西川和久の不定期コラム
背面がデュアルカメラになったスタンダード機、ASUS「ZenFone 4」
2017年9月29日 09:52
ASUSは9月15日、5.5型フルHD(1,080×1,920ドット)でDSDS対応、標準と広角のデュアルレンズを搭載したZenFone 4を発表、9月23日より販売を開始した。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
Snapdragon 660、メモリ6GB搭載のハイスペックミドルレンジ
ZenFone 4シリーズは、スタンダードな「ZenFone 4」と「ZenFone 4 Pro」、自撮りに特化した「ZenFone 4 Selfie」と「ZenFone 4 Selfie Pro」、バッテリ容量などを増やした「ZenFone 4 Max」と「ZenFone 4 Max Pro」の3カテゴリ6モデルが存在する。
今回ご紹介するのは、このなかでもスタンダードな「ZenFone 4」。SoCにSnapdragon 660を搭載しているので、ミドルレンジの製品であるが、メモリ6GB、デュアルレンズなど、ハイエンドに匹敵する内容となっている。とくに、メモリ6GBに関してはハイエンドと比較しても類を見ない大容量だ。おもな仕様は以下のとおり。
【表】ASUS「ZenFone 4」の仕様 | |
---|---|
SoC | Qualcomm Snapdragon 660(8コア)、グラフィックス Adreno 512 |
メモリ | 6GB |
ストレージ | 64GB/eMMC |
OS | Android 7.1.1 + ZenUI 4.0 |
ディスプレイ | 5.5型Super IPS フルHD/1,080×1,920ドット、10点タッチ、Gorilla Glass 3、2.1mmスリムベゼル |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
SIM | Nano SIMカードスロット×2、DSDS対応 |
対応バンド | FDD-LTE B1/2/3/5/7/8/18/19/28 TD-LTE B38/39/40/41 W-CDMA B1/2/3/5/6/8/19 GSM/EDGE 850/900/1,800/1,900MHz ※LTEはCA(キャリアアグリゲーション)、au VoLTEに対応 |
インターフェイス | USB Type-C、microSDカードスロット(Nano SIMカードスロット兼)、ステレオミニジャック、デュアルスピーカー、デュアルマイク、ハイレゾ / DTS Headphone:X / SonicMaster 4.0対応 |
カメラ | 前面:800万画素、画角120度 背面:1,200万画素/画角83度(F値1.8、ソニーIMX362)、800万画素/画角120度 |
センサー | GPS(GLONASS、Beidou、Galileo対応)、加速度、電子コンパス、光、磁気、 近接、ジャイロ、指紋、RGB、NFC |
サイズ/重量 | 約75.2×155.4×7.5mm(幅×奥行き×高さ)/約165g |
バッテリ/駆動時間 | 3,300mAh/Wi-Fi通信時が約18.7時間、36分で約50%まで充電可能な急速充電対応 |
税別店頭予想価格 | 56,800円前後 |
SoCは8コア/Adreno 512内包のQualcomm Snapdragon 660。Snapdragonは800系、600系、400系、200系などがあるので、中の上的なSKUとなる。600系なので当初、性能はそれなり……と思っていたが、後半のベンチマークテストからもわかるように、一世代前のハイエンドに匹敵する性能を誇っている。
メモリはなんと6GB。2~4GBが多いエントリーモデルのPCを超えてしまった。普通だとスマートフォンで何をすればここまでメモリを使うのか……と思ってしまうが、(本機にかぎらず6GB搭載機には)「OptiFlex」機能が搭載され、任意もしくは状況に応じて自動的に登録されたアプリが最大10個までメモリからアンロードせず(=常駐)高速切替が可能となる。
確かにメモリへ常駐すれば、切り替え時に余計なオーバーヘッドはなく、これはこれで面白い発想だ。言い方を変えると、こうでもしないと6GBのメモリは活かしきれない……ということにもなる。効果はあるので、ChromeやFacebookなど、頻繁に使うアプリはオンにするといいだろう。ストレージは64GB。OSは、Android 7.1.1+ZenUI 4.0。
ディスプレイは、Gorilla Glass 3を採用した5.5型IPS式2.1mmスリムベゼルのフルHD(フルHD/1,080×1,920ドット)。10点タッチ対応だ。有線/Type-Cによる外部ディスプレイに接続する機能はない。
カメラは前面800万画素、背面は標準側に1,200万画素、広角側に800万画素を配置したデュアルレンズになっている。この後に詳細を掲載しているので参考にしてほしい。
ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。SIMはDSDS対応のカードスロット×2。ちょっと面白いのはMessengerやFacebookなどSIMに紐づけ2アカウント同時利用できる「ツインアプリ」機能を持っていることだ(ただし対応アプリが必要)。アプリまで含めたDSDS対応が可能となり、まさに1台2役となる。対応バンドは表をご覧いただきたいが、必要十分の内容になっている。
インターフェイスは、USB Type-C、microSDカードスロット(Nano SIMカードスロット兼)、ステレオミニジャック、デュアルスピーカー、デュアルマイク。サウンド系は、ハイレゾ / DTS Headphone:X / SonicMaster 4.0対応する。
センサーは、GPS(GLONASS、Beidou、Galileo対応)、加速度、電子コンパス、光、磁気、 近接、ジャイロ、指紋、RGB、NFC。
サイズ約75.2×155.4×7.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約165g。3,300mAhのバッテリを内蔵し、Wi-Fi通信時に約18.7時間の駆動が可能だ。加えて36分で約50%まで充電可能な急速充電に対応する。
カラーバリエーションはミッドナイトブラック、ムーンライトホワイトの2色。税別店頭予想価格は56,800円前後。内容を考えると結構割安ではないだろうか。
筐体はメタリックな同社固有のZenデザイン。厚み約7.5mmでメタルエッジ、持った感じや質感もそれなりに良い。またiPhone 7 Plusと比較している写真からもわかるように、同じ5.5型でも若干コンパクトにまとまっている。
前面は、左右2.1mmスリムベゼル、パネル上左側に800万画素前面カメラ、上中央にスピーカー(通話用)。ナビゲーションボタンはハードウェア式だ。背面は、上部左側に標準カメラ、内側が広角、その横にフラッシュ。左側面にmicroSDカード/Nano SIMカードスロット。右側面に音量±ボタンと電源ボタン。下側面にスピーカー、Type-C、音声入出力を配置。
付属品は、リジェクトピン、USBケーブル、イヤフォンと交換用のイヤーパッド、USB式ACアダプタ(サイズ約50×40×27mm、重量65g。出力は5V/2Aと9V/2A)。
ディスプレイはIPS式5.5型フルHD。発色、明るさ、コントラスト、視野角、すべて良好。発色は若干派手で少しギラギラした感じだ。タッチも良好に反応する。またナビゲーションボタンがハードウェア式なので、画面の一部を覆わないところも良いところだ。
発熱はバッテリのベンチマークテストでYouTubeを長時間連続再生しても少し暖かくなる程度だったが、カメラを連続撮影すると結構熱を持つ。ただこれは他社でも同じ傾向なのでその範囲内だ。
サウンドは、スピーカーからの出力は筐体サイズのわりにパワーがある。イヤフォンでの出力は、パワーも音質も普通だ。ハイレゾ、DTS Headphone:X、SonicMaster 4.0対応なので、それなりに楽しめる。
カメラは操作性や標準レンズは問題ないが、+αの部分はやや難あり
カメラは起動、フォーカスも速く、ストレスはまったく感じないレベルだ。露出補正もスライダーで簡単に変更可能。反応や操作性自体はとくに不満はない。
カメラのモードはオート、美人エフェクト、Proモード、超解像度、GIFアニメーション、パノラマ、スローモーション、低速度撮影。オートとProモードに関しては、撮影用画面、左下のボタンで即切り替えられる(ほかのモードへ変更可能)。
設定はカメラに(ただしモードによって若干内容が異なる)、カメラ解像度(12M/9M/8M/6M×2)、最適化(オート/オフ)、タイムスタンプ、ウォーターマーク、タッチシャッター、フォーカスモード(スマート・オートフォーカス/CAF/無限遠)、測光モード(中央部重点平均測光/平均)、タッチ自動検出。
ビデオに、動画の解像度(4K/フルHD/フルHD 60fps/HD/TV)、ビデオの固定。そのほかに、傾斜、ヒストグラム、ガイドライン、場所サービス、ちらつき防止、音量ボタンを押したときの設定、インスタントカメラ。
背面カメラは前半に書いたように、標準側(f/1.8、4mm、12M/3024×4032ピクセル)が12M、広角側(f/2.2、2mm、8M/2448×3264ピクセル)が8Mと解像度が異なる。
撮影時、少しわかりにくいのが、標準側と広角側のレンズ切替。下の山のようなアイコンの左が標準、右が広角となる。またポートレートモードは、オート時、上の右から3番目の人が重なってるようなアイコンだ(どちらもオートの画面キャプチャ、赤線参照)。
実際に撮ってみると、標準と広角では画素数が違うため、描写力も結構違い、広角のほうが甘くなる。
またポートレートモードも一癖(?)あり、iPhone 7 Plusのようにデュアルレンズから得られる情報からボケ味を作るのではなく、標準側で単にソフトウェア処理を施しているだけのようだ。そのため、Photoshop的に言うと、人の部分を輪郭抽出して、外側をガウスでぼかした感じだ。
さらに、顔認識しない被写体(たとえば一般的な物/マネキンなども含む)は、ポートレートモードにはなるものの、ぼかしの処理が行なわれない。作例で掲載した人形であればぼかしの処理が行なわれるケースもある。当初、これがわからず、適当なものを撮ってもボケないので悩んでいた。デュアルレンズからの被写界深度エフェクトは「ZenFone 4 Pro」のみなのだろうか。
作例として標準側で撮影した15点を掲載したので参考にしてほしい。売りの1つである低照度時は確かに強そうだが、カメラ機能を強調しているわりには絵的には平凡で、加えて画素数が少ない広角側の甘い写り、半端なポートレートモードなど、個人的には少し期待外れだった。今後、ファームウェアのアップデートで変わるかもしれないが、現時点では素直にすべて標準で撮るのがベターだと思われる。
セットアップ
初期セットアップはSIMを入れずWi-Fiのみで行なった。画面的には計14。途中、ASUSアカウント、Google Driveプロモーションなどが入るので若干画面数が多い。
指紋登録は、パターン、PIN、パスワードとの組みあわせとなり、これらのいずれかを先に登録する必要がある。実際登録したところ、指紋センサーが細いこともあり、少し手間取った。
DSDSは、SIMを入れると反応しパネルが表示される。またデュアルSIMカード設定で、優先SIMカードなどが行なえる。モバイルネットワークは多くのAPNがセット済みだ。
さらに仕様の部分でふれたが、ASUSカスタマイズ設定/ツインアプリでは、SIMに紐づけ、1つのアプリを2つのアカウントで運用することが可能だ。これがあれば、電話/SMSも含め、たとえば個人と会社などを完全に使い分けることができる。
ZenUI 4.0
ZenUI 4.0では従来の標準搭載アプリを大幅に削減しスッキリしている。初期起動時のHome画面は2画面。Androidのバージョンは7.1.1。画面分割も機能する。ストレージの空き容量は50.68GB(若干の画面キャプチャが含まれる)。
また評価中にシステムアップデートがあったので試用はアップデートあとで行なっている。IMEはATOK for ASUSの1.0.7。
プリインストールアプリは、「カメラ」、「ギャラリー」、「テーマ」、「メッセージ」、「モバイルマネージャー」、「設定」、「電子書籍」、「電話」、「連絡先」、「ATOK」、「Chrome」、「i-フィルター」、「Playストア」、「Selfie Master」、「ドキュメント」。Googleフォルダに「Google」、「Gmail」、「マップ」、「YouTube」、「ドライブ」、「Play Music」、「Playムービー」、「Duo」、「フォト」、「カレンダー」、「Android Pay」、「音声検索」。ASUSフォルダに「電卓」、「時計」、「ファイルマネージャー」、「音声レコーダ」、「天候」、「WebStorage」。Apps4Uフォルダに「Facebook」、「Messnger」、「Instagram」。
加えて、通知エリア上部に「オーディオウィザード」、「メモリ開放」などのコントロールが含まれる。とくにオーディオは、24bit/192kHzのハイレゾ、DTS Headphone:X、SonicMaster 4.0にも対応している。音質に関しては前半最後に書いたとおり。
ウィジェットは、「アナログ時計」、「カメラ」×2、「すべてのアプリ」、「デジタルクロック」、「ファイルマネージャー」、「検索」、「時計」×4、「直接メッセージを送る」、「直接発信」、「天候」×2、「電卓」、「連絡先」×2、「連絡先ウィジェット」、「スケジュール」、「スプレッドシート」、「スライド」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「ドライブのショートカット」、「ドライブのスキャン」、「フィード」、「ホーム画面のヒント」、「メッセージリストウィジェット」、「メッセージ会話ウィジェット」、「運転モード」、「経路を検索」、「月」、「交通状況」、「設定のショートカット」、「Chromeのブックマーク」、「Gmail×2」、「Gmailのラベル×2」、「Google App」、「Google Keep×2」、「Google Play Music×2」、「Google Sound Search」、「Musicプレイリスト」、「Playマイライブラリ」。
興味深い機能としては、Chromeと連動する「ページマーカー」が挙げげられる。これはChrome左下にオーバーレイでマーカーアイコンが出るので、それをクリックすると、メニューを表示。ダウンロード(タグ付け/Google Driveへ保存)/プレビュー/ページマーカーなどが使用できる。
もう1つは「セーフガード」。電源ボタンを3回押しで、指定した緊急連絡先に電話後、SMSで位置情報共有(Googleマップで場所のURLを送信)などにも対応する。
そのほか、アプリの非表示、電話アプリでプライベート連絡先指定(アンロックしないと非表示)などの機能も持つ。
全般的に標準アプリの数は減ったものの、機能が増え、さらにDSDSとの組みあわせもあり、結構複雑になってしまった感じがする。便利に使いこなすにはそれなりのスキルと時間が必要そうだ。
Wi-FiでのYouTube連続再生が軽く12時間超えのスタミナ!
ベンチマークテストは簡易式だが、「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octane 2.0のスコアは10,199と1万越え、AnTuTu Benchmarkも総合111,537と、10万をこえた。
どちらもSnapdragon 600系としては、今までの認識を覆すスコアで一般的な処理であれば十分こなすことができる。加えてメモリ6GB。はじめ、やけにサクサク動くと思っていたが、ベンチマークテストで実証した格好だ。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさを50%でYouTubeを連続再生させたところ、約13時間だった。仕様上はWi-Fi使用時で約18.7時間なので、動画再生も伴うこともあり、妥当なところだと思われる。またスタンバイ時、2時間ではあるが、まったくバッテリが減っていない。
以上のようにASUS「ZenFone 4」は、Snapdragon 660、メモリ6GB/OptiFlex、5.5型フルHD、DSDS/ツインアプリ対応、標準と広角のデュアルレンズを搭載……など非常に高性能なスマートフォンだ。価格帯的にはミドルレンジだが、機能的にはハイエンドに匹敵する。
ただカメラは標準側で使うのが無難、サウンドは素が普通など、ファンクションは多いものの、厚化粧気味な感じがしないでもない。
とはいえ、このクールなイメージとサクサク感はかなりの好印象。予算を抑えつつ、ハイエンドに匹敵する性能のスマートフォンを探しているユーザーの候補に成りえる1台だ。