西川和久の不定期コラム
USB PD給電でも動作する5万円台のCore i7搭載ミニPC。MINISFORUM「UN1265」
2023年8月8日 06:24
USB PD給電に対応したハイパフォーマンスミニPC
本コラムでは、Core i7-12650Hを搭載した同社のミニPC「NAB6」を5月にレポートしたので、「またi7-12650H搭載のミニPC?」と思う方も多いのではないだろうか。
何が違うのかと仕様を確認したところ、主な違いは3つあった。NAB6と比べると、2.5Gigabit Ethernetが2つから1つへ減ったこと、映像出力がHDMI+USB Type-C×2からHDMI+DisplayPort+USB Type-Cへ変わったこと、そして決定的なのがUSB PD給電に対応したことだ。
この意味は大きく、対応したモニターがあれば、USB Type-Cケーブル1本で給電と映像伝送を賄える。実際筆者はこのスタイルでMacBook Pro 14を使っており、通常時は蓋を閉め、キーボードとマウスを接続してデスクトップ的に使用し、持ち出す時はUSB Type-Cケーブル1本抜けばOKなため、非常に便利だ。
本機の場合、小さいとは言えデスクトップPCなので外して持ち出すことはあまりないとは思うものの、それでもケーブル1本で済むのは机周りがシンプルになるのでありがたい。
主な仕様は以下の通りだ。
製品名 | UN1265 |
---|---|
プロセッサ | Core i7-12650H (Pコア×6+Eコア×4、10コア/16スレッド、クロック最大4.7GHz、キャッシュ24MB、TDP 45W) |
メモリ | 16GB(SODIMM/DDR4-3200 8GB×2/最大64GB) |
ストレージ | M.2 2280 SSD 512GB、2.5インチSATA HDD/SSD(空き、厚さ7mm以内) |
OS | Windows 11 Pro |
グラフィックス | Core UHD Graphics |
映像出力 | HDMI(4K/60Hz)、USB Type-C(4K/60Hz)、DisplayPort(4K/144Hz) |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode/データ/PD給電対応)、USB 3.1×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック |
サイズ/重量 | 129.6×127.8×54.3mm/548g(実測) |
価格 | 5万5,980円 |
プロセッサは第12世代Alder LakeのCore i7-12650H。末尾HのハイパフォーマンスSKUだ。Pコア×6+Eコア×4の計10コアで16スレッド、クロックは最大4.7GHzとなる。できれば第13世代がほしいところだが、古い分、価格がかなり安くなっている。
メモリはDDR4-3200 8GB×2の計16GB(最大64GB)。プロセッサ的にはDDR5にも対応しており、CPU内蔵GPUのパフォーマンスにも影響するため、DDR4なのは少し残念だ。ストレージはM.2 2280 SSDの512GBで、パネルの裏に2.5インチSATA HDD/SSD(厚さ7mm以内)を装着可能だ。OSはWindows 11 Pro。バージョン22H2だったので、この範囲内でWindows Updateを適用し評価している。
グラフィックスはCPU内蔵のCore UHD Graphicsを搭載。映像出力として、HDMI(4K/60Hz)、USB Type-C(4K/60Hz)、DisplayPort(4K/144Hz)の3つを装備している。
なお、上記したように、USB Type-CポートはPD給電可能なため、対応したモニターを接続すれば、ケーブル1本で電源供給しつつ表示も可能になる。ただし、90W以上給電できるものが必要となる。
ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2を装備。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode/データ/PD給電対応)、USB 3.1 Type-A×2、USB 2.0×2、3.5mmジャックを備える。
サイズは129.6×127.8×54.3mm。重量は実測で548g。価格はベアボーンが4万6,380円、16GB/512GBモデルが5万5,980円、32GB/512GBモデルが5万9,180円、32GB/1TBモデルが6万2,380円。
パフォーマンスを考えるとかなり安く、ベアボーンと16GB/512GBモデルの差も1万円ない。OS+メモリ+ストレージの有無が違うのに差額はたったそれだけ? と感じる。
筐体はこれまでの同社製ミニPCと同様にコンパクト。プラスチック製なので高級感はないものの、特に問題にはならないと思われる。VESAマウントにも対応するのでモニター裏などにも設置可能だ。
前面に電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.1×2、背面に電源入力、USB 3.1 Type-C、HDMI、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、USB 2.0×2を配置。裏はゴム足が4つある。USB 3.1 Type-Cは映像出力とPD給電にも対応しており、普段使っているキーボード付きモバイルモニターも問題なく接続できた。
付属品はACアダプタ、VESAマウンタ、HDMIケーブル、ACケーブル、ネジ。ACアダプタは出力19V/4.73Aのため、USB PD給電をするには90W以上の出力に対応する必要がある。
内部へのアクセスは、裏のゴム足を外すと現われるネジを外せばOKだ。ただし同社としてはめずらしく裏蓋だけでなく、背面パネルも含まれているため、いつもよりは外しにくい。
本体裏側の内部には2.5インチSATA HDD/SSD(厚さ7mm以内)を内蔵可能。いつも専用SATAケーブルが付属品にないなと思っていたのだが、今回は初めから筐体内部に入っていた。これなら紛失する心配もなく安心だ。
上記の写真の場合、SATAコネクタを中心に、左側にSO-DIMM 2枚、右側にM.2 2280 SSDを内蔵している。プロセッサなどは裏側になるため見えない。
ノイズや発熱は試用した範囲では特に気にならなかった。同社によると、液体金属のCPUグリスやシングルヒートパイプ冷却システム、静音性の高いファンが使われており、これらの複合効果によるものかと思われる。
手頃な価格で実用十分以上の性能。CPU性能はCore i7-12650Hとしては平均的
初期起動時のデスクトップはWindows標準のまま。特に追加されているアプリなどもない。第12世代のCore i7、16GBメモリ、SSD搭載なので、ストレスなく快適に操作可能だ。これが6万円を切るとは、ちょっと信じられない。
512GB SSDは「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」が搭載されていた。CrystalDiskMarkではシーケンシャルリードが約4.7GB/s、シーケンシャルライト約3.5GB/sと高速だ。Cドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ、空き容量438GBだった。
2.5Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiとBluetoothもRZ608でRealtek製だ。同じプロセッサを搭載した「NAB6」のEthernetはIntel製のI225-V×2だったので、ここも変更されている。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。同じプロセッサを搭載した「NAB6」に勝った項目は赤文字となっている。
全体的に負けているが、僅差や誤差の範囲のものも含まれている。概ね同じような性能が発揮できると考えてよいだろう。いずれにしてもこのパフォーマンスが5万円前後で手に入るのだから、いい時代になったものだ。
PCMark 10 v2.1.2636 | |
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PCMark 10 Score | 5,537 |
Essentials | 10,789 |
App Start-up Score | 15,782 |
Video Conferencing Score | 7,777 |
Web Browsing Score | 10,234 |
Productivity | 7,110 |
Spreadsheets Score | 7,203 |
Writing Score | 7,019 |
Digital Content Creation | 6,006 |
Photo Editing Score | 8,325 |
Rendering and Visualization Score | 4,076 |
Video Editing Score | 6,386 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelerated 3.0 | 4,832 |
Creative Accelerated 3.0 | - |
Work Accelerated 2.0 | 3,253 |
Storage | 5,030 |
3DMark v2.26.8125 | |
Time Spy | 1,409 |
Fire Strike Ultra | 952 |
Fire Strike Extreme | 1,894 |
Fire Strike | 3,967 |
Sky Diver | 12,991 |
Cloud Gate | 21,281 |
Ice Storm Extreme | 70,609 |
Ice Storm | 85,391 |
Cinebench R23 | |
CPU | 8,805 |
CPU(Single Core) | 1,783 |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 4,797.565MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 3,539.925MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1,315.593MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 2,381.650MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 843.105MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 635.904MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 68.476MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 370.069MB/s |
以上のようにMINISFORUM「UN1265」は、Core i7-12650Hを搭載したミニPCだ。予算や用途に応じてベアボーン、16GBメモリ/512GB SSD、32GBメモリ/512GB SSD、32GBメモリ/1TB SSDと構成を選べるのもポイントが高い。そして何といってもUSB PD給電をサポートし、対応しているモニターであればUSB Type-Cケーブル1本で電源も映像もOKになったのはナイスな強化だ。
特に欠点らしい欠点もなく、コンパクトでハイパワーな本機。できれば安く、さらにUSB PD給電が外せないというユーザーに是非使って欲しい1台だ。