西川和久の不定期コラム

日本HP「Pavilion Desktop PC h8-1090jp」
~Core i7-990X EEを搭載可能なフラグシップモデル



 以前に日本ヒューレット・パッカード(日本HP)のオーソドックスなミニタワーPC、「p7-1040jp」の試用レポートを掲載したが、今回は同じ夏モデルでも最上位の「h8」シリーズをご紹介する。

 このシリーズは数モデルあるが、今回試用したのはCore i7-990X Extreme Edition(EE)、RAID 0構成のSSD、そしてGeForce GTX 460ビデオカードを搭載する、ハイエンド構成で爆速の1台だ。


●全てを詰め込んだミニタワーPC

 「h8」シリーズは、大きく分けて「h8-1090jp」、「h8-1080jp」、「h8-1060jp」の3モデルが用意される。大きな違いは搭載するプロセッサで、順にIntel Core i7-990X EE/970/960、Core i7-2600/Core i5-2400/2405S、AMD Phenom II X6 1100T/1065Tとなることだ。つまり各モデル、ベースとなるプラットフォームが完全に異なる。

 今回ご紹介するh8-1090jpは、中でも最上位モデルとなるフラグシップ・ミニタワーPCだ。BTOでいろいろな組合せに対応しているが、今回届いたマシンの主な仕様は以下の通り。

【表】HP「Pavilion Desktop PC h8-1090jp」の仕様
CPUCore i7-990X Extreme Edition
(6コア/12スレッド、3.46GHz/Turbo Boost 3.73GHz、キャッシュ12MB)
チップセットIntel X58 Express
メモリ12GB(PC3-10600 DDR3 SDRAM)/6スロット空き3/最大24GB
SSD160GB×2(RAID 0)
光学ドライブBlu-ray Discドライブ
OSWindows 7 Ultimate SP1(64bit)
グラフィックスNVIDIA GeForce GTX 460/2GB、DVI-I×2、Mini HDMI×1
ネットワークGigabit Ethernet
拡張スロットPCI Express x16×2、PCI Express x4×2、PCI Express x1×1
その他USB 2.0×10(前面4/天面2/背面4)、USB 3.0×2、
IEEE 1394、eSATA×2、15in1メディアスロット、
S/PDIF(光)出力(背面)、音声入出力、
地上・BS・110度CS対応Wチューナ
サイズ/重量175×415×412mm(幅×奥行き×高さ)/約10.98kg
価格289,800円から

 プロセッサはCore i7-990X Extreme Edition。6コア、12スレッド、クロック3.46GHzでTurboBoost時3.73GHzまで上昇する。キャッシュ12MB。型番からも分かるように第1世代Core iプロセッサであるが、このCore i7-990X Extreme Editionだけは別格で、コア数スレッド数、クロック数共に現時点でも最速のプロセッサだ(但しTurbo Boost時だけCore i7-2600の3.8GHzに劣る)。

 チップセットはIntel X58 Express。SLIと3Way-SLIに対応したハイエンド向けのチップセットで、PCIeの上限は36レーン。メモリアクセスはトリプルチャンネルで、DDR3-1066をサポートし、h8-1090jpでは6つのメモリスロットがある。今回のマシンでは4GB×3の計12GB搭載済だ。最大で24GBに対応する。OSは64bit版のWindows 7 Ultimate SP1。

 ストレージは、Intel Rapid Storage Technologyを使用した、RAID 0(ストライピング)の構成で160GBのSSDを2基搭載している。光学ドライブはBlu-ray Discドライブ。

 グラフィックスは第1世代Core iプロセッサなので、CPUには内蔵せず外付けのGPUとなる。とは言え、もともとIntel HD Graphics(2000/3000)は、このクラスのプロセッサ性能には見合わないため、例え内蔵していても外部GPUを使うことになるだろう。

 h8-1090jpでは、NVIDIA GeForce GT 550Ti(1GB)、NVIDIA GeForce GT 530(2GB)、NVIDIA GeForce GTX 460(2GB)、AMD Radeon HD 6850の4つのGPUを選択でき、今回はNVIDIA GeForce GTX 460(2GB)が入っていた。CUDAコア336、DirectX 11に対応したミドルクラスとなる。出力は、DVI-I×2とMini HDMI×1の計3系統。Mini HDMIからHDMIへの変換コネクタも付属する。

 拡張スロットはPCI Express x16が2基、PCI Express x4が2基、PCI Express x1が1基。ビデオカードでPCI Express x16が1つを使用するのはもちろんだが、オプションの構成によってほかの拡張スロットの空き状態は異なる。

 有線LANはGigabit Ethernet対応。その他のインターフェイスも豊富でフロントには15in1メディアスロット、USB 2.0×4、天面にはヘッドフォン出力/マイク入力、リアにはUSB 3.0×2、IEEE 1394、eSATA×2、ライン出力、リアスピーカー出力、サイドスピーカー出力、センター/サブウーファー出力、ライン入力、マイク入力、S/PDIF(光)出力、そして地上・BS・110度CS対応Wチューナを備える。

 特筆すべきは天面にあるUSB 2.0ポートとオーディオ入出力だ。写真からも分かるように、全てのコネクタが上部にある電源スイッチの後ろの壁面に配置され、iPhoneやiPodなど、ポータブルオーディオを天板に置きつつ、接続しやすい場所となっている。なかなかうまい天板の活用方法だ。

 サイズ175×415×412mm(幅×奥行き×高さ)、重量約10.98kgと、p7-1040jp(175×410×388mm、約9.6kg)と比較して若干大きく重たくなっているが、上記のように内容はギッシリ。十分許容範囲だ。電源ユニットは余裕のある600Wを搭載している。

外観。フロントがピアノブラック、周囲がブラックとシンプルでクールなボディフロントパネルを開けると15in1メディアスロットとUSB 2.0×4が見える上に電源スイッチ。後ろ向きにUSB 2.0×2、ヘッドフォン出力、マイク入力
背面。電源ユニットのファンは内部下向きに付いているため外からは見えない背面のインターフェイス部。USB 3.0×2、W地デジチューナ、Mini HDMI、DVI-I×2、音声入出力、Gigabit Ethernet、USB 2.0×4、IEEE 1394、eSATA×2、S/PDIF(光)出力内部/全体。CPUファンが正面から後ろへ風が流れるようになっている
フロント側にSSD×2を搭載。メモリスロットは6つの内3つを使用NVIDIA GeForce GTX 460、USB 3.0、地デジチューナが入っているので一杯だ電源ユニットは600Wが使われている
キーボード、マウス共に無線式。DVI-I→VGA変換コネクタも付属地デジ関連の付属品。B-CASカード、リモコン、アンテナコネクタ×2、音声ケーブル、Mini HDMI→HDMI変換コネクタ電源が入ると赤く光るイルミネーションを搭載。なかなか綺麗だ
GeForce GTX 460。ファンは1基で2スロットを占有するUSB 3.0のインターフェイスカード。ルネサス製のコントローラが使われている地デジチューナ。標準サイズのB-CASカードが入るため、カードが約4.5cm後ろへはみ出る

 ケースはp7-1040jp同様、フロントが光沢のあるピアノブラック、他の部分はブラックと、シンプルでクールな雰囲気を持つ。少し違う点は、p7-1040jpは最上部に15in1メディアスロットがあったが、h8-1090jpでは、スライド式のパネルの中にUSB 2.0×4と共に隠れている点、そして電源ONで赤いラインのイルミネーションが輝くことだ。イルミネーションに関してはこの有無で性能が上がるわけでは無いものの、結構かっこいい。

 内部は、2スロットを占有するGeForce GTX 460と、オプションのUSB 3.0×2カード、そして地デジWチューナでほぼ満載状態だ。またCPU用のファンがフロントからリアへ風が流れるよう、CPUに対して縦に付いている。これも新ケースの特徴で「フロントパネルの下部から吸気して、本体背面に排気する仕掛け」になっているためだ。ちなみに電源ユニットもリア側にはファンが無く、ユニットの下側に付いている。

 ファンはGPUも含め計4つ。もう少し煩いかと思ったが、それほどでもなく、ケースに耳を近付けても若干音がする程度に収まっている。

 付属のキーボードとマウスは無線式。これはオプションであり、通常はどちらもUSB接続となる。その他、DVI-D→VGA変換コネクタ、B-CASカード、リモコン、アンテナコネクタ×2、音声ケーブル、Mini HDMI→HDMI変換コネクタも付属する。

 少し気になるのはB-CASカードだ。スロットに差し込んだ状態で約4.5cmも後ろにはみ出る。以前も該当機種でこの件を指摘したことがあるが、当時はminiB-CASカードも無く、ある意味仕方ない部分でもあった。しかし今はminiB-CASカードを使えばもっとコンパクトに収まる。次期モデルでは対応をお願いしたい。

 BTOで選べる項目は、OSにWindows 7 Home Premium/Professional/Ultimate。どれも64bit版でSP1適応済みだ。プロセッサはCore i7-960/970/990X EE、メモリは6GB~24GB、ストレージはHDD全て7,200rpmで、500GB~2TB/1~2TB RAID0もしくはSSD 80GB、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ/BD-ROMドライブ/BDドライブが選択可能。GPUに関しては先に書いた通り。価格は10万円前後からとなる。なお、今回の届いたマシンは、SSD 160GB×2のRAID 0構成だ。

●パワフルでストレスゼロ

 OSは64bit版Windows 7 Ultimate。SP1が適応済みだ。ただしInternet Explorerは8のままになっている。メモリが12GBと言うこともあり、動きにはかなり余裕がある。VMwareなどの仮想マシンやかなり大きいデータを処理しない限り、一般的に使い切ることは無いだろう。

 ストレージは、RAID 0化された2基のSSDを搭載している。ドライブはIntel SSDSA2M160G2が2台。RAID 0(ストライピング)なので、実際の容量は倍となる上、単独で使用するより速度も向上する。RAIDボリュームのパーティションは、C:ドライブ約287GB、D:ドライブ約10GBの2パーティション。ただしD:ドライブはリカバリー用なので、実質はC:ドライブのみとなる。初期起動時の空き容量は約248GBだ。光学ドライブはBD-RE BH30Lだった。

 その他のデバイスとしては、IEEE 1394にVIA 1394 OHCI Compliant Host Controller、GbEにIntel 82567V-2 Gigabit Network Connection、そしてグラフィックスにNVIDIA GeForce GTX 460が見える。USB 3.0のコントローラはルネサス製だ。

OSは64bit版Windows 7 Ultimate SP1。地デジチューナ内蔵なので「StationTV X」のショートカットがあるRAIDボリュームはIntel SSDSA2M160G2×2の構成。光学ドライブはBD-RE BH30L。ディスプレイアダプタはNVIDIA GeForce GTX 460C:ドライブ約287GB、D:ドライブ約10GBの2パーティション。但しD:ドライブはリカバリー用なので実質はC:ドライブのみ

 プリインストールのソフトウェアは前にご紹介したp7-1040jpとほぼ同じで、「HP Support assistant」、「HP Power Assistant」、「HP LinkUp」、「リカバリマネージャ」、「CyberLink Power 2 Go」、「CyberLink Label Print」、「CyberLink PowerDVD 10」、「Skype」、「Norton オンラインバックアップ30日間無料版」、「Symantec Norton Internet Security 2011 60日版」。加えてTV視聴/録画用の「StationTV X」となる。割とあっさりしている内容だが、このクラスを購入するユーザーには初心者ガイド的なソフトウェアは不要だろう。なおBTOでMicrosoft OfficeやAdobe製品も選択可能だ。

 夏モデルの特徴である、統合サポート環境の「HP Support Assistant」、省電力を支援する「HP Power Assistant」、HP版リモートデスクトップ機能の「HP LinkUp」に関しては、p7-1040jpの記事を参考にして欲しい。特にこのマシンは、消費電力が高いのでHP Power Assistantを効果的に使いたい。

 搭載している地デジチューナはダブルタイプだ。従って録画しながら他のチャンネルを観たり、2チャンネル同時に録画(この時は他のチャンネルは観れない)したりすることが可能だ。なお、「StationTV X」に関しては今後、DLNA対応、高画質10倍W録画、録画した番組の編集機能の対応が予定されている。

Intel Rapid Storage TechnologyNVIDIAコントロールパネルCyberLink Media Suite
CyberLink PowerDVD 10StationTV X/番組表StationTV X/通常表示

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.4。プロセッサ 7.8、メモリ 7.8、グラフィックス 7.4、ゲーム用グラフィックス 7.4、プライマリハードディスク 7.9。最高スコアが7.9なので、全ての項目が最高スコアに近いレベルだ。高いレベルでバランスが良く、何をしても全くストレスを感じさせない環境だ。(少し大げさだが)起動もシャットダウンも瞬時に近い。ただし、ストレージがSSD×2のRAID 0で約287GBしか容量が無いため、できれば1TB以上のHDDをデータ用として追加したいところだ。

 CrystalMarkは、ALU 65715(64127)、FPU 60804(56338)、MEM 53347(46803)、HDD 36333(14452)、GDI 16717(17173)、D2D 14638(2124)、OGL 39626(2947)。カッコ内はp7-1040jp/Intel Core i5-2310(2コア/4スレッド、2.9GHz/TB 3.2GHz、キャッシュ 6MB)の値だ。かなり差があることが分かる。価格差もそれなりにあるが、これなら納得できるだろう。

Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.4。プロセッサ 7.8、メモリ 7.8、グラフィックス 7.4、ゲーム用グラフィックス 7.4、プライマリハードディスク 7.9CrystalMark。ALU 65715、FPU 60804、MEM 53347、HDD 36333、GDI 16717、D2D 14638、OGL 39626

 このように、HP「Pavilion Desktop PC h8-1090jp」は、ミニタワーPCと言う限られた空間へ、最高速のCPUやSSDを搭載できるほか、USB 3.0、eSATA、W地デジチューナなど、無線LAN以外ほぼ全てのデバイスを詰め込める、非常にパワフルなマシンだ。新デザインによるケースもシンプルでクール。魅力的なマシンに仕上がっている。

 メーカー製で、パワー、そして多くのデバイスを搭載した1台を探しているユーザーにとって候補になりえる逸品と言えよう。