■西川和久の不定期コラム■
日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は、コンシューマ向けタワーPC「HP Pavilion Desktop PC」の夏モデルを6月1日に発表した。フラグシップ・ミニタワー「h8」、スリム・プレミアム「s5」、バリュー・ミニタワー「p7」の3種類ある中で、今回はp7の試用レーポートをお届けする。
●必要十分の機能を備えるバリュー・ミニタワーPCこれまで同社のバリュー・ミニタワーPCは、「p6745jp」、「p6740jp」、「p6720jp」と3種類あり、p6745jpのみSandy Bridge対応だった。今回発表された「p7」シリーズが後継機に相当する。
この「p7」シリーズは大きく分けて2タイプあり、1つはチップセットがIntel H61ベースの「p7-1020jp」。プロセッサはPentium G620、Core i3-2100、Core i5-2400Sを選ぶことができる。もう1つはチップセットがIntel H67ベースの「p7-1040jp」。なお、H61はH67の廉価版に相当し、SATA 6Gbpsが無く、メモリスロットが2つまでとなる。
それぞれのモデルにBTO可能なHP Directplusモデルと、仕様が固定の量販店モデルが用意されている。今回届いたのは、「p7-1040jp」のHP Directplusモデルだ。評価機の主な仕様は以下の通りである。
CPU | Intel Core i5-2310(2コア/4スレッド、2.9GHz/TB 3.2GHz、キャッシュ6MB) |
チップセット | Intel H67 |
メモリ | 4GB(PC3-10600 DDR3 SDRAM)/4スロット空き2/最大16GB |
HDD | 500GB(7,200rpm) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 7 Home Premium SP1(64bit) |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 2000、HDMI出力、DVI-D |
ネットワーク | GbE |
拡張スロット | 1×PCI Express x16、3×PCI Express x1、1×PCI Express Mini Card |
その他 | USB 2.0×8(前面4/背面4)、15in1メディアスロット、ヘッドフォン出力(前面)、マイク入力(前面)、ライン出力(背面)、リアスピーカー出力(背面)、サイドスピーカー出力(背面)、センタ-/サブウーファー出力(背面)、ライン入力(背面)、マイク入力(背面)、S/PDIF(光)出力(背面) |
サイズ/重量 | 175×410×388mm(幅×奥行き×高さ)/約9.6kg |
価格 | 74,865円 |
プロセッサはIntel Core i5-2310。2コア4スレッド、クロック2.9GHzでTurbo Boost時3.2GHzまで上昇する。キャッシュは6MBだ。BTOでの組合せなどは後述するが、このプロセッサは選べる中では下から2番目となる。
チップセットはIntel H67。2つのSATA 6Gbpsと4つのSATA 3Gbpsポートに対応する。メモリは4スロットあり、2GB×2の計4GB。最大16GBまで。ただBTOのメモリを見ると、2GB×1/4GB×1/4GB×2/4GB×3/4GB×4しかなく、この2GB×2の構成は選べない。メモリ1枚ではシングルチャネルアクセスになってしまうので、2GB×2の構成はぜひとも用意して欲しいところだ。OSは64bit版Windows 7 Home Premiumで、。SP1適応済みだ。
グラフィックスはCPU内蔵Intel HD Graphics 2000。ノートPC用の第2世代Coreプロセッサと違いデスクトップ用は、オーバークロック対応のK型番以外は、全てIntel HD Graphics 2000となる。3000との主な違いはシェーダープロセッサ数が12基でなく6基である点。出力はHDMIとDVI-D。DVI-D→VGA変換コネクタも付属するのでミニD-Sub15ピンでの接続も可能だ。
HDDは7,200rpmの500GB。BTOで選べるHDDは全て7,200rpmタイプだ。光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブとなる。
その他インターフェースとしては、前面はUSB 2.0×4、15in1メディアスロット、ヘッドフォン出力、マイク入力。これらは通常スライド式のパネルの下に隠れている。背面は、USB 2.0×4、ライン出力、リアスピーカー出力、サイドスピーカー出力、センタサブウーファー出力、ライン入力、マイク入力、S/PDIF(光)出力。このクラスなら標準でUSB 3.0に対応して欲しいところか。
拡張スロットは、PCI Express x16、3×PCI Express x1、1×PCI Express Mini Card。今回の構成では全て空いているる。有線LANはGbEを搭載。
サイズは175×410×388mm(幅×奥行き×高さ)、重量約9.6kg。タワーPCとしては小さい方で、机の下はもちろん、机の上に置いてもさほど邪魔にならない。電源ユニットは300Wのものが使われている。
価格は組合せで大幅に変わるが、今回のパターンでは74,865円となる。
BTOでは次のようなものを選択できる。OSは32/64bit版Windows 7 Home Premium~Ultimate(SP1適応済み)。プロセッサはCore i3-2100、Core i5-2310、Core i5-2405S、Core i7-2600。メモリは最大16GBまで。HDDは7,200rpmの320GB~2TB。SSDは80GB/160GB。増設ドライブにも対応する。光学ドライブはDVD-ROM/DVDスーパーマルチドライブ/Blu-ray Discドライブ。
グラフィックスは内蔵Intel HD Graphics 2000に加え、Radeon HD6450、NVIDIA GeForce 405、GeForce GT 420、GeForce GT 530の選択ができる。先に指摘したUSB 3.0についてはPCI Express x1を使い2ポート背面に増設可能となっている。
量販店モデルは、64bit版Windows 7 Home Premium SP1、Intel Core i5-2500、メモリ4GB、HDD 1TB、DVDスーパーマルチドライブ、内蔵Intel HD Graphics 2000の構成となる。
幅175mm。これなら机の上に置いても邪魔にならない |
夏モデルから新しくなったケースは、非対称デザインで、光沢のあるものになった。フロントは光沢のあるピアノブラック、周囲はシルバー、その他はブラックと、落ち着いているが、ピアノブラック部分は触ると指紋が目立つ。
上部に集中している操作系は、机の下に置く場合に、一番上に電源ボタンと15in1メディアスロットがあるので使いやすく、普段はパネルの下に隠れたUSB 2.0×4などのポートはホコリを被ることもない。もちろん机の上に置いても、高さ388mm、幅175mmなので、ちょうど20型程度の液晶ディスプレイと同じ高さで扱いやすく、邪魔もにならない。
ファンはCPUに1つ、リアに1つ、電源ユニットに1つの計3つ。フロント側には無い。音などノイズに関しては、耳をケースにあてれば小さく「フォーン」と聴こえるが、通常は問題無いレベルとなっている。
電源が300Wなので、あまりパワーが必要な外部GPUは搭載できないものの、BTOで用意されているクラスなら問題無い。ゲーマー仕様的な拡張は難しいが、HDDの増設も含め、一般的な拡張であれば、電源/ケース共に対応できる。逆にこれ以上の拡張を望むとフルサイズのケースが必要となるだろう。
●夏モデルに追加された機能OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。IEは9ではなく8のままだ。初期起動のデスクトップはショートカットが2つだけと非常にシンプル。タスクトレイには、「Intel Graphics and Media Control Panel」、「IDT HD Sound」、「HP Power Assistant」(セットアップして起動すれば)が常駐する。
HDDは500GB/7,200rpm/キャッシュ16MBの「ST3500418AS」。光学ドライブは「HP CDDVDW TS-H653T」を搭載している。HDDのパーティションは、Cドライブ約457GB、Dドライブ約8GBの2パーティション。Cドライブの空きは434GBだ。ただし、Dドライブはリカバリ用なので、実際ユーザーが使えるのはCドライブのみとなる。その他のデバイスとしては、15in1メディアスロット、Realtek PCI Express GBE Family Controllerが見える。
起動時のデスクトップ。OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。IEは8のままだ | HDDはST3500418AS(500GB/7,200rpm/キャッシュ16MB)、光学ドライブはHP CDDVDW TS-H653T | HDDのパーティション。Cドライブ約457GB、Dドライブ約8GBの2パーティションだが、事実上Cドライブのみ |
プリインストールされているソフトウェアは、「HP Support assistant」、「HP Power Assistant」、「HP LinkUp」、「リカバリマネージャ」、「CyberLink Power 2 Go」、「CyberLink Label Print」、「CyberLink PowerDVD 10」、「Skype」、「Norton オンラインバックアップ30日間無料版」、「Symantec Norton Internet Security 2011 60日版」など。
中でもこの夏モデルから追加された自社製アプリケーションとして、HP Support assistant、HP Power Assistant、HP LinkUp、この3つが挙げられる。
HP Support assistantは、トラブルシューティングや、よくある質問などへ素早くアクセスできる総合サポートツールだ。起動時のトップ画面は管理/トラブルシューティング/詳細/サポート情報の入手と4つに別れている。例えばトラブルシューティングでは、カテゴリがストレージデバイス/全体的な仕様/グラフィックス、ビデオ、およびディスプレイ/ネットワークおよびインターネット接続/オーディオおよびサウンド/保証規定およびサービス/パフォーマンスおよびソフトウェア/コンピュータの周辺機器/電源、サーマル、および機械と、この9つに分類され、それぞれ該当する情報となどが表示される。
HP Power Assistantは、省電力効果を高める電源管理ツールだ。PCの電源スケジューリングを平日/週末、5分単位の時間設定、バランス/高パフォーマンス/省電力、オン/スタンバイ/休止状態など、複数の組合せで設定できる。また、節電量を金額ベースで表示できるのも分かりやすくて面白い。
HP LinkUpは、簡単に説明するとHP版リモートデスクトップ機能だ。Windowsに搭載するリモートデスクトップは、サーバー側はProfessonal以上のエディションが必要なため、多く使われているHome Premiumでは機能しない。HP LinkUpはエディションとは無関係に利用できる便利なものだ。一般的にサーバーと呼ばれているPCをSenderと呼び、クライアント側の名称はViewerとなっている。Viewerは同社の夏モデルにバンドル、Senderはサイトからダウンロードする。またこの時、Senderは同社のPCに限らず他社製品でもOKだ。
試しにThinkPad x201iをSenderにして、Pavilion Desktop PC p7-1040jpをViewerにしたのが下の画面キャプチャとなる。Sender側のAeroはOFFになるが、SenderとViewer間でコピー&ペーストが出来るなど、速度、使い勝手共になかなか良い。セットアップも簡単。ログインはSenderのユーザー名/パスワードとなる。出来ればViewerも他社製品OKで公開して欲しいところだ。
HP Support Assistant | HP LinkUp Sender | HP LinkUp Viewer |
HP Power Assistant使用の詳細情報 | スケジュール | オプション |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.7。プロセッサ 7.4、メモリ 5.9、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス 4.7、プライマリハードディスク 5.9。総合4.7はゲームグラフィックスのスコアであり、ネットや一般的な業務とは無関係。その他の部分はプロセッサ以外バランスが取れている。プロセッサ7.4に関しては十分な性能だ。
CrystalMarkは、ALU 64127、FPU 56338、MEM 46803、HDD 14452、GDI 17173、D2D 2124、OGL 2947。Windows エクスペリエンス インデックスと同様にALUとFPUは結構な値となっている。ほかはSandy Bridge仕様としては平均的。実際、短期間であるがいろいろ操作しても何も不満は無かった。
Windows エクスペリエンス インデックス。総合 4.7。プロセッサ 7.4、メモリ 5.9、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス 4.7、プライマリハードディスク 5.9 |
CrystalMark。ALU 64127、FPU 56338、MEM 46803、HDD 14452、GDI 17173、D2D 2124、OGL 2947 |
以上のようにHP「Pavilion Desktop PC p7-1040jp」は、Sandy Bridge仕様、新型で邪魔にならないあまり大きくないシンプルなケース、BTOも豊富で組合せによっては結構安い。メーカー製でかつ、好みの構成でミニタワーPCが欲しいユーザーにとって候補となりえる1台だろう。