西川和久の不定期コラム

7型液晶搭載でフォトフレームにもなる
エプソン「E-600」



E-600

 最近巷ではデジタルフォトフレームが流行っている。写真もここまで来たかと言う雰囲気だが、インクジェットプリンタにデジタルフォトフレームが付いた機種が登場した。エプソンの“カラリオミー”「E-600」だ。非常にコンパクトにまとまったこのE-600。量産試作機が届いたので、さっそく早速レポートをお届けする。


●E-600の特徴
E-530

 従来このカラリオミーは「E-530」という、231×149×169mm(幅×奥行き×高さ)/約2.4kgのコンパクトなインクジェットプリンタのみのラインナップだった。パーソナル用途でハガキやL判へ印刷するプリンタとしては非常に使いやすいものだったが、コンパクトさ故、ユーザーは「使わない時、何処かへしまってしまう」ことが多いとわかり、それを何とかしようと企画開発されたのが、この「E-600」だ。

 特徴としては、大画面「7型WVGA(800×480ドット)カラー液晶」搭載し、操作用はもちろん12種類のスライドショーでデジタルフォトフレームとしても機能する。これによりプリンタとして使わない時でも写真を観て楽しむことができるようになった。もちろん印刷に関してもメディアをカードリーダへ入れ、リモコンで選択、そしてプリントと3ステップでできる簡単さが売りだ。

 更に最大9,999枚まで対応する日付や月による検索、オリジナルフレームによる演出、逆光写真や色かぶり写真を自動で色補正する機能など、PCレスで十分使えるプリンタとなっている。特徴を下記にまとめたので参考にして欲しい。なお、キーボードが付いた上位モデルとして「E-800」も用意されている。

・最高解像度MACH方式/5,760×1,440dpi、4色一体型(つよインク200)
・ハガキ/L判共最大20枚のASF、印刷速度L判30秒、コストL判15.4円
・チルト式7型WVGA(800×480ドット)TFT液晶
・高速赤外線通信ポート、USB 2.0×1(PC)、USB 2.0×1(PictBridge)
・多くのメディアに対応したカードリーダー
・12種類(3D、時計、カレンダーなど)のスライドショー、オリジナルフレーム、自動色補正
・カードリーダからUSB接続外部記憶装置へ保存
・印刷履歴保存機能
・Windows 7対応
・228×158×192mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg

 7型の液晶パネルは、上下にスライド及びチルト機構となっており、見やすい角度に固定できる。また、印刷履歴保存機能は、本体に別途メモリを搭載しており、印刷後指定することによって保存する。後日「あの写真を何枚か印刷したい」という時に、オリジナルのメディアが無くてもプリントできる便利な機能だ。最大2MB/枚で約100枚管理でき、後に不要になった場合、全てもしくは1枚ずつ削除も可能となっている。印刷速度はL判で30秒、ランニングコストはL判で15.4円。本体価格はオープンプライスであるが、調べたところ2万円台後半のようだ。

フロント。7型液晶パネルと左下に赤外線ポート。このパネルは上下にスライドするリア。USB 2.0(PC用)と電源入力、下のパネルを開いてインクカセットを入れる液晶ディスプレイ。上にスライドしチルトする。スライド位置チルト角度とも、これが最大
右側。カードリーダとUSB 2.0(PictBridge用)上面。ASFと持ち運び用のハンドル左側。電源スイッチのみとシンプルだ
インクカセットとACアダプタ。ACアダプタは一般的なノートPC用と比較すると若干大きめ。インクはカートリッジ式インクカセットを装着。裏のパネルを開き、ロックを解除、カートリッジを入れ、ロックしパネルを閉じればOK。非常に簡単だリモコン。ボタンの数の割には少し大きめ。わかりやすいリモコンだ

 まず第一印象は「可愛い」だ。真っ白(液晶パネルをスライドさせたフロント部分はシルバー)のキュービックなボディに大きな液晶パネル。どこに置いてもマッチしそうなデザインだ。Rがうまく生かされていて、事務機っぽい雰囲気が無いのも好感がもてる。実際の設置面積は、A4の半分、つまりA5サイズより一回り大きい程度で思っていたほどでもない(正面が長尺)。これならいろいろな場所に常設してもほぼ大丈夫だと思われる。

 インクのセットもカートリッジを裏から入れるだけと非常に簡単だ。ただ各色独立しているインクカートリッジと比較して、使う色が集中した場合など、特定のインクのみ無くなっても全交換となるのは痛いが、このサイズと操作を簡単にするためには仕方ない部分であろう。

 付属するリモコンはボタンの数の割には大きめだ。だから駄目と言うのではなく、子供からご年配までいろいろな人が操作するには丁度良いサイズ。またあまり小さくないため紛失もしにくいと思われる。逆にACアダプタはDC 42V/0.6Aと出力電圧がノートPCなどと比較して高めなので大柄だ。

 残念ながら無線LANは搭載していない。PCからの出力を考えると設置場所が限定されてしまうが、主な用途はPCレスと割り切った仕様になっている(もちろんコストの問題もあるだろう)。本来の用途からは外れるが、せっかく大きな液晶パネルとカードリーダを備えているので、アンプとスピーカーを内蔵しメディアから音楽や動画が再生が出来れば更に楽しめると思うのだがいかがだろうか。

●セットアップ

 本体のセットアップはインクカートリッジを後ろから入れるのみと非常に簡単だ。カートリッジを装着しないで電源をONにすると以下のようなメッセージが出るので、カセットを入れる。その後、年月日、時間を設定すれば準備完了。トップメニューが表示される。一般的なインクジェットプリンタで見られるようなヘッドの調整などは無く、ほんの数分で使用可能になる。これなら誰でもセットアップできるだろう。

インクカートリッジを入れる様にとメッセージを表示年月日、時間を設定トップメニューが表示された

 PC側のセットアップは、基本的にPCレスで大型液晶パネルを搭載しているとは言え、同社のインクジェットプリンタには変わりなく、前回掲載した「EP-802A」とインストールされるドライバやアプリケーションはほぼ同じだ。違うのは有線/無線LAN、スキャナが搭載されていないので、ネットワークやスキャナ関連の設定がなく、「プリンタドライバ」、「E-Photo」など、USBポート経由の純粋なインクジェットプリンタとしてのセットアップとなる。

インストーラインストールするソフトウェア一覧接続先設定

●単独使用

 単独で使用した感想は「使っていて非常に楽しい」だ。これまで液晶パネルを搭載したプリンタは何台もこの連載でご紹介したが、あくまでもプリントを得るための操作であり、“楽しい”と思ったことはない。しかしこのE-600は、メニューの動きやスライドショー、印刷するための写真選びなど、どれを取ってもなんだか面白いのだ。やはり7型WVGAという大きな液晶パネルと、その画面構成や動きがそう思わせるのだろう。その液晶パネル自体のクオリティもなかなか。グレア(光沢)パネルなので映り込みはあるものの、明るくコントラストも高く、デジタルフォトフレームとして十分な発色だ。写真として重要な黒い部分の締りも良い。

 メニュー構成は大きく分けて「写真を印刷」、「いろいろな印刷」、「フォトスライドショー」、「データ管理」と、4つに分かれている。機能毎に「ブルー」、「グリーン」、「イエロー」、「マゼンタ」とイメージカラーで色分けがされ、自分が今何の操作をしているのか色ですぐに判断できる。

 また、WVGAとプリンタ用のパネルとしては比較的高解像度なので、もう少しゴチャゴチャいろいろなアイコンやボタンなので表示があるものだと思っていたが、意外とあっさりしており、迷う部分が無く、飽きが来ないよう工夫されている。

 メニューの構成などは以下の写真を参考にして頂きたいが、フォトスライドショーに関しては動画をご覧頂いた方がよりイメージしやすいと思い、写真では無く動画を用意した。なお、ここで設定したスライドショーは、電源ONで何も操作していない時にも自動的にスライドショーモードに切り替わる。

写真を選ぶ/時系列順写真を選ぶ/並び順写真を選ぶ/写真編集
いろいろな印刷いろいろな印刷/フレーム印刷/フレーム選択いろいろな印刷/フレーム印刷/写真編集
いろいろな印刷/レイアウト印刷いろいろな印刷/レイアウト印刷/写真選択いろいろな印刷/レイアウト印刷/印刷プレビュー
データ管理設定/プリンタの設定設定/印刷品質・色補正の設定

 「写真を選ぶ」は「写真選択」、「写真編集」、「印刷プレビュー」の機能を持つ。写真の選択方法は時系列と並び順とリモコンの[表示]ボタンで切替できるので好きな方を選べばよい。選択後、リモコンの[印刷]ボタンを押すと印刷プレビュー、そして[OK]ボタンを押せば印刷が始まる。

 リモコンの[設定]ボタンを押すと「設定」メニューが表示される。ここでは「読み込み元選択」、「印刷品質/色補正の設定」「プリンタのお手入れ」、「プリンタの設定」が行なえる。印刷品質/色補正の設定では、「自動画質補正」、「補正モード選択」、「印刷品質」、「シャープネス」、「赤目補正」、「カラー設定」など、PC用のプリンタドライバとあまり変わらない高度な設定が可能だ。

 「いろいろな印刷」は「レイアウト印刷」、「フレーム印刷」、「お好み写真サイズ印刷」となっている。レイアウト印刷は、2面、4面、8面、16面の4パターンだ。フレームはDisneyが38点、メタペン2点の計40点内蔵している。

 「フォトスライドショー」のエフェクトは、「スピンジャイロ」、「クロスフェード」、「ズームイン」、「スライドイン」、「ブックアルバム」、「ナイトミュージアム」、「ペンギンストーリー」、「ファッションショー」、「時計1」、「時計2」、「時計3」、「カレンダー」の12種類。

 エフェクトの内容がわかりにくいものを簡単に説明すると、「ブックアルバム」は3Dっぽい写真集の中に写真がありページめくりをするイメージ。「ナイトミュージアム」は名前の通り、夜のミュージアムに写真が額装されているイメージ。「ペンギンストーリー」は、CGのペンギンがアニメっぽく動く中に写真が登場する。「ファッションショー」は、ステージ上にモデルが歩いてくると着ている服が写真だったり……と、なかなか趣向を凝らしたものも含まれている。

 「データ管理」は「印刷履歴の写真を選んで削除」、「印刷履歴の写真を全て削除」、「バックアップ」となる。

【動画】画面操作及びスライドショー。リモコンから非常に簡単に操作出来、しかもメニュー構造も分かりやすい。スライドショーは12パターンと多彩なのでその日の気分などで変更すれば楽しめる。またスライドショー中に印刷予約/解除、印刷プレビューもできる
【動画】写真選択から印刷
プリント結果。写真を選ぶ画面は時系列と並び順と2パターン、印刷もL判1枚約30秒。印刷は十分綺麗だ

 写真を選んで印刷までは動画をご覧頂きたい。簡単に設定できるのがおわかり頂けると思う。また印刷終了後、「印刷履歴」するかどうかの選択があるので、もし後日同じプリントをしそうであれば[はい]で保存すればいい。

 印刷時の騒音は、動画からは大きく聞こえるものの、これはレコーダーの録音感度が高いためであり、周囲のノイズ(サーバーの音)との差で比べて欲しい。印刷結果は全てプリンタにお任せのオートなのにも関わらず非常に綺麗なプリントが得られた。十分以上のクオリティと言えよう。

●PCからの使い勝手

 E-600は主にPCレスを前提になっていることもあり、PCからの使い勝手は、同社のインクジェットプリンタ同様、非常に扱いやすいものの、E-PhotoとEpson PRINT Image Framer toolのみとシンプルな構成だ。「ノイズ除去」、「美肌補正」、「真ナチュラルフェイス機能(スリムモード)」などを搭載した今年版E-Photoの効果についてはEP-802Aの記事を参考にして頂ければと思う。

 他のインクジェットプリンタでインストールされるのに、このE-600でインストールされないものとして、Webページの幅を自動的に調整し印刷する「Epson Web-To-Page」があげられる。これはA4サイズを印刷できないE-600の仕様上仕方ない部分だ。逆に年賀状印刷ソフトウェア、L版プリントに特化したレタッチソフトなど、もう少しハガキやL判プリントを意識したE-600ならではの専用アプリケーションが欲しいところかも知れない。

プリンタドライバなどE-600のカードリーダーがネットワークドライブにアサインE-600PCでの印刷ガイド
E-PhotoEpson PRINT Image Framer tool

 実際使ってみると、やはりPCとの接続は無線LAN接続が欲しいところだが、本体が小さい分、どうしてもPCへ接続したい時だけ場所を移動させるという手もある。普段はフォトフレーム、そしてメディアからのダイレクトプリント用として「写真を観る」を主となる場所へ置き、PCから印刷したい時だけ移動させると言うのが同社の提案なのだろう。


 従来のE-530は、印刷するのが主な機能だったこともあり、普段使わない時はどこかにしまわれると言う宿命があった。しかし、E-600は、7型WVGAの液晶パネルを搭載し、デジタルフォトフレーム+αの機能を持ったことにより、常に身近にある存在へと変身した。これはなかなか面白い発想であり、日頃趣味でのプリントはL判サイズばかりの筆者は非常に興味を持った1台だ。ぜひ店頭などでご覧頂きたい。