西川和久の不定期コラム
ASUS製10.1型2in1「TransBook Mini T103HAF」
2017年12月25日 06:00
ASUSは12月8日、5万円前後の2in1を3機種発表した。今回はその中から一番上位のモデル(といっても54,800円)が編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
今回発表された機種は、Atom x5-Z8350/4GB/64GBでキックスタンド式の10.1型(1,280×800ドット)2in1「TransBook Mini T103HAF」、Atom x5-Z8350/4GB/64GBまたは128GBでキーボードドック式の10.1型(1,280×800ドット)2in1「TransBook T101HA」、そしてCeleron N3350/4GB/64GBでヒンジが180度回転する14型(1,366×768ドット)2in1「VivoBook Flip 14 TP401NA」の3つ。
どれも仕様的にはほぼ同じクラスで、おもに筐体の形状が異なった3モデルだ。
税別価格は、順に54,800円/45,800円/49,800円前後。仕様的には最後のCeleron/14型が一番高そうな気もするが、そうでないところが面白いところか。今回紹介するのは、1番目の「TransBook Mini T103HAF」だ。おもな仕様は以下の通り。
製品 | ASUS「TransBook Mini T103HAF」 |
---|---|
プロセッサ | Atom x5-Z8350(4コア/4スレッド、クロック1.44GHz/1.92GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 4GB/LPDDR3-1600 |
ストレージ | eMMC 64GB |
OS | Windows 10 Home 64bit |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 400、Micro HDMI |
ディスプレイ | 10.1型IPS式1,280×800ドット(光沢あり)/10点タッチ |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1 |
インターフェイス | Micro USB 2.0、USB 3.0、192万画素Webカメラ、microSDカードスロット、音声入出力、ASUS Pen(1,024段階の筆圧感知対応) |
サイズ/重量 | 261×172×10mm(幅×奥行き×高さ)/620g(本体)、262×173×15.7mm(同)/870g(本体+キーボードドック) |
バッテリ駆動時間 | 約14.2時間 |
税別価格 | 54,800円 |
10.1型Atom x5-Z8350/4GB/64GBの2in1
プロセッサは、Cherry Trail世代のAtom x5-Z8350。4コア4スレッドで、クロックは1.4GHzから最大1.92GHz。キャッシュは2MBでSDPは2W。
Cherry TrailのAtomは出荷されてから随分経つが、Intelから次世代Atom製品の予定がなく、結果的にロングランとなり、多くのタブレットや2in1に使われている。
メモリはLPDDR3-1600の4GB。ストレージはeMMCで64GBを搭載している。OSは64bit版のWindows 10 Home。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 400。外部出力用にMicro HDMIを備えている。ディスプレイは光沢ありの10.1型1,280×800ドットIPSで、10点タッチ対応。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1。そのほかのインターフェイスは、Micro USB 2.0、USB 3.0、192万画素Webカメラ、microSDカードスロット、音声入出力、ASUS Pen。
ASUS Penは1,024段階の筆圧感知対応だ。付属のカバー兼キーボードは着脱式となる。
サイズは、本体が261×172×10mm(幅×奥行き×高さ)、重量620g。キーボードと合体時で、262×173×15.7mm(同)、重量870g。合体時で1kgを大幅に切っているのはポイントが高い。バッテリ駆動時間は約14.2時間。国内でのカラーバリエーションは、スレートグレーのみとなる。
税別価格は54,800円とリーズナブルで、Office Mobileがプリインストールだ。パネルサイズが10.1型なので、ベーシックな機能は無料で利用できる。
筐体は、Microsoft「Surface 3 (10.8型)」がそのまま10.1型へ小型化した雰囲気で、キックスタンド、カバー兼キーボード(=Type Cover)もそっくり(ただしキーボードにバックライトはない)。
キックスタンドは無段階で、写真の位置が角度最大(仕様では170度)となる。本体の重量は実測で630g。キーボードと合体時でも実測874gと、2in1としてはかなり軽く、持ち歩くのもまったく苦にならないだろう。
前面は、パネル中央上に192万画素Webカメラ。背面にキックスタンド。左側面に音声入出力、USB 3.0、給電兼用のMicro USB、スピーカー左。下側面にDockコネクタ。右側面に音量±ボタン、Micro HDMI、スピーカー右。上側面に電源ボタンを配置。
付属のACアダプタは、サイズ約50×40×30mm(同、突起物含まず)、重量64g、出力5V/2Aと9V/2A。どこにでもある、普通のUSB式ACアダプタでも充電できるため便利だ。
10.1型IPSのディスプレイは、少しフチが広めだが、とにかく明るくハイコントラスト。色も少し派手目で、見栄えのするものとなっている。視野角も十分広く、パーソナル用途として好まれる映りだろう。
ASUS Penは単6形電池1本で作動。バッテリ込みで21g。重過ぎず軽過ぎず、細過ぎず太過ぎず、ちょうどよいサイズだ。スムーズに反応し、ストレスはない。もちろんタッチも問題ない。
カバー兼キーボードは、テンキーなしのアイソレーションタイプ。タッチパッドは1枚プレート型だ。主要キーのキーピッチは約18mm(仕様によるとキーストロークは1.5mm)。
手前と右側が狭くなっているものの、並び自体は破綻していない。ドックコネクタとパネルの下側に磁石で固定し、少しキーボードが傾く方式で、これもSurfaceと同じだ。
一般的なノートPCのキーボードと比較すると、キーボード自体が薄く、また宙に浮いているため、打鍵感は若干頼りないところもあるが、これは仕様上仕方ないところ。その分、合体時に軽くなっている。
ノイズや振動は皆無。発熱は(季節柄もあるだろうが)上中央付近が若干暖かくなる程度だった。実際、後半のベンチマークテストでも、プロセッサの温度は約48℃から76℃辺りと少し低目だ。
サウンドは、後述する「ice power」、「Dolby Atmos」があり、このクラスの割にはリッチな音がする。パワーはあと一歩欲しいが、音楽も映像も結構楽しめる。
このタイプはラップトップ=膝上で使い辛いので好みもあると思うが、それさえOKであれば、完成度はかなり高い1台と言えよう。
バッテリ駆動12時間以上のスタミナ2in1
OSは64bit版Windows 10 Home。Atom x5/4GB/eMMC 64GBと、メモリが4GBあるため、同クラスの2GBモデルよりはきびきびしている。
今年は同じクラスの2in1でも、4GB搭載機が増えた印象を受ける。実用性を考えると雲泥の差なので、4GB標準は嬉しいところ。
初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。ASUSグループにある3つのタイルと、Dolby Accessがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプルだ。
ストレージは、このクラスにはよく使われているeMMC 64GBの「SanDisk DF4064」。Cドライブのみの1パーティションで、57.19GBが割り当てられ、空き34.8GB(ただし初期起動時にWindows Updateが適応された状態)。またBitLockerで暗号化されている。Wi-FiとBluetoothはQualcomm製だ。
プリインストールのソフトウェアは、「ASUS Battery Health Charging」、「ASUS LIVE UPDATE」、「ASUS Splendid Technology」、「Win Flash」、「ASUS GIFTBOX」、「ZenLink」、「MyASUS Service Center」などおなじみのASUS製アプリと、「Mobile Office」、「i-フィルター6.0」。そして「ice power」、「Dolby Atmos」のオーディオ系とシステム系のツールとなる。ストレージが64GBのわりには、それなりにインストールされている方だろうか。
ASUS Battery Health Chargingは、画面キャプチャからもわかるように、充電をどこまでするかを設定できる機能だ。フルキャパシティモード(100%充電)、バランスモード(80%以上で充電停止/78%未満で充電)、マックスライフモード(60%で充電停止/58%で充電)と、3つのモードがあり、マックスライフモードは、ACアダプタ接続時に最適とされている。
最近はノートPCを含め、バッテリが着脱できない内蔵タイプばかりで、恐らくパーツの中で一番先に劣化するのがバッテリだ。この機能をうまく使いこなせば、実用レベルでの製品寿命も延びると思われる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、「PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)」、「BBench」、「CrystalDiskMark」の結果を見たい。参考までにCrystalMark(4コア/4スレッドで条件的に問題ない)のスコアも掲載した。
winsat formalの結果は、総合 4.4。プロセッサ 8、メモリ 5.9、グラフィックス 4.4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.65。64bitでメモリ4GBなのでリミッターがかかっている。バンド幅は9,884.50167MB/s。
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1,538。CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 140.9/Write 85.20、4K Q32T1 Read 33.98/Write 14.37、Seq Read 129.8/Write 64.60、4K Read 10.82/Write 14.14(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 22,141、FPU 18,240、MEM 19,311、HDD 18,378、GDI 3,238、D2D 2,766、OGL 2,021。
winsat formalのスコアが、これだけバラけているのは珍しいが、Atom x5-Z8350、メモリ4GB、ストレージeMMC 64GBとしては標準的な値だろう。
BBenchは、バッテリ節約機能ON、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残2%で59,764秒/16.6時間。(いつもの残5%がないので)4%で52,549秒/14.6時間。仕様上は約14.2時間だが、輝度最小でも暗い室内なら十分明るく、同程度の時間は作動可能だと思われる。
また22%(13.2時間)から4%へガクッと落ちているが、そこからの伸びが約3.4時間。もう終わる頃かな……と思ってみても、なかなか電源が落ちなかった。いずれにしても、12時間超えれば十分な駆動時間だと言えよう。
以上のようにASUS「TransBook Mini T103HAF」は、10.1型IPS式1,280×800ドットのパネルを採用、Atom x5/4GB/64GB構成の2in1だ。パネルが綺麗でサウンドも良好、12時間以上のバッテリ駆動、ペン付属、そして合体時でも1kgを軽く切るなど完成度も高い。
仕様の範囲内で特に気になる部分もなく、このタイプのカバー兼キーボードがOKなら、5万円程度で満足度の高い2in1を探しているユーザーにオススメしたい逸品だ。