西川和久の不定期コラム

メインPCをUbuntuにして約1年半で何が変わった?そして次期仕事用テスト環境を作る!

CHUWI「CoreBox 5th」で動作中のUbuntu Desktop 23.10

 Ubuntu Destop 22.04 LTS@Core i9-12900をメインPCにしてから約1年半。今年はCore Ultra搭載のマシンへ替えたいこともあり、OSをUbuntu Desktop 23.10にした時、何か変わるのか? を調べるため、手元のミニPCを使ってのテスト結果をレポートしたい。

Ubuntu Desktop 23.10をCHUWI「CoreBox 5th」にインストール

 現在のメインPCは2022年8月に組んだCore i9-12900搭載PCでOSはUbuntu Desktop 22.04 LTS(後に23.04にしている)。もう結構長い間電源オンにしっぱなしで毎日使っているが、ノートラブルで快適に動作中だ。

 ここでは主に、ネット関連、DockerやVSCodeなど開発用、原稿や資料の執筆、そしてOffice系を使っている。AI系は別マシンをサーバーにしているので、メインPCはそれをWebアクセスするだけとなる。

 これからも分かるように、Microsoft 365は未契約(Ubuntu版はない)。個人的にこの手のファイルを作ることはまれで、開発用の資料など相手から送られたものを確認さえできればOK。オンラインだと「Google Workplace」、オフラインだとUbuntu版の「LibreOffice」を使用しているが、特に困ったことは発生していない。「Office Online」も使わなくなったほどだ。

 Photoshopなど画像処理系だけM1 Pro搭載「MacBook Pro 14」へ分離。Adobeは代替えがないので仕方ないところ。もう少しWeb版のPhotoshopが使えるようになればいいのだが……。加えて最近だと搭載しているWebカメラ(もしくはiPhone)を使いオンライン会議にもMacを使用している……と、仕事環境はザックリこんな感じとなる。

 とは言え、Core Ultraが出てきたこともあり、今年(2024年)どこかのタイミングでメインPC入れ替えを考え中だが、メインなだけに1時間たりとも使えない状態があると困る。そこで、想定しているほぼ同じ環境を手持ちのミニPCへ構築することにした。手順をメモしておけば新規インストールしたマシンのセットアップも容易だ。

 仕事場を見渡すとIntelプロセッサ搭載機で一番近いものだとCHUWI「CoreBox 5th」があり、これを今回使用する。

 プロセッサはCore i5-13500Hなのだが、USB4がなかったり、メモリがDDR5/16GBと、少しもの足りない部分があるものの、テスト環境にするだけなら特に問題はないだろう。

 ということで、以降、Ubuntu Desktop 23.10へ、標準的? な仕事環境をインストールするメモ書きとなる。「そろそろUbuntuでも使ってみるか!?」的な方の参考になれば幸いだ。

Ubuntu Desktop 23.10のインストール

 Ubuntuの場合、長期サポートのLTS版と、サポートは短めだが、最新鋭機能搭載版と2種類あり、サーバー用途でもないため、後者を選択。執筆時点でバージョンは23.10となる。

 インストール自体は簡単。ここからISOイメージをダウンロード、何かのツール(今回はmacOS版のbalenaEtcher を使用)でUSBメモリへ焼き、対象となるPCで起動、ウィザードに従って操作すればサクッと入る。ISOイメージは約6GBあるので、それ以上のUSBメモリがあればOKだ。

 この時、軽くトラブったのが、2ポートあるHDMI。初めは裏パネル左側のHDMIにモニターを接続したところ、Ubuntuを読み込んだタイミングでブラックアウト。どうやらプライマリ出力が固定となっているらしく、右側(Ethernetコネクタ横)にモニターを接続すれば大丈夫だった。

 あと、できれば始めUI言語は英語でインストールし、後で日本語UIへ切り替えた方が良い。理由だが、ホーム下のDownloadsフォルダなどの名前がダウンロードと日本語ファイル名に変わってしまうからだ。後から日本語UIへ切り替えると、以下のようなパネルが出るので、“次回から表示しない”にチェックし、“古い名前のままにする”を選択すれば、英語ファイル名が保持される。

英語UIから日本語UIに切り替えるとこのようなパネルが出るので、“次回から表示しない”にチェックし、“古い名前のままにする”を選択する

 しかし、これからUbuntuを使おうという人が「Downloads」でなく「ダウンロード」にしないと分からないはずもなく(笑)、この仕様はやめて欲しいところ……「cd ダウンロード」なんて面倒でやってられないからだ。

基本の環境構築

 まず環境設定操作をミニPCに接続したモニター/キーボード/マウスでなく、手慣れたメインPCからの操作にするためXRDPをインストールする。これは標準のRDPだとログイン後からしかRDP接続できないためだ。これでメインPCからRDP接続して操作可能になった。

sudo apt install xrdp
sudo systemctl start|stop xrdp
メインマシンからRDP接続して操作(画像はカーネルなどを最新版にした後)

 次はこれもメインPCからの操作するためで、ssh系のインストール。クライアントとサーバー、両方を入れる。

sudo apt install openssh-client
sudo apt install openssh-server

 そしてNASなど、共有ドライブのマウント。通常SMBなどを使うと思うが、筆者はsshfsで統一している。こうした理由は、(確か)当初、SMBでマウントしたドライブでVSCodeがうまく動かなかったから。現在どうなのかは不明だが、特にトラブルもないため、そのままこの設定にしている。

sudo apt install sshfs
cd
mkdir nas
sudo vi /etc/fuse.conf
#user_allow_other
※このコメントを外す
sshfs -o allow_other user@192.168.11.90:/share/DATA/works ~/nas
※ホームのnasフォルダへマウント

 これで原稿やコードなどが入っているnasをマウントできた。あとはツール系で、gitやdocker-compose/docker、thunar(拡張ファイルマネージャ)。gnome-sushi(macOSのQuick Lookと似たもの)、そしてWine。

 Wineはそのままapt installすると8系になるので、2024年1月16日リリースの9系を入れてみた。既に原稿はgeditで書いており、秀丸は必要ないのだが、grep検索が便利なので、たまに使うことがある。また秀丸から外部のWindowsプログラムを呼べるのでランチャー替わりにもなる。

sudo apt install git
sudo apt install docker-compose
※dockerも一緒に入る

sudo apt install thunar
※拡張ファイルマネージャ
sudo apt install gnome-sushi
※ファイルマネージャでファイルを選択、[Space]キーで内容表示。macOSのQuick Lookと似たもの

https://wiki.winehq.org/Ubuntu
sudo dpkg --add-architecture i386
sudo mkdir -pm755 /etc/apt/keyrings
sudo wget -O /etc/apt/keyrings/winehq-archive.key https://dl.winehq.org/wine-builds/winehq.key
sudo wget -NP /etc/apt/sources.list.d/ https://dl.winehq.org/wine-builds/ubuntu/dists/mantic/winehq-mantic.sources
sudo apt update
sudo apt install --install-recommends winehq-stable
wine --version
wine-9.0
winecfg
※Wine本体

wget https://raw.githubusercontent.com/Winetricks/winetricks/master/src/winetricks
chmod +x winetricks
sudo mv winetricks /usr/bin/
winetricks fakejapanese
※日本語環境の読み替えなど
Wine 9(秀丸)、docker、docker-compose、SoftEtherVPNクライアント、NASをsshfsでマントしてthunarで表示、Hardware Sensors IndicatorでCPU温度表示

 CPU温度の監視には「Hardware Sensors Indicator」を使用。インストール後、システムバーのプロパティでセンサーを選ぶ。

sudo snap install indicator-sensors

 仕事で必要なものとしてUbuntu SoftEtherVPNクライアントがあるので、これもインストールする。

ダウンロードするソフトウェアを選択: SoftEther VPN (Freeware)
コンポーネントを選択: SoftEther VPN Client
プラットフォームを選択: Linux
CPU を選択: Intel x64 / AMD64 (64bit)
→SoftEther VPN Client (Ver 4.43, Build 9799, beta)
 softether-vpnclient-v4.43-9799-beta-2023.08.31-linux-x64-64bit.tar.gz

cd
tar xf Downloads/softether-vpnclient-v4.43-9799-beta-2023.08.31-linux-x64-64bit.tar.gz
cd vpnclient
make
find vpnclient -type f -exec chmod 644 "{}" \;
find vpnclient -type d -exec chmod 755 "{}" \;
chmod 777 vpnclient

sudo ./vpnclient start | stop
sudo ./vpncmd
※以降、SoftEther VPN Clientの設定

sudo dhclient vpn_vpn1
sudo apt install net-tools (ifconfigがない場合)
ifconfig vpn_vpn1
※確認

 今はRDP接続なので必要ないが、単独で使う時、マウスにApple Magic Mouseを接続する場合は、以下のようにすればスムーズに動く。

sudo rmmod hid_magicmouse
sudo modprobe hid_magicmouse emulate_3button=0 scroll_acceleration=1 scroll_speed=55

ChromeやVS Codeといったアプリはどう入れる?

 基本環境はこれでOKなので、後はアプリなどを入れる。Ubuntuは標準でFirefoxが入っているものの、まずはChrome。筆者の場合、Slack、ZoomやMicrosoft TeamsなどはアプリではなくWeb UI版を使用。機能は劣るがその分、インストールの手間は省ける(Slack以外はguest参加なので、という理由もある)。

 まずdebパッケージのインストーラをインストールする。

sudo apt install gdebi

 Chromeのサイトへ行き、ダウンロードで“64 ビット .deb(Debian/Ubuntu 用)”をダウンロードする。google-chrome-stable_current_amd64.debがDownloadsフォルダにあるので、ここで

sudo gdebi ./google-chrome-stable_current_amd64.deb

とすればOKだ。

 続いてVSCodeと、Edge。Edgeは各OSの下に“Microsoft Edge が Linux で使用可能になりました。ダウンロード: Linux (.deb) | Linux (.rpm)”とあるので.debをダウンロードする。

sudo gdebi ./code_1.85.2-1705561292_amd64.deb
sudo gdebi ./microsoft-edge-stable_120.0.2210.144-1_amd64.deb
Chrome、Edge、VSCode、LibreOffice、FileZilla、Dockはフローティング

 FTP系はFileZilla。ホストリストは使用中のFileZillaからExportでFileZilla.xmlを作り、それを新しい方で読み込めばOK。長い間、Windows版のSFTPを使っていたものの、ようやく主なホストを全て登録したので、もう不要になっている。

sudo apt install filezilla

 アプリセンターからはオフラインのOffice系としてLibreOffice、グラフィカルなシステムモニターとしてGNOME System Monitorをインストールする。

 仕上げはDockをフローティングへ。これは設定→Ubuntu Desktop→パネルモードをオフに。ただし、RDP接続時にはこの項目は出ないので要注意。

約1年半で変わってしまった系

 先に書いた通り画像処理はMacBook Pro 14のPhotoshopを使うが、リサイズ/トリミング、モザイク、マーキング程度を別マシンで操作するのは面倒なので、日頃簡単な画像編集はglimpse-editorを使っている。

 が、インストールしようとするとない。GitHubごと消えているので、この1年半、どこかのタイミングで開発/公開停止となってしまったようだ。とは言え、すっかり慣れてしまってることもあり代替えを考えるのも面倒。いろいろ検索したところ、flatpakのパッケージはまだ残っているのでこれを使った。

sudo apt install flatpak gnome-software-plugin-flatpak
flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
https://dl.flathub.org/repo/appstream/org.glimpse_editor.Glimpse.flatpakref
※これをファイラーから“ソフトウェアのインストール”で開く
glimpse-editorと源真ゴシック 等幅

 次にフォント系の“源真ゴシック 等幅 Normal”。これも以前記事にした時のURLがなくなっているので、代替でここのを使用。フォントを開いてインストールで入るが、キャッシュクリアする必要があり、以下を実行する。

sudo fc-cache -f -v

 最後にPHP。既に世の中はPHP8系だが、メンテしているシステムはPHP7系で、普段触るコード的にはこちらの方が圧倒的に多く、システムにはPHP7系を入れていた(PHP8系はDockerを使用)。が、従来の方法では入らなくなってしまった。

 これはさすがに時代の流れと言うこともあり、システムにはPHP8系を入れ、PHP7系はDockerに切り替えた方が良さそうだ。


 以上で想定している環境の設定完了となる。このメモがあれば、OSインストール後、1時間程度で処理できそうな感じだ。後は.sshにあるkeyなど、ホームフォルダ以下をコピーする必要があるのだが、これは本格的に使うときに行なえば良い。

 最後、これはやってもやらなくてもいいのだが、カーネル(Kernel)を最新版へアップデートする。ただし、今回は関係ないものの、NVIDIAのドライバはリリース版のKernelに依存しているため、これを行なうと動かなくなるので要注意!

sudo add-apt-repository ppa:cappelikan/ppa
sudo apt update
sudo apt install mainline
mainlineを使いカーネルを最新版へ

 見るとシステム標準は6.5.0.14.16_22.04、執筆時の最新は6.7.1なのでこれをインストールする(再起動が必要)。

 以上、CHUWI「CoreBox 5th」にUbuntu Desktop 23.10を使った次期仕事用テスト環境を構築してみた。最後、少し手間取った部分もあるものの、概ね良好にできた感じだ。

 さて、Core Ultra……。例年のパターン? だと、夏休みの工作だろうか!?(笑)