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8コア16スレッドのゲーミングミニPC「Beelink GTR5」。拡張性、発熱、動作音をチェック
2022年3月16日 06:40
Beelinkは、8コア16スレッドのRyzen 9を搭載したゲーミングミニPC「Beelink GTR5」の販売を3月よりAmazonで開始した。価格は11万8,000円。海外の直販サイトでは949ドル(クーポン:GTR530利用で919ドル)から用意されている。
本製品は約168×120×39mmとコミック2冊強のコンパクトサイズながら、オーバークロック可能な「AMD Ryzen 9 5900HX」を採用。dGPUは搭載されていないが、グラフィック品質を調節すれば3Dゲームもストレスなくプレイできる処理性能を備えている。
とは言え小型化には当然トレードオフとなる要素があるはず。今回はパフォーマンスだけでなく、ミニPCの弱点となりがちな拡張性、発熱、動作音などもチェックしていこう。
Ryzen 9 5900HX、メモリ32GB、SSD 500GBとちょっとアンバランスな構成
Amazonで販売されているのは1モデル。OSは「Windows 11 Home 64bit」、CPUは「AMD Ryzen 9 5900HX」(8コア16スレッド、3.3~4.6GHz)を採用。メモリは32GB(DDR4-3200 SO-DIMM)、ストレージは500GB(PCIe Gen3 x4 SSD)を搭載している。
なお、本製品はIndiegogoでクラウドファンディングが実施されていたが、その際にはメモリとストレージを含まないベアボーンキット、メモリ16GB+SSD 500GB、32GB+500GB、64GB+1TBモデルが用意されていた。
インターフェイスは、USB Type-C(データ、映像出力対応)×1、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0×2、DisplayPort×1、HDMI×1、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、3.5mmヘッドセット端子×1を用意。USB Type-C、DisplayPort、HDMIに同時出力することで、トリプルディスプレイ環境を構築できる。無線通信はWi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2対応だ。
サイズは約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測約679.5g。電源は外付けのACアダプタから供給する。
Ryzen 9 5900HX、32GBメモリに500GBストレージという構成は個人的にはアンバランスな気がする。ただし、後述するがM.2のスロットが1基空いており、2.5インチのSATA接続SSD、HDDも増設可能だ。必要に応じてストレージを増設すればよいだろう。
【表1】Beelink GTR5のスペック | |
---|---|
製品名 | Beelink GTR5 |
OS | Windows 11 Home 64bit バージョン21H2 |
CPU | Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.30~4.60GHz) |
GPU | Radeon Graphics |
メモリ | DDR4-3200 SO-DIMM 16GB/32GB/64GB |
ストレージ | 500GB/1TB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280) |
通信 | Wi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2 |
インターフェイス | USB Type-C(データ、映像出力対応)×1、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0×2、DisplayPort×1、HDMI×1、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、3.5mmヘッドセット端子×1 |
本体サイズ | 約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 実測約679.5g |
セキュリティ | 指紋認証センサー一体型電源ボタン |
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、ユーザーマニュアル、HDMIケーブル(100cm)、HDMIケーブル(20cm)、壁掛け式ブラケット×1、M4×6ネジ×3、M3×3ネジ×3、M3×5ネジ×5 |
カラー | ブラック |
価格 | 11万9,800円~ |
メモリ、ストレージの装着、換装は容易で、メンテナンス性は良好
Beelink GTR5の開梱は容易だ。底面のプラスネジ4本をはずしてから、底面のゴム製のツマミを引っ張ると簡単に開けられる。ただし、M.2 SSDと底面パネルがサーマルパッドで貼り付いており、また、本体の基板と底面パネル側の2.5インチストレージスロットがフレキシブルケーブルでつながっている。ゆっくりと力を加えつつ、開く角度を1cm程度に制限して、フレキシブルケーブルが切れないように注意しよう。
フレキシブルケーブル側を中心に底面パネルを開けば、メモリ、M.2ストレージ、2.5インチSATAストレージスロットにアクセスできる。メモリはSO-DIMMが2スロットで最大64GBまで増設可能。M.2ストレージはNVMeが1基使用済みで、SATAがもう1基空いている。2.5インチSATAストレージスロットにはSSD、HDDをスライドして装着したら付属のM3×5ネジで固定する。
コンパクトながら中身はすっきりとしており、メモリ、ストレージの装着、換装は手軽だ。また、規格についてもシールで記載されており、どんなパーツを選べばいいのかわかりやすい。ミニPCとしてはメンテナンス性が高いと言える。
Beelink GTR5のパフォーマンスは安定志向
最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2519」、3Dベンチマーク「3DMark v2.19.7225」、CPUベンチマーク「CINEBENCH R23.200」、「CINEBENCH R20.060」、「CINEBENCH R15.0」、3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」を実施した。
比較対象としては、「AMD Ryzen 9 4900H」(8コア16スレッド、3.30~4.40GHz)を搭載する「MINISFORUM EliteMini HM90」のレビュー記事のスコアを転載している。
【表2】検証機の仕様 | ||
---|---|---|
Beelink GTR5 | MINISFORUM EliteMini HM90 | |
CPU | AMD Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.30~4.60GHz) | AMD Ryzen 9 4900H(8コア16スレッド、3.30~4.40GHz) |
GPU | AMD Radeon Graphics | AMD Radeon Graphics |
メモリ | DDR4-3200 SDRAM 32GB | DDR4-3200 SDRAM 32GB |
ストレ-ジ | 1TB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280) | 512GB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280) |
TDP | 45+W | 35-54W |
OS | Windows 11 Home 64bit バージョン21H2 | Windows 10 Pro 64bit |
サイズ | 約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ) | 約149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 実測約679.5g | 820g |
【表3】ベンチマ-ク結果 | ||
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Beelink GTR5 | MINISFORUM EliteMini HM90 | |
PCMark 10 v2.1.2519 | ||
PCMark 10 Score | 6470 | 4663 |
Essentials | 10503 | 9494 |
App Start-up Score | 14233 | 11932 |
Video Conferencing Score | 8721 | 8461 |
Web Browsing Score | 9336 | 8478 |
Productivity | 9875 | 7898 |
Spreadsheets Score | 12245 | 9568 |
Writing Score | 7964 | 6521 |
Digital Content Creation | 7089 | 6382 |
Photo Editing Score | 10422 | 9573 |
Rendering and Visualization Score | 6969 | 6440 |
Video Editing Score | 4906 | 4218 |
3DMark v2.19.7225 | ||
Time Spy Extreme | 771 | - |
Time Spy | 1648 | 1280 |
Fire Strike Ultra | 946 | - |
Fire Strike Extreme | 1831 | - |
Fire Strike | 4047 | 3242 |
Wild Life Extreme | 2645 | - |
Wild Life | 8819 | - |
Night Raid | 17758 | 14172 |
CINEBENCH R23.200 | ||
CPU(Multi Core) | 11985 pts | 11351 pts |
CPU(Single Core) | 1489 pts | 1291 pts |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 4620 pts | - |
CPU(Single Core) | 582 pts | - |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 82.82 fps | - |
CPU | 2001 cb | - |
CPU(Single Core) | 245 cb | - |
FINAL FANTASY XV BENCHMARK | ||
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 3587(普通) | - |
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC) | 10609(快適) | - |
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 2504.706 MB/s | 2492 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 1821.776 MB/s | 1207.35 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 2017.707 MB/s | 820.32 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 1813.523 MB/s | 1178.93 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリ-ド | 609.953 MB/s | 552.39 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 448.837 MB/s | 366.1 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 54.039 MB/s | 58 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 151.805 MB/s | 201.69 MB/s |
まずCPU性能だが、Beelink GTR5は第3世代(Zen2)「Ryzen 9 4900H」より新しい第4世代(Zen3)「Ryzen 9 5900HX」を搭載しているのにもかかわらず、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)が約1.06倍相当の11985 ptsに留まっている。Beelink GTR5は発熱や動作音を抑えた安定志向にチューニングされている可能性がある。
一方3D性能については、3DMarkのTime Spyで約1.29倍、Fire Strike、Night Raidで約1.25倍のスコアを記録している。また3Dゲームベンチマークでは、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」で「3587(普通)」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」で「10609(快適)」を記録した(どちらも1,280×720ドット、標準品質)。解像度、グラフィック品質を調節すれば3Dゲームも実用的な速度でプレイ可能だ。
なお、Beelink GTR5はBIOS設定で、パフォーマンスを調節する「AMD Overclocking」、「AMD CBS」などの項目が用意されている。自己責任とはなるが、デフォルトより処理性能を向上させることが可能だ。
コンパクト筐体に8コア16スレッドCPUを搭載しているため、発熱、動作音が大きくなることを予想していたが、高負荷時の発熱は本体背面の排気口付近で最大52.3℃、動作音は最大44.4dBを記録した。
手に持ったり、膝に乗せたりするPCではないので発熱は問題にならないが、動作音はやや気になる。ちなみに、室温25.6℃の部屋にて新しいページを「Edge」で開いただけでも、ファンが数秒動作した。音質は低めなのでそれほど耳障りではないが、動作音が気になる方はディスプレイの背面など、できるだけ自分より遠くに設置したほうがいい。
処理性能、拡張性、設置性に優れ、価格も比較的抑えめなミニPC
dGPUを搭載していないためゲーミングPCとしてはプレイできるタイトルが限られる。また解像度・品質設定も必要だ。しかし、8コア16スレッドのCPU性能は、クリエイティブ系アプリを快適に動作させるのに十二分なパフォーマンスを備えている。また、ミニPCとしてはメモリ、ストレージの増設も容易だった。処理性能、拡張性、そしてもちろん設置性に優れ、価格も比較的抑えめなBeelink GTR5は、ミニPC選びの際にぜひ候補に入れておきたい1台だ。