西川和久の不定期コラム

vPro対応のスリムタワー型パソコンNEC「Mate J タイプME」

Mate J タイプME(ME-7)

 NECは8月に、第10世代Coreを搭載するスリムタワー型デスクトップパソコン「Mate J タイプME(ME-7)」を発表した。今回はこちらのモデルの試用レポートをお届けしたい。

スリムタワー型の筐体にCore i7-10700を搭載

 「Mate J タイプME」の搭載可能なプロセッサは、Celeron やPentium Gold、そしてCore i3/i5/i7。メモリは4GBから32GB。ストレージは、HDD 500GB/1TB、SSD 128GB/256GB/512GB、HDD 500GB/1TB+Optaneメモリー。HDD 2台のRAID 1構成も可能になっている。

 今回手元に届いたのはCore i7-10700(vPro対応)搭載の最上位だ。メモリ16GB、HDD 500GB×2(RAID 1)、Radeon 520などを搭載。なお、ベーシックモデルでは、メモリ4GB、HDD 500GB、内蔵GPUといった構成だ。

【表1】NEC「Mate J タイプME(ME-7)」の仕様
プロセッサCore i7-10700(8コア16スレッド、2.9GHz~4.8GHz、キャッシュ16MB、TDP 65W)
チップセットIntel Q470(vPro対応)
メモリDDR4-2933 16GB(8GB×2、4スロット、最大32GB)
ストレージHDD 500GB×2(RAID 1)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 10 Pro
グラフィックスIntel UHD Graphics 630、Radeon 520(2GB)
ネットワークGigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth
インターフェイスUSB 3.1×2、USB 3.0×7(1基はType-C)、DisplayPort×2、HDMI、RS-232C D-sub9ピン、パラレルポート、音声入出力
サイズ(幅×奥行き×高さ)89×298×240mm(スタビライザ含まず)
重量約4.8kg
税別価格168,600円から(今回の構成で220,400円)

 プロセッサは第10世代Comet LakeのCore i7-10700。8コア16スレッド、クロックは2.9GHzから最大4.8GHz。キャッシュは16MB、TDPは65W。デスクトップ用としてそこそこ強力なモデルだ。チップセットはvPro対応のIntel Q470。メモリはスロットが4つあり、今回は8GB×2の計16GB。ストレージはHDD 500GB×2でRAID 1を構成。DVDスーパーマルチドライブも搭載している。OSはWindows 10 Pro。

 グラフィックス機能はプロセッサ内蔵のUHD Graphics 630と、ディスクリートGPUとしてオプションのRadeon 520(ビデオメモリ2GB)を追加したかたちだ。出力は前者がHDMI、後者がDisplayPort×2。Radeon 520は2017年に出荷され、同時期登場のGeForce MX130より少し性能が劣る程度となるだろうか。最近のCPU内蔵GPUと性能的には大差なく、マルチディスプレイ化がおもな用途だと思われる。

 ネットワーク機能はGigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth。そのほかのインターフェイスは、前面にUSB 3.1×2、USB 3.0×3(1基はType-C)、音声入出力。背面にUSB 3.0×4、シリアルポート(RS-232C D-sub9ピン)、パラレルポート、音声出力。シリアルポートは標準、パラレルポートはオプションとなる。この2つを搭載しているパソコンはほぼ絶滅しているが、業務用途などで必要とする人はいるのだろう。

 サイズは89×298×340mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約4.8kg。税別価格は今回の構成で220,400円となる。いささか高いがvPro対応ということもあり、企業向け価格だ。

左側のスリットにDVDスーパーマルチドライブ。電源ボタン、音声入出力、USB Type-C、Type-A×4
背面は、音声出力、HDMI、シリアルポート、USB Type-A×4、Gigabit Ethernet。DisplayPort×2。Wi-Fi用アンテナコネクタ、パラレルポート、電源コネクタ
左側面の内部から見えるのは、DVDスーパーマルチドライブ、ドライブベイのHDD×2(1つは裏)、電源は310W/80PLUS Platinum。CPUファンはそれなりのサイズ
右側面には横置き用の足が4つ
拡張スロットは、PCI、PCI Express x1、PCI Express x16(x4接続)、PCI Express x16。メモリスロットはDVDスーパーマルチドライブの下にある
オプションも含めた付属品として、USBキーボードとマウス、Wi-Fi用アンテナ、DisplayPort-VGA変換アダプタ、DisplayPort-DVI変換アダプタが用意されていた。写真にはないが縦置き用のスタビライザもあった

 筐体はホワイトと濃いブルーの2色からなるデザインだ。サイズ89×298×340mm(幅×奥行き×高さ)、重量約4.8kgで、それなりにコンパクト。机の上に縦置きでも横置きでも設置できる。

 正面は左側のスリットにDVDスーパーマルチドライブ。右側に電源ボタン、音声入出力、USB Type-C、Type-A×4。背面は音声出力、HDMI、シリアルポート、Type-A×4、Gigabit Ethernet。DisplayPort×2。Wi-Fi用アンテナコネクタ、パラレルポート、電源コネクタを配置。縦置き/横置のとき、裏に相当する部分にゴム足が4つある。

 ネジ2本を外すと簡単に内部にアクセス可能だ。写真からもわかるように、けっこうギッシリしている。電源は310W/80PLUS Platinum。ここはさすがに企業向けと言ったところ。メモリスロットが光学ドライブの下にあったりとメンテナンスはしづらいが、基本的にあとからカスタマイズを行なわないビジネス用らしい仕様だ。

 振動と発熱は許容範囲だが、ノイズはCINEBENCHなど負荷をかけるとファンの音が結構うるさい。マシンの特性的に卓上に設置することが多く、耳の位置が近いため、気になる人は気になるだろう。とはいえ、オフィスワークでそこまでCPUに負荷がかかることはまれのはずだ。

 今回は同時に24型ディスプレイ「LCDE241N-CD3」も届いたので簡単に動作確認だけ行なった。以下の写真にあるように上左右が狭額縁だ。入力はDisplayPort、HDMI、ミニD-Sub15ピンの3系統と音声入力。側面にヘッドフォン出力もある。スピーカーを内蔵しており、音質はそれなりだが、HDMIやDisplayPortの信号に乗っている音も出力できる。画面を縦位置に回転させるピボットにも対応する。

LCDE241N-CD3

高性能プロセッサを搭載。カスタマイズではSSDを選びたい

 初回起動時、スタート画面(タブレットモード)はフルHDで1画面。NECグループがプリインストールアプリ群となる。デスクトップはWindows標準だ。

 さて動作であるが、メインドライブがHDDのため、今日のSSD搭載機と比べると格段に遅い。注文時のカスタマイズでは128/256/512GBのSSDも用意されているので、とくに理由がないかぎりそちらを選んだほうがストレスを感じないだろう。

 HDDはSeagate製の「ST500LM34」で、容量500GB、回転数7,200rpmの製品だ。これを2台使ってRAID 1を構成している。約464GBが割り当てられ、空き容量は416GBだった。

 DVDスーパーマルチドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GUE1N」。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはすべてIntel製だ。先に書いたように内蔵GPUのHDMIとディスクリートGPUのDisplaPortを使ってマルチディスプレイ化も可能だ。

スタート画面。NECグループがプリインストール
起動時のデスクトップはWindows標準のまま
ストレージはRAID 1を構成。DVDスーパーマルチドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GUE1N」。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはIntel製
ストレージのパーティションは約464GBが割り当てられている
Intel Optane Memory and Storage Management。HDD 500GB、7,200rpmのSeagate「ST500LM34」×2でRAID 1
RADEON SETTINGS
DisplayPortとHDMIの両方にディスプレイを接続可能

 おもなインストール済みアプリは、「AMD Radeon Settings Lite」、「CyberLink Power2Go 8」、「Intel Optane Memory and Storage Management」、「PC設定ツール」、「ウイルスバスタークラウド」(インストーラ)、「型番・製造番号表示ユーティリティ」など。PC設定ツールは本機の場合ECOモードのみとなっている。

PC設定ツール

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMarkを使用した。なおPCMark 8のCreative Accelarated 3.0は途中でエラーで落ち完走しなかった。

 Core i7-10700の性能が活きる処理は速いが、HDDが足を引っ張る格好になっている。参考までに現在筆者のメインマシンになっているIntel「NUC10i5FNH」(Core i5-10210U、メモリ32GB、SSD 500GB)のスコアを併記するので参考にしてほしい。プロセッサ依存の部分は本機が速く、ストレージ依存の部分は遅く、GPUは大差なしになっているのがわかるだろう。

【表2】ベンチマーク結果
Mate J タイプMENUC10i5FNH
PCMark 10v2.1.2506v2.1.2177
PCMark 10 Score4,0733,963
Essentials7,0958,024
App Start-up Score5,29010,460
Video Conferencing Score7,3526,370
Web Browsing Score9,1877,754
Productivity6,4186,335
Spreadsheets Score8,2226,792
Writing Score5,0105,909
Digital Content Creation4,0273,325
Photo Editing Score4,9223,972
Rendering and Visualization Score3,9332,260
Video Editting Score3,3744,098
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,8233,630
Creative Accelarated 3.0n/a3,715
Work Accelarated 2.04,6454,936
Storage2,1644,964
3DMarkv2.13.7009v2.11.6866
Time Spy402482
Fire Strike Ultra268306
Fire Strike Extreme530587
Fire Strike1,2501,205
Sky Diver4,7594,870
Cloud Gate9,7039,790
Ice Storm Extreme52,49647,713
Ice Storm85,60968,713
CINEBENCH R20
CPU4,1241,806
CPU(Single Core)497418
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード148.329 MB/s548.045 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト123.008 MB/s518.991 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード2.267 MB/s394.820 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1.257 MB/s290.454 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード2.249 MB/s236.019 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト1.049 MB/s315.178 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード1.130 MB/s31.080 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト1.169 MB/s73.332 MB/s

 以上のようにNEC「Mate J タイプME」は、最大でCore i7-10700、メモリ32GBを搭載できるコンパクトなデスクトップパソコンだ。今回ストレージはHDD×2(RAID 1)だったが、いろいろな構成が選択できる。

 オプションのRadeon 520に関しては、マルチディスプレイ用と割り切ればいいが、ストレージに関しては、SSDかHDD+Optaneメモリーとし、プロセッサ性能を活かしたいところ。業務用途でシリアルポートやパラレルポートを使いたい人には刺さる仕様だろう。

 大手メーカー製でvPro対応、用途や予算に応じていろいろな構成を選択できるビジネス向けデスクトップパソコンを求めているユーザーに向けた1台だ。