西川和久の不定期コラム
Ryzen+Radeon搭載で本格的にゲームもプレイできるミニPC!「MINISFORUM HX77G」
2023年10月6日 06:13
MINISFORUMは9月6日、CPUにRyzen 7 7735HS、加えてdGPUにRadeon RX 6600Mを採用したミニPCを発表、現在販売中だ。32GB/512GBモデルが手元に届いたので試用レポートをお届けしたい。
Radeon RX 6600M(8GB)を搭載したゲーミングミニPC
今回ご紹介する「HX77G」は、去年(2022年)10月24日に記事を掲載した「HX90G」の姉妹モデルに相当する。
扉の写真の通りデザイン/大きさなどは同じで、主な違いはCPUがRyzen 7 7735HS対Ryzen 9 5900HX。SKUだけの比較だと本機の方がパフォーマンス的には低くなるはずだ。
ところが、アーキテクチャが1世代新しく、メモリがDDR4からDDR5、USB Type-C×1からUSB 4 Type-C×2、加えて価格も抑えられ、本機の方が良い面もある。主な仕様は以下の通り。
MINISFORUM「HX77G」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Ryzen 7 7735HS(8コア/16スレッド/クロック最大3.2GHz(ブーストクロック最大4.75Hz)/キャッシュ 512KB(L1)、4MB(L2)、16MB(L3)/TDP 35-54W |
メモリ | 32GB/16GB×2(DDR5)、SO-DIMM×2、最大64GB |
ストレージ | M.2 2280 512GB×1(M.2 2280×2/空き1) |
OS | Windows 11 Pro(22H2) |
グラフィックス | Radeon 680M(12コア)、Radeon RX 6600M(GDDR6/8GB)/USB4(8K@60Hz)×2、HDMI 2.1(4K@60Hz)×2 |
ネットワーク | 2.5GbE×1、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
インターフェイス | USB4×2、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.1×1、USB 3.0×3、3.5mmジャック |
サイズ/重量 | 205×203×69.3mm(幅×奥行き×高さ/スタンド含まず)、実測で1,460g(スタンドなし) |
価格 | 12万3,180円(32GB/512GB) |
プロセッサはRyzen 7 7735HS。8コア/16スレッドでクロック最大3.2GHz。ブーストクロックは最大4.75Hz。キャッシュは512KB(L1)、4MB(L2)、16MB(L3)。TDPは35~54W。9月にRyzen 7 7840HSを搭載したミニPCBeelink「SER7」をご紹介したが、SKUから分かるようにランク的にはこの下になる。
メモリはSO-DIMM 16GB×2(DDR5)の計32GB(最大64GB)。ストレージはM.2 2280 512GB。2スロットあり1つ空きで増設可能だ。OSはWindows 11 Proを搭載。22H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し評価した。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M(12コア)に加え、Radeon RX 6600M(DDR6/8GB)を採用。VRAM 8GB/GDDR6、7nmプロセスNavi 23、1,792コア(28CU演算ユニット)、128-bitメモリインターフェイスを備えるなど、モバイル用としては強力なGPUとなる。外部ディスプレイ出力用にUSB4(8K@60Hz)×2とHDMI 2.1(4K@60Hz)×2を装備する。
ネットワークは2.5GbE×1、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB4 Type-C×2、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.1×1、USB 3.0×3、3.5mmジャック。
サイズ205×203×69.3mm(スタンド含まず)、重量は実測で1,460g(スタンドなし)。扉の写真から分かるように専用のスタンドが付属する。
価格は、ベアボーン(OSなし)で10万2,380円、32GB/512GBで12万3,180円、32GB/1TBで12万7,180円、64GB/1TB 13万9,980円。ミニPCとしては高い方だが、dGPUを搭載と考えるとコストパフォーマンスは良いのではないだろうか。
筐体はブラック。プラスティック製なので高級感はないものの許容範囲だろう。両サイドのメッシュが印象的なデザインだ。カテゴリ的にはミニPCだが、iPhone 13 Proとの比較からも分かるように、これまでご紹介しているNUCタイプよりは大きい。付属のスタンドを使った縦置きが基本だが、左サイドのゴム足からも分かるように横置きも対応する。
前面はUSB 3.0、3.5mmジャック×2、USB 3.0 Type-C、電源ボタン。背面は2.5Gigabit Ethernet、USB 3.1、USB 3.0×2、HDMI×2、USB4×2、電源入力を配置。いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続はUSB4があるのでType-C/Type-Cケーブル1本でOK。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。
付属のACアダプタはサイズ約175×80×30mm/重量650g/出力19V/13.8Aと、ミニPCとしてはかなり大きい。出力約260Wもある。
内部へのアクセスは、(扉の写真)左側面にゴム足が2つあるのでそれを剥がすとネジがあるのでこれを外す。あとはカバーが爪で引っかかってるのをうまく外せば開く。
さらに金属パネルがあるのでネジ4本外すとM.2スロット×2とSO-DIMM×2にアクセスできる。M.2スロットは1つ空きなので、もう1つType 2280のSSDを増設可能だ。
ノイズは試用中特に気にならなかった。これなら比較的耳に近いモニターの横に置いても大丈夫だ。発熱は高負荷時それなりにあるものの、大したことないレベル。ただ縦位置だと右側から温かいエアーが出るので、モニターの横に置くなら右側の方がいいだろうか。
このように、さすがに作り慣れているだけあって完成度は高く、安心して使用することができるミニPCに仕上がってる。
通常用途はもちろん、一般的なゲームであれば楽しめるパフォーマンス
初期起動時、特にプリインストールなどのアプリはなく、Windows 11標準のまま。壁紙などの変更もない。Ryzen 7/32GB/SSDの構成なので何をしてもキビキビ動き、ストレスは皆無。これもさすがと言ったところ。
ストレージはM.2 2280 512GB PCIe SSDの「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」。ネットで探した限りメーカー情報はなかったが、シーケンシャルリード約4,800MB/s、シーケンシャルライト約3,500MB/s出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられ空き438GB。
2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V、Wi-FiとBluetoothはRZ608が使われている。AMD SoftwareでdGPUのRadeon RX 6600M/8GB(GDDR6)が確認できる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。3DMarkのTime SpyはiGPU/dGPUの指定ができるので両方のスコアを掲載している。
スコアを見る限り、Ryzen 9 5900HXを搭載した「HX90G」とほとんど変わらない。これならUSB4×2と安価な分、本機の方がいいのではないだろうか。
少しハマったのが、USB4でディスプレイ接続すると、どうやらiGPUになってしまうようだ。強制的に切り替えようと、システム→ディスプレイ→グラフィック→既定のグラフィック設定でdGPUを指定するとブラックアウトする。HDMIに接続し直したところdGPU側を使うようになった。
以前の「HX90G」はどうだったかと記事を見直したところ、そもそもUSB4がなく、HDMI接続だったので、この問題は発生しないと言うオチだった。ここさえ注意すれば、このクラスとしては爆速のベンチマークテスト結果となる。
ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2636 | |
PCMark 10 Score | 7,668 |
Essentials | 10,567 |
App Start-up Score | 13,697 |
Video Conferencing Score | 9,267 |
Web Browsing Score | 9,296 |
Productivity | 9,217 |
Spreadsheets Score | 11,254 |
Writing Score | 7,549 |
Digital Content Creation | 12,563 |
Photo Editing Score | 19,646 |
Rendering and Visualization Score | 17,170 |
Video Editting Score | 5,879 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 5,211 |
Creative Accelarated 3.0 | N/A |
Work Accelarated 2.0 | 5,359 |
Storage | 5,071 |
3DMark v2.27.8117 | |
Time Spy | 8,497 / 2,761 (iGPU Radeon 680M) |
Fire Strike Ultra | 5,489 |
Fire Strike Extreme | 10,487 |
Fire Strike | 21,518 |
Sky Diver | 51,572 |
Cloud Gate | 59,935 |
Ice Storm Extreme | 219,869 |
Ice Storm | 228,814 |
Cinebench R23 | |
CPU | 13,894(4位) |
CPU(Single Core) | 1,568(1位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 4807.352 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 3545.772 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1332.948 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 2350.093 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 644.093 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 451.960 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 68.340 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 275.122 MB/s |
AUTOMATIC1111を動かしてみた
せっかくそれなりのdGPUとVRAM 8GBなので、Stable Diffusion / AUTOMATIC1111を動かしてみた。AMD GPUで動かすのは今回が初。Githubがあるので、そこに書かれている通りにしている。仕掛け的にはDirectML版となる。
1) Python 3.10.6 (インストールのパネルでPATHを加えるにチェック)と、gitをインストール
2) CMDで以下を実行
git clone https://github.com/lshqqytiger/stable-diffusion-webui-directml && cd stable-diffusion-webui-directml && git submodule init && git submodule update
3) webui-user.bat を実行
たったこれだけと意外に簡単。初回起動後、Ctrl-Cで一旦終了。再度、さっきのbatを実行しないと初回でいきなり生成するとエラーで落ちるので注意したい。
ただ動かしてみると(途中でVRAM不足で落ちるが)iGPU側を使い、dGPU側は使っていない。いろいろ調べたが、デバイスを切り替える方法が分からず(--device-id 1だと作動しない)、結局デバイスマネージャでiGPUのドライバを無効にした(後で分かったが、先の既定のグラフィック設定でdGPUにしても切り替わる。ただし生成時間は変わらず)。起動オプションは--no-half-vaeのみ。xformersは元々動かない。
次にいつものベンチマークテストをと、AbyssOrangeMix2_nsfw.safetensorsをコピー。動かした結果が以下の画面キャプチャとなる。VRAMは8GB中7GB前後を使用。CPUは10%前後しか使っていない。が、1枚2分近くととんでもなく遅い(10枚で19:12)。
筆者はAMDのGPUは初なので何か間違っているかも知れないが、この結果通りなら、残念ながらStable Diffusionは実用的ではなさそうだ……。
実はもう1つ実験をした。先月Beelink「SER7」のUSB4にGPU Boxキット+GeForce RTX 4070 Tiを接続したところ、ドライバロード時に落ちたと書いた。これを本機で再テストしたところ問題なく作動したのだ。
同じくAUTOMATIC1111を動かすと、上記の画像1枚たった2秒(写真はPromptを75 tokenにして実行中。これだと1枚1秒)。さすがに本機が高いだけのことはある(14万円前後)。
以上のようにMINISFORUM「HX77G」は、Ryzen 7 7735HSとRadeon RX 6600M(8GB/GDDR6)を搭載した少し大きめのミニPCだ。加えて2.5GbEとUSB4×2もポイントが高い。価格はベアボーンで10万2,380円。メモリ/SSD搭載モデルだと32GB/1TBがお買い得だろうか。
上記した通り、dGPUで動かすにはHDMI接続する必要がある点は気になるものの、総じて完成度は高く、欠点らしい欠点はない。ミニPCでdGPU付きを求めているユーザーに是非使ってほしい1台だ。