西川和久の不定期コラム

おサイフケータイ対応を果たした「Zenfone 8」をレビュー。5.9型のコンパクトさでSnapdragon 888搭載の魅力

Zenfone 8

 ASUS JAPAN株式会社は8月18日、Snapdragon 888を搭載した5.9型スマホ「Zenfone 8」と、6.67型の「Zenfone 8 Flip」を発表した。発売開始は20日で、価格は7万9,800円から。事前に試用する機会に恵まれたので、Zenfone 8を中心にレポートをお届けしたい。

Snapdragon 888搭載でコンパクトな筐体

 「Zenfone 8」と「Zenfone 8 Flip」の2モデルは、SoCがSnapdragon 888と同じだが、メモリやストレージ容量などが異なる。大きな違いは前者が5.9型背面2レンズ、後者が6.67型でFlip式の3レンズという点。なお、今回からブランドの表記が「ZenFone」から」Zenfone」へと「f」が小文字へ統一された。

 ここで主に紹介するのは「Zenfone 8」。筆者がレビューしてきた「ROG Phone 5 Ultimate」、「Xperia 1 III」、「Leitz Phone 1」に続き、Snapdragon 888搭載機となる。またか!と思われる方がいるかと思うが、大きく重かったこれらと違い、Zenfone 8はサイズが約68.5×148×8.9(幅×奥行き×高さ)とコンパクトで、重量169gと軽量。手元に届いた時、もっと下位のSoCが入ってるのかと思ったほど。

 加えて同社としては初のおサイフケータイ対応モデルであり、国内市場における本気度が伺える一品に仕上がっている。主な仕様は以下の通り。

【表1】ASUS「Zenfone 8」の仕様
SoCSnapdragon 888(8コア、2.84GHz)
GPUAdreno 660
メモリ16GB LPDDR5または8GB LPDDR5
ストレージ256GB(UFS 3.1)または128GB(UFS 3.1)
OSZenUI 8(Android 11ベース)
ディスプレイ5.9型AMOLED(2,400×1,080ドット)、20:9、画面占有率90.02%、Corning Gorilla Victus、リフレッシュレート最大120Hz、DCI-P3 112%/sRGB 115%/NTSC 107%、Delta-E<1、輝度1,100cd/平方m
ネットワーク機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、NFC(FeliCa対応)
SIMNano SIM×2(2枚挿入して5G回線を同時使用は不可)
5G NRn1/2/3/5/7/8/12/20/28/38/77/78
FDD-LTEB1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/26/28
TD-LTEB34/38/39/40/41/42
CA6CA(DL)/2CA(UL)
W-CDMA(HSPA+)B1/2/3/4/5/6/8/19
GSM/EDGE850/900/1,800/1,900MHz
インターフェイスUSB 2.0 Type-C、デュアルスピーカー、トリプルマイク、3.5mmジャック
センサーGPS(GLONASS、BeiDou、Galileo、QZSS、NavICサポート)、加速度センサー、電子コンパス、光センサー、近接センサー、ジャイロスコープ、指紋センサー(画面内認証)
カメラ前面:1,200万画素(ソニー IMX663/デュアルPD AF)<br>背面:6,400万画素(広角カメラ/ソニー IMX686/F1.8/OIS)
1,200万画素(超広角/ソニー IMX363/デュアルPD AF/マクロ)
サイズ/重量約68.5×148×8.9mm(幅×奥行き×高さ)/169g
バッテリ4,000mAh(30w高速充電対応/Quick Charge 4.0対応)
駆動時間約12時間(Wi-Fi)、約10.3時間(LTE)、約6.9時間(5G)
カラーバリエーションオブシディアンブラック、ムーンライトホワイト、ホライゾンシルバー
防塵防水IP65/IP68
価格7万9,800円~10万8,800円

 SoCはSnapdragon 888。オクタコアCPUでクロックは2.84GHz、GPUにAdreno 660を内包している。「ROG Phone 5 Ultimate」、「Xperia 1 III」、「Leitz Phone 1」などに搭載されている通り、パフォーマンスは最高だ。ただ発熱とバッテリの持ちが弱点とも言える。この辺りがどうなのか、後半で検証したい。メモリは16GB LPDDR5、ストレージは256GB(UFS 3.1)。OSはAndroid 11ベースのZenUI 8を搭載する。

 ディスプレイは5.9型AMOLED(2,400×1,080ドット)。アスペクト比20:9、画面占有率90.02%、Corning Gorilla Victus、リフレッシュレート最大120Hz、DCI-P3 112%/sRGB 115%/NTSC 107%、Delta-E<1の特徴を持つ。スマホのパネルとしてはかなり高性能だ。

 ネットワーク機能は、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、NFC(FeliCa対応)。同社初のおサイフケータイ対応だ。これはなかなかインパクトが大きいのではないだろうか。SIMはNano SIM×2。5G対応だがミリ波はサポートしていない。

 そのほかのインターフェイスは、USB 2.0 Type-C(映像出力非対応)、デュアルスピーカー、トリプルマイク、3.5mmジャック。microSDカード非対応なのは好みが分かれそうだ。画面内認証の指紋センサーも搭載する。

 カメラは前面1,200万画素(ソニー IMX663/デュアルPD[フォトダイオード] AF[オートフォーカス])、背面6,400万画素(広角カメラ/IMX686/F1.8/OIS[光学式手ブレ補正])、1,200万画素(超広角/IMX363/デュアルPD AF/マクロ)。詳細を後述しているので参考にしてほしい。

 カラーバリエーションはオブシディアンブラック、ムーンライトホワイト、ホライゾンシルバーの3色。バッテリは4,000mAhで30Wの高速充電とQuick Charge 4.0対応。駆動時間はWi-Fi時約12時間、LTE時約10.3時間、5G時約6.9時間。

 価格はメモリ16GB、ストレージ256GBのモデルが10万8,800円。メモリ8GB、ストレージ256GBモデルが9万2,800円。メモリ8GB、ストレージ128GBのモデルが7万9,800円。カラーバリエーションは全モデル同じで3種類。下位モデルだとSnapdragon 888を搭載したスマホとしては結構安いのではないだろうか。

 筐体は防塵防水IP65/IP68対応。サイズ約68.5×148×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量169g。Snapdragon 888搭載スマホとしてはかなり小型・軽量だ。ここのところ大きく重いスマホばかり触っていたので、久々に普通のスマホと言った感じだ。重量は実測で171gだった。200gを超えるものとは持った感じが別次元となる。

重量は実測で171g

 フロントはパネル左上に前面カメラ。画面占有率90.02%ということもありフチは細い。リアは左上にカメラ群。写真からは分かりにくいが、その横、本体センターより少し右側にFeliCaマークがある。下側面にSIMカードスロット、Type-C、スピーカーR。右側面に音量±ボタン、電源ボタン。上側面に3.5mmジャックを配置。左側面には何もない。

パネル左上に前面カメラ。画面占有率90.02%ということもありフチは細い
左上にカメラ群。写真からは分かりにくいが、その横、本体センターより少し右側にFeliCaマーク

 SIMスロットはイジェクトピン式で、表がSIM1、裏がSIM2。microSDカードスロット非対応なのが残念なところか。

下側面にSIMカードスロット、Type-C、スピーカーR。左側面には何もない
右側面に音量±ボタン、電源ボタン。上側面に3.5mmジャック
Nano SIMスロット付近。表SIM1/裏SIM2。microSDカードスロットはない

 付属品は、ACアダプタ、Type-Cケーブル、ケース、イジェクトピン。ACアダプタのサイズは約60×40×30mm(幅×奥行き×高さ)で、最大30Wの急速充電対応

付属品はACアダプタ、Type-Cケーブル、ケース、イジェクトピン
iPhone 12 Pro Maxとの比較。本機がかなりコンパクトなのが分かる

 ディスプレイは5.9型AMOLED(2,400×1,080ドット)。色域は広く誤差も少ない。加えて輝度1,100cd/平方mと明るく炎天下でも最大にすればそれなりに見える。コントラストや視野角も問題なし。ハイエンドに相応しいパネルが使われている。

 発熱はそこそこ熱くなる。ただこれまで試用したSnapdragon 888搭載機の中では一番少ないだろうか。小さいわりに熱のコントロールが上手くできているようだ。

 サウンドは横位置時にステレオとなる。コンパクトな筐体のわりにパワーもあり、単独でも十分楽しめる。3.5mmジャックからの出力をソニーのMDR-EX800STで視聴したところ、さらにパワー感や低音がアップ。最大音量だとうるさいほど。

Zenfone 8 Flip

 兄弟機の「Zenfone 8 Flip」も同時に届いたので、軽く紹介したい。SoCは同じくSnapdragon 888。ただしメモリは8GB LPDDR5のみで、ストレージが128GBまたは256GB(UFS 3.1)と2モデルに分かれている。OLEDのパネルは2,400×1,080ドット。画素数は同じだが6.67型と大きい。

 ほかの違いとして、バッテリ5,000mAh、FeliCa未対応、microSDカード対応、3.5mmジャックなし、防塵防水未対応。価格は128GBモデルで8万6,800円、256GBモデルで9万8,800円となる。

フロント
リア
カメラをFlipしたところ
Flip式カメラの動き

 そして最大の違いがカメラだ。6,400万画素(広角/ソニー IMX686)、1,200万画素(超広角/ソニー IMX363)、800万画素(望遠)と、3レンズ構成でかつFlip式。広角と超広角のセンサーはZenfone 8と同じ。背面/前面無関係に撮影可能となる。

 この方式の場合、耐久性が気になるが、同社によると30万回の開閉テストをクリアしているとのこと。自撮りが多いユーザーにとってメインカメラで撮れるのはかなり魅力的ではないだろうか。

気軽にサクサク、そして綺麗に撮れるカメラ!

 搭載しているカメラは、既に説明した通り、前面1,200万画素(ソニー IMX663/デュアルPD AF)、背面6,400万画素(広角カメラ/ソニー IMX686/F1.8/OIS)と、1,200万画素(超広角/ソニー IMX363/デュアルPD AF/マクロ)。出力解像度は順に4,032×3,024ピクセル、4,576×3,432ピクセル、4,032×3,024ピクセル。背面の広角は最大8倍デジタルズームに対応。また、超広角はマクロを兼ねており4cm接写が可能だ。

上側が広角、下側が超広角

 背面カメラのモードは、スローモーション、タイムラプス、動画、写真、ポートレート、パノラマ、ドキュメント、その他。その他にはモーショントラッキング、PROビデオ、PROモード、夜景。

 前面カメラはポートレートモードにすると、背景ボケに加え、肌のトーン、ファンデ、美肌、目の大きさ、小顔の調整が可能だ。

 カメラの設定内容は、解像度(4:3 64MP、4:3、16:9、1:1、全画面表示、RAW+JPG/PROモードのみ)、セルフタイマー、カウントダウン点滅表示、夜間撮影を自動検出、AIシーン検出、ウォーターマーク、タッチシャッター、AF自動調整、追跡オートフォーカスなど。

 ビデオは、動画の解像度(6K、4K 60fps、4K、フルHD 60fps、フルHD、HD)、ビデオフォーマット(H.264、H265)、手ブレ補正、オーディオ効果(音の方向と風ノイズ除去)。

 撮った後の編集はギャラリーを使用する。トリミング/回転、フィルタ、詳細設定(露出/コントラスト/カーブなど)、描画、モザイク、ポートレートモード撮影時のボケ調整といった機能を持っている。

写真
PROモード
前面カメラ(ポートレートモード)
モード、その他
設定
ギャラリーで後からビューティー系も調整可能(サンプルは少し誇張気味)

 以下作例を日中10枚(屋内を含む)、夜景10枚(屋内を含む)、人物(自撮り@前面カメラ/背面カメラ)各1枚の計22枚を掲載する。

 基本オートで必要に応じて露出補正を触っている。自転車はポートレートモード、ピンクの花はデジタルズーム、パスタはマクロ、夜景最後から2枚目と3枚目は夜景モード。超広角と広角は適度に混ざっている。人物はどちらもポートレートモード。自撮りは肌のトーン、ファンデ、美肌を若干加えた。

作例
モデル:茜音愛

 使用感は、起動、AFは全く問題なし。気持ちいいほどサクサク撮れる。マネキン4体は一瞬で全部顔認識して枠が出るほど。確認用の画像表示に若干時間がかかることもあるが許容範囲だろう。光学的な望遠はないものの、デジタルズームでも結構いける。

 マクロは超広角なので背景の工夫が必要だが、うまくいけばご覧の作例の通り。かなり寄って撮影可能だ。発色は少し派手気味だが、見栄えのする絵となる。ただ超広角用のレンズが下側にあるため、本体中央辺りを持つと指が写ってしまうので要注意。

 個人的には背面のポートレートモードの画角が変わるのが残念だが(約1.5倍)、それ以外は非常に良くできている。本体がコンパクトなのでハイエンドに思えないが、写りはハイエンドに恥じないものとなっている。

シンプルで分かりやすいアプリ構成に加え、IMEにATOKを採用

 ホーム画面はDockに電話、メッセージ、Playストア、Chrome、カメラを配置。OSはZenUI 8でAndroidのバージョンは11、IMEはATOK for ASUS。ストレージは256GB中約16GBが使用されていたが、その内システムは12GB。

Home(1/2)
Home(2/2)
アプリ一覧
設定 / ストレージ

 設定として「高性能」、「ダイナミック」(デフォルト)、「省電力」、「超省電力」、「アドバンスド」のシステムモードを用意。リフレッシュレートは自動/120Hz/90Hz/60Hzの設定が可能だ。

システムモード。高性能/ダイナミック(デフォルト)/省電力/超省電力/アドバンスド
リフレッシュレート。自動/120Hz/90Hz/60Hz

4,000mAhのバッテリで約10時間40分駆動

 ベンチマークテストは簡易式だが「Geekbench 5.4.1」と「Google Octane 2.0」を使用。またシステムモードを「ダイナミック」と「高性能」で測定した。「高性能」設定だと、結構スコアが上がるのが分かる。

【表2】ベンチマーク結果
ダイナミック高性能
Geekbench 5.4.1
Single-Core1,0161,118
Multi-Core3,3993,552
OpenCL3,5754,700
Google Octane 2.0
40,64341,165

 バッテリ駆動時間は、輝度/音量50%、Wi-Fi経由、ダイナミックモードでフルHD動画を全画面連続再生したところ約10時間40分で電源が落ちた。仕様では約12時間(Wi-Fi)なので、1時間ほど短い。

輝度/音量50%、Wi-Fi経由、ダイナミックモードでフルHD動画を全画面連続再生。10時間半経過で残2%に

 以前検証した4,500mAhのXperia 1 IIIが約11時間だったので、小型のSnapdragon 888搭載機としては、がんばった方だろうか。


 Zenfone 8は、Snapdragon 888を搭載しているわりにコンパクトで発熱も少なめ。カメラも写りも良い。さらにおサイフケータイ対応だ。価格も用途や予算に応じて7万9,800円、8万6,800円、10万8,800円から選ぶことができる。

 microSDカード、Type-Cからの映像出力未対応と、惜しい部分もあるにはあるが、ハイエンドのSoCながらコンパクトで全部入りのスマホを探しているユーザーに使ってほしい一台と言えよう。

Zenfone 8とZenfone 8 Flipのツーショット