西川和久の不定期コラム

ダブルレンズでボケ味のある写真が撮れる2万円台スマホ Huawei「nova lite 2」

nova lite 2

 ファーウェイは2月7日、5.65型Androidスマートフォン「nova lite 2」を発表し、9日より販売を開始した。

 価格的にはエントリーモデルであるにも関わらず、カメラはミドル/ハイエンド機が搭載するダブルレンズを使った、ポートレートモードに対応する驚きのスマホだ。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

ダブルレンズを使ったポートレートモード搭載で3万円切り!

 Huaweiのスマートフォンは現在、Mateシリーズ、Pシリーズ、novaシリーズと(各シリーズ内でliteが付いたりクラス分けをしているものの)、大きく分けて3種類のラインナップがある。ざっくり各シリーズの特徴は、Mateシリーズはフラッグシップ系、Pシリーズは写真特化版、novaシリーズはエントリー系というところだ。

 今回ご紹介するのは、エントリーシリーズの「nova lite 2」。価格帯的には3万円を切り、まさにエントリー向けなのだが、何とデュアルレンズを使ったポートレートモード対応と、価格からは想像できない機能を搭載している。おもな仕様は以下のとおり。

Huawei「nova lite 2」
SoCKirin 659(Cortex A53、2.36GHz×4+1.7GHz×4)
メモリ3GB
ストレージ32GB
OSEMUI 8.0(Android 8.0ベース)
ディスプレイ5.65型/2,160×1,080ドット
ネットワークIEEE 802.11b/n対応、Bluetooth 4.2
SIMNano SIMカードスロット×2 ※セカンダリSIMはGSM通話のみ対応
LTEFDD-LTE: Band 1/3/5/7/8/19/28
※最大通信速度は下り150Mbps、上り50Mbps
3GWCDMA: Band 1/2/5/6/8/19
GSM: 850/900/1,800/1,900MHz
インターフェイスMicro USB、microSDカードスロット(最大256GB/Nano SIMカードスロット兼用)、ステレオミニジャック
前面カメラ800万画素(FF)
背面カメラ1,300万画素+200万画素デュアルレンズ(像面位相差+コントラストAF)
センサー加速度、コンパス、環境光、近接、指紋
サイズ/重量約72.05×150.1×7.45mm(幅×奥行き×高さ)/約143g
バッテリ3,000mAh
本体色ブルー、ブラック、ゴールド
税別店頭予想価格25,980円前後

 SoCはKirin 659で、Cortex A53の2.36GHz×4+1.7GHz×4だ。後半のベンチマークテストからも分かるように、エントリーモデル向けで、同社の「Mate 10 lite」にも搭載されている。

 メモリは3GB、ストレージは32GB、OSはAndroid 8.0ベースのEMUI 8.0。メモリ容量はともかくとして、ストレージ32GBは、microSDカードにデータを逃がせるとは言え、使い方によっては不足するかも知れない。

 ディスプレイは5.65型の2,160×1,080ドット。この価格帯でアスペクト比18:9というのはなかなか珍しい。縦方向に伸びるので、握った感覚は5型とほぼ同じだ。

 ネットワークは、IEEE 802.11b/n対応、Bluetooth 4.2で、11acには非対応。この辺りは価格相応と言える。

 SIMはNano SIMカードスロット×2。対応バンドは表のとおりで、最大通信速度は下り150Mbps、上り50Mbps。ただし、セカンダリSIMはGSMのみとなる。国内で使う場合、SIM2はmicroSDカード専用のスロットと考えても良いだろう。

 そのほかのインターフェイスは、Micro USB、microSDカードスロット(最大256GB/Nano SIMカードスロット兼用)、ステレオミニジャック。センサーは、加速度、コンパス、環境光、近接、指紋。顔認証にも対応しており、この価格帯でも指紋と顔認証の両方が使えるのはポイントが高い。

 そしてカメラは、前面800万画素(FF)、背面1,300万画素+200万画素デュアルレンズ(像面位相差+コントラストAF)。背面に200万画素を加えることによって、ポートレートモードに対応している。詳細は別途掲載したので参考にしていただきたい。

 サイズは、約72.05×150.1×7.45mm(幅×奥行き×高さ)、重量約143g。3,000mAhのバッテリを内蔵。本体色は、ブルー、ブラック、ゴールドの3色。

 税別店頭予想価格は25,980円前後と、内容を考えると異様に安い。ソーシャル中心な使い方で、さほど性能が必要なく、でもカメラはポートレートモードが欲しい、できれば安価で……というニーズにはバッチリだ。

前面。パネル中央上に前面カメラ。ナビゲーションはソフトウェア式。狭額縁とまではいかないが、それなりにフチは狭い
背面。上左側に背面カメラ(内側がメイン)。中央少し上に指紋センサー。今回届いたのはゴールド
右側面は音量±ボタンと電源ボタン。下側面はスピーカー、Micro USB、ステレオミニジャック
左側面にSIMスロット
奥がSIM1、手前がSIM2/microSDカード
付属品はイヤフォン、USBケーブル、ケース、イジェクトピン、USB式ACアダプタ(サイズ約40×35×20mm、重量27g、出力5V/1A)
重量は実測で145g
iPhone Xとの比較。外枠の幅はほぼ同じ、厚みと高さだけ少し大きい

 筐体は、前面から見ると少しiPhoneのホワイトモデルに色も含め似ている。背面はゴールド。上下は同じゴールでも色が異なる。

 価格的に高級感は望めないが、チープな雰囲気はまるでない。持った感じはiPhone Xと似ている。幅はほぼ同じで、高さと厚みが少しある程度でサイズも似ている。重量は実測で145gだった。

 ナビゲーションボタンはソフトウェア式だ。SIMスロットは、奥がSIM1、手前がSIM2/microSDカードとなる。

 付属品は、イヤフォン、USBケーブル、ケース、イジェクトピン、USB式ACアダプタ。ACアダプタのサイズは約40×35×20mm(同)、重量27g、出力5V/1A。結構小型だ。

 5.65型/2,160×1,080ドットのディスプレイは、最大輝度でもiPhone Xの7割程度(目測)で、比較すると暗いが、普通の用途では問題にならないレベルだろう。視野角は良好。発色とコントラストは、若干黒が浮き気味に見えるが、価格を考慮すると十分綺麗だ。

 発熱は、ベンチマークテストとカメラの連続撮影を行なっても、とくに熱を持たなかった。スピーカーからの出力は、音質自体は悪くないものの、少し出力が低め。イヤホン出力も同様に少し出力が低めか。繊細さのない大味な鳴りっぷりだが、酷くて聴けないレベルではない。価格相応といったところだ。

 筆者は普段iPhone Xを使っており、比較すると気になる部分もあるにはあるが、価格を考えると、逆によくこれだけまとめたな……と感心してしまう完成度だ。

編集でピントとボケ味を変更可能なワイドアパーチャ効果搭載

 カメラは前面800万画素(FF)、背面1,300万画素+200万画素デュアルレンズ(像面位相差+コントラストAF)を搭載している。撮影解像度は最大3,120×4,160ピクセル(ワイドアパーチャ効果時は2,448×3,264ピクセル)。

 デュアル(カメラ)レンズを搭載した機種は多いものの、広角/標準、カラー/モノクロ、標準/低照度などのパターンではなく、ワイドアパーチャ効果専用で200万画素を使っている。

 少し話がややこしいのは、別途表記上の「ポートレートモード」があり、これはPhotoshopで背景をボカす感じで、ちょっと仕掛けがちがうものだ。今回ここで扱うのは、ワイドアパーチャ効果の方となる。

 カメラのモードは、写真/プロ写真/動画/プロビデオ/HDR/パノラマ/ライトペインティング/こま抜き/フィルタ/ウォーターマーク/その他。

 設定は、解像度が13M/10M/9M/8M/5M(ワイドアパーチャ効果時は変更不可)、GPSタグ、カメラグリッド、ミラー反射(前面カメラのみ)、タイマー、音声シャッター、タップして撮影、スマイルキャプチャ、オブジェクトトラッキング、シャッターボタン長押し、音量ボタンの機能、ウルトラスナップショット……など。モードによっても設定可能な項目が若干変わる。

 カメラを起動した時、上にあるアイコンは左から順に、フラッシュ、ワイドアパーチャ効果、ポートレートモード、アニメーション写真、前面/背面切り替えだ。

 プロ写真は、ISOが100~1,600、シャッタースピードが8~1/4,000秒、EVが-4~+4、AFがAF-S/AF-C/MF、WBが曇り/蛍光灯/白熱灯/晴れ/任意指定(2,800から7,000K)の設定ができる。

 ワイドアパーチャ効果で撮った写真は、後からギャラリーで、ピント位置とボケ味を変更可能だ。このあたりは上位モデルと同じとなる。

カメラ/モード
カメラ/写真
カメラ/プロ写真
カメラ/設定
ギャラリー/ワイドアパーチャ効果(撮った状態)
ギャラリー/ワイドアパーチャ効果(編集でピント位置とボケ味を変更)

 写真モードで、ワイドアパーチャ効果オン/オフを織り交ぜた写真を20枚掲載するので参考にしてほしい。基本オートで、露出補正も触っていない。

 使用感は、起動やAFは超速いとまではいかないものの、ストレスを感じないレベルに収まっている。連続撮影時の発熱は、撮影時、少し寒かったこともあってか、熱を持つことはなかった。

 写りはご覧のように、少し解像感が甘めで、低照度時は気持ち荒れているものの、等倍表示の話であり、SNSへアップする解像度に落とせば問題はない。

 発色はミドル/ハイエンドと比較すると薄めだろうか。全体的に薄っぺらい雰囲気がしないでもない。ただ、これもInstagramでフィルタをかければ分からなくなる。期待のワイドアパーチャ効果は、見事にボケる。

 総合的に、SNSへアップする写真であれば十分以上に使える上に、ポートレートモードがあるので、写真のバリエーションに幅もできる。筆者もおもにInstagramでフィルタをかけ、Facebookへ同時にアップしているものの(しかもアプリはソーシャル系以外ほぼ使わない)、こういった用途なら価格差が何倍もあるiPhone Xでなくてもいいような気がしてきた。

作例 ※リンク先等倍

セットアップ

 初期セットアップは、Wi-Fiを使い、Googleログインと指紋/顔認証はスキップして行なった。計13画面で、多くもないが、少なくもない……と言ったところだろうか。

 指紋と顔の登録は、パターン、PIN、パスワードのいずれかを設定した後に行なえる。

 指紋の登録は一般的なもので簡単だ。顔認証も丸い枠内に顔を映すだけでOK。この機種では「OPPO R11s」のように、登録中に個人情報が含まれるのが理由が画面キャプチャが撮影NGにはならず、ご覧のようにそのまま撮れた。

 免責事項には、衣装、髪の毛、サングラス、マスク、濃いメイクなどで顔を覆わないようにとあるものの、確認した範囲では眼鏡の有無、サングラス全て問題なく、瞬時にロックが解除される(眼鏡なしで登録)。ただ環境によって認識したりしなかったりするので、指紋がメイン、顔がサブと言った使い方が無難だ。

顔を登録
免責事項(衣装、髪の毛、サングラス、マスク、濃いメイクなどで顔を覆わないようにとある)
顔を枠内に入れてください
ダイレクトロック解除、スライドしてロックを解除、スマートロック画面の通知、各ON/OFF

 デュアルSIM管理は、SIM2に関してはGSMになるので、国内では実質SIM1とmicroSDでのコンビネーションとなる。APNも国内主要キャリアは設定済みだ。

デュアルSIM管理
APN

Android 8.0ベースのEMUI 8.0搭載

 OSはAndroid 8.0ベースのEMUI 8.0搭載。安価な機種だとAndroid 7どころか7未満のケースもあり、3万円を切るこの価格帯で8が使えるのはポイントが高い。

 Home画面は3画面で、無難でわかりやすい構成だ。テーマによる見栄えの変更にも対応している。

 Android 7以上の画面分割にも対応。初期起動時ストレージの空きは32GB中22.91GB(初期設定時の若干の画面キャプチャが入っている)。

Home(1/8) Home1画面目
Home(2/8) Home2画面目
Home(3/8) Home3画面目
画面分割
ストレージ
端末情報

 アプリは、Googleフォルダに「Google」、「Gmail」、「マップ」、「YouTube」、「ドライブ」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「Duo」、「フォト」、「ドキュメント」、「スプレッドシート」、「スライド」。「Playストア」、「ギャラリー」、「カメラ」、「端末管理」、「テーマ」、「音楽」、「ビデオ」、「ヘルスケア」、「時計」、「カレンダー」、「設定」、「ファイル」、「メモ」、「メール」、「ヒント」。ツールフォルダに「天気」、「電卓」、「音声レコーダー」、「懐中電灯」、「Game Suite」、「ミラー」、「HiCare」、「コンパス」、「バックアップ」、「Phone Clone」、「ダウンロード」。おすすめフォルダに「Instagram」、「Booking.comホテル」、「メッセンジャー」。「Facebook」。

 Phone Cloneは、名前のとおり、これまで使っていたAndroid端末しくはiOS端末から、連絡先、カレンダー予定、写真、ビデオなどを移行するアプリだ。

Phone Clone
Phone Clone。Android端末かiOS端末か選べる

 ウィジェットとエフェクトは、タップではなく、ピンチインで表示される。ウィジェットは、「天気ウィジェット」×2、「画面ロック」、「オプティマイザ」、「カレンダー」×2、「ギャラリー」、「連絡先」×3、「スプレッドシートの新しいスプレッドシート」、「スライドの新しいプレゼンテーション」、「時計」×3、「ドキュメントの新しいドキュメント」、「ドライブ」×3、「ヘルスケア」、「Google」×3、「メール」、「メモ帳」、「マップ」×5、「音楽」、「設定のショートカット」、「電源管理」、「Booking.comホテル」、「Chrome」×2、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Play Music」、「Musicプレイリスト」。

 エフェクトは、「デフォルト」、「パースペクティブ」、「スクイーズ」、「ボックス」、「フリップオーバー」、「回転」、「ページ」、「風車」。

ウィジェットとエフェクトの設定
ウィジェット(1/3)
ウィジェット(2/3)
ウィジェット(3/3)

クラス相応のパフォーマンス

 ベンチマークテストは簡易式だが、「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octaneは4,598、AnTuTu Benchmarkは88,742(テスト内容が変わったので、以前のスコアと比較できない)。

 前回、Snapdragon 660搭載の「OPPO R11s」のデータを取ったので、それと比較すると、Google Octane 2.0が4,598対8,928、 AnTuTu Benchmarkが88,742対140,290と、ざっくり50~60%ほどの性能で、体感でも分かる程度の差があった。

 とはいえ、FacbeookやInstagramなどを使っても遅いとイライラすることはなく、ソーシャル中心なら普通に使える性能だ。

AnTuTu Benchmarkは88,742
AnTuTu Benchmark(ランキング)は51位
Google Octane 2.0は4,598
電池消費量は約8時間でパワーダウン

 バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約8時間で電源が落ちた。このクラスなら一般的だろう。


 以上のようにHuawei「nova lite 2」は、5.65型、3/32GBで3万円を切るスマホだ。性能は値段なりだが、18:9の2,160×1,080ドット液晶、指紋/顔認証、そしてポートレートモードに対応するデュアルレンズが魅力的だ。

 ハイエンドと比較すれば写りが甘い部分もあるが、等倍で観ない限り気にならない。安価な端末でAndroid 8ベースもポイントが高い。

 仕様上、特に気になる部分もなく、内容を考えるとコストパフォーマンスはかなり高い。ソーシャル中心でポートレートモードが欲しい。でも予算が……というユーザーにお勧めしたい逸品だ。