西川和久の不定期コラム

Apple「Thunderbolt Display」
~ドッキングステーション的機能を持つ27型ディスプレイ



 7月20日に発表されたThunderbolt対応の27型ディスプレイ。当時出荷は6~8週間となっていたものの、最近出荷が始まり、いろいろなところで見かけるようになった。短期間であったが、実機を試用することができたのでレポートをお届けしたい。

●Thunderbolt対応27型ディスプレイ

 ここ何回かThunderbolt接続の外部ドライブをご紹介したが、今回はディスプレイの登場だ。27型のIPSパネルを採用し、解像度はフルHDより更に高い2,560×1,440ドット。この1点だけでもかなりハイエンドなことがわかる。従来Apple「LED Cinema Display」というモデルがあったが、それのThunderbolt対応版と説明すればわかりやすいだろうか。HDMIやDVI-Dなど、PCが接続可能な汎用入力端子は一切無く、Thunderboltを搭載したMac専用のディスプレイだ。主な仕様は以下の通り。

【表】Apple「Thunderbolt Display」の仕様
解像度2,560×1,440ドット(16:9)
スクリーンサイズ27型(光沢/IPSパネル)/LEDバックライト
視野角水平178度/垂直178度
輝度375cd/平方m
コントラスト比1,000:1
応答速度12ms
対応OSMac OS X 10.6.8以降
入出力端子FaceTime HDカメラ/マイク、Thunderboltケーブル内蔵
(ユニバーサルMagSafeケーブル込み/最大85W)、
USB 2.0×3、FireWire 800×1、Gigabit Ethernet、
セキュリティポート、AC電源コネクタ
スピーカー2.1スピーカーシステム(49W)
最大消費電力250W(MacBook Proを充電中のThunderbolt Display)
省エネルギーモード時2W以下
サイズ/重量650mm×491mm×207mm(幅×奥行き×高さ)/10.8kg
直販価格84,800円

 液晶パネルはLEDバックライト式27型の光沢タイプ。IPS方式で水平178度/垂直178度の広い視野角が得られる。特にパネルのサイズが大きいと、普通に真ん中に座って眺めるだけでも、両端はそれなりに角度が付くため、IPSか否かでは、パッと見た感じに差が出る。解像度は冒頭に書いたように2,560×1,440ドットの16:9。一般的なPC用として最大級の解像度となる。

 輝度375cd/平方m、コントラスト比1,000:1、応答速度12ms。この辺りの数値は同クラスと比較してもあまり差が無く平均的な数値だろう。

 対応OSは、Thunderbolt搭載と言うこともあり、“Mac OS X v10.6.8以降”となっている。これ以前のバージョンはそもそもThunderbolt発表前で、対応する術が無い。一方、現在販売されているMacはLion(10.7以降)が搭載済み。Lion発表直前のThunderbolt搭載機に関しては10.6のSnow Leopardになっているわけだが、このバージョンからもわかるように問題無く使用することができる。

 入出力端子に関しては、まず本体側にコネクタ接続のACケーブル、そしてコネクタがなく、「MagSafe兼Thunderboltケーブル」となっている。後者のケーブルは本体側は1本のケーブルが直付けで、先端で2つに別れ、片方がThunderboltコネクタ、もう片方がMagSafeコネクタになっている。従ってMacBook Pro/Airでこのディスプレイを使用する時は、外部電源アダプタは必要が無く、スッキリした配線となる。

 ただし、MacBook ProはMagSafeコネクタとThunderboltコネクタがボディの左サイドにあるので安易に取り付けられるが、MacBook Airの場合、ボディの左サイドにMagSafeコネクタ、右サイドにThunderboltコネクタがあり、両サイドへケーブルを引っ張らなければならず、見栄えも含め取り回しはイマイチだ。

 その他のポート関係は、USB 2.0×3、FireWire 800、GbEがリアパネル左下側に配置。加えて、FaceTime HDカメラ/マイク、49Wの2.1スピーカーシステム、環境光センサーを内蔵している。ThunderboltがPCIブリッジ的に使われているため、「LED Cinema Display」には無かったFireWire 800とGbEに対応しているのが特徴的だ。ハードウェア的にはやる気になればeSATAやUSB 3.0にも搭載可能だと思われるが、残念ながら非対応。サウンドやカメラ/マイクは内部的にはUSB接続となっている。

 サイズは650×207×491mm(幅×奥行き×高さ)、重量10.8kg。パッケージも含めパソコン周辺機として考えるとかなり大きくそして重い。編集部から届いた時も、何が来たのか!? と思った程だった。直販価格は84,800円。

 なお、Thunderbolt非対応のMacもまだそれなりの数が使われているため、Apple「LED Cinema Display(27インチ)」も84,800円で併売している。スペック的には、パネルの解像度などは同じ、ケーブルはMini Displayポート、ユニバーサルMagSafe(最大85W)、USB 2.0。ポートがUSB 2.0×3、マイクロフォン付きiSightカメラ、セキュリティポート、2.1chスピーカーシステム内蔵(49W)と、多くの部分が共通だ。

正面。写真からは分かりにくいが、上のフレーム中央にFaceTime HDカメラがある裏。電源ケーブルはコネクタ。Thunderbolt兼MagSafeケーブルは直付け、その下にセキュリティポート裏(コネクタ部)。左からUSB 2.0×3、FireWire 800、Thunderbolt、Gigabit Ethernet
側面。マイナス5度からプラス25度の調整が可能。写真はプラス25度の状態付属品は電源ケーブル、簡易マニュアル、付属品では無いがThunderbolt兼MagSafeケーブルのコネクタ部最近のディスプレイと比較してパネルの厚み2cmは意外と厚めだ
約45度斜めから。IPSパネルなのでこの程度であれば全く問題無い裏から斜めに見たところ。全てのMacと同一の仕上げで非常にシンプルでカッコいいMacBook Airに接続。1本のケーブルから分岐しているThunderboltコネクタとMagSafeコネクタを接続すればドッキング完了となる

●使用感など

 本来なら、Thunderboltを搭載した新型Mac miniを所有しているので、それでテストしたいところだが、既にメインマシンとして使っているため、いろいろなケーブルで周辺機を接続し机に鎮座。ディスプレイに付属しているThunderboltケーブルでは、撮影用のテーブルから長さが足らず、と言ってマシンを動かすと処理が出来ない……と、悩んだ末、最近友人が11型のMacBook Airを購入したので、それを借りてテストした。

 仮にMac mini(もしくはiMac)でテストした場合、ケーブルの先で分岐しているMagSafeケーブルは使い道がなく、逆に邪魔になってしまう。コスト高になるだろうが、できれば本体側をコネクタ式にし、Thunderbolt→Thunderboltケーブルか、Thunderbolt→Thunderbolt & MagSafeケーブルが交換できるようにして欲しいところ。またケーブル自体も結構太めだ。もう少し細くなると更に扱い易くなるだろう。

 いきなり辛口のコメントから始まってしまったが、他の部分はなかなか良い。IPSで視野角も広く、アルミニウムを使ったボディは質感はもちろんデザインもGood。パネルが光沢なので好き嫌いはあるかも知れないが、明るさ、発色、コントラストも申し分ない。何よりスイッチに相当する部分が一切無いのはある意味驚きで、MacBook AirのThunderboltコネクタへケーブルを接続した瞬間、画面が立ち上がる。もちろんスタンバイ時、待機電力は発生するが、仕様によると2W以下となっている。

 意外なのはフチ側面の厚みが2cmと割とあること。最近LEDバックライト式のディスプレイは薄型が流行っているので、もう少し薄いかと思っていた。この辺りはコストと強度のバランスか。斜めから見ると結構分厚い感じがする。

「このMacについて」で、Apple Thunderbolt Displayが認識されている。解像度は2,560×1,440ドットsRGBとの比較(外側がThunderbolt Display)。色域は完全にsRGBをカバーしているのがわかるAdobe RGBとの比較(内側がThunderbolt Display)。色域はAdobe RGBと比較してかなり狭い。基本的にsRGB用のディスプレイと言える
ディスプレイ/Thunderbolt Display。ディスプレイ側にOSDなどはなく、ここで明るさなどを調整するサウンド/ディスプレイオーディオ。どうやら内蔵しているサウンド関連はUSB接続のようだネットワーク。本来MacBook Airには無い、EthernetとFireWireが追加されている
システム詳細/USB。Thunderbolt DisplayがUSB Hubになっていることがわかるシステム詳細/グラフィックス。コネクタ的にはThunderboltだが、内部的にはDisplayPort接続となるシステム詳細/ネットワーク環境。Display EthernetとDisplay FireWireの項目がある

 前後のチルトは、マイナス5度からプラス25度の調整が可能で、ガタつく感じも無く、スムーズにセットできる。ただし左右と上下は固定で動かない。机や椅子の高さによっては調整しきれないケースも考えられる。

 スイッチが無いので、OSDに相当する部分も無く、全てのコントロールはMac側のコントロールパネルから操作することになる。もちろん表示だけでなく、サウンド、ネットワーク、FireWireなども、自動的に追加され、即使用可能な状態。ドッキングステーションと同じ扱いも可能だ。加えてディスプレイ側のThunderboltポートは、例えば少し前にご紹介したRAIDシステムなど、外部ドライブも接続できる。USB 2.0では帯域幅が足らず接続出来ないI/Oが対応可能になるのが、Thunderboltの醍醐味と言えよう。

 色域に関しては、ColorSyncユーティリティでThunderbolt DisplyのプロファイルとsRGB/Adobe RGBの比較を掲載したのでご覧頂きたい。カバー率からも分かる様に基本的にsRGB専用となる。

実際の試用環境。11型のMacBook Airに対してかなり大きい。写真や動画を再生するとサウンドも含め大迫力!

 ディスプレイの発色や概観に付いては、以前「LED Cinema Display」を少し触ったことがあったので、ある程度事前に予想できたが、実際使って驚いたのはサウンドだ。MacBook ProやAir同様、ボディをうまく鳴らし、ミッドレンジを中心に無理のない範囲で上下に伸びている。質の良いフルレンジスピーカーを聞いている感じだ。イコライザを触らずにこの状態。ベーシックな部分がしっかりしているのが分かる。出力も十分以上にあり、27型のサイズと合わせて動画は大迫力で再生できる。

 このことからもわかるように、Thunderbolt Displayは、ディスプレイが比較的大きいiMacや、ディスプレイを自由に選べるMac miniより、もともと搭載しているポートの数も少なく、ディスプレイのサイズが限定されているMacBook ProやMacBook Airを主なターゲットにしているのだろう。従って先に書いた二股のケーブルの件は、同社としては折込済みと言ったところか。

 欠点としては、PCも含めThunderbolt搭載Mac以外は使用できず、汎用性が全く無いこと。例えばHDMI入力が別途1ポートでもあれば、これだけ画面が大きくサウンドも良いディスプレイへAV機器を接続できるだけに少し残念なところ。

 以上のようにApple「Thunderbolt Display」は、27型のIPSパネルを採用し、映りはもちろんデザイン的にも優れた液晶ディスプレイだ。加えてMacBook Airなどへ接続することによって、ビデオ、USB 2.0、FireWire 800、Gigabit Ethernet、オーディオ、カメラ……と、さまざまなデバイスを簡単に追加することができるドッキングステーション的な役目もする。

 例えば(スペック上少し違うものの)同クラスのディスプレイとして最近発表されたHPのディスプレイと比較しても2万円程度の差であり、ルックスや追加されるファンクションを考えれば決して高価と言うわけでも無い。この記事を見てグッと来た人は是非ショップなどで実際に確認して欲しい。