西川和久の不定期コラム
10万円切りでCore i7より速いRyzen 5 4500U搭載14型ノート「MSI Modern 14」
2020年8月24日 06:50
本コラムでは5月に、画面占有率90%で13型クラスの筐体に14型液晶を収めたMSI製のCore i7-10510U搭載ノート「Modern-14-A10M-618JP」をご紹介したが、今回はRyzen 5を搭載した「Modern-14-B4MW-012JP」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
4パターン用意されているModern 14
5月にModern 14のCore i7-10510U/iGPUモデル「Modern-14-A10M-618JP」をご紹介した。このシリーズは加えてdGPU(GeForce MX 350)搭載機と、Ryzen搭載機が存在し、Ryzenは5と7の2パターンで計4モデルある。
筐体やパネル、インターフェイスなどおもな仕様は同じで、プロセッサやGPU、バッテリ容量、重量、そして価格などが異なり、好みや予算に応じて選ぶことが可能だ。
今回ご紹介する「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」は、Ryzen 5を搭載し価格は10万円切り。このシリーズの中では安価なモデルとなる。手元にCore i7-10510U/iGPUモデルのデータもあるので、どれだけ差があるのか興味のあるところ。後半のベンチマークテストで検証したい。おもな仕様は以下のとおり。
【表】MSI「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」の仕様 | |
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プロセッサ | Ryzen 5 4500U(6コア6スレッド/2.3GHz~4.0GHz/L3キャッシュ 8MB/TDP 15W) |
メモリ | 16GB/DDR4(空きスロット1/2スロット合計最大64GB) |
ストレージ | M.2 NVMe SSD 512GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 14型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢 |
グラフィックス | Radeon Graphics(6コア、1,500MHz)、HDMI |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.2 Gen1 Type-C ×1、USB 2.0 ×2、92万画素Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力 |
そのほか | ドック付属(Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernet) |
バッテリ容量/駆動時間 | リチウムイオン/52Whr/3セル/4,600mAh |
サイズ/重量 | 319×220.2×16.9mm(幅×奥行き×高さ)/1.3kg |
価格 | 98,800円(税込@MSIストア調べ) |
プロセッサはRyzen 5 4500U。6コア6スレッドでクロックは2.3GHzから最大4.0GHz。L3キャッシュは8MB、TDPは15W。メモリはDDR4の16GB。2スロットあり空き1。つまりシングルチャンネル作動だ。32GB×2の最大64GBまで対応。ストレージはM.2 NVMe SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載している。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon Graphics。6コアで1,500MHz作動となる。外部出力用にHDMIを装備。ディスプレイは14型非光沢の1フルHD(1,920×1,080ドット)。画面占有率90%で、13型クラスの筐体へ14型の液晶パネルを収めている。
ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、USB 3.2 Gen1 Type-C ×1、USB 2.0 ×2、92万画素Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力。Type-CはDisplayPort Alt Modeおよびび、USB PDには非対応だ。
また、ドックが付属し、Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernetのポートが追加可能となる。
サイズ319×220.2×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.3kg。リチウムイオン/52Whr/3セル/4,600mAhのバッテリを内蔵。価格は98,800円(税込@MSIストア調べ)。
上位モデルとして、メモリ/ストレージは同じで、Ryzen 7 4700U(8C8T、2.0GHz~4.1GHz)、Windows 10 Proを搭載したモデル「Modern-14-B4MW-011JP」も用意され、店頭予想価格は133,000円前後の見込みだ。いずれも内容を考えるとリーズナブルだと思われる。
筐体はMIL規格「MIL-STD 810G」に適合するだけあってカッチリそしてガッチリしており、メタリックなブラックボディとなかなかカッコいい。写真からもわかるように結構薄型で重量は実測1,337g。見た目と実際が一致し、持った時に(予想外に)ズッシリ重く感じることはない。
前面はパネル中央上にWebカメラ。画面占有率90%とフチが狭く、この狭い幅にWebカメラが収まっている。左側面に電源入力、HDMI、USB Type-C、microSDカードスロット。右側面にUSB 2.0×2、音声入出力、ステータスLEDを配置。裏は手前左右のスリットにスピーカー。
ゴム足は手前に1本バー、後ろはヒンジ兼の足で写真のようにキーボード面を傾けている。またドック(USB Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernet)が付属。ACアダプタは約65×65×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量184g、出力19V/3.42A。残念ながらPD非対応だ。
14型のディスプレイは、明るく、コントラスト、発色、視野角などすべて良好。また非光沢なので眼にも優しい。クラス相応のパネルが使われている。
i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は356cd/平方m。標準の明るさ120cd/平方mは、最大から-5が139cd/平方m、-6が106cd/平方m。従って前者で計測した。黒色輝度は0.124cd/平方m。つまり、(目視可能かは別として)若干黒が浮く。リニアリティは、R・G・Bが微妙にねじれ、明るいほどズレるものの、良い方だろう。
キーボードはオフ/3段階明るさ調節に対応したキーボードバックライト搭載日本語キーボードだ。仕様上キーストローク1.5mm。打鍵感は少し硬めか。キーボード面が手前に傾いているので入力しやすい。キーピッチは実測で約19mm。手前と[半角/全角]、[\]キーなどのピッチが狭くなっているものの個人的には許容範囲。ただ[Enter]キーの外側にキーがあるため、好き嫌いはあるだろう。タッチパッドは1枚プレート式。パームレストも含め十分広く扱いやすい。
ノイズや振動は試用した範囲ではとくに気にならなかった。発熱は、負荷をかけると、キーボード上側のスペースが熱くなるものの、キーボードやパームレストまでは熱が降りて来ない。
サウンドはスピーカーが裏にあるため、机などに音が反射し、間接音が耳に届く。幅がある程度確保されているのでステレオ感はあるものの、パワー不足。音質も含めこの印象は前回と同じだったので、サウンド系は同等なのだろう。筐体、パネル、キーボードなどほかがまとまっているだけに、あと一歩頑張ってほしいところ。
Core i7-10510Uを凌駕するパフォーマンス!
初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。2つあるMSIグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプルだ。
M.2 NVMe SSD 512GBのストレージはSamsungの「MZVLQ512HALU」。仕様によると、シーケンシャルリード2,200MB/s、同ライト1,200MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約463.7GBが割り当てられ空き407GB。
Wi-FiとBluetooth、そしてドックのGigabit EthernetはRealTek製。Radeon Settingsからコアのクロックが1,500MHzなのがわかる。
おもなプリインストールのソフトウェアは、「AudioDirector for MSI」、「CLIP STUDIO」、「ColorDirector for MSI」、「Creator Center」、「Norton Security」、「PhotoDirector 10 Essential for MSI」、「PowerDirector 17 Essential for MSI」など。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。結果は以下のとおり。
「Modern-14-A10M-618JP」(Core i7-10510U/iGPU)と比較すると、PCMark 10は多少凸凹があるものの、本機の方が若干高いスコアだ(ただしRendering and Visualization Scoreのみ2分の1ほど)。PCMark 8はすべて本機が若干高く、3DMarkはTime SpyからSky Diverまで倍近い差。CINEBENCH R20は6C/6T対4C/8Tなのでマルチスレッドは不利なはずだが、シングルコア性能が高い分、マルチスレッドでも勝っているという結果になった。
つまりCore i7-10510U/iGPUのほぼ完敗だ。Ryzen 5でこれなのだから7になるともっと大差になったと思われる。なるほど昨今のRyzen人気にも頷ける。
PCMark 10/Battery/Modern Officeでバッテリ駆動時間を計測したところ、11時間37分だった(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。「Modern-14-A10M-618JP」とは、そもそもバッテリ容量が異なる(50Whr/4セル/3,290mAh)が、7時間37分なので大差となった。
「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」(Ryzen 5 4500U) | Modern 14 Modern-14-A10M-618JP」(Core i7-10510U) | |
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PCMark 10 v2.1.2177 | ||
PCMark 10 Score | 4,378 | 4,408 |
Essentials | 8,747 | 7,732 |
App Start-up Score | 10,823 | 9,944 |
Video Conferencing Score | 8,077 | 6,744 |
Web Browsing Score | 7,656 | 6,894 |
Productivity | 6,004 | 6,401 |
Spreadsheets Score | 8,687 | 7,585 |
Writing Score | 4,150 | 5,402 |
Digital Content Creation | 4,339 | 4,697 |
Photo Editing Score | 6,277 | 3,784 |
Rendering and Visualization Score | 3,877 | 6,984 |
Video Editting Score | 3,357 | 3,922 |
PCMark 8 v2.8.704 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3,891 | 3,449 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,050 | 3,544 |
Work Accelarated 2.0 | 5,118 | 4,846 |
Storage | 5,027 | 5,049 |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 776 | 454 |
Fire Strike Ultra | 490 | 294 |
Fire Strike Extreme | 949 | 538 |
Fire Strike | 2,063 | 1,124 |
Sky Diver | 7,864 | 4,632 |
Cloud Gate | 13,228 | 8,555 |
Ice Storm Extreme | 75,241 | 45,161 |
Ice Storm | 95,669 | 61,624 |
CINEBENCH R20 | ||
CPU | 2,437 pts(7位) | 1,379 pts(10位) |
CPU(Single Core) | 447 pts(2位) | 412 pts(2位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 2,249.574 MB/s | 未計測 |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1,186.472 MB/s | 未計測 |
4K Q8T8 ランダムリード | 933.474 MB/s | 未計測 |
4K Q8T8 ランダムライト | 849.579 MB/s | 未計測 |
4K Q32T1 ランダムリード | 477.139 MB/s | 未計測 |
4K Q32T1 ランダムライト | 304.384 MB/s | 未計測 |
4K Q1T1 ランダムリード | 47.313 MB/s | 未計測 |
4K Q1T1 ランダムライト | 96.135 MB/s | 未計測 |
以上のようにMSI「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」は、Ryzen 5 4500U、メモリ16GB(ただしシングルチャンネル)、ストレージM.2 NVMe SSD 512GBを搭載し、画面占有率90%で13型クラスの筐体へ14型フルHDのパネルを収めたノートPCだ。性能はベンチマークテストからもわかるようにCore i7-10510Uを凌ぎ、価格は10万円切り。筐体などもしっかりしており、とても魅力的なマシンに仕上がっている。
実際使った感じとして、あえて欠点を挙げれば[Enter]キーの外側にキーがある、USB PDに非対応、サウンドがいま一歩程度といったところがあるものの、それ以外気になる部分もなかった。IntelかAMDかにこだわらず、比較的安価で高い性能を期待するユーザーに使って欲しい1台だ。