西川和久の不定期コラム
ハードウェアRAID対応のUSB HDDケースで写真作業環境をパワーアップ!TerraMaster「D2-310」
2022年11月29日 06:16
写真作業環境の強化で、NAS+溢れて外部SSDに散在していた写真を、2TB@ハードウェアRAID 1対応のTerraMaster製USBケース(DAS)「D2-310」にまとめた。今回はその経緯と取付/作動確認、最後にPC用としては珍しいポートレート編集専用アプリをご紹介したい。
貯まる一方の写真データをNASからDASへ
仕事で写真を撮り出してから約四半世紀。保管は、MO、PD、CD-ROM、DVD-ROM、着脱式のHDD……など、いろいろなメディアを使ってきた。一番使ったのは着脱式のHDD。撮影枚数がものすごい量だったので、当時1万円前後で買える3.5インチHDDを年に数台入れ替えていた。全部押入れにしまってあるが、今でもドライブがないMOとPD以外は(多分)読める。
その後、メインで撮っているのがグラビアと言うこともあり、10年前辺りから案件が激減したり、あっても低予算、また付き合いのあった制作会社がなくなったり……と、ここ数年は、懐かしい関係者や事務所から連絡があった時、「久々に顔見て、綺麗どころの写真撮って、弁当食べて帰るか!」程度の軽い乗りで参加。積極的には営業していない。
JPEGだけで撮るかJPEG+RAWで撮るかはその時の要求次第。カメラはニコンの「D800E」か富士フイルムの「X-S10」。前者は10年ものだが、写真だけなら今でも十分通用する。とは言え、ここのところコンパクトに収まる後者で撮ることが多い。
ワークフローは、現場はカメラのディスプレイのみで確認。メディアは予備も含め32GB×3。従って確認&バックアップ用途でノートPCは持ち込まない。終了後自宅でmicroSDカードをPCで読み込み、ローカルのSSDで作業。納品後、使わなかった写真も含め全てと、編集後の写真をまとめて外部メディアへ年月日名のフォルダへ保存(1日で複数の現場がある時は末尾にaとかbとか付ける)している。
ただ、一般的な写真と違うのは、被写体がグラビアアイドル。著作権自体は筆者にあるものの、納品後、勝手に使うことができないので、結局一旦保存するとほぼ永久に開かない保管庫的な扱いとなる。
最近のバックアップは1TBのNASを使っていたが(写真以外に原稿や開発系のコードなども入っている)、案件が激減しているとは言え、去年辺りから容量が足らなくなり、手元にあったUSB接続の512GB SSDなど、場当たり的に複数箇所へバックアップしていた。
そんな中、夏に開発用@Core i9-12900/32GB/512GB/Ubuntuと、写真作業用@Mac mini/M1/16GB/256GBへ作業環境を別けたこともあり、後者に大きめのストレージを付け、散在している写真と、今後の撮るであろう写真を1つにまとめることにした。実はつい先日、Mac miniから「MacBook Pro 14」(M1 Pro/8C/16GB/512GB)に買い替えたが、この辺りの話は、12月末の“まとめ記事”で書きたいと思う。
さてこの場合、要求仕様は
- 大容量
- RAID 1(ミラーリング。ハードウェアRAID)
- 一旦保管すると滅多に開かないので転送速度は遅くても良い
- 共有は必要な時にOSの機能を使う
と、こんなところだろうか。従ってRAID 1(ソフトウエアRAIDは面倒なのでハードウェアRAID)に対応し、容量単価が安い3.5インチHDD×2、NASではなくDAS、対象がHDD場合、インターフェイスはUSB 3.x系なら何でもOK(さすがにUSB 2.0は遅い)……となるだろうか。今回選んだのはTerraMaster「D2-310」。用意したHDDは2TB×2。先に書いたようにmacOSへ接続する。
TerraMaster「D2-310」の仕様 | |
---|---|
ディスクスロット数 | 2 |
適合するドライブのタイプ | 3.5インチSATA HDD / 2.5インチSATA HDD / 2.5インチSATA SSD |
対応RAID(ハードウェアRAID) | SINGLE / JBOD / RAID 0 / RAID 1 |
RAID自動再ビルド | RAID 1 |
ドライブホットスワップ | 対応 |
外部ポート | USB 3.0 Type-C×1(5Gbps) |
ノイズレベル | 18.6dB |
サイズ/重量 | 227×119×133mm/1.3kg |
価格 | 1万7,990円(税込。執筆時タイムセールで15,291円) |
用意したHDD | Western Digital HDD 2TB WD Red(WD20EFAX-EC)×2 価格:1万0,710(Amazon)×2 |
仕様は上記の通り。ハードウェアRAID、ホットスワップ、自動再ビルドに対応。USB 3.0 Type-Cなので転送速度は5Gbps。USB 3.1やそれ以上の規格よりは遅いものの、搭載するのが3.5インチHDDなので、そもそもそんなに速度が出ない。HDDはWestern DigitalのNAS用Red。容量は2TB×2だがRAID 1(ミラーリング)なので作動時は2TBとなる。
ちょっと悩んだのが2.5インチHDDか、3.5インチHDDか。本機の場合は両対応なのでどちらでも使えるが、2.5インチ専用なら筐体サイズがコンパクトになる。幸い机の周囲に結構空きがあり、重い方がある意味安定する。大は小を兼ねるのでいいか……と言うところ。価格は1万7,990円。タイムセールで1万5,291円だった。ちなみにAmazonで検索すると1万円前後のものもあるが、本製品はアルミニウム合金で無難なルックス的な感じだ。
筐体はご覧のようにアルミニウム合金で2ベイのNASっぽいルックスだ。重量はHDDなしのケースのみで実測1,350g。ただベイの部分がレバーや内部まで含めプラスチックなのが残念なところ。
前面は、ホットスワップ対応の2ベイ。左側にHDD1/2、POWER LED、電源スイッチ。背面は、全体の約3分の2のスペースがファン。右側にリセット、RAID作動モード切替スイッチ(写真の位置はSINGLE)、Type-C、電源入力を配置。付属品は、ACアダプタ(サイズ約95×43×32mm、重量177g、出力12V/3.33A)、Type-A/Type-Cケーブル、ねじ、クイックインストールガイドなど。
基本的にUSB接続のHDD/SSDケースなので取付や使い方などは簡単。3.5インチの場合はドライバレスでセットできる。1点違うのはリアでRAIDの作動モードを指定すること。今回はRAID 1。後は、前面のレバーを上げ、それぞれのベイへHDDを入れ、ケーブル類の接続などを行ない電源オン。この時はまだRAID 1になっておらず、2つのドライブがOSのディスクツール系で見える。
仕上げは背面のリセットを付属のピンを使って「ピ!」と鳴るまで長押しし、HDDのステータスが赤色から緑色に変われば無事RAID 1が構成されているので、OSのフォーマッタを使ってフォーマットする。
ノイズや振動などは短時間であるが使用した範囲では全く問題なかった。耳を近づけてもファンの音は聞こえない。これなら写真の様に結構手元に近い場所へ設置しても気にならないだろう。
パフォーマンス
ベンチマークテストは、AmorphousDiskMark 4.0を使用。参考までにMacBook Pro 14/512GBのスコアも併記している。
同社のサイトによるとSSHD 2TBでリード400MB/s、ライト410MB/s、WD Red 2TBでリード290MB、ライト280MB(ただしどちらもRAID 0)とある。後者はちょうど今回使ったのと同じドライブ。手元の設定はRAID 1なので速度は落ち、リード184.53MB/s、ライト156.29MB/s。いずれにしてもUSB 3.0のバンド幅内でインターフェイスによるオーバーヘッドは見られない。
早速外付けSSDなどに散らかっている写真を本機にコピー。久々にHDDを使ったが、普段からSSDに慣れていると、MacBook Pro 14のスコアからも分かるようにやはりかなり遅い。とは言え、用途が納品後ほぼ開かない写真なので、実用上は問題ない。
【表】ベンチマーク結果 | |
---|---|
AmorphousDiskMark 4.0 / TerraMaster「D2-310」/ 2TB HDD×2 RAID 1 | |
SEQ1M QD8 Read | 184.53 MB/s |
SEQ1M QD8 Write | 156.29 MB/s |
SEQ1M QD1 Read | 182.22 MB/s |
SEQ1M QD1 Write | 178.84 MB/s |
RND4K QD64 Read | 1.79 MB/s |
RND4K QD64 Write | 0.36 MB/s |
RND4K QD1 Read | 0.54 MB/s |
RND4K QD1 Write | 0.36 MB/s |
AmorphousDiskMark 4.0 / MacBook Pro 14内蔵512GB | |
SEQ1M QD8 Read | 6919.45 MB/s |
SEQ1M QD8 Write | 5254.17 MB/s |
SEQ1M QD1 Read | 3440.45 MB/s |
SEQ1M QD1 Write | 5477.43 MB/s |
RND4K QD64 Read | 806.11 MB/s |
RND4K QD64 Write | 164.23 MB/s |
RND4K QD1 Read | 66.25 MB/s |
RND4K QD1 Write | 43.22 MB/s |
余談 / ポートレート編集専用アプリ「PortraitPro」
以上……では物足らないと思うので(笑)、最後に余談としてPC用としては珍しいポートレート編集専用アプリ「PortraitPro」のご紹介をしたい。普段筆者はPhotoshopかCapture One(富士フイルム対応版)を使っており、+αで便利なアプリとなる。
昨今スマホでは、カメラの撮影機能自体に肌のスムージングなどを含む美肌モードや、特化したアプリとして、BeautyCamやSNOWなどがあり、いわゆる盛れる系が流行っている。ただInstagramに載っている写真などを見ると、顔の大きさや目の大きさまで加工し、やり過ぎで宇宙人的なものが結構あるが、筆者の場合、そこまではしない。
基本的に肌を滑らかにして、ほうれい線や目の下のクマの低減、アイキャッチを少し強調する程度。目や顔の形などは絶対変えない。またGoogleフォトのOneファンクションにあるポートレートライト機能を使うと、後からレフを入れたような効果を付けられ、影消しなどに利用できる。
この辺りの話は、印刷がメインの頃、色校が出て、事務所がチェック、シワっぽいところ全てに赤が入り、レスポンスで修正……といった感じで、アナログ時代から変わらないところだ。変わったのは印刷は製版オペレータが処理したが、現在は多くの場合、カメラマン側の処理となる(なのにギャラが変わらないのは不条理)。
とは言え、これをPhotoshopでやろうとすると、地味にブラシを使ったり、マスクを切って処理したり、1点ものならまだいいが、多数あると手間暇かかり過ぎてやってられない処理となる。ましてポートレートライト的な処理になると絶望的だ。
これらを1発で行なえるのがPortraitPro。WindowsとmacOSに対応。Standard、Studio、Studio Maxと3つのエディションがあり、大きな違いはStudioがRAW対応、Studio Maxがバッチ処理となる。筆者が所有しているのはPortraitPro Studio。Studio Maxのバッチ処理は同一構図で光なども同じでないと使えないので、RAW対応のStudioとした。ただしX-S10のRAWには対応していない。
もともと使い出したのはM1 Mac mini購入直後で、バージョンは21。この時はまだM1には未対応でIntel版をRosetta 2で動かしていたが、バージョン23になってやっとM1/M2対応となった。Rosetta 2でもそれなりに使えたが、やはりM1/M2対応版だと作動が一気にスムーズになった。
機能的には画像を読み込むと自動的に顔の輪郭、眉毛、目、鼻、口などを認識。それを利用して、輪郭の補正(つまり小顔など)、肌のスムージング(目の周り、テカリ消しなど部分修正も含む)、ライティング(Googleフォトより高機能)、メイク、目(アイキャッチも含む)、口と鼻、髪の毛などの修正ができる。もちろん明るさやコントラストなど一般的な補正機能もある。よく使うパターンをプリセットとして登録も可能。またPhotoshopのプラグインにもなる。
いかがだろうか。これだけのことが設定済のプリセットで済むならボタン一発! ということで、かなり便利なのがお分かりいただけると思う。最近Photoshopにはニューラルフィルタとして“ポートレート/肌をスムーズ”が使えるようになったものの、顔全体でのぼかし/滑らかさしか調整ができず、ここまでの細かい調整は無理。お遊び程度にしか使えない。
ただし、PortraitProには欠点があり、メガネがあったり横顔に近いと顔認識率が一気に下がり処理ができなくなる。一応手動で顔の輪郭、眉毛、目、鼻、口などを指定できるものの、これはさすがに面倒だ。
なおPortraitProが顔認識しない画像をBeautyCamやSNOWで読み込むと顔認識して作業が可能。加えて、通常の場合も仕上がりが自然と、ここはかなり悔しい部分。M1/M2搭載機のmacOSの場合、アプリがmacOSのアプリストアへ公開していれば、iOS/iPadOSアプリも使えるが、残念ながら未公開。場合によっていったんiPad Proへ転送して、これらのアプリで修正することもある。できればアプリストアへの公開か、同機能のPhotoshopプラグインなどが欲しいところ。
以上のようにTerraMaster「D2-310」は、ハードウェアRAIDに対応したUSB接続HDD/SSDケースだ。OSから見れば単なるUSB接続の外部ストレージなので扱いも容易。USB 3.0なので速度を求める用途には向かないものの、筆者のように保管できればOKなら問題ない。滅多にアクセスしない写真や動画などが、大量に本体のストレージなどへ溜まっている人にお勧めしたいデバイスと言えよう。