■西川和久の不定期コラム■
IdeaCentre A700 |
レノボ・ジャパンから、オールインワンPCの「IdeaCentre A700」が発表された。超音波表面弾性波方式を世界で初めて採用したマルチタッチセンサーを搭載、1,920×1,080ドット(フルHD)対応23型LEDバックライト液晶パネルなど、なかなか面白そうなマシンだ。発売は11月上旬。量産試作機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。
なお、製品版とは一部仕様が異なる可能性があるので、あらかじめご了承いただきたい。
●AV機能に特化したシステムにマルチタッチをプラス
IdeaCentreのラインナップは、A700、A600、A310の3種類。ディスプレイ体型のオールインワンPCで、CPUや画面サイズ、機能、形状などが異なる。その中でマルチタッチや3波対応TVチューナを搭載する最上位モデルが、今回ご紹介するIdeaCentre A700だ。
CPUはIntelのCore i5-460M。通常2.53GHz、TurboBoost時は2.8GHz、3MBのL3キャッシュを持つ。チップセットはIntel HM55 Express、グラフィックスは内蔵Intel HD Graphicsとなる。メモリは4GB実装済みだ。OSは64bit版のWindows 7 Home Premiumを搭載。
液晶パネルは、23型ワイド(16:9)のフルHD解像度。HDMI出力に加え、HDMIとコンポジットビデオ入力を持つため、他のAV機器の映像を表示することも可能だ。これらの入力は、Windowsが起動していない状態=電源OFFでも、右下のパネルの部分をタッチすると、ボタンが点灯し有効になり、切り替えも含め各種コントロールが機能する。
中で少し説明が必要なものとして、一番左端の「ダウンライト」は、掲載した写真をご覧頂ければわかるように、ディスプレイの中央から幅25cmほどが下に向かって光るライトだ。右から3番目の「Novo Vision」は、Internet/Movie/Textモードと3つもモードがあり、それぞれディスプレイの色温度が変わる。主な仕様は以下の通り。
【表】IdeaCentre A700の仕様OS | Windows 7 Home Premium 64bit版 |
CPU | Core i5-460M(2.53GHz/TB時最大 2.8GHz、3MB L3キャッシュ) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 4GB(2GB×2使用/PC3-10600 DDR3 SDRAM) 2スロット/空き0、最大4GB |
HDD | 1TB(7,200rpm/2.5型) |
液晶パネル | マルチタッチ対応 23型ワイド(16:9)フルHD LED液晶、 1,920×1,080ドット、HDMI入力/出力×1 |
グラフィックス | Intel HD Graphics |
光学ドライブ | スロットイン形式DVDスーパーマルチドライブ |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11 a/b/g/n対応無線LAN、 Bluetooth(キーボード/マウスで使用) |
インターフェイス | USB 2.0×6(側面×2/背面×4)、eSATA×1、IEEE 1394、S/PDIF、 3波対応TVチューナ/TVポート(地上/BS/110度CSデジタル)×1、 マイク入力/ヘッドフォン出力、コンポジットビデオ+オーディオ入力、 B-CASカードスロット、5in1メモリカードリーダー、Webカメラ |
その他 | Bluetooth日本語キーボード/マウス、リモコン/リモコン受光機、 JBL製ステレオスピーカー内蔵 |
サイズ/重量 | 568×430×71mm(幅×高さ×奥行き)/重量約9.6kg |
店頭予想価格 | 14万円前後 |
冒頭に書いたように、「IdeaCentre A700」は、超音波表面弾性波方式のマルチタッチに対応している。タッチパネルは、「抵抗膜」、「音響パルス認識方式」、「赤外遮光」、「表面型静電容量」、「電磁誘導」など、いろいろ方式があり、この超音波表面弾性波方式は、2本指の動きを正確に認識=マルチタッチに向いている方式らしい。実際の使用感は後述するが、少なくとも筆者がこれまでWindows上で触ったマルチタッチの中では一番反応がスムーズだった。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n。11aに対応しているのは最近では珍しい。またカタログ上は明記されていないが、Bluetooth 2.1+EDRも搭載している。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×6(側面×2/背面×4)、eSATA×1、IEEE 1394、S/PDIF、3波対応のTVチューナ/B-CASカードスロット、5in1メモリカードリーダ、Webカメラ、マイク入力/ヘッドフォン出力となる。動画の録画や編集を考えた場合、eSATAやIEEE 1394が標準搭載なのはポイントが高い。また、3波対応のTVチューナは特別な表示アプリケーションは無く、Windows Media Centerでのコントロールとなり、リモコンも付属する。
HDDは7,200rpmの1TBが標準搭載。光学ドライブはスロットイン形式DVDスーパーマルチドライブとなる。ここまでAV指向のマシンであればBlu-rayドライブが欲しかったところだ。
サイズ568×430×71mm(幅×高さ×奥行き)、重量約9.6kgの本体は意外と重く感じる。机の上に設置する時、軽く気合が必要だ。フロントは光沢ブラック、リアは少し緑っぽいヘアライン仕上げのパネルと、クールなルックス。付属のキーボードとマウスの質感も良く、無線式でマシンへは電源ケーブル1本となり、机の上はスッキリする。画面チルトは、下向きは無し、上向きは掲載した写真程度(12~35度)、左右は固定とあまり調整の幅は広くないものの、実用十分の範囲だろう。
インターフェイスは主に映像系+USBがリアパネル、PC周辺機用が左サイドにまとまっていて使いやすそうだ。ただeSATAに関しては本体側のHDDが容量不足になった時、つなぎっぱなしにすることが考えられるので、リアパネルに欲しかった。もう1点、リアパネルのコネクタは、ちょうどスタンドの後ろになっていて、USB 2.0とGigabit Ethernetに少しアクセスしづらいように思う。
23型の液晶パネルは視野角も広く、コントラスト/明るさも良好。動画を再生しても写真を見ても非常に綺麗。色はメリハリを出しつつ、ニュートラルな雰囲気で好感が持てる。厳密なカラーマッチングなどを必要とする作業をしない限り、不満になることは無さそうだ。
振動は無いが、ノイズは本体に耳をあてると「ブーン」と言う低い音がする。ただ特に気になるほどではない。
内蔵しているJBL製ステレオスピーカーは、最大音量にすると煩いほどで、パワーは十分。ワイドレンジではないものの、中域がしっかりしており、何を聴いてもうまく鳴らす。この手のPCに内蔵しているスピーカーとしては、過去扱ったものを含めトップ3に入るだろう。また、リアパネルを開けたわけではないので、あくまでも予想だが、裏の曲面になっている部分は、スピーカーのエンクロージャの役目もしくは、下側面にスリットが左右にあるので、ホーンになっている可能性もある。いずれにしても聴きやすい音質だ。
●十分なパフォーマンスとスムーズなマルチタッチ起動時のデスクトップは、色々なショートカットが画面左側に並んでいる。また、フルHDの解像度の割りに画面が小さく見えるのは、ディスプレイ→文字の大きさ/中125%になっているからだ。タッチパネル操作を考慮してのことだろう。
HDDはSeagate ST31000528AS。7,200rpmタイプでキャッシュ32MBだ。光学ドライブはOPTIARC AD-7640Sが使われている。HDDのパーティションはユーザーが使える部分としては、C:ドライブがシステム用で約48GB、D:ドライブはユーザー用で約857GBが割当てられている。
CPUがCore i5-460M、7,200rpmのHDD、4GBのメモリ、そしてフルHD解像度の液晶パネルと、何をするにしても快適に操作できる。ハードウェア上、AV中心の構成になっているが、メインマシンとしても十分使える環境だ。
プリインストールのアプリケーションとして、同社オリジナルのアプリケーションは、周囲の明るさに応じて液晶パネルの明るさをダイナミックに変更する「Lenovo Dynamic Brightness System V4.0」、人の画面への近づき過ぎを知らせる「Lenovo Eye Distance System 4.0」、パスワードの替わりにタッチ式で絵などを合わす「Lenovo VeriTouch 2.0」、マルチタッチ用としてチューニングされた「Lenovo Idea Touch 3.0」、「Lenovo Rescue System 3.0」。
特にLenovo VeriTouchとLenovo Idea Touchは、タッチパネルを持つシステムとしてなかなか面白い。動画も掲載したので、是非ご覧頂きたい。かなりスムーズに指の動きと連動しているのがわかるだろう。
他社製のアプリケーションは、「Power2Go 6.0」、「CyberLink MakeDisk」、「McAfee VirusScan Plus」、「i-フィルター 5.0」、「CyberLink YouCam 3.0」、「Cyber Link Power DVD 9」、「Microsoft Office Home and Business 2010」など、お馴染みのものだ。
Lenovo Dynamic Brightness System V4.0 | Lenovo Eye Distance System 4.0 | Lenovo VeriTouch 2.0 |
【動画】Lenovo VeriTouch 2.0を使ったログイン |
【動画】Lenovo マルチタッチで快適に操作できるIdea Touch 3.0 |
ベンチマークはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、YouTube 1080p動画再生時のCPU使用率を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.6。内訳はプロセッサ6.9、メモリ5.9、グラフィックス4.6、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9。グラフィックスが一番低いスコアであるものの、全体的なバランスは良い。
CrystalMarkは、ALU 34,519、FPU 32,234、MEM 23,872、HDD 13,945、GDI 11,914、D2D 1,566、OGL 2,314。HDDの13,945は7,200rpmタイプとしては速い方だ。32MBのキャッシュが効いているのだろう。ほかの値は、Core i5-460MとIntel HD Graphicsを搭載したマシンとしては妥当なところだ。
フルHDの液晶パネルを搭載していることもあり、いつもテストに使っているYouTubeの1080p動画をチェックした。ハードウェア・アクセラレーションが効くFlash Player 10.1系で再生させたところ、CPU使用率40%前後で問題なく30fps描画した。ドットバイドットで十分楽しめる環境だ。
以上のようにIdeaCentre A700は、明るく綺麗な23型フルHD液晶パネル、3波対応のTVチューナ内蔵、超音波表面弾性波方式のスムーズなマルチタッチ、そしてJBL製ステレオスピーカー内蔵と、映像を観るのも音楽を聴くのも十分楽しめるオールインワンPCに仕上がっている。もちろんCore i5-460Mでパワーもあり、メモリ4GB/HDD 1TBと容量も問題無い。HDMI/コンポジットビデオ入力もあるので、特にAVを中心にシステムを組みたいユーザーにお勧めの1台だ。