西川和久の不定期コラム

Ryzen+Radeon搭載で本格的にゲームもプレイできるミニPC!「MINISFORUM HX77G」

HX77G

 MINISFORUMは9月6日、CPUにRyzen 7 7735HS、加えてdGPUにRadeon RX 6600Mを採用したミニPCを発表、現在販売中だ。32GB/512GBモデルが手元に届いたので試用レポートをお届けしたい。

Radeon RX 6600M(8GB)を搭載したゲーミングミニPC

 今回ご紹介する「HX77G」は、去年(2022年)10月24日に記事を掲載した「HX90G」の姉妹モデルに相当する。

 扉の写真の通りデザイン/大きさなどは同じで、主な違いはCPUがRyzen 7 7735HS対Ryzen 9 5900HX。SKUだけの比較だと本機の方がパフォーマンス的には低くなるはずだ。

 ところが、アーキテクチャが1世代新しく、メモリがDDR4からDDR5、USB Type-C×1からUSB 4 Type-C×2、加えて価格も抑えられ、本機の方が良い面もある。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「HX77G」の仕様
プロセッサRyzen 7 7735HS(8コア/16スレッド/クロック最大3.2GHz(ブーストクロック最大4.75Hz)/キャッシュ 512KB(L1)、4MB(L2)、16MB(L3)/TDP 35-54W
メモリ32GB/16GB×2(DDR5)、SO-DIMM×2、最大64GB
ストレージM.2 2280 512GB×1(M.2 2280×2/空き1)
OSWindows 11 Pro(22H2)
グラフィックスRadeon 680M(12コア)、Radeon RX 6600M(GDDR6/8GB)/USB4(8K@60Hz)×2、HDMI 2.1(4K@60Hz)×2
ネットワーク2.5GbE×1、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB4×2、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.1×1、USB 3.0×3、3.5mmジャック
サイズ/重量205×203×69.3mm(幅×奥行き×高さ/スタンド含まず)、実測で1,460g(スタンドなし)
価格12万3,180円(32GB/512GB)

 プロセッサはRyzen 7 7735HS。8コア/16スレッドでクロック最大3.2GHz。ブーストクロックは最大4.75Hz。キャッシュは512KB(L1)、4MB(L2)、16MB(L3)。TDPは35~54W。9月にRyzen 7 7840HSを搭載したミニPCBeelink「SER7」をご紹介したが、SKUから分かるようにランク的にはこの下になる。

 メモリはSO-DIMM 16GB×2(DDR5)の計32GB(最大64GB)。ストレージはM.2 2280 512GB。2スロットあり1つ空きで増設可能だ。OSはWindows 11 Proを搭載。22H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M(12コア)に加え、Radeon RX 6600M(DDR6/8GB)を採用。VRAM 8GB/GDDR6、7nmプロセスNavi 23、1,792コア(28CU演算ユニット)、128-bitメモリインターフェイスを備えるなど、モバイル用としては強力なGPUとなる。外部ディスプレイ出力用にUSB4(8K@60Hz)×2とHDMI 2.1(4K@60Hz)×2を装備する。

 ネットワークは2.5GbE×1、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB4 Type-C×2、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.1×1、USB 3.0×3、3.5mmジャック。

 サイズ205×203×69.3mm(スタンド含まず)、重量は実測で1,460g(スタンドなし)。扉の写真から分かるように専用のスタンドが付属する。

 価格は、ベアボーン(OSなし)で10万2,380円、32GB/512GBで12万3,180円、32GB/1TBで12万7,180円、64GB/1TB 13万9,980円。ミニPCとしては高い方だが、dGPUを搭載と考えるとコストパフォーマンスは良いのではないだろうか。

前面。USB 3.0、3.5mmジャック×2、USB 3.0 Type-C、電源ボタン
背面は2.5Gigabit Ethernet、USB 3.1、USB 3.0×2、HDMI×2、USB4×2、電源入力
側面とiPhone 13 Pro。スタンドなしだとiPhone 13 Proは3/4ほどになる。逆側にはゴム足×2
付属品。ACアダプタ(サイズ約175×80×30mm/重量650g/出力19V/13.8A)、スタンド1、スタンド2、ネジ
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で1,460g(スタンドなし)
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4なのでType-C/Type-Cケーブル1本でOK

 筐体はブラック。プラスティック製なので高級感はないものの許容範囲だろう。両サイドのメッシュが印象的なデザインだ。カテゴリ的にはミニPCだが、iPhone 13 Proとの比較からも分かるように、これまでご紹介しているNUCタイプよりは大きい。付属のスタンドを使った縦置きが基本だが、左サイドのゴム足からも分かるように横置きも対応する。

 前面はUSB 3.0、3.5mmジャック×2、USB 3.0 Type-C、電源ボタン。背面は2.5Gigabit Ethernet、USB 3.1、USB 3.0×2、HDMI×2、USB4×2、電源入力を配置。いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続はUSB4があるのでType-C/Type-Cケーブル1本でOK。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。

 付属のACアダプタはサイズ約175×80×30mm/重量650g/出力19V/13.8Aと、ミニPCとしてはかなり大きい。出力約260Wもある。

 内部へのアクセスは、(扉の写真)左側面にゴム足が2つあるのでそれを剥がすとネジがあるのでこれを外す。あとはカバーが爪で引っかかってるのをうまく外せば開く。

 さらに金属パネルがあるのでネジ4本外すとM.2スロット×2とSO-DIMM×2にアクセスできる。M.2スロットは1つ空きなので、もう1つType 2280のSSDを増設可能だ。

裏カバーを外したところ。ゴム足の下にネジが4本。これを外すと内部にアクセスできる
内部アップ。さらに4本のネジを外すと金属パネルが外れる。SO-DIMM×2とM.2 2288 SSD1基。その横(上)にM.2の空きスロット

 ノイズは試用中特に気にならなかった。これなら比較的耳に近いモニターの横に置いても大丈夫だ。発熱は高負荷時それなりにあるものの、大したことないレベル。ただ縦位置だと右側から温かいエアーが出るので、モニターの横に置くなら右側の方がいいだろうか。

 このように、さすがに作り慣れているだけあって完成度は高く、安心して使用することができるミニPCに仕上がってる。

通常用途はもちろん、一般的なゲームであれば楽しめるパフォーマンス

 初期起動時、特にプリインストールなどのアプリはなく、Windows 11標準のまま。壁紙などの変更もない。Ryzen 7/32GB/SSDの構成なので何をしてもキビキビ動き、ストレスは皆無。これもさすがと言ったところ。

 ストレージはM.2 2280 512GB PCIe SSDの「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」。ネットで探した限りメーカー情報はなかったが、シーケンシャルリード約4,800MB/s、シーケンシャルライト約3,500MB/s出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられ空き438GB。

 2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V、Wi-FiとBluetoothはRZ608が使われている。AMD SoftwareでdGPUのRadeon RX 6600M/8GB(GDDR6)が確認できる。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11標準。特に追加されたものはない
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 512GB PCIe SSDの「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」。2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V、Wi-FiとBluetoothはRZ608
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられている
AMD Software。dGPUのRadeon RX 6600M/8GB(GDDR6)を確認

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。3DMarkのTime SpyはiGPU/dGPUの指定ができるので両方のスコアを掲載している。

 スコアを見る限り、Ryzen 9 5900HXを搭載した「HX90G」とほとんど変わらない。これならUSB4×2と安価な分、本機の方がいいのではないだろうか。

 少しハマったのが、USB4でディスプレイ接続すると、どうやらiGPUになってしまうようだ。強制的に切り替えようと、システム→ディスプレイ→グラフィック→既定のグラフィック設定でdGPUを指定するとブラックアウトする。HDMIに接続し直したところdGPU側を使うようになった。

 以前の「HX90G」はどうだったかと記事を見直したところ、そもそもUSB4がなく、HDMI接続だったので、この問題は発生しないと言うオチだった。ここさえ注意すれば、このクラスとしては爆速のベンチマークテスト結果となる。

ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2636
PCMark 10 Score7,668
Essentials10,567
App Start-up Score13,697
Video Conferencing Score9,267
Web Browsing Score9,296
Productivity9,217
Spreadsheets Score11,254
Writing Score7,549
Digital Content Creation12,563
Photo Editing Score19,646
Rendering and Visualization Score17,170
Video Editting Score5,879
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,211
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.05,359
Storage5,071
3DMark v2.27.8117
Time Spy8,497 / 2,761 (iGPU Radeon 680M)
Fire Strike Ultra5,489
Fire Strike Extreme10,487
Fire Strike21,518
Sky Diver51,572
Cloud Gate59,935
Ice Storm Extreme219,869
Ice Storm228,814
Cinebench R23
CPU13,894(4位)
CPU(Single Core)1,568(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード4807.352 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト3545.772 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1332.948 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト2350.093 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード644.093 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト451.960 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード68.340 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト275.122 MB/s

AUTOMATIC1111を動かしてみた

 せっかくそれなりのdGPUとVRAM 8GBなので、Stable Diffusion / AUTOMATIC1111を動かしてみた。AMD GPUで動かすのは今回が初。Githubがあるので、そこに書かれている通りにしている。仕掛け的にはDirectML版となる。

1) Python 3.10.6 (インストールのパネルでPATHを加えるにチェック)と、gitをインストール

2) CMDで以下を実行

git clone https://github.com/lshqqytiger/stable-diffusion-webui-directml && cd stable-diffusion-webui-directml && git submodule init && git submodule update

3) webui-user.bat を実行

たったこれだけと意外に簡単。初回起動後、Ctrl-Cで一旦終了。再度、さっきのbatを実行しないと初回でいきなり生成するとエラーで落ちるので注意したい。

 ただ動かしてみると(途中でVRAM不足で落ちるが)iGPU側を使い、dGPU側は使っていない。いろいろ調べたが、デバイスを切り替える方法が分からず(--device-id 1だと作動しない)、結局デバイスマネージャでiGPUのドライバを無効にした(後で分かったが、先の既定のグラフィック設定でdGPUにしても切り替わる。ただし生成時間は変わらず)。起動オプションは--no-half-vaeのみ。xformersは元々動かない。

 次にいつものベンチマークテストをと、AbyssOrangeMix2_nsfw.safetensorsをコピー。動かした結果が以下の画面キャプチャとなる。VRAMは8GB中7GB前後を使用。CPUは10%前後しか使っていない。が、1枚2分近くととんでもなく遅い(10枚で19:12)。

 筆者はAMDのGPUは初なので何か間違っているかも知れないが、この結果通りなら、残念ながらStable Diffusionは実用的ではなさそうだ……。

Radeon RX 6600Mを使って作動中のAUTOMATIC1111。ただ一枚2分ほどかかる
本機のUSB4へGPU Boxキット+RTX 4070Tiを接続したところ無事作動。上記の画像が1枚約2秒。圧倒的な差だ

 実はもう1つ実験をした。先月Beelink「SER7」のUSB4にGPU Boxキット+GeForce RTX 4070 Tiを接続したところ、ドライバロード時に落ちたと書いた。これを本機で再テストしたところ問題なく作動したのだ。

 同じくAUTOMATIC1111を動かすと、上記の画像1枚たった2秒(写真はPromptを75 tokenにして実行中。これだと1枚1秒)。さすがに本機が高いだけのことはある(14万円前後)。


 以上のようにMINISFORUM「HX77G」は、Ryzen 7 7735HSとRadeon RX 6600M(8GB/GDDR6)を搭載した少し大きめのミニPCだ。加えて2.5GbEとUSB4×2もポイントが高い。価格はベアボーンで10万2,380円。メモリ/SSD搭載モデルだと32GB/1TBがお買い得だろうか。

 上記した通り、dGPUで動かすにはHDMI接続する必要がある点は気になるものの、総じて完成度は高く、欠点らしい欠点はない。ミニPCでdGPU付きを求めているユーザーに是非使ってほしい1台だ。