西川和久の不定期コラム
CDケースのフットプリントでRyzen搭載の超小型デスクトップ「MINISFORUM DeskMini UM270」
2021年2月18日 06:55
MINISFORUMは、プロセッサにRyzen 7 PRO 2700Uを搭載した超小型パソコン「DeskMini UM270」をクラウドファンディング中だ。事前に試用する機会に恵まれたのでレポートをお届けしたい。
約128×127×46mmの筐体にRyzen 7 PRO 2700Uを搭載した超小型デスクトップ
今回ご紹介するマシンはメーカー製ではなく、クラウドファンディングで出資を募り、製品化するものだ。第1弾の「UM700」(Ryzen 7 3750H)は、すでにリンクスが代理店となり販売中だが、本機は同クラスの第2弾となり、現在、Makuakeでクラウドファンディング中だ。
特徴としては、第1弾「UM700」の超小型筐体のまま、Ryzen 7 PRO 2700Uを搭載、メモリは16GBに増量、SSDは256GB NVMeから256GB SATAへ……と、メモリ以外はスペックダウンしているものの、その分安価に設定されている。おもな仕様は以下のとおり。
MINISFORUM「DeskMini UM270」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Ryzen 7 PRO 2700U(4コア8スレッド/2.2~3.8GHz/L3キャッシュ 4MB/TDP 15W) |
メモリ | 16GB(8GB×2/DDR4-2400/SODIMM×2) |
ストレージ | 256GB M.2 2280 SATA SSD |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
グラフィックス | AMD Radeon Vega 10 Graphics(10コア)/HDMI、DisplayPort、USB Type-C(DisplayPort Alternate Mode) |
ネットワーク | Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
インターフェイス | USB 3.1 Type-A×4(内一つはPowered)、USB 3.1 Type-C、マイク、音声入出力 |
その他 | 拡張ストレージ:2.5インチ×1 SATA HDD(6Gbps) |
サイズ/重量 | 約128×127×46mm(幅×奥行き×高さ)/約501g |
クラウドファンディング価格 | 53,000円(税込) |
プロセッサは14nmプロセスのRyzen 7 PRO 2700U。4コア8スレッドで、クロックは2.2GHzから最大3.8GHz。キャッシュはL1が384KB/L2が2MB/L3が4MB。TDPは15W。モバイル用のSKUとなる。メモリはDDR4-2400/SODIMMの8GB×2で計16GB。ストレージは256GB M.2 2280 SATA SSD。OSは64bit版Windows 10 Proを搭載。このクラスでPRO搭載はめずらしい。Windows 10はバージョン2004だったので、この範囲でWindows Updateを適応し評価している。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon Vega 10 Graphics。10コア構成だ。外部出力用にHDMI、DisplayPort、Type-C(DisplayPort Alternate Mode)を装備。すべて最大4K@60Hzとなる。
ネットワークは、Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1。Gigabit Ethernetが2つあるのもめずしい。OSはWindowsに加え、64bitのRHEL x86やUbuntu x86にも対応しているので、省エネのサーバー用途でも面白いかもしれない。
インターフェイスは、USB 3.1 Type-A×4(うち1つはPowered USB)、USB 3.1 Type-C、マイク、音声入出力。カードスロットがないのは残念だが、ひととおり揃っている。
サイズ約128×127×46mm(幅×奥行き×高さ)、重量約501g。価格はクラウドファンディングで執筆時53,000円(税込)。OS(とくにPro)、メモリ、ストレージを引くと、本体のコストは一体いくらなのか? と思ってしまうほどの低価格だ。
筐体はグレーが基調でブラックがアクセント的に使われ、サイズ約128×127×46mm(幅×奥行き×高さ)。IntelのNUCより幅と奥行きが約1cmほど大きいものの、それでも超小型で、むしろiPhone 12 Pro Maxが大きく見えるほど。重量は実測で509g。アダプタが241gなので合わせても750g。ノートPCより軽いため、自宅や会社など、行く先々にディスプレイとキーボード/マウスがあるなら、本体だけ持ち歩くのもありだろう。
前面は左からマイク、USB Type-C、USB×2、音声入出力、電源ボタン、リセット。背面はUSB×2、DisplayPort、HDMI、Gigabit Ethernet×2、電源入力を配置。前面の黄色いのがPowered USBとなる。
内部へのアクセスは、天板手前を少し押せば、パカっと外れる仕掛けになっており、ひじょうに扱いやすい。内部はM.2のSSDとメモリ2つ、そして2.5型SATA用のコネクタが転がっている。2.5型SSDを搭載する時は、天板の裏が収納スペースになっている。
裏には四隅にゴム足とVESAマウンタ用のネジ穴がある。付属のACアダプタは、サイズ約10.3×4.8×3cm、重量241g、出力19V/3A。そのほか、電源ケーブル、HDMIケーブル、DisplayPortケーブル、VESAマウンタも付属する。
発熱やノイズは、ベンチマークテストなど負荷をかけても耳を近づけないとわからないほど静かでほんのり暖かくなる程度。これなら机の上に置いても全く気にならないだろう。
以上のように、超小型ながらひととおり揃っており、加えて発熱やノイズも気にならないレベル、メンテナンスが容易と、なかなかツボを押さえたPCに仕上がっている。
第10世代Intel NUCといい勝負で、3DMarkはさらに高速!
初期起動時、スタート画面(タブレットモード)はフルHDで1画面。とくにプリインストールのアプリはない。デスクトップはWindows 10標準のままだ。もともとOSは英語版だが、ランゲージパックで日本語が適応される形となる。使用感はブート、アプリの起動など、とくにストレスはなく、普通に使える環境だ。
ストレージは、256GB M.2 2280 SATA SSDの「KINGSTON RBUSNS8180S3256GJ」。C:ドライブのみの1パーティションで約237GB割り当てられ空き202GB。Wi-FiとBluetoothはIntel製、Gigabit EthernetはRealtek製だ。プリインストール済のソフトウェアはとくにない。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMarkを使用した。参考として筆者所有のIntel「NUC10i5FNH」(Intel Core i5-10210U/iGPU)のスコアも一部掲載する。
ご覧のようにPCMark 10/8に関しては、項目によって凹凸があるもののかなり健闘しているのがわかる。3DMarkに関しては本機が圧勝だ。さすがにIntel UHD Graphicsだと比較にならないと言ったところか。日頃NUCで普通にOfficeやPhotoshopなどを使っているので、同じレベルの処理速度が期待できる。爆速ではないものの、必要十分な性能を備えている。
また、ストレージが普通のSSDなので(比較したNUCも同様)、NVMeタイプへ変更すれば、体感速度は上がりそうだ。
【表】ベンチマーク結果 | ||
---|---|---|
UM270 | NUC10i5FNH | |
PCMark 10 v2.1.2177 | PCMark 10 v2.1.2508 | |
PCMark 10 Score | 3,648 | 3,963 |
Essentials | 6,867 | 8,024 |
App Start-up Score | 7,028 | 10,460 |
Video Conferencing Score | 6,973 | 6,370 |
Web Browsing Score | 6,608 | 7,754 |
Productivity | 5,517 | 6,335 |
Spreadsheets Score | 7,245 | 6,792 |
Writing Score | 4,202 | 5,909 |
Digital Content Creation | 3,478 | 3,325 |
Photo Editing Score | 5,329 | 3,972 |
Rendering and Visualization Score | 2,982 | 2,260 |
Video Editting Score | 2,648 | 4,098 |
PCMark 8 v2.8.704 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3,385 | 3,630 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,303 | 3,715 |
Work Accelarated 2.0 | 4,274 | 4,936 |
Storage | 4,876 | 4,964 |
3DMark v2.17.7137 | 3DMark v2.11.6866 | |
Time Spy | 949 | 482 |
Fire Strike Ultra | 509 | 306 |
Fire Strike Extreme | 1,083 | 587 |
Fire Strike | 2,351 | 1,205 |
Sky Diver | 8,130 | 4,870 |
Cloud Gate | 12,784 | 9,790 |
Ice Storm Extreme | 52,105 | 47,713 |
Ice Storm | 60,879 | 68,713 |
CINEBENCH R23 | |
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CPU | 3,522(12位) |
CPU(Single Core) | 751(9位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 451.991 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 477.311 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 252.633 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 266.240 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 216.195 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 196.461 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 24.853 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 69.682 MB/s |
最後に余談として、今回使用したモバイルディスプレイをご紹介したい。昨今モバイルディスプレイは珍しくもないが、使用したのは、タッチ対応13.3型IPS式フルHD(光沢あり)、バックライト(OFF+二段階)搭載キーボード、タッチパッド、ヒンジ360度回転、Type-C×2(汎用/DisplayPort Alternate Modeと電源用/PD 45W)、HDMI、SDカードスロット、ステレオスピーカー……と、一見2in1のノートPCと間違えそうなものだ(その分、若干高めだが)。
もともとGalaxyのDeXやHUAWEIのPCモードがメイン、HDMI入力はオマケみたいなものだが、接続するディスプレイがない旧式デスクトップPCのメンテ用や、Raspberry Piなどボードコンピュータ用に便利そうなので、先日amazonで購入した。
写真からわかるように、本機への接続はType-C/Type-AとHDMIで行なっている。Type-CがDisplayPort Alternate Mode対応なので、Type-Cケーブル1本で行けるかと思ったが、ディスプレイ、そしてキーボード/タッチパッドも無反応だったので、2本接続となった。
じつは手持ちのNUCでも前面のType-Cでは同じ現象。裏のThunderbolt 4ではType-C/Type-C 1本ですべて機能したので、同じことなのだろう。HUAWEI P20 ProではType-C/Type-C 1本でPCモードになることを確認している。
パネルの特性はいつものi1 Display Proで測定したところ、最大輝度296cd/平方m。色域はほぼsRGB。発色はできればi1 Profilerなどで補正した方がいいが、そのままでも悪くない。質感、打鍵感、サウンドもそこそこ。輝度+2の状態で7時間ほど駆動……と、いい線だ。
[Enter]キーの外側にキーがある、タッチパッドが3本指以上のジャスチャーに未対応など、残念な部分もあるにはあるが、システムがコンパクトにまとまり、ちょっとしたテストやメンテナンス、セッティングなどにちょうどいい感じだ。
以上のようにDeskMini UM270は、約128×127×46mmの超小型筐体にRyzen 7 PRO 2700U/16GB/256GBを搭載したデスクトップPCだ。天板がワンタッチで開きメンテナンス性が高く、高負荷でもほとんど発熱や雑音が発生しない。Gigabit Ethernetが2つあるのも用途によっては魅力的だろう。そして何より価格が安い。
SDカードスロットがないのは残念だが、それ以外はひじょうにうまくまとまっている。Ryzenを搭載した小型デスクトップPCを探しているユーザーに、お勧めしたい1台だ。