西川和久の不定期コラム
ノッチなし画面占有率93.8%の6.4型スマートフォン、OPPO「Find X」
2018年11月1日 12:48
OPPOは10月19日、カメラ部分が本体内部から自動的にスライドし、ノッチレスを実現したAndroid搭載スマートフォン「Find X」の国内投入を発表した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
Snapdragon 845搭載ノッチなし画面占有率93.8%の6.4型
9月に本連載では同社の「R15 Neo」と「R15 Pro」をご紹介した。前者はエントリーモデルで価格25,880円(3GB)もしくは29,880円(4GB)。後者はFeliCa搭載によるおサイフケータイ対応のミドルレンジで価格は69,980円。とくに後者は日本市場に向けチューニングしたもので、同社の日本市場への本気度を垣間見ることができるモデルに仕上がっている。
そして今回ご紹介するのは「Find X」という別モデル。価格が111,800円前後なので、ハイエンド相当となる。一般的に会社/ブランドが同じなら、もっとも高価格なモデルはエントリー/ミドルレンジ機種の機能をすべて含み、さらにパネルの大型化、SoCのパワーアップ、メモリやストレージの増量、カメラの高性能化……などがありがちなパターンであるが、このFind Xはそうなっていない。
もちろん、パネルサイズやSoC、メモリ、ストレージ、カメラなど主要部分は強化しているものの、R15 Proにあった防水・防塵には未対応、おサイフケータイにも対応していない。つまり大は小を兼ねていないのだ。では「なにが特徴?」となるわけだが、最大のセールスポイントは画面占有率93.8%に加え“ノッチなし”となる。
昨今のスマートフォンは狭額縁化が進み、結果、前面にあるカメラ部分が邪魔になってきた。とは言え、なくすこともできず、その部分だけパネルを切り抜き、空いた空間をノッチと呼んでいる。部分的に暗くなり(しかも画面上部中央!)、美しくないものの、ノッチサイズの違いこそあれ、iPhone X系も含め多くの狭額縁スマートフォンで採用されている。
そこに反旗を翻したのがFind Xだ。当初「ノッチを消すなら、パネルの下にカメラを埋め込む……そんなことが可能なのか?」と思いきや、そうではなく、カメラ部分が自動的に本体内から飛び出すという“力技”での実現だ。おもな仕様は以下の通り。
OPPO「Find X」の仕様 | |
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SoC | Snapdragon 845(A75 2.8GHz×4コア+A55 1.8GHz×4コア、Aderno 630) |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 256GB |
OS | ColorOS5.1(Android 8.1ベース) |
ディスプレイ | 6.4型有機EL2,340×1,080ドット、ノッチなし、画面占有率93.8% |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
SIM | Nano SIMカードスロット×2(DSDV、デュアルVoLTE対応) |
対応バンド | GSM:850/900/1,800/1,900MHz WCDMA:1/2/4/5/6/8/19 FDD-LTE: 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/25/26/28/29/32/66 TD-LTE:34/38/39/40/42(2,496~2,690MHz) |
インターフェイス | USB Type-C |
カメラ | 前面:2,500万画素(F2.0) 背面:1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ(F2.0) |
サイズ/重量 | 74.2×156.7×9.6mm(幅×奥行き×高さ)/約186g |
バッテリ | 1,700mAh×2 |
カラーバリエーション | ワインレッド、サイレントブルー |
税別価格 | 111,800円前後 |
SoCはSnapdragon 845。Cortex-A75 2.8GHz×4コア+Cortex-A55 1.8GHz×4コア、GPUにAderno 630を内包するハイエンドSKUだ。メモリ8GB、ストレージ256GBと大容量。ただしmicroSDカードスロットはない。OSはAndroid 8.1ベースのColorOS5.1。別モデルで触れているが、少しiOSに似たUIを持つ、カスタマイズが施されたOSになっている。
ディスプレイは6.4型有機ELで、解像度は2,340×1,080ドット。先に書いたとおり画面占有率93.8%でノッチなしなのが、本機最大の特徴だ。
SIMはDSDV、デュアルVoLTE対応のNano SIMカードスロット×2。写真からわかるように、横にSIMが2つ並ぶのではなく、裏表に1枚と少し珍しいタイプとなる。対応バンドは掲載した表のとおりだ。
カメラは前面2,500万画素(F2.0)、背面1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ(F2.0)構成だ。前面カメラは顔の1.5万ポイントを3Dスキャンし3D顔認証を行ない精度を上げている。そしてこのカメラ部分、普段は本体内へスライドダウンして見えず、必要時、自動的にスライドアップする仕掛けでノッチなしを実現している。動画を掲載したので参考にして欲しい。
同社の説明によると、30万回以上の動作試験をクリアする耐久性で、1日150回動作させたとしても5年間動作するとのこと。この仕掛けは「ステルス3Dカメラ」と呼ばれる。またスライドアップ中に落下を検知すると自動的にスライドダウンする機能も装備している。
ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。Bluetoothのオーディオコーデックは、SBC/AAC/aptX(HD)/LDAC。
インターフェイスはUSB Type-Cのみ。3.5mmのイヤフォンジャックはなく、スピーカーもモノラルとなる。バッテリは1,700mAh×2。直列で接続し、電圧を分散、35分の充電で100%となる急速充電「Super VOOC」を搭載している。NFCは非搭載だ。
サイズは74.2×156.7×9.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約186g。カラーバリエーションは、ワインレッド、サイレントブルー。税別価格は111,800円前後。特殊な機構を持つハイエンドとは言え10万円超は、なかなか強気の価格設定ではないだろうか。
3D多面カラープロセスという手法を用いた筐体は、グラデーションカラーが施され独自の雰囲気。質感もなかなか良い。実測で193gと、スマートフォンとしては重い方だが、持った時のバランスも良く、ずっしり重いと言う感じはしない。なかなか好印象だ。
前面は、狭額縁に加えノッチがない独特のデザイン。ナビゲーションバーは標準では画面内だが、設定で消すこともできる。背面のカラーバリエーションはサイレントブルー。指紋センサーもカメラもないので全面ツルツルしている。左側面に音量±ボタン。下側面にSIMスロット、Type-C、スピーカー。右側面に電源ボタンを配置。Nano SIMスロットは、裏と表にSIMをセットするタイプで写真の状態がSIM2、裏側がSIM1となる。
USB式ACアダプタのサイズ約50×50×30mm(同)、重量90g、出力5V/2Aまたは10V/5A。後者はSuper VOOC用だ。Type-C to 3.5mm音声変換ケーブルとケースも付属する。
6.4型のパネルは、さすがに画面占有率93.8%でノッチなしは圧巻。加えて有機ELで黒の締まりも良く、明るさ、発色、コントラスト、視野角全て良好。輝度最大にするととんでもなく眩しくなる。タッチの反応も非常に良い。
発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると本体上半分が熱を持つ。ただカメラの連続撮影に関しては、少なくと試した範囲では発熱しなかった。
スピーカー出力は凶悪なほど(笑)パワーがあり、最大だととにかく煩い。これだけパワーのあるスマートフォンは初だろう。ただしスピーカーがモノラルなのは残念なところ。イヤフォン出力も音質的には同じ傾向でパワーもある。一般的なジャンルならとくに不満になることもないだろう。
このように当初結構好印象だったが、実際使い出すと気になる点が2つ。1つは狭額縁過ぎること。扉の写真をご覧頂きたいが、フチが狭過ぎ、少しでも変に持つと指で画面が隠れて逆に見にくくなってしまう。慣れの問題もあるだろうが、ここまで狭いと、こんな問題もあるのか……と、あたらめて思ってしまった。
もう1つは周囲のエッジが細く、握っていると手が痛くなること。多くのスマートフォンはこの部分はラウンド形状になっているのだが、本機はラウンドながらも割と細くとがっている。この部分が手に食い込み、気持ち痛いのだ。これは持つと割とすぐ分かるので、デザイン重視にしたのだろう。
多機能だが、写真は赤の発色が独特か
カメラは前面2,500万画素(F2.0)、背面1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ(F2.0)の構成だ。後者には光学式手ぶれ補正も装備している。物理的な焦点距離は4.03mm(Exifから)。
撮影モードは、タイムラプス、スローモーション、動画、写真、ポートレート、ステッカー、パノラマ、エキスパート。全て背面/前面ともに切り替え可能。また独立した設定パネルはない。A.I.シチュエーション認識技術で800のシーンを認識する。
写真ではA.I.ビューティーモード(AI/1/2/3/4/5/6レベル)、カラーフィルタ(抹茶/秋/ライム/幻想的な城/ブラックコーヒー/ラブレター/2046/重慶市/クランベリー)。背景がボケるポートレートではライティングとして自然光/フィルム(明)/モノトーンライト/2色(明)/キャンパスライト/シェイクライトといった設定ができる。
カラーフィルタの命名とその効果がわかりにくいので、実際は切り替えつつ、テイストを確かめることになる(ブラックコーヒーがモノクロ)。3Dを駆使したA.I.ビューティーモードは前面カメラで試したものの、シワ・シミを消し、明るめ……と少し塗った感はあるが、なかなかの仕上がりだった。
エキスパートは、WB:2,000-8,000K、EV:±2、ISO:100-3,200、シャッタースピード:16-1/8,000秒、AF/MFの調整が可能だ。
実際の使用感は、まずノッチレスのために自動スライドになった部分は、被写体が動かないものなかりなので、タイムラグはまったく気にならなかった。カメラアプリを起動し、被写体に向ける頃にはもうレンズがせり出している。AFも素早く正確。メディアへの書き込み中に操作できなくなることもなく快適にサクサク撮れる。
写真/ポートレートモードをおり交ぜ作例を28枚掲載したので参考にして欲しい。気になる点があるとすれば赤の発色。作例にも赤い被写体が2点入っているものの、朱っぽい似た赤になる。実際は同じ赤でも色が違うのだが、おそらくパッと見鮮やかに見えるよう調整しているのだろう。じつは、赤の再現性がカメラの描写力にとって重要だったりすのだが、この点は誰のためのカメラかでチューニングポイントが変わるので難しい部分でもある。
ポートレートモードは、R15 Proではデジタルズームがかかってしまったが、このFind Xでは、標準の写真モードと同じ絵となる。出力画素数も3,456×4,608ドットと同じ。この点は使いやすくなった。夜景も暗めの場所を選んで撮ったが、比較するとずいぶんきれいに写るようになっている。
全般的には赤の発色以外、個性的な部分もなく普通の写り。明るい場所でも暗い場所でも無難に撮影でき、とくに不満になることはないだろう。
セットアップ
初期設定は、Wi-Fを使いGoogleアカウントやパスコード/顔認証設定など全てスキップして行なった。全部で11画面。OPPOアカウントなど、独自のアカウント設定もなく、必要最小限で準備が完了する。
顔認識は、パスコードを設定した後に登録可能になる。登録自体は簡単ですぐ終わるものの、プライバシー上の問題があるとのことで、この部分に関しては画面キャプチャは撮れなかった。また実際認証を行なうと「あっあそっか!カメラ使うからせり出すんだ!」と気が付く。この関係もあり、せり出す時間分、タイムラグが発生する。
眼鏡ありで登録してみたが、眼鏡の有無、サングラス、すべて問題なく認証された。また、暗い場所も含め、光の状態が悪くても高確率で認識するのには驚いた。とは言え、同社はFind Xの顔認証の方が20倍安全としているが、念のために指紋認証も欲しかったところだ。
SIM情報と設定やアクセスポイント名などは従来と同じ。SIMをセットし、該当するアクセスポイントを選べば再起動の必要もなく即使用可能になる。
シンプルな構成とiOS的な操作性
初期起動時のホーム画面は3画面。1画面目はスマートアシストを配置している。Androidのバージョンは8.1.0、ColorOSはV5.1。ストレージは256GB中、225GBが使用可能(若干の画面キャプチャが含まれている)と大容量だ。
ナビゲーションバーは標準では、画面内でかつ戻るとタスク切り替えボタンの位置が逆だが、設定でどちらも変更できる。一般的なAndroidを使っていたユーザーであれば、少なくとも戻るとタスク切り替えボタンの位置は逆にした方が使いやすいだろう。タスク切り替えは、Android的な縦カード式ではなく、iOS的な横カード式。アプリの使用は画面分割にも対応する(非対応のアプリもある)。
アプリは、「カレンダー」、「時計」、「天気」、「設定」、「写真」、「Playストア」、「音楽」、「ファイル管理」、「フォンマネージャー」、「テーマストア」、「使用のヒント」、「動画」、「Music Play」、「ゲームスペース」、「Facebook」、「WPS Office」。Dockに「電話」、「メッセージ」、「ブラウザ(Opera)」、「カメラ」。Googleフォルダに「Google」、「Chrome」、「Gmail」、「マップ」、「YouTube」、「ドライブ」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「Duo」、「フォト」。ツールフォルダに「連絡先」、「レコーダー」、「コンパス」、「計算機」、「データ移行」、「ワンタップロック画面」、「Keep」。
ゲームスペースは、登録したアプリの作動をブーストするものだ。後述する「AnTuTu Benchmark」で使ってみたので参考にして欲しいが、この組み合わせは効果が無かった。他のゲームアプリならまた違った結果になると思われる。
ウィジェットは、「時計」、「Chrome(2)」、「カレンダー(2)」、「Gmail」、「Google(2)」、「Keep(2)」、「ドライブ」、「Google Play Music(2)」。効果は、「初期モード」、「キューブスライド」、「反転スライド」、「カードの効果」、「傾斜モード」。割と少なめだ。
ハイエンドらしいパフォーマンスと平均的なバッテリ駆動時間
ベンチマークテストは簡易式だが「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octaneは16,109、AnTuTu Benchmarkは283,505でランキングは7位だった。Google Octaneは2万超えるかと思ったが届かず。またAnTuTuのランキングには同じモデルがすぐ上の6位に入っている。いずれにしても、スマートフォンとしてはかなり速い部類となる。
ゲームスペースへAnTuTuを追加したところ、ご覧のように逆にスコアが下がってしまった(約3,000の違いなので、誤差の範囲とも言える)。AnTuTuとは相性がよくないようだ。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約11時間で電源が落ちた。SoCやバッテリ容量などを考えても無難なところだろうか。このとき、音量と明るさ50%は、結構明るく、また音は煩いレベルだった。
最後に余談を少々。個人的にiPhone XとP20 Proを所有しているが、長時間使ってみた結果、ノッチは容認派になってしまった。というのも、このエリアはもともと両サイドにLTEやWi-Fi、バッテリのステータスが出ていて、そもそも気にならない上、多くの写真や動画は、縦横比の関係から、このエリアまでは浸食してこないからだ。従ってノッチはあっても、邪魔にならないのだ。
もちろん、今回初めてノッチのないスマートフォンを触り、その見た目から「おー!」っと思っていたものの、機械的にせり出すカメラはどう考えても耐久性の問題がつきまとい、故障率が高くなりそうだからだ。
iPhoneのホームボタンのような簡単な構造でさえ、埃かなにかが入り込むと反応しなくなるのに、これだけ大胆な構造になると、例えば浜辺で使って細かい砂が入り込んだりといったことも、十分考えられる話だ。
また、1日150回で5年持つという耐久性も、写真撮影だけならそう簡単に超えないと思うが、顔認証まで含めると、1日に150回は超えそうな感じがしてくる。そうなると30万回は意外と早いタイミングに来るかも知れない。
従って、筆者としては、この方式はメリットよりもデメリットが上回るのではという意見だ。つまり「そこまでしなくても」的な感じだ。他社が追随しないのも、この点からではないだろうか。いずれにしても、ユーザーは(安価であればまた違うかも知れないが)この辺りの考え方次第で、本機の評価は分かれそうではある。
以上のようにOPPO「Find X」は、Snapdragon 845/8GB/256GB搭載、ノッチなし画面占有率93.8%の6.4型有機ELパネルを採用したSIMロックフリーAndroidスマートフォンだ。十分な性能に加え、ノッチなしのこのルックスは威力抜群。見た瞬間「お! これは……」と、なる。
ただ価格は10万円を超え、ライバル機は見た目、カメラ、容量、機能……どれをとってもなかなか手強い機種ばかり。ノッチレスの狭額縁をどう評価するかが分かれ道となる。とは言え、現時点では「ノッチは絶対嫌!」というハイエンド機を求めるユーザーにとっての選択肢だと言える。