西川和久の不定期コラム

10万円切りでCore i7より速いRyzen 5 4500U搭載14型ノート「MSI Modern 14」

 本コラムでは5月に、画面占有率90%で13型クラスの筐体に14型液晶を収めたMSI製のCore i7-10510U搭載ノート「Modern-14-A10M-618JP」をご紹介したが、今回はRyzen 5を搭載した「Modern-14-B4MW-012JP」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

4パターン用意されているModern 14

 5月にModern 14のCore i7-10510U/iGPUモデル「Modern-14-A10M-618JP」をご紹介した。このシリーズは加えてdGPU(GeForce MX 350)搭載機と、Ryzen搭載機が存在し、Ryzenは5と7の2パターンで計4モデルある。

 筐体やパネル、インターフェイスなどおもな仕様は同じで、プロセッサやGPU、バッテリ容量、重量、そして価格などが異なり、好みや予算に応じて選ぶことが可能だ。

 今回ご紹介する「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」は、Ryzen 5を搭載し価格は10万円切り。このシリーズの中では安価なモデルとなる。手元にCore i7-10510U/iGPUモデルのデータもあるので、どれだけ差があるのか興味のあるところ。後半のベンチマークテストで検証したい。おもな仕様は以下のとおり。

【表】MSI「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」の仕様
プロセッサRyzen 5 4500U(6コア6スレッド/2.3GHz~4.0GHz/L3キャッシュ 8MB/TDP 15W)
メモリ16GB/DDR4(空きスロット1/2スロット合計最大64GB)
ストレージM.2 NVMe SSD 512GB
OSWindows 10 Home(64bit)
ディスプレイ14型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢
グラフィックスRadeon Graphics(6コア、1,500MHz)、HDMI
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0
インターフェイスUSB 3.2 Gen1 Type-C ×1、USB 2.0 ×2、92万画素Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力
そのほかドック付属(Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernet)
バッテリ容量/駆動時間リチウムイオン/52Whr/3セル/4,600mAh
サイズ/重量319×220.2×16.9mm(幅×奥行き×高さ)/1.3kg
価格98,800円(税込@MSIストア調べ)

 プロセッサはRyzen 5 4500U。6コア6スレッドでクロックは2.3GHzから最大4.0GHz。L3キャッシュは8MB、TDPは15W。メモリはDDR4の16GB。2スロットあり空き1。つまりシングルチャンネル作動だ。32GB×2の最大64GBまで対応。ストレージはM.2 NVMe SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon Graphics。6コアで1,500MHz作動となる。外部出力用にHDMIを装備。ディスプレイは14型非光沢の1フルHD(1,920×1,080ドット)。画面占有率90%で、13型クラスの筐体へ14型の液晶パネルを収めている。

 ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、USB 3.2 Gen1 Type-C ×1、USB 2.0 ×2、92万画素Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力。Type-CはDisplayPort Alt Modeおよびび、USB PDには非対応だ。

 また、ドックが付属し、Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernetのポートが追加可能となる。

 サイズ319×220.2×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.3kg。リチウムイオン/52Whr/3セル/4,600mAhのバッテリを内蔵。価格は98,800円(税込@MSIストア調べ)。

 上位モデルとして、メモリ/ストレージは同じで、Ryzen 7 4700U(8C8T、2.0GHz~4.1GHz)、Windows 10 Proを搭載したモデル「Modern-14-B4MW-011JP」も用意され、店頭予想価格は133,000円前後の見込みだ。いずれも内容を考えるとリーズナブルだと思われる。

前面。パネル中央上にWebカメラ。画面占有率90%
斜め後ろから。ヒンジの部分が足になっているのがわかる
左側面。電源入力、HDMI、USB Type-C、microSDカードスロット
右側面。USB 2.0×2、音声入出力、ステータスLED
キーボード。オフまたは3段階の明るさ調節に対応したキーボードバックライト搭載日本語キーボード。キーストローク1.5mm。タッチパッドは1枚プレート式
キーピッチは実測で約19mm
裏。手前左右のスリットにスピーカー。ゴム足は手前に1本バー。後ろはヒンジ兼の足
横から。HDMIの高さ+αと結構薄い。ヒンジが足になり、キーボードが手前に傾くのがわかる
重量は実測で1,337gだった
付属のACアダプタとドック。サイズは約65×65×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量184g、出力19V/3.42A。Dock(Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernet)付属

 筐体はMIL規格「MIL-STD 810G」に適合するだけあってカッチリそしてガッチリしており、メタリックなブラックボディとなかなかカッコいい。写真からもわかるように結構薄型で重量は実測1,337g。見た目と実際が一致し、持った時に(予想外に)ズッシリ重く感じることはない。

 前面はパネル中央上にWebカメラ。画面占有率90%とフチが狭く、この狭い幅にWebカメラが収まっている。左側面に電源入力、HDMI、USB Type-C、microSDカードスロット。右側面にUSB 2.0×2、音声入出力、ステータスLEDを配置。裏は手前左右のスリットにスピーカー。

 ゴム足は手前に1本バー、後ろはヒンジ兼の足で写真のようにキーボード面を傾けている。またドック(USB Type-C/USB 3.0×2、SDカードスロット、microSDカードスロット、Gigabit Ethernet)が付属。ACアダプタは約65×65×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量184g、出力19V/3.42A。残念ながらPD非対応だ。

 14型のディスプレイは、明るく、コントラスト、発色、視野角などすべて良好。また非光沢なので眼にも優しい。クラス相応のパネルが使われている。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は356cd/平方m。標準の明るさ120cd/平方mは、最大から-5が139cd/平方m、-6が106cd/平方m。従って前者で計測した。黒色輝度は0.124cd/平方m。つまり、(目視可能かは別として)若干黒が浮く。リニアリティは、R・G・Bが微妙にねじれ、明るいほどズレるものの、良い方だろう。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはオフ/3段階明るさ調節に対応したキーボードバックライト搭載日本語キーボードだ。仕様上キーストローク1.5mm。打鍵感は少し硬めか。キーボード面が手前に傾いているので入力しやすい。キーピッチは実測で約19mm。手前と[半角/全角]、[\]キーなどのピッチが狭くなっているものの個人的には許容範囲。ただ[Enter]キーの外側にキーがあるため、好き嫌いはあるだろう。タッチパッドは1枚プレート式。パームレストも含め十分広く扱いやすい。

 ノイズや振動は試用した範囲ではとくに気にならなかった。発熱は、負荷をかけると、キーボード上側のスペースが熱くなるものの、キーボードやパームレストまでは熱が降りて来ない。

 サウンドはスピーカーが裏にあるため、机などに音が反射し、間接音が耳に届く。幅がある程度確保されているのでステレオ感はあるものの、パワー不足。音質も含めこの印象は前回と同じだったので、サウンド系は同等なのだろう。筐体、パネル、キーボードなどほかがまとまっているだけに、あと一歩頑張ってほしいところ。

Core i7-10510Uを凌駕するパフォーマンス!

 初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。2つあるMSIグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプルだ。

 M.2 NVMe SSD 512GBのストレージはSamsungの「MZVLQ512HALU」。仕様によると、シーケンシャルリード2,200MB/s、同ライト1,200MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約463.7GBが割り当てられ空き407GB。

 Wi-FiとBluetooth、そしてドックのGigabit EthernetはRealTek製。Radeon Settingsからコアのクロックが1,500MHzなのがわかる。

スタート画面(タブレットモード)。2つあるMSIグループがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙のみの変更とシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。M.2 NVMe SSD 512GBのストレージはSAMSUNG「MZVLQ512HALU」。Wi-FiとBluetooth、そしてDockのGigabit EthernetはRealTek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約463.7GBが割り当てられている
Radeon Settingsによると、コアのクロックは1,500MHz

 おもなプリインストールのソフトウェアは、「AudioDirector for MSI」、「CLIP STUDIO」、「ColorDirector for MSI」、「Creator Center」、「Norton Security」、「PhotoDirector 10 Essential for MSI」、「PowerDirector 17 Essential for MSI」など。

Creator Center(1/4) / クリエーターモード
Creator Center(2/4) / ユーザーシナリオ
Creator Center(3/4) / 基本設定
Creator Center(4/4) / モニター

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。結果は以下のとおり。

 「Modern-14-A10M-618JP」(Core i7-10510U/iGPU)と比較すると、PCMark 10は多少凸凹があるものの、本機の方が若干高いスコアだ(ただしRendering and Visualization Scoreのみ2分の1ほど)。PCMark 8はすべて本機が若干高く、3DMarkはTime SpyからSky Diverまで倍近い差。CINEBENCH R20は6C/6T対4C/8Tなのでマルチスレッドは不利なはずだが、シングルコア性能が高い分、マルチスレッドでも勝っているという結果になった。

 つまりCore i7-10510U/iGPUのほぼ完敗だ。Ryzen 5でこれなのだから7になるともっと大差になったと思われる。なるほど昨今のRyzen人気にも頷ける。

 PCMark 10/Battery/Modern Officeでバッテリ駆動時間を計測したところ、11時間37分だった(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。「Modern-14-A10M-618JP」とは、そもそもバッテリ容量が異なる(50Whr/4セル/3,290mAh)が、7時間37分なので大差となった。

【表】ベンチマーク結果
「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」(Ryzen 5 4500U)Modern 14 Modern-14-A10M-618JP」(Core i7-10510U)
PCMark 10 v2.1.2177
PCMark 10 Score4,3784,408
Essentials8,7477,732
App Start-up Score10,8239,944
Video Conferencing Score8,0776,744
Web Browsing Score7,6566,894
Productivity6,0046,401
Spreadsheets Score8,6877,585
Writing Score4,1505,402
Digital Content Creation4,3394,697
Photo Editing Score6,2773,784
Rendering and Visualization Score3,8776,984
Video Editting Score3,3573,922
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,8913,449
Creative Accelarated 3.04,0503,544
Work Accelarated 2.05,1184,846
Storage5,0275,049
3DMark v2.11.6866
Time Spy776454
Fire Strike Ultra490294
Fire Strike Extreme949538
Fire Strike2,0631,124
Sky Diver7,8644,632
Cloud Gate13,2288,555
Ice Storm Extreme75,24145,161
Ice Storm95,66961,624
CINEBENCH R20
CPU2,437 pts(7位)1,379 pts(10位)
CPU(Single Core)447 pts(2位)412 pts(2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2,249.574 MB/s未計測
Q32T1 シーケンシャルライト1,186.472 MB/s未計測
4K Q8T8 ランダムリード933.474 MB/s未計測
4K Q8T8 ランダムライト849.579 MB/s未計測
4K Q32T1 ランダムリード477.139 MB/s未計測
4K Q32T1 ランダムライト304.384 MB/s未計測
4K Q1T1 ランダムリード47.313 MB/s未計測
4K Q1T1 ランダムライト96.135 MB/s未計測

 以上のようにMSI「Modern 14 Modern-14-B4MW-012JP」は、Ryzen 5 4500U、メモリ16GB(ただしシングルチャンネル)、ストレージM.2 NVMe SSD 512GBを搭載し、画面占有率90%で13型クラスの筐体へ14型フルHDのパネルを収めたノートPCだ。性能はベンチマークテストからもわかるようにCore i7-10510Uを凌ぎ、価格は10万円切り。筐体などもしっかりしており、とても魅力的なマシンに仕上がっている。

 実際使った感じとして、あえて欠点を挙げれば[Enter]キーの外側にキーがある、USB PDに非対応、サウンドがいま一歩程度といったところがあるものの、それ以外気になる部分もなかった。IntelかAMDかにこだわらず、比較的安価で高い性能を期待するユーザーに使って欲しい1台だ。