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8コア16スレッドのゲーミングミニPC「Beelink GTR5」。拡張性、発熱、動作音をチェック

Beelink GTR5

 Beelinkは、8コア16スレッドのRyzen 9を搭載したゲーミングミニPC「Beelink GTR5」の販売を3月よりAmazonで開始した。価格は11万8,000円。海外の直販サイトでは949ドル(クーポン:GTR530利用で919ドル)から用意されている。

 本製品は約168×120×39mmとコミック2冊強のコンパクトサイズながら、オーバークロック可能な「AMD Ryzen 9 5900HX」を採用。dGPUは搭載されていないが、グラフィック品質を調節すれば3Dゲームもストレスなくプレイできる処理性能を備えている。

 とは言え小型化には当然トレードオフとなる要素があるはず。今回はパフォーマンスだけでなく、ミニPCの弱点となりがちな拡張性、発熱、動作音などもチェックしていこう。

Ryzen 9 5900HX、メモリ32GB、SSD 500GBとちょっとアンバランスな構成

 Amazonで販売されているのは1モデル。OSは「Windows 11 Home 64bit」、CPUは「AMD Ryzen 9 5900HX」(8コア16スレッド、3.3~4.6GHz)を採用。メモリは32GB(DDR4-3200 SO-DIMM)、ストレージは500GB(PCIe Gen3 x4 SSD)を搭載している。

 なお、本製品はIndiegogoでクラウドファンディングが実施されていたが、その際にはメモリとストレージを含まないベアボーンキット、メモリ16GB+SSD 500GB、32GB+500GB、64GB+1TBモデルが用意されていた。

 インターフェイスは、USB Type-C(データ、映像出力対応)×1、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0×2、DisplayPort×1、HDMI×1、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、3.5mmヘッドセット端子×1を用意。USB Type-C、DisplayPort、HDMIに同時出力することで、トリプルディスプレイ環境を構築できる。無線通信はWi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2対応だ。

 サイズは約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測約679.5g。電源は外付けのACアダプタから供給する。

 Ryzen 9 5900HX、32GBメモリに500GBストレージという構成は個人的にはアンバランスな気がする。ただし、後述するがM.2のスロットが1基空いており、2.5インチのSATA接続SSD、HDDも増設可能だ。必要に応じてストレージを増設すればよいだろう。

【表1】Beelink GTR5のスペック
製品名Beelink GTR5
OSWindows 11 Home 64bit バージョン21H2
CPURyzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.30~4.60GHz)
GPURadeon Graphics
メモリDDR4-3200 SO-DIMM 16GB/32GB/64GB
ストレージ500GB/1TB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280)
通信Wi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB Type-C(データ、映像出力対応)×1、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0×2、DisplayPort×1、HDMI×1、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、3.5mmヘッドセット端子×1
本体サイズ約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ)
重量実測約679.5g
セキュリティ指紋認証センサー一体型電源ボタン
同梱品ACアダプタ、電源ケーブル、ユーザーマニュアル、HDMIケーブル(100cm)、HDMIケーブル(20cm)、壁掛け式ブラケット×1、M4×6ネジ×3、M3×3ネジ×3、M3×5ネジ×5
カラーブラック
価格11万9,800円~
本体天面。BeelinkがAMDの公式パートナーであることを大きくアピールしている
本体底面にはBIOS、BOOTメニューに入るための方法が記載されている
本体前面にはマイク×2、電源ボタン、CMOSクリアボタン、USB 3.0 Type-A×1、USB Type-C(データ、映像出力対応)×1、3.5mmヘッドセット端子×1、本体背面には電源端子、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、HDMI×1、DisplayPort×1、USB 3.0 Type-A×2、USB 2.0×2を配置
本体右側面(上)と左側面(下)には「GR9」のロゴが入っている
本体天面には指紋認証センサー一体型電源ボタンが配置
「AMD LET’S START」のロゴは白色LEDで点灯する
製品パッケージ。ゲーミングミニPCらしいデザインだ
パッケージ背面には主要スペックが記載
パッケージには本体以外に、ACアダプタ、電源ケーブル、ユーザーマニュアル、HDMIケーブル(100cm)、HDMIケーブル(20cm)、壁掛け式ブラケット×1、M4×6ネジ×3、M3×3ネジ×3、M3×5ネジ×5が同梱
ACアダプタのコード長は実測152cm、電源ケーブルの長さは実測150cm
ACアダプタの型番は「HKA09019047-6U」。仕様は入力100-240V~1.5A、出力19V 4.74A、容量90.06W
100cmと20cmの異なる長さのHDMIケーブルが同梱。20cmの長さのHDMIケーブルは実測では約25cm。本製品をディスプレイ背面に装着するためのケーブルだと思われる
ディスプレイ背面に装着するための、壁掛け式ブラケット×1、M4×6ネジ×3、M3×3ネジ×3、M3×5ネジ×5が付属
マニュアルは日本語対応。日本語パートは全部で4ページ
本体の実測重量は679.5g
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測422.5g
システム情報
プロセッサー、ディスプレイアダプター、ディスクドライブのデバイス情報
初回起動時のストレージの空き容量は422.65GB

メモリ、ストレージの装着、換装は容易で、メンテナンス性は良好

 Beelink GTR5の開梱は容易だ。底面のプラスネジ4本をはずしてから、底面のゴム製のツマミを引っ張ると簡単に開けられる。ただし、M.2 SSDと底面パネルがサーマルパッドで貼り付いており、また、本体の基板と底面パネル側の2.5インチストレージスロットがフレキシブルケーブルでつながっている。ゆっくりと力を加えつつ、開く角度を1cm程度に制限して、フレキシブルケーブルが切れないように注意しよう。

 フレキシブルケーブル側を中心に底面パネルを開けば、メモリ、M.2ストレージ、2.5インチSATAストレージスロットにアクセスできる。メモリはSO-DIMMが2スロットで最大64GBまで増設可能。M.2ストレージはNVMeが1基使用済みで、SATAがもう1基空いている。2.5インチSATAストレージスロットにはSSD、HDDをスライドして装着したら付属のM3×5ネジで固定する。

 コンパクトながら中身はすっきりとしており、メモリ、ストレージの装着、換装は手軽だ。また、規格についてもシールで記載されており、どんなパーツを選べばいいのかわかりやすい。ミニPCとしてはメンテナンス性が高いと言える。

ネジを4本外し、ゴム製のツマミを引っ張ると底面パネルを開けられる。力加減には注意
M.2ストレージは「KINGSTON SNVS500G」を使用。サーマルパッドが貼られている
中央のM.2スロットはSATA専用。固定用ネジは装着済みだ
メモリはCrucial製「CT16G4SFS832A.C8FE」が2枚装着されている
2.5インチSATAストレージスロットはSSD、HDDをスライドして装着したら付属のM3×5ネジで固定する
Indiegogoの製品公式サイトより転載。クーリングファンを清掃する際には基板をはずす必要がある

Beelink GTR5のパフォーマンスは安定志向

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2519」、3Dベンチマーク「3DMark v2.19.7225」、CPUベンチマーク「CINEBENCH R23.200」、「CINEBENCH R20.060」、「CINEBENCH R15.0」、3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」を実施した。

 比較対象としては、「AMD Ryzen 9 4900H」(8コア16スレッド、3.30~4.40GHz)を搭載する「MINISFORUM EliteMini HM90」のレビュー記事のスコアを転載している。

【表2】検証機の仕様
Beelink GTR5MINISFORUM EliteMini HM90
CPUAMD Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.30~4.60GHz)AMD Ryzen 9 4900H(8コア16スレッド、3.30~4.40GHz)
GPUAMD Radeon GraphicsAMD Radeon Graphics
メモリDDR4-3200 SDRAM 32GBDDR4-3200 SDRAM 32GB
ストレ-ジ1TB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280)512GB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280)
TDP45+W35-54W
OSWindows 11 Home 64bit バージョン21H2Windows 10 Pro 64bit
サイズ約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ)約149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量実測約679.5g820g
【表3】ベンチマ-ク結果
Beelink GTR5MINISFORUM EliteMini HM90
PCMark 10 v2.1.2519
PCMark 10 Score64704663
Essentials105039494
App Start-up Score1423311932
Video Conferencing Score87218461
Web Browsing Score93368478
Productivity98757898
Spreadsheets Score122459568
Writing Score79646521
Digital Content Creation70896382
Photo Editing Score104229573
Rendering and Visualization Score69696440
Video Editing Score49064218
3DMark v2.19.7225
Time Spy Extreme771
Time Spy16481280
Fire Strike Ultra946
Fire Strike Extreme1831
Fire Strike40473242
Wild Life Extreme2645
Wild Life8819
Night Raid1775814172
CINEBENCH R23.200
CPU(Multi Core)11985 pts11351 pts
CPU(Single Core)1489 pts1291 pts
CINEBENCH R20.060
CPU4620 pts
CPU(Single Core)582 pts
CINEBENCH R15.0
OpenGL82.82 fps
CPU2001 cb
CPU(Single Core)245 cb
FINAL FANTASY XV BENCHMARK
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン3587(普通)
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC)10609(快適)
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード2504.706 MB/s2492 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト1821.776 MB/s1207.35 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード2017.707 MB/s820.32 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト1813.523 MB/s1178.93 MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド609.953 MB/s552.39 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト448.837 MB/s366.1 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド54.039 MB/s58 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト151.805 MB/s201.69 MB/s

 まずCPU性能だが、Beelink GTR5は第3世代(Zen2)「Ryzen 9 4900H」より新しい第4世代(Zen3)「Ryzen 9 5900HX」を搭載しているのにもかかわらず、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)が約1.06倍相当の11985 ptsに留まっている。Beelink GTR5は発熱や動作音を抑えた安定志向にチューニングされている可能性がある。

 一方3D性能については、3DMarkのTime Spyで約1.29倍、Fire Strike、Night Raidで約1.25倍のスコアを記録している。また3Dゲームベンチマークでは、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」で「3587(普通)」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」で「10609(快適)」を記録した(どちらも1,280×720ドット、標準品質)。解像度、グラフィック品質を調節すれば3Dゲームも実用的な速度でプレイ可能だ。

 なお、Beelink GTR5はBIOS設定で、パフォーマンスを調節する「AMD Overclocking」、「AMD CBS」などの項目が用意されている。自己責任とはなるが、デフォルトより処理性能を向上させることが可能だ。

AMD Overclockingの設定項目
AMD CBSの設定項目

 コンパクト筐体に8コア16スレッドCPUを搭載しているため、発熱、動作音が大きくなることを予想していたが、高負荷時の発熱は本体背面の排気口付近で最大52.3℃、動作音は最大44.4dBを記録した。

 手に持ったり、膝に乗せたりするPCではないので発熱は問題にならないが、動作音はやや気になる。ちなみに、室温25.6℃の部屋にて新しいページを「Edge」で開いただけでも、ファンが数秒動作した。音質は低めなのでそれほど耳障りではないが、動作音が気になる方はディスプレイの背面など、できるだけ自分より遠くに設置したほうがいい。

「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」実行中の本体天面の最大温度は39.9℃(室温29.9℃で測定)
本体底面の最大温度は38.1℃
本体前面の最大温度は42.2℃
本体背面の最大温度は52.3℃
「CINEBENCH R23」実行中の動作音は最大44.4dBA(室温30.1℃、冷却ファン動作前の環境音が34.5dBAの室内で、端末から50cm離れた距離で測定)

処理性能、拡張性、設置性に優れ、価格も比較的抑えめなミニPC

 dGPUを搭載していないためゲーミングPCとしてはプレイできるタイトルが限られる。また解像度・品質設定も必要だ。しかし、8コア16スレッドのCPU性能は、クリエイティブ系アプリを快適に動作させるのに十二分なパフォーマンスを備えている。また、ミニPCとしてはメモリ、ストレージの増設も容易だった。処理性能、拡張性、そしてもちろん設置性に優れ、価格も比較的抑えめなBeelink GTR5は、ミニPC選びの際にぜひ候補に入れておきたい1台だ。