西川和久の不定期コラム

USB PD給電でも動作する5万円台のCore i7搭載ミニPC。MINISFORUM「UN1265」

UN1265

 MINISFORUMは4日、Core i7搭載でUSB PD給電対応ミニPC「UN1265」の予約受付を開始した。一足早く実機を使う機会に恵まれたので、試用レポートをお届けしたい。

USB PD給電に対応したハイパフォーマンスミニPC

 本コラムでは、Core i7-12650Hを搭載した同社のミニPC「NAB6」を5月にレポートしたので、「またi7-12650H搭載のミニPC?」と思う方も多いのではないだろうか。

 何が違うのかと仕様を確認したところ、主な違いは3つあった。NAB6と比べると、2.5Gigabit Ethernetが2つから1つへ減ったこと、映像出力がHDMI+USB Type-C×2からHDMI+DisplayPort+USB Type-Cへ変わったこと、そして決定的なのがUSB PD給電に対応したことだ。

 この意味は大きく、対応したモニターがあれば、USB Type-Cケーブル1本で給電と映像伝送を賄える。実際筆者はこのスタイルでMacBook Pro 14を使っており、通常時は蓋を閉め、キーボードとマウスを接続してデスクトップ的に使用し、持ち出す時はUSB Type-Cケーブル1本抜けばOKなため、非常に便利だ。

 本機の場合、小さいとは言えデスクトップPCなので外して持ち出すことはあまりないとは思うものの、それでもケーブル1本で済むのは机周りがシンプルになるのでありがたい。

 主な仕様は以下の通りだ。

【表1】MINISFORUM「UN1265」の仕様
製品名UN1265
プロセッサCore i7-12650H
(Pコア×6+Eコア×4、10コア/16スレッド、クロック最大4.7GHz、キャッシュ24MB、TDP 45W)
メモリ16GB(SODIMM/DDR4-3200 8GB×2/最大64GB)
ストレージM.2 2280 SSD 512GB、2.5インチSATA HDD/SSD(空き、厚さ7mm以内)
OSWindows 11 Pro
グラフィックスCore UHD Graphics
映像出力HDMI(4K/60Hz)、USB Type-C(4K/60Hz)、DisplayPort(4K/144Hz)
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode/データ/PD給電対応)、USB 3.1×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック
サイズ/重量129.6×127.8×54.3mm/548g(実測)
価格5万5,980円

 プロセッサは第12世代Alder LakeのCore i7-12650H。末尾HのハイパフォーマンスSKUだ。Pコア×6+Eコア×4の計10コアで16スレッド、クロックは最大4.7GHzとなる。できれば第13世代がほしいところだが、古い分、価格がかなり安くなっている。

 メモリはDDR4-3200 8GB×2の計16GB(最大64GB)。プロセッサ的にはDDR5にも対応しており、CPU内蔵GPUのパフォーマンスにも影響するため、DDR4なのは少し残念だ。ストレージはM.2 2280 SSDの512GBで、パネルの裏に2.5インチSATA HDD/SSD(厚さ7mm以内)を装着可能だ。OSはWindows 11 Pro。バージョン22H2だったので、この範囲内でWindows Updateを適用し評価している。

 グラフィックスはCPU内蔵のCore UHD Graphicsを搭載。映像出力として、HDMI(4K/60Hz)、USB Type-C(4K/60Hz)、DisplayPort(4K/144Hz)の3つを装備している。

 なお、上記したように、USB Type-CポートはPD給電可能なため、対応したモニターを接続すれば、ケーブル1本で電源供給しつつ表示も可能になる。ただし、90W以上給電できるものが必要となる。

 ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2を装備。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode/データ/PD給電対応)、USB 3.1 Type-A×2、USB 2.0×2、3.5mmジャックを備える。

 サイズは129.6×127.8×54.3mm。重量は実測で548g。価格はベアボーンが4万6,380円、16GB/512GBモデルが5万5,980円、32GB/512GBモデルが5万9,180円、32GB/1TBモデルが6万2,380円。

 パフォーマンスを考えるとかなり安く、ベアボーンと16GB/512GBモデルの差も1万円ない。OS+メモリ+ストレージの有無が違うのに差額はたったそれだけ? と感じる。

前面。電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.0×2
背面。電源入力、USB 3.1 Type-C、HDMI、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、USB 2.0×2
裏面。相変わらずコンパクト。iPhone 13 Proより幅、奥行きともに小さい
内部とパネル。裏のゴム足を外すとネジがある。今回は背面パネル部分も含まれているため、いつもより少し外しにくい
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB Type-Cケーブル1本で問題なく利用できた
重量。実測で548g

 筐体はこれまでの同社製ミニPCと同様にコンパクト。プラスチック製なので高級感はないものの、特に問題にはならないと思われる。VESAマウントにも対応するのでモニター裏などにも設置可能だ。

 前面に電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.1×2、背面に電源入力、USB 3.1 Type-C、HDMI、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、USB 2.0×2を配置。裏はゴム足が4つある。USB 3.1 Type-Cは映像出力とPD給電にも対応しており、普段使っているキーボード付きモバイルモニターも問題なく接続できた。

 付属品はACアダプタ、VESAマウンタ、HDMIケーブル、ACケーブル、ネジ。ACアダプタは出力19V/4.73Aのため、USB PD給電をするには90W以上の出力に対応する必要がある。

 内部へのアクセスは、裏のゴム足を外すと現われるネジを外せばOKだ。ただし同社としてはめずらしく裏蓋だけでなく、背面パネルも含まれているため、いつもよりは外しにくい。

付属品。ACアダプタ(サイズ約14×6×3cm、重量372g、出力19V/4.73A)、VESAマウンタ、HDMIケーブル、ACケーブル、ネジ
内部。中央辺りにある長細いコネクタが増設用のSATAケーブル。付属品ではなく、初めから装着されていた

 本体裏側の内部には2.5インチSATA HDD/SSD(厚さ7mm以内)を内蔵可能。いつも専用SATAケーブルが付属品にないなと思っていたのだが、今回は初めから筐体内部に入っていた。これなら紛失する心配もなく安心だ。

 上記の写真の場合、SATAコネクタを中心に、左側にSO-DIMM 2枚、右側にM.2 2280 SSDを内蔵している。プロセッサなどは裏側になるため見えない。

BIOS/Main。起動時[Del]キーで表示
BIOS/Advanced

 ノイズや発熱は試用した範囲では特に気にならなかった。同社によると、液体金属のCPUグリスやシングルヒートパイプ冷却システム、静音性の高いファンが使われており、これらの複合効果によるものかと思われる。

手頃な価格で実用十分以上の性能。CPU性能はCore i7-12650Hとしては平均的

 初期起動時のデスクトップはWindows標準のまま。特に追加されているアプリなどもない。第12世代のCore i7、16GBメモリ、SSD搭載なので、ストレスなく快適に操作可能だ。これが6万円を切るとは、ちょっと信じられない。

 512GB SSDは「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」が搭載されていた。CrystalDiskMarkではシーケンシャルリードが約4.7GB/s、シーケンシャルライト約3.5GB/sと高速だ。Cドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ、空き容量438GBだった。

 2.5Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiとBluetoothもRZ608でRealtek製だ。同じプロセッサを搭載した「NAB6」のEthernetはIntel製のI225-V×2だったので、ここも変更されている。

初期起動時のデスクトップ
デバイスマネージャ/主要なデバイス。512GB SSDは「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」。2.5Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiとBluetoothもRZ608でRealtek製だった
ストレージのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで、約475GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。同じプロセッサを搭載した「NAB6」に勝った項目は赤文字となっている。

 全体的に負けているが、僅差や誤差の範囲のものも含まれている。概ね同じような性能が発揮できると考えてよいだろう。いずれにしてもこのパフォーマンスが5万円前後で手に入るのだから、いい時代になったものだ。

【表2】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2636
PCMark 10 Score5,537
Essentials10,789
App Start-up Score15,782
Video Conferencing Score7,777
Web Browsing Score10,234
Productivity7,110
Spreadsheets Score7,203
Writing Score7,019
Digital Content Creation6,006
Photo Editing Score8,325
Rendering and Visualization Score4,076
Video Editing Score6,386
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelerated 3.04,832
Creative Accelerated 3.0-
Work Accelerated 2.03,253
Storage 5,030
3DMark v2.26.8125
Time Spy1,409
Fire Strike Ultra952
Fire Strike Extreme 1,894
Fire Strike3,967
Sky Diver12,991
Cloud Gate21,281
Ice Storm Extreme70,609
Ice Storm85,391
Cinebench R23
CPU8,805
CPU(Single Core)1,783
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード4,797.565MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト3,539.925MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1,315.593MB/s
4K Q8T8 ランダムライト2,381.650MB/s
4K Q32T1 ランダムリード843.105MB/s
4K Q32T1 ランダムライト635.904MB/s
4K Q1T1 ランダムリード68.476MB/s
4K Q1T1 ランダムライト370.069MB/s

 以上のようにMINISFORUM「UN1265」は、Core i7-12650Hを搭載したミニPCだ。予算や用途に応じてベアボーン、16GBメモリ/512GB SSD、32GBメモリ/512GB SSD、32GBメモリ/1TB SSDと構成を選べるのもポイントが高い。そして何といってもUSB PD給電をサポートし、対応しているモニターであればUSB Type-Cケーブル1本で電源も映像もOKになったのはナイスな強化だ。

 特に欠点らしい欠点もなく、コンパクトでハイパワーな本機。できれば安く、さらにUSB PD給電が外せないというユーザーに是非使って欲しい1台だ。