西川和久の不定期コラム
Core i9とQuadroを搭載した円柱型ワークステーション「ASUS Mini PC ProArt PA90」
2019年11月23日 11:00
ASUSは10月16日、第9世代Core i9とQuadro P2000を搭載、水冷CPUクーラー採用の比較的コンパクトなワークステーション「Mini PC ProArt PA90」を発表した。実機が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
Core i9-9900KとQuadro P2000を搭載した円柱型ワークステーション
前々回がCore i9-9980HK搭載の「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」、前回がCore i9-9880HとQuadro RTX 5000 with Max-Q Designを搭載した「VELUGA 5000/ELVLG5K93221TB24K3WR」……と、ハイエンドノートPCが続いたが、今回はCore i9-9900KとQuadro P2000を搭載したハイエンドデスクトップPCをご紹介したい。
SKU末尾K型番の最上位プロセッサ、そしてQuadro搭載と聞くと、大きく音もうるさいフルタワー型をイメージしてしまうが、本機はアイドル時25.5dB、高負荷時32dBの水冷CPUクーラーを採用、加えて電源を外づけにしたこともあり、176×176×365mm(幅×奥行き×高さ)と、結構コンパクトな円柱型の洒落たデザインになっている。おもな仕様は以下のとおり。
ASUS「Mini PC ProArt PA90」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i9-9900K(8コア16スレッド/3.6GHz~5.0GHz/キャッシュ 16MB/TDP 95W) |
メモリ | 32GB(16GB×2)/DDR4-2666 |
ストレージ | SSD 512GB M.2 PCIE |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 630/NVIDIA Quadro P2000、DisplayPort 1.4×4 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | Thunderbolt 3×2、USB 3.1×4、音声入出力 |
サイズ/重量 | 176×176×365mm(幅×奥行き×高さ)/5.2kg |
電源 | 180+230W |
価格 | オープンプライス(税込価格369,800円@価格.com調べ) |
プロセッサは、第9世代Coffee LakeのCore i9-9900K。8コア16スレッドでクロックは3.6GHzから最大5.0GHz。キャッシュは16MBでTDPは95W。言うまでもなくSKUとしては上位となる。冒頭に書いたように、水冷CPUクーラーを採用し、コンパクトに、そしてある程度静音化しているのが本機の特徴だ。
メモリはDDR4-2666の16GB×2で計32GB。ストレージはSSD 512GB M.2 PCIE。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 630と、Pascalアーキテクチャで1,024 CUDAコア、メモリ5GB/GDDR5の Quadro P2000。出力はDisplayPort 1.4×4。最大4,096×2,160ドット@120Hz×4画面、または5,120×2,880ドット@60Hz×4画面までの対応となる。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 5.0も内蔵する。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 3×2、USB 3.1×4、音声入出力。シンプルながら強力な構成だ。
電源は180+230W。はじめなんのことかと思ったが、写真からもわかるようにパッケージには、出力180Wと230WのACアダプタが2つ入っていた。もちろんどちらも本体へ接続する必要がある。
筐体のサイズは176×176×365mm(幅×奥行き×高さ)。筐体フォルムはご覧のように円柱型。筐体のトップには色が変わるイルミネーションが仕込まれている。重量は5.2kg。価格はオープンプライスだが、価格.comで調べたところ税込369,800円だった。構成を考えると妥当なところだろうか。
なお、11月6日にdGPUをGeForce RTX 2060に変更した「PA90-M9112ZN」も発表されている。GPUの特性的に、こちらはゲーミングPCとなるだろうか。
筐体は円柱型でオールブラック。正面はフラットだがほかの多くはスリットになっている。トップの蓋は梱包時は外されており、あとから取りつける。電源オフ時は隙間なく閉まっているが、電源オンにすると自動的にせりあがり少し隙間が空き、そこからイルミネーションが見える。
この蓋とイルミネーションは、CPU負荷によって隙間の高さと発色が変わる仕掛けになっている。ギミックとしてはおもしろいが、ゲーミングPCとは違い、ワークステーションを使う人にとっては気にならないだろう。
サイズ176×176×365mm(同)というのは、手持ちのデスクトップPCと比較すると、2015年にi5-6600で自作PCを作るときに使った、ATX対応ケースとしては最小クラスの「サイズRANA2」(154×465×367mm/現在廃盤)。と高さがほぼ同じだ。奥行きは半分もない。その筐体にCore i9とQuadroが収まっているのだから正直驚く。
前面に電源ボタン、USB 3.1×2、マイク入力、ヘッドフォン出力。背面には拡張スロットなどはなく、Wi-Fi用アンテナ端子、DisplayPort×4、ヘッドフォン出力、USB 3.1×2、Thunderbolt 3×2、Ethernet、CMOS Clear、電源入力×2。昔ながらの拡張スロットを使った拡張性はないものの、これだけ最新のポートがそろっていれば実用上は問題ない。なお電源入力は左側が180W用、右側が230W用となる。
付属のACアダプタは、230Wタイプがサイズ約160×75×30mm(同)、重量630g、出力19.5V/11.8A。180Wタイプが、サイズ約157×75×25mm(同)、重量511g、出力19.5V/9.23A。ACプラグの形状が異なっている。これまで多くのPCをレビューしてきたが、ACアダプタ2つというのははじめてだ。筐体をコンパクトにするためだろうが(メンテナンス性もあるだろうか)、これだけ大きなACアダプタが2つあると、それはそれで結構嵩張る。
内部がどうなっているのか分解して確認したいところだが、簡単に外せそうもないので今回は残念ながら見送った。同社のサイトには内部構造の写真も掲載されているので、興味のある方はご覧いただきたい。
この手のワークステーションはパワーはあるものの、音がうるさいというイメージがあるが、本機は水冷CPUクーラーを採用しており、アイドル時で25.5dB、最大時でも32dBと非常に静かだ。またファンからのエアーもほとんど出ない。机の下はもちろん、上に乗せても(つまり耳の位置が近い)気にならないだろう。静かなオフィスでも周囲を気にせず使えるワークステーションだ。
爆速ながら静かな1台!
初回起動時のスタート画面(タブレットモード)はフルHD時、1画面。ASUS Appsグループがプリインストールとなるが、特別なアプリは登録されていない。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプル。電源オンにするとあっという間にデスクトップ画面が現れる。構成が構成なだけに非常に快適だ。
ストレージはSSD 512GB M.2 PCIe Gen3 x4の「SAMSUNG MZVLB512HAJQ」。仕様によるとシーケンシャルリード3,000MB/s、シーケンシャルライト1,800MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約476.27GBが割り当てられ空き433GB。
Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothすべてIntel製だ。Quadro P2000はNVIDIAコントロールパネルより、メモリ5120MB/GDDR5、CUDAコア1,024なのがわかる。
おもなプリインストールのソフトウェアは、「ASUS Product Registration」、「i-フィルター6.0」、「McAfee Personal Securty」、「Thunderboltコントロールセンター」など。とくにこれといったものは入っていない。
コントロールパネルを見ると「PA90 Lighting Service」という項目が目に入った。おそらくトップライトの光り方を調整できるサービスだと思われるが、それをユーザーが設定できるようなパネルは見つからなかった。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark。結果は以下のとおり。参考までに一部、前回掲載したELSA「VELUGA 5000」(Core i9-9880H with NVIDIA Quadro RTX 5000 with Max-Q Design)のスコアもカッコ内に載せている。
まず純粋なCPUパワーはCINEBENCH R20を見るかぎり本機のほうが速い。SKU的にCore i9-9900Kのほうが上なので当然の結果だ。
PCMark 10と3DMarkに関しては、CPUはもちろん、GPUやストレージの性能も関係するため結構おうとつがある。PCMark 10は全体的に本機のほうが高いスコアになっている。とくにVideo Editting Scoreが約倍だ。ただしPhoto Editing Scoreが低い。
3DMarkはTime SpyからFire Strikeまでが約半分のスコア。このあたりはGPU性能の違い(CUDAコア1,024 vs 3,072)がそのまま出ている。
ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.0.2144 | |
PCMark 10 Score | 6,104 (5,366) |
Essentials | 9,917 (8,796) |
App Start-up Score | 14,427 (11,229) |
Video Conferencing Score | 7,218 (7,823) |
Web Browsing Score | 9,366 (7,748) |
Productivity | 8,043 (6,697) |
Spreadsheets Score | 8,564 (8,293) |
Writing Score | 7,554 (5,409) |
Digital Content Creation | 7,739 (7,121) |
Photo Editing Score | 7,574 (10,167) |
Rendering and Visualization Score | 10,110 (9,441) |
Video Editting Score | 6,054 (3 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 5,411 |
Creative Accelarated 3.0 | 7,731 |
Work Accelarated 2.0 | 5,480 |
Storage | 5,076 |
3DMark v2.10.6799 | |
Time Spy | 3,361 (6,896) |
Fire Strike Ultra | 2,298 (4,326) |
Fire Strike Extreme | 4,475 (8,442) |
Fire Strike | 8,874 (16,194) |
Sky Diver | 28,851 (35,094) |
Cloud Gate | 40,779 (34,427) |
Ice Storm Extreme | 167,494 (69,558) |
Ice Storm | 193,526 (50,376) |
CINEBENCH R20 | |
CPU | 4605 pts/4位 (3242 pts/5位) |
CPU(Single Core) | 501 pts/1位 (466 pts/2位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3,515.134 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 2,009.950 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1,029.681 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 1,896.671 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 473.782 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 413.080 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 46.907 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 141.445 MB/s |
以上のようにASUS「Mini PC ProArt PA90」は、Core i9-9900Kと4K同時4出力が可能なQuadro P2000、メモリ32GB、SSD 512GBを搭載したワークステーションだ。水冷CPUクーラーを採用しているので、構成のわりに音も静か。ワークステーションっぽくないコンパクトで円柱型の筐体もなかなか良い。
仕様上、とくに気になる部分はないものの、結構大きなACアダプタが2つ必要なのがウィークポイントだろうか。音が静かで嵩張らないワークステーションを探しているユーザーに試してほしい1台と言えよう。