西川和久の不定期コラム

15.6型ワイド液晶とCore 2 Duoでナナキュッパ!
ASUSTeK「F52A-SX004E」



 最近、ネットブックやULV版CPUを搭載したノートPCの低価格化の話ばかりが目に入るが、実は据え置きタイプのノートPCも機種によっては10万円未満と、結構値段が下がってきた。今回はその中で、15.6型WXGA液晶、Intel Core 2 Duoプロセッサ、そしてWindows Vista Businessを搭載したノートPC、ASUSTeK「F52A-SX004E」を試してみたい。



●ナナキュッパの中身

 エプソンダイレクトでは、自社ブランドの「Endeavor」シリーズのBTO販売を行なっているが、今回の「F52A-SX004E」はこれまでとは経路が違っている。それはASUSのノートPCを同社が販売店として扱うのだ。発表資料によると、アスペクト比16:9の15.6型ワイド液晶ディスプレイ、高品位スピーカー、独立テンキーなどを搭載し、EndeavorノートPCには無い特徴を持つモデルとなっている。自社のモデルと競合せず、一から用意する必要も無く直ぐに出荷でき、EndeavorノートPC補完すると言う意味で販売開始となったのだろう。

 「F52A-SX004E」、詳細な仕様は下の表をご覧頂きたいが、先にあげた特徴に加え、CPUはCore 2 Duo P8600(2.4GHz)、チップセットはIntel GMA45 Express、グラフィックはチップセット内蔵GMA 4500MHD、スーパーマルチドライブなど……BluetoothとIEEE 1394以外は全て搭載している全部入りだ。また、標準ではWindows Vista Business SP1をプリインストールしているのだが、ダウングレード用のWindows XP Professionalのインストールディスクも付属している。

 全体的には15.6型 WXGA液晶を搭載していることもあり、380×258×34.4~35.6mm(幅×奥行き×高さ)/約2.53kgと、外出時に持ち歩くのではなく、室内でたまに移動と言う用途に向いている。大型のノートPCは、配線がシンプルで操作や扱いも楽、これだけのインターフェイスが入っていれば一般的に特に拡張なども考えることもなく、十分デストップPCの代替として使え、1台目のPCとして考えても十分機能する。更に10キーも付いているので事務処理用としてもOKだ。

仕様/F52A-SX004E(ビジネスモデル) \79,800
OSWindows Vista Business SP1(ダウングレード用Windows XP Professionalのインストールディスク付)
液晶パネル1,366×768ドット 15.6型ワイド液晶 グレアパネル
CPUIntel Core 2 Duo プロセッサー P8600(2.4GHz)
チップセットモバイル Intel GM45 Express チップセット
グラフィックモバイル Intel GMA 4500MHD、HDMI出力、アナログRGB出力
メモリ2GB(2GB×1/空きスロット×1) DDR2 800MHz SDRAM、最大4GB
HDD320GB SATA 対応 5,400rpm
オプティカルドライブDVDスーパーマルチドライブ(DVD±R 2層書込)
ネットワーク1000Base-T/100Base-TX/10Base-T対応、IEEE 802.11b/g/n 準拠無線LAN
その他I/O130万画素Webカメラ、107日本語キー(テンキー付き)、タッチパッド×1、クリックボタン×2、Intel ハイ・デフィニション・オーディオ 、8in1メモリカードスロット、USB2.0対応(右側面x2、背面×1)、ExpressCardスロット(54/32)×1、eSATA×1
サイズ/重量380×258×34.4~35.6mm(幅×奥行き×高さ)/約2.53kg

 ボディ表面はツヤありブラック。指紋跡は気になるものの、特に安っぽいと言う雰囲気は無く、非常に落ち着いたイメージだ。キーボードは全体的に少したわむものの、許容範囲。ボディが大きいので配置やキートップのサイズも余裕がある。ただ、キーボードのセンターが画面のセンターに無く、筆者的には扱い慣れていないこともあり、感覚的に操作し辛かった。また10キーの位置はももう少し離れていると、たまたま触れてしまうような誤作動が減るのだがスペース的にはキーボード本体を一回り小さくする必要があり難しそうだ。これだけ大きいとキーボードが少し傾くような仕掛けが欲しくなるが、ボディの底に足や、バッテリが少し厚みがあるなどの工夫はない。

 ディスプレイはグレアパネルだ。従って結構映り込む。解像度は1,366×768ドットのWXGA。15.6型のパネルの割には解像度は抑え目だが、文字などは大き過ぎず小さ過ぎず、見易い。工場出荷状態では少し青いので調整したところ、GMA 4500MHDのコントロールパネルから青/明るさ:-15、赤/明るさ:+10として丁度いい感じとなった。色乗りも良く、明るくコントラストも高く、パネルのクオリティはなかな良い方だろう。

 タッチパッドは、ロックするボタンやスイッチは無いものの、4方向スクロール機能付の一般的なものだ。パームレストに相当する部分が広く、パッド自体の滑りも良いので扱い易い。ボタンも重くなく、スムーズに操作できる。

天板は細かいドット模様のある光沢のあるブラック裏面。簡単に外れるのはバッテリのみ。メモリやHDDの増設・変更は難しそうだ。左右にスピーカー、前中央に8in1メモリカードスロットがある左側面。スーパーマルチドライブ、ExpressCardスロット(54/32)
右側面。オーディオIN/OUT、USB2.0×2、アナログVGA、Ethernet、電源入力背面。ロックポート、HDMI、USB2.0×1、eSATA×1パームレスト部分は広い。キートップも大きく余裕のあるキーボード。10キーも付いている
キー幅は約2cm。フルキーボード並みにあるが、キートップの質感や打った感触はイマイチ。また若干キーボードを詰め過ぎの感じがするバッテリとACアダプタ。ボディの割にはどちらも小さい。ACアダプタはAC-inはメガネタイプ、DC-outはL字型だ

 冒頭で触れた高品位スピーカーは「Altec Lansing Technologies」製。出力は2W×2だ。試しにDVDビデオや音楽を再生してみたところ、最大音量にしても残念ながら明らかにパワー不足だった。このボディサイズでこの音量では迫力も無く、低音も出ていない。過去、このブランドのスピーカーを内蔵したノートPCは、少なくとも音に関してかなり評価が高かったので、ちょっとガッカリした。

 逆に発熱や振動は驚くほど感じない。うまく熱を逃がしているのだろうか。ファンの振動はもちろんであるが、HDDの振動も一切無い。唯一振動やノイズがあるとすれば、DVDスーパーマルチドライブのシーク時程度だ。静音性は高く、静かな場所でのオペレーションも周囲を気にしなくて済む。また、付属のACアダプタ(出力19v、3.24A)と、バッテリ(11.1v、4,400mAh、46Wh)も本体とのバランスを考えると小さく、その割にはバッテリ駆動時間は最高約4時間と頑張っている。

ThinkPad T42(14型)との比較。奥行きはほぼ同じだが、パネルサイズ+α分幅がある結構ゆったりしたサイズのタッチパッドだ。滑りも良い流石にこれだけ画面に映り込むと集中できないケースがある

●使用感

 気になるパフォーマンスであるが、流石にCPUがCore 2 Duo P8600(2.4GHz)だけあって、AtomプロセッサやULV版CPUを搭載したノートPCとは比較にならないほど普通にVistaが操作できる。Windows エクスペリエンス インデックスのCPUは5.3。このスコアを見れば納得だ。インテル GMA 4500MHDのグラフィックスが3.4/3.6なのでゲーム系は厳しいものの、普通のアプリケーションなら問題にならないだろう。このGMA 4500MHDは、動画支援機構を持っているので、グラフィックスのスコア以上に動画の再生は滑らかに表現できる。

 初期起動時に「お!」と思ったのは、Vistaのユーザー設定など、ひと通りの設定が終わり、デスクトップ画面に切り替わったところ、「ASUS AI Recovery」が起動し、「工場出荷状態のWindowsのコピーが作成されていないので作成しますか?」とパネルが表示されたことだ。今回は試していないが、早く操作したい気持ちを抑えて、DVDメディアにこの状態を丸ごとコピーしておけば何時でも安心して工場出荷状態へリカバリーできる。なかなか嬉しい心遣いだ。

 タッチパッドのコントロールは「Elanスマートパッド」。一般的な右端をスクロールエリアにするのではなく、MacBookなどで使われている「2本指でスクロール」するタイプとなっている。個人的にはこちらの方が好みであり、無意識に操作が行なえる。

 「ASUS DVD 8」はDVDビデオなどに対応する動画プレーヤー(PowerDVDのOEM版)なのだがH.264には非対応。再生するには有料版へアップグレードする必要がある。1年前ならこれでも良かったが、そろそろ時代にマッチしなくなっているので、PowerDVDを採用している他社も含め改善して欲しい部分だ。

初期起動直後のデスクトップ。ASUS AI Recoveryが起動し、工場出荷状態の保存を勧めているデバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはST9320325AS。5,400rpmでキャッシュは8MBHDDのパーティション。OS/CドライブとDATA/Dドライブでほぼ半分になっている
Elanスマートパッド。指を2本使ってスクロールするタイプだ付属の「ASUS DVD 8」。DVDビデオなどは再生できるが、H.264には非対応
Windows エクスペリエンス インデックス。グラフィックスが若干弱いが、3以上なので普通の操作であれば全く問題ないCrystalMark 2004R3/Mark。比べるまでも無く、Atomプロセッサ搭載機とは全く次元が違う

 丸1日このマシンで多くの操作を行なってみたが、とにかく部分的な何かが全体のパフォーマンスを落とすことなくバランス良くまとまっているのが印象的。普通に使えるノートPCだ。CPU、メモリ、HDDのWindows エクスペリエンス インデックスが5以上と言うのは、やはり目に見えて効果がある。

「ASUS Express Gate」のアスペクト比がおかしい画面。GR-3やテンキーの写真など、明らかに縦方向が潰れている

 最後に「最短8秒で使える」と謳っている「ASUS Express Gate」を試してみた。起動は[Power]スイッチの横にある[Express Gate]スイッチ(走る人? がアイコンになっている)で電源ON!確かにWindowsよりかなり早く起動する。Webブラウザ、音楽再生、画像表示、SkypeなどがLinuxをベースにした環境で利用できる。以前もう少しバージョンの若いもので動かした時より随分洗練され良くなっている。

 ただ筆者的にNGなのは、ご覧のようにアスペクト比がおかしいまま表示していることだ。写真が縦に潰れ、サッカーボールが横に長い。どこかで直せるのかも知れないが、少なくとも工場出荷状態ではこうなっている。いずれにしても、Windowsでもスリープや休止状態からの復帰は結構早いので、もっとプラスαを加えないと少なくとも日本国内ではあまり使われない気がする。

 

【動画】ASUS Express Gateのデモ。映像の始まりとほぼ同じタイミングで電源ONしている。電源OFFも同様。ご覧のようにサクッと起動、そして終了する。アスペクト比の問 題も含め、もう少し改善すれば、パッとWebを見たり、音楽をBGM的に流しっ放しにするなどの用途にはいいかも知れない


 以上のように十分な性能を備えるノートPCがナナキュッパで購入できるのは、ユーザーにとって非常に嬉しい話だ。外に持って出ることはあまり考えず、室内だけの用途であれば、ほんの数万円違いのネットブックと場合によっては十分競合する。もちろん性能はご覧のように比較にならないほどのパワーだ。10キーが付いているのでビジネス用にもいいだろう。ゆったりしたボディに大画面、そして安価な機種を望むのなら、候補に入れたい1台だ。