西川和久の不定期コラム

Core i9とQuadroを搭載した円柱型ワークステーション「ASUS Mini PC ProArt PA90」

 ASUSは10月16日、第9世代Core i9とQuadro P2000を搭載、水冷CPUクーラー採用の比較的コンパクトなワークステーション「Mini PC ProArt PA90」を発表した。実機が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

Core i9-9900KとQuadro P2000を搭載した円柱型ワークステーション

 前々回がCore i9-9980HK搭載の「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」、前回がCore i9-9880HとQuadro RTX 5000 with Max-Q Designを搭載した「VELUGA 5000/ELVLG5K93221TB24K3WR」……と、ハイエンドノートPCが続いたが、今回はCore i9-9900KとQuadro P2000を搭載したハイエンドデスクトップPCをご紹介したい。

 SKU末尾K型番の最上位プロセッサ、そしてQuadro搭載と聞くと、大きく音もうるさいフルタワー型をイメージしてしまうが、本機はアイドル時25.5dB、高負荷時32dBの水冷CPUクーラーを採用、加えて電源を外づけにしたこともあり、176×176×365mm(幅×奥行き×高さ)と、結構コンパクトな円柱型の洒落たデザインになっている。おもな仕様は以下のとおり。

ASUS「Mini PC ProArt PA90」の仕様
プロセッサCore i9-9900K(8コア16スレッド/3.6GHz~5.0GHz/キャッシュ 16MB/TDP 95W)
メモリ32GB(16GB×2)/DDR4-2666
ストレージSSD 512GB M.2 PCIE
OSWindows 10 Pro(64bit)
グラフィックスIntel UHD Graphics 630/NVIDIA Quadro P2000、DisplayPort 1.4×4
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0
インターフェイスThunderbolt 3×2、USB 3.1×4、音声入出力
サイズ/重量176×176×365mm(幅×奥行き×高さ)/5.2kg
電源180+230W
価格オープンプライス(税込価格369,800円@価格.com調べ)

 プロセッサは、第9世代Coffee LakeのCore i9-9900K。8コア16スレッドでクロックは3.6GHzから最大5.0GHz。キャッシュは16MBでTDPは95W。言うまでもなくSKUとしては上位となる。冒頭に書いたように、水冷CPUクーラーを採用し、コンパクトに、そしてある程度静音化しているのが本機の特徴だ。

 メモリはDDR4-2666の16GB×2で計32GB。ストレージはSSD 512GB M.2 PCIE。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 630と、Pascalアーキテクチャで1,024 CUDAコア、メモリ5GB/GDDR5の Quadro P2000。出力はDisplayPort 1.4×4。最大4,096×2,160ドット@120Hz×4画面、または5,120×2,880ドット@60Hz×4画面までの対応となる。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 5.0も内蔵する。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 3×2、USB 3.1×4、音声入出力。シンプルながら強力な構成だ。

 電源は180+230W。はじめなんのことかと思ったが、写真からもわかるようにパッケージには、出力180Wと230WのACアダプタが2つ入っていた。もちろんどちらも本体へ接続する必要がある。

 筐体のサイズは176×176×365mm(幅×奥行き×高さ)。筐体フォルムはご覧のように円柱型。筐体のトップには色が変わるイルミネーションが仕込まれている。重量は5.2kg。価格はオープンプライスだが、価格.comで調べたところ税込369,800円だった。構成を考えると妥当なところだろうか。

 なお、11月6日にdGPUをGeForce RTX 2060に変更した「PA90-M9112ZN」も発表されている。GPUの特性的に、こちらはゲーミングPCとなるだろうか。

円柱型の筐体。下側に電源ボタンと各種コネクタ
前面のアップ。電源ボタン、USB 3.1×2、マイク入力、ヘッドフォン出力
背面。拡張スロットなどはない
背面拡大Wi-Fi用アンテナ端子、DisplayPort×4、ヘッドフォン出力、USB 3.1×2、Thunderbolt 3×2、Gigabit Ethernet、CMOS Clear。電源入力は左側が180W、右側が230W
ほかの写真からわかるように、電源オフ時この隙間はなく閉じている。電源オンにすると自動的に少しせり上がる
上部(上の蓋を外して光っているところ)。蓋は簡単に外せる仕掛けだ。発色は確認したところではブルー、ホワイト、パープルなど。CPUの負荷によって発色が変わる
付属のACアダプタとWi-Fiアンテナなど。手前が230W ACアダプタで。サイズ約160×75×30mm(同)、重量630g、出力19.5V/11.8A。後ろが180W。サイズ約157×75×2mm(同)m、重量511g、出力19.5V/9.23A。ACプラグの形状が異なっているのがわかる

 筐体は円柱型でオールブラック。正面はフラットだがほかの多くはスリットになっている。トップの蓋は梱包時は外されており、あとから取りつける。電源オフ時は隙間なく閉まっているが、電源オンにすると自動的にせりあがり少し隙間が空き、そこからイルミネーションが見える。

 この蓋とイルミネーションは、CPU負荷によって隙間の高さと発色が変わる仕掛けになっている。ギミックとしてはおもしろいが、ゲーミングPCとは違い、ワークステーションを使う人にとっては気にならないだろう。

 サイズ176×176×365mm(同)というのは、手持ちのデスクトップPCと比較すると、2015年にi5-6600で自作PCを作るときに使った、ATX対応ケースとしては最小クラスの「サイズRANA2」(154×465×367mm/現在廃盤)。と高さがほぼ同じだ。奥行きは半分もない。その筐体にCore i9とQuadroが収まっているのだから正直驚く。

 前面に電源ボタン、USB 3.1×2、マイク入力、ヘッドフォン出力。背面には拡張スロットなどはなく、Wi-Fi用アンテナ端子、DisplayPort×4、ヘッドフォン出力、USB 3.1×2、Thunderbolt 3×2、Ethernet、CMOS Clear、電源入力×2。昔ながらの拡張スロットを使った拡張性はないものの、これだけ最新のポートがそろっていれば実用上は問題ない。なお電源入力は左側が180W用、右側が230W用となる。

 付属のACアダプタは、230Wタイプがサイズ約160×75×30mm(同)、重量630g、出力19.5V/11.8A。180Wタイプが、サイズ約157×75×25mm(同)、重量511g、出力19.5V/9.23A。ACプラグの形状が異なっている。これまで多くのPCをレビューしてきたが、ACアダプタ2つというのははじめてだ。筐体をコンパクトにするためだろうが(メンテナンス性もあるだろうか)、これだけ大きなACアダプタが2つあると、それはそれで結構嵩張る。

 内部がどうなっているのか分解して確認したいところだが、簡単に外せそうもないので今回は残念ながら見送った。同社のサイトには内部構造の写真も掲載されているので、興味のある方はご覧いただきたい。

 この手のワークステーションはパワーはあるものの、音がうるさいというイメージがあるが、本機は水冷CPUクーラーを採用しており、アイドル時で25.5dB、最大時でも32dBと非常に静かだ。またファンからのエアーもほとんど出ない。机の下はもちろん、上に乗せても(つまり耳の位置が近い)気にならないだろう。静かなオフィスでも周囲を気にせず使えるワークステーションだ。

爆速ながら静かな1台!

 初回起動時のスタート画面(タブレットモード)はフルHD時、1画面。ASUS Appsグループがプリインストールとなるが、特別なアプリは登録されていない。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプル。電源オンにするとあっという間にデスクトップ画面が現れる。構成が構成なだけに非常に快適だ。

 ストレージはSSD 512GB M.2 PCIe Gen3 x4の「SAMSUNG MZVLB512HAJQ」。仕様によるとシーケンシャルリード3,000MB/s、シーケンシャルライト1,800MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約476.27GBが割り当てられ空き433GB。

 Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothすべてIntel製だ。Quadro P2000はNVIDIAコントロールパネルより、メモリ5120MB/GDDR5、CUDAコア1,024なのがわかる。

スタート画面(タブレットモード)
起動時のデスクトップ
デバイスマネージャー/主要なデバイス
ストレージのパーティション
NVIDIAコントロールパネル

 おもなプリインストールのソフトウェアは、「ASUS Product Registration」、「i-フィルター6.0」、「McAfee Personal Securty」、「Thunderboltコントロールセンター」など。とくにこれといったものは入っていない。

 コントロールパネルを見ると「PA90 Lighting Service」という項目が目に入った。おそらくトップライトの光り方を調整できるサービスだと思われるが、それをユーザーが設定できるようなパネルは見つからなかった。

ASUS Product Registration
PA90 Lighting Service

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark。結果は以下のとおり。参考までに一部、前回掲載したELSA「VELUGA 5000」(Core i9-9880H with NVIDIA Quadro RTX 5000 with Max-Q Design)のスコアもカッコ内に載せている。

 まず純粋なCPUパワーはCINEBENCH R20を見るかぎり本機のほうが速い。SKU的にCore i9-9900Kのほうが上なので当然の結果だ。

 PCMark 10と3DMarkに関しては、CPUはもちろん、GPUやストレージの性能も関係するため結構おうとつがある。PCMark 10は全体的に本機のほうが高いスコアになっている。とくにVideo Editting Scoreが約倍だ。ただしPhoto Editing Scoreが低い。

 3DMarkはTime SpyからFire Strikeまでが約半分のスコア。このあたりはGPU性能の違い(CUDAコア1,024 vs 3,072)がそのまま出ている。

ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.0.2144
PCMark 10 Score6,104 (5,366)
Essentials9,917 (8,796)
App Start-up Score14,427 (11,229)
Video Conferencing Score7,218 (7,823)
Web Browsing Score9,366 (7,748)
Productivity8,043 (6,697)
Spreadsheets Score8,564 (8,293)
Writing Score7,554 (5,409)
Digital Content Creation7,739 (7,121)
Photo Editing Score7,574 (10,167)
Rendering and Visualization Score10,110 (9,441)
Video Editting Score6,054 (3
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,411
Creative Accelarated 3.07,731
Work Accelarated 2.05,480
Storage5,076
3DMark v2.10.6799
Time Spy3,361 (6,896)
Fire Strike Ultra2,298 (4,326)
Fire Strike Extreme4,475 (8,442)
Fire Strike8,874 (16,194)
Sky Diver28,851 (35,094)
Cloud Gate40,779 (34,427)
Ice Storm Extreme167,494 (69,558)
Ice Storm193,526 (50,376)
CINEBENCH R20
CPU4605 pts/4位 (3242 pts/5位)
CPU(Single Core)501 pts/1位 (466 pts/2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3,515.134 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2,009.950 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1,029.681 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1,896.671 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード473.782 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト413.080 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード46.907 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト141.445 MB/s

 以上のようにASUS「Mini PC ProArt PA90」は、Core i9-9900Kと4K同時4出力が可能なQuadro P2000、メモリ32GB、SSD 512GBを搭載したワークステーションだ。水冷CPUクーラーを採用しているので、構成のわりに音も静か。ワークステーションっぽくないコンパクトで円柱型の筐体もなかなか良い。

 仕様上、とくに気になる部分はないものの、結構大きなACアダプタが2つ必要なのがウィークポイントだろうか。音が静かで嵩張らないワークステーションを探しているユーザーに試してほしい1台と言えよう。