないだろう。
特筆すべきはスタンドの固定方法だ。これまでいろいろなディスプレイを試用したが、スタンドがなかなか固定できなかったり、逆になかなか外れなかったりと、結構苦労するものが多かった。
しかしこのディスプレイは、固定時には本体の凹に合わせてスタンドの凸を差込、下側のロックでパシッと止まる。逆に外す時は下側の長細いロックボタンを押せばワンタッチで楽々外すことが可能だ。通常このクラスのディスプレイを出したり片付けたりすることはあまり無いとは思うが、嬉しい改善ポイントと言えよう。
もう1つ興味深いポイントとして、製品情報やシリアル番号などが書かれたカードが、左側面USBポートの裏にポケットに入る様な形で収納され、スッと引き出すことができる。例えばサポートを受ける時など、裏側に回って記述を探したりする必要も無く、非常に楽できる。これは筆者もはじめて見るケースで、なかなかアイディアものだ。
付属品は、ソフトウェアCD、DisplayPortケーブル、DVIケーブル、USBケーブル、電源ケーブルと、一式揃っている。従って購入後、即使用可能。また、付属のソフトウェアCDには、PDF化されたマニュアルとICMファイルなどが含まれている。
同社のPCを所有していないため、今回試せなかった機能として「HP Power Assistant 2.0」が挙げられる。これはPC及びディスプレイの消費電力をモニタリングして節電やバッテリ駆動時間を調整するソフトウェアで、今回のディスプレイにも対応。消費電力の表示や輝度もアプリケーションから設定できる。詳細は同社が公開しているYouTubeの動画を参考にして欲しい。
以上のようにZR2740wは、27型で非光沢のIPSパネルを搭載し、解像度は2,560×1,440ドットの液晶ディスプレイだ。高さ、チルト、スイベルに加え、このサイズでのピポット回転にも対応しているのは嬉しいポイント。
プロフェッショナル仕様と言うこともありOSDが無く、本体だけでは輝度以外の調整ができない点は残念だが、sRGB(できればソフトウェア・キャリブレーションと併用)での使用であれば特に問題とならないだろう。安価で大型IPSパネル搭載モデルを探している人の候補になりえる1台だ。