西川和久の不定期コラム
Chromebook最高峰モデルの使い勝手は?「HP Elite Dragonfly Chromebook Enterprise」
2023年3月7日 06:22
日本HPは、第12世代Core搭載Chromebookなどを販売している。今回はその中からコンシューマ向けではなく、企業向けの「HP Elite Dragonfly Chromebook Enterprise」が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
HP Dragonfly Pro ChromebookのEnterprise版……ではない!?
この日、発表のあったコンシューマ向けChromebook、「HP Dragonfly Pro Chromebook」は、14型2,560×1,600ドットIPS液晶(マルチタッチ対応)、Core i5-1235U/16GB/256GB SSD……と言った感じのものだ。対して今回ご紹介する「HP Elite Dragonfly Chromebook Enterprise」は、いろいろなモデルが用意されている。
プロセッサはCore i3-1215U/i5-1245U/Core i7-1265U。メモリは8GB/16GB、ストレージは128GB/256GB。パネルはヒンジが360度回転する13.5型1,920×1,280ドット(3:2)で、タッチの有無も選択可能。さらに、キーボードはJIS/US配列。加えて5Gやペン(標準搭載)にも対応する。
これからも分かるように、企業のさまざまな(予算も含め)ニーズに答えるべく、用意されたモデル群となる。またパネルサイズも解像度も異なるため、単純に「HP Dragonfly Pro Chromebook」のEnterprise版というわけではない。
手元に届いたのはi5-1245U/8GB/256GB/タッチ対応/5Gモデル/JIS配列。SKU的には「DflyCE i5-1245U/T13WXSV/8/S256/C/5G」となる。主な仕様は以下の通り。
HP「Elite Dragonfly Chromebook Enterprise」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i5-1245U (2P + 8E/10コア12スレッド/~4.4GHz/キャッシュ 12MB/ベース15W/Turbo 55W) |
メモリ | 8GB/LPDDR4X-4266MHz(4GB×2) |
ストレージ | 256GB PCIe NVMe M.2 SSD |
OS | Chrome OS |
ディスプレイ | 13.5型IPS式1,920×1,280ドット(3:2)、1000cd/平方m、72% NTSC |
グラフィックス | Intel Iris Xe Graphics/Type-C、HDMI |
ネットワーク | Wi-Fi 6E対応、Bluetooth 5.2、5Gオプションあり |
インターフェイス | USB4×2、USB 3.1、1080p 5MP Webカメラ(プライバシーシャッター付き)、microSDカードスロット、Nano SIM(5Gモデル)、3.5mmジャック、Audio by Bang & Olufsenスピーカー&アンプ×4、デュアルエッジマイク、指紋センサー、キーボードバックライト |
バッテリ/駆動時間 | 4セル(50WHr)/最大約10時間 |
サイズ/重量 | 294.5×221.8×16.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.27kg |
カラーバリエーション | Slate Blue(スレートブルー) |
付属品 | ペン、スマートACアダプター、電源コード |
価格 | 21万7,800円から |
プロセッサは第12世代Alder LakeのCore i5-1245U。2P+8Eの10コアで12スレッド、クロックは最大4.4GHz、キャッシュは12MB、TDPはベース15W、Turbo 55W。なお本機はIntelのEvo、vProに対応している。
メモリはLPDDR4X-4266MHzの4GB×2で計8GB。ストレージはPCIe NVMe M.2 SSDの256GB。Chromebookの場合、システム的にストレージをあまり使わないこともありeMMCを搭載することも多いが、本機はさすがにSSDを搭載している。OSはChrome OS。管理面で有利なChrome Enterpriseにもアップグレード可能だ。
ディスプレイは13.5型IPS式1,920×1,280ドット(3:2)。3:2なので、縦に広く使うことができ便利だ。HP SURE VIEW REFLECTを搭載し、オンにした時は斜めからほとんど見えなくなり、部外者への情報漏を防ぐことが可能となる。ヒンジが360度回転し、タブレットモード/テントモード/スタンドモードに変形可能。最大輝度1,000cd/平方mで72% NTSC。グラフィックスは、Intel Iris Xe Graphics。外部出力用にHDMIとType-C(USB4)を装備している。
ネットワークはWi-Fi 6E対応無線LAN、Bluetooth 5.2、そしてオプションで5Gもサポート。そのほかのインターフェイスは、USB4×2、USB 3.1、1080p 5MP Webカメラ(プライバシーシャッター付き)、microSDカードスロット、Nano SIM(5Gモデル)、3.5mmジャック、Audio by Bang & Olufsenスピーカー&アンプ×4、デュアルエッジマイク、指紋センサー、キーボードバックライト。ペンは標準同梱だ。一般的なWindowsノートPCと比較しても全く見劣りしない内容になっている。
高速充電機能対応(90分で90%まで充電)の4セル(50WHr)バッテリを内蔵し、最大約10時間駆動可能。カラーバリエーションはSlate Blue(スレートブルー)のみ。サイズは 294.5×221.8×16.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.27kg。価格はCore i3の最小構成で21万7,800円(税込)から……と、いささか高めか。
筐体は、マグネシウムとアルミニウムのハイブリッド素材でメタリックだがマットな感じのスレートブルーで質感はかなり良く、MIL-STD-810Hに準拠しているだけあってガッチリしている。重量は実測で1,333g。13.5型として軽くはないが、特別重くもないという絶妙な感じだ。
前面はパネル中央上にWebカメラ。その上部側面にプライバシーシャッター。少し分かりにくいのでこの下に写真を掲載した。左右のフチは結構狭い。左側面にHDMI、USB4、microSDカードスロット、電源ボタン、音量±ボタン。右側面に3.5mmジャック、USB 3.0、USB4、ロックポート、Nano SIMスロットを配置。裏は前後に1本バー式のゴム足。手前側面左右にスピーカーがある。ACアダプタはサイズ約90×42×25mm、重量180g、出力45W。
13.5型のディスプレイは、明るさ、発色、コントラストは良い。ただ視野角はHP SURE VIEW REFLECTの関係だろうか、オフの時でも一般的なIPS式より狭く、また少しギラツキ感もある。もちろんオンにすると写真のようにほぼ見えなくなる。ヒンジが360度回転し、タブレットモード、テントモード、スタンドモードにも変形できる。とは言え、タブレットモードはこの重量で持つのはつらいので、どちらかというとペン用だろう。
キーボードはJIS配列。キーボードバックライトを搭載している。打鍵感も良いが、少し軽めだろうか。ただ13.5型(特にアスペクト比3:2)のフットプリントに収めた関係か、右側の[-]、[^]、[¥]にそのしわ寄せが来ている感じだ。さらに[Enter]キーが異様に狭い。一方、タッチパッドは1枚プレート型。パームレストも含め広く扱いやすい。
付属のペン(USI Pen)は4,096筆圧レベル。バッテリを内蔵しておりワイヤレスチャージ式だ。写真のように右側面に磁石で吸着、充電でき次第、本体側の設定も不要で即使用できる。
カメラは1080pあるので解像感はそれなりにある。画質は普通だろうか。特別悪くもないが、良くもない。
発熱やノイズは、試用した範囲では特に気にならなかった。サウンドは、手前側面にスピーカーがあるため、机の上や反射物がなくても直接音が耳に届く。パワーも結構あり、業務用と考えると十分と言える。なおマイクに関しては試していないが、360度全方位、AIによるノイズキャンセル機能を搭載している。ビデオ会議も万全だ。
Chromebookとしてはハイエンドなパフォーマンス!
初期起動時、Windows風に下にタスクバー、左端のボタンをクリックでスタートメニューだが、いつの間にかWindows 11風にアプリが中央寄せになっている。右側に通知/設定パネル……と、他は同じだ。もちろんダークモードにも対応。同じGoogleアカウントでChromeOS環境を構築している場合は、アプリも含め同じ環境が自動的に復元される。
設定に関しては、多くの項目がブラウザのChromeと同じであるが、デバイスにハードウェアに依存したChromeOS固有のものが含まれる(ChromeOS Flexも同じ)。ストレージは256B中61.4GBが使用中(内システムに60.6GBと多め)だ。
設定→ネットワーク→モバイルデータを見ると、Nano SIMだけでなく、eSIMにも対応しているのが分かる。プリセットのAPNはspmode.ne.jp、SPモード、mopera U、OCNモバイルONE、そしてOther。4Gだが手持ちのOCNモバイルONEで試したところ、APNを選択するだけで即開通した。
プリインストールのアプリケーションは、「スキャン」、「コンセプト」、「Message」、「Chrome」、「ウェブストア」、「Playストア」、「Gmail」、「Google Meet」、「Google Chat」、「ドキュメント」、「スライド」、「スプレッドシート」、「ファイル」、「YouTube Music」、「Googleドライブ」、「Playブック」、「Google Keep」、「カメラ」、「Googleカレンダー」、「YouTube」、「フォト」、「Google TV」、「印刷ジョブ」、「Play Music」、「設定」、「Text」、「使い方・ヒント」、「Googleマップ」、「スクリーンキャスト」、「ギャラリー」、「Linuxアプリ」、「HP Quick Drop」。
VLC、Geekbench 6、Instagramはアカウントの同期で自動的に入ったもの。この中で同社独自は、コンセプトとHP Quick Dropとなる。前者はペンに特化したアプリ、後者はAirDrop的なものとなる。もちろんLinuxも起動する。
ベンチマークテストは、簡易式でGoogle Octane 2.0とGeekbench 6を使用した。バッテリー駆動時間は、Wi-Fi経由でフルHDの映像を明るさ50%、音量50%で連続再生した結果となる。なおアプリはAndroid版のVLCを使用。
Google Octane 2.0のスコアは82,696とかなり速い。Geekbench 6は、シングルコア1,658、マルチコア5,141。Vulkanは9,303。第12世代Core i5だけあって通常業務用としては十分なパフォーマンスを得られている。
バッテリ駆動時間は今回のテストだと仕様上最大約10時間に対して約6時間と今時としては短い。パネルの輝度や音量を調整すればもう少し伸びそうだが、この辺りは実践的に使わないと何とも言えない部分だ。
以上のように、HP「HP Elite Dragonfly Chromebook Enterprise」は、企業向けのChromebookだ。プロセッサは12世代のi3からi7、メモリ8GB/16GB、ストレージ128GB/256GBと選べ、予算などに応じた構成が可能。
パネルは、ヒンジが360度回転しタブレットなどにも変身でき、アスペクト比3:2で見やすく、SURE VIEW REFLECTで画面から情報が漏れることを阻止できる。さらにUSI-PEN、5G対応……など、ハイエンドに相応しいChromebookに仕上がっている。
[Enter]キーが小さいのと、価格が高めなのがやや気になるものの、業務用途でChromebookを考えている企業に是非使っていただきたい1台だ。