西川和久の不定期コラム
富士通「arrows Tab QH35/B1」
~Atom x5搭載でカバーキーボード付きの10.1型2in1
2017年3月16日 06:00
富士通は今年(2017年)の始めに、arrows Tabブランドの12.5型2in1「RH77/B1」および10.1型2in1「QH35/B1」の両方を発表した。
前者の12.5型2in1は既に紹介済み(『デジタイザペン付属の12.5型2in1「arrows Tab RH77/B1」』参照)だが、今回は後者の10.1型2in1を試用する機会を得たのでレビューをお届けしたい。
前モデル「QH35/W」を軽量化し、より安定して本体を立てかけ可能に
前述の上位モデルに相当するKaby Lake搭載の「RH77/B1」は、Core i5、筆圧1,024段階のペン対応、メモリ4GB、SSD 256GBと、なかなか魅力的な12.5型の2in1だった。
そして今回紹介する「QH35/B1」は、Atom x5-Z8350、メモリ2GBの10.1型2in1で、ライトな用途向けとなるだろうか。どちらもほぼ1年でのモデルチェンジ。「RH77/B1」は1月19日より販売開始だが、「QH35/B1」は2月下旬より販売開始したばかり。
新型の改良ポイントは、軽量化とカバー付きキーボード装着時の本体の安定化だ。主な仕様は以下の通り。
QH35/B1 | |
---|---|
プロセッサ | Atom x5-Z8350(4コア4スレッド、クロック1.44~1.92GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 2GB/DDR3L-1600 |
ストレージ | 128GB フラッシュメモリ |
OS | Windows 10 Home(32bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 400 |
ディスプレイ | 10.1型1,280×800ドット(光沢あり)/10点タッチ |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 3.0、Micro USB 2.0、Micro HDMI、200万/500万画素Webカメラ、microSDカードスロット、音声入出力 |
センサー | 加速度、地磁気、照度、ジャイロ |
本体サイズ/重量 | 259.8×171.4×8.9mm(幅×奥行き×高さ)/約620g(単体) |
カバー装着時のサイズ/重量 | 270×190×20mm/約999g |
バッテリ駆動時間 | 約7.5時間/リチウムポリマー25.9Wh |
同梱ソフト | Office Mobile、ATOK 2016 |
税別店頭予想価格 | 8万円強 |
プロセッサはCherry TrailのAtom x5-Z8350。4コア4スレッドでクロックは1.44GHzから最大1.92GHz。キャッシュは2MB、SDPは2W。旧モデルがAtom x5-Z8300(1.44GHz)だったので若干パワーアップもしている。メモリはDDR3L-1600で2GB搭載。OSは32bit版Windows 10 Homeだ。
ストレージはこのクラスとしては珍しく大容量で、旧モデルから倍増のeMMC 128GB。一般的な32GB程度だとWindowsのメジャーアップデートの時に容量が不足するケースもあり、これだけあるとデータ用も含め安心だ。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 400、外部出力用にMicro HDMIを装備している。ディスプレイは光沢ありの10.1型1,280×800ドットで10点タッチ対応。ただし上位モデルにはあったスタイラスペンには対応していない。
インターフェイスは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.0、USB 3.0、Micro USB 2.0、200万/500万画素Webカメラ、microSDカードスロット、音声入出力。センサーは、加速度、地磁気、照度、ジャイロを搭載。
サイズ/重量は単体で259.8×171.4×8.9mm(幅×奥行き×高さ)/約620g。カバー付きキーボード装着時に270×190×20mm/約999g。旧モデルが約630g/1.3kg。カバー付きでギリギリ1kgを切っているのは同社の意地を感じる。
バッテリ駆動時間は25.9Whのリチウムポリマーを内蔵し、約7.5時間。税別店頭予想価格は8万円強となっている。軽量化および多めのストレージ容量、そしてATOK搭載とは言え、他社の同クラスの2in1と比較して結構価格が高めな点が気になるところ。
筐体は10.1型タブレットそのもの。ほぼブラックで統一され質感は高い。重量が実測で612g、カバー付きキーボード込みでも991gなので、楽々持ち運びできる。ただし上位モデルのように本体側にスタンドはない。
前面はパネル中央上に200万画素カメラ。背面は中央上に500万画素カメラ。左側面は何もなく、右側面に音声入出力、USB 3.0、Micro HDMI、Micro USB 2.0、microSDカードスロット、電源入力と、コネクタ類が集中している。また電源コネクタが一番下なので、カバー付きキーボードを装着、立てかけつつ充電する場合、ケーブルが宙に浮くこともない。上側面に電源ボタンと音量±ボタン。下側面にドッキング用のコネクタと安定用のへこみがある。
コネクタのレイアウトからも分かるように、電源はUSBとは別系統。汎用的なUSB電源を流用できないものの、これはこれで扱いやすい。付属のACアダプタのサイズ約73×40×30mm(同)、重量131gと結構小型だ。出力は5V/3,000mA出力。
10.1型のパネルは、明るさコントラスト、発色、そして視野角も良好。ただ明るさが最小だと結構暗い。また解像度は、できればフルHDが欲しいところだが、150ppiあるので駄目というほどでもない。上位モデルにあったスタイラスペンが非対応なのが残念なところか。
カバー付きキーボードは、ドッキング用のコネクタのみで、ほかのインターフェイスやバッテリなどは含まれていない。キーボードは83キー/日本語配列。主要キーのキーピッチは約17mm/キーストローク約1.2mm。バックライトはない。キーピッチが約17mmと狭いものの、入力しにくいほどでもなく、また机の上に置くタイプなので、たわんだり、ポコポコするような感じもない。
タッチパッドは2ボタンタイプだ。面積はフットプリントの関係から狭めだが、反応もよく快適に使用できる。
今回、冒頭に書いたように、本体を立てかける部分が改良された。旧モデルは写真にある折り畳んで三角形になるタイプではなく、横に長細い立方体のようになるタイプだった。他社も含め、三角形型が多いので、多分こちらの方が安定するのだろう。構造上、磁石を多用しているので、カード類が入った財布などは、近くに置かない方が無難だ。
振動やノイズは皆無。発熱はベンチマークテストなど高負荷時、裏の右半分がほんのり暖かくなる程度だった。サウンドは、スピーカー用のスリットもなく場所が分かりにくいが、左右両側面の上部に埋め込まれている。それなりに距離があるのでステレオ感はあるものの、とにかくパワーがなく、加えてシャリシャリ鳴る感じだ。Bluetoothなどを使い外部スピーカーが欲しいところ。
基本ライトな用途向けだがストレージの容量が多いので安心
OSは32bit版のWindows 10 Home。増設もできずメモリ2GB固定であればフットプリントが小さい32bit版の方が無難だ。Atom x5、メモリ2GB、eMMCというスペックなので、重い処理には向いていない。ネットやMobile Officeをサクッと使う用途になるだろうか。
初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は、1画面+α。Windows 10標準に加え、2つあるFUJITSUグループがプリインストールとなる。片方がストアアプリ、もう片方がデスクトップアプリで分かれている。デスクトップは国産大手としては珍しく、壁紙の変更のみでショートカットは一切ない。
eMMCは128GBのSamsung「DJNB4R」。聞き覚えのある型番だったので調べてみると、昨年(2016年)8月に紹介した10.1型2in1「Endeavor TN21E」と同じものだ。C:ドライブのみの1パーティションで約112.35GBが割り当てられ、空きは約100GB。またBitLockerで暗号化されている。Wi-Fi、BluetoothはIntel製だ。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「My Cloud エコDX」、「My Cloud スタジオ」、「My Cloud プレイ」、「My Cloud ホーム2.0」と「マカフィーセントラル」。
デスクトップアプリは、「@メニュー」、「DigiBookBrowser」、「F-LINK Neo」、「FUJITSU ステータスパネルスイッチ」、「FUJITSU ソフトウェアディスク検索」、「FUJITSU はじめに行う設定」、「FUJITSU バックアップガイド」、「My Cloud リモートアクセス設定Utility」、「Plugfree NETWORK」、「Roxio Creator LJ」、「アップデートナビ」、「サポートツール(起動メニューを表示)」、「ソフト使い放題セットアップ」、「動画で分かるFMV - arrows Tab」、「富士通アドバイザー」、「富士通パソコン お客様サポート」、「富士通パソコンユーザー登録」、「マカフィーリブセーフ」、「ワンタッチプライバシー」など。
少し不思議なのが、「FUJITSU ステータスパネルスイッチ」。ご覧のように、Windows 10の場合、クイックアクションでほぼ同じことができる。別途ツールにする意味があるのだろうか。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)、BBench。CrystalDiskMarkの結果を見たい。参考までにCrystalMark(4コア4スレッドで条件的に問題ない)のスコアも掲載した。
winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 6.2、メモリ 5.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7.05。メモリのスコアが低いのは32bit版でメモリ2GBなのでリミッターがかかっている。バンド幅7220.55664MB/sと、Core i系と比較すると約3分の1ほど。
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1236。CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 162.2/Write 87.13、4K Q32T1 Read 35.83/Write 27.22、Seq Read 93.53/Write 69.00、4K Read 14.96/Write 9.513(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 21901、FPU 18142、MEM 18421、HDD 16316、GDI 3472、D2D 1218、OGL 2507。
総じてCore iクラスと比較すれば低いが、Atom X5搭載機としては標準的だ。
BBenchは、キーボードを接続したままバッテリ節約機能オン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残2%で34,365秒/9.5時間。いつもの5%で9.4時間。
仕様上は約7.5時間なので2時間ほど上回った。ただ先に書いたように、バックライト最小だと暗いので、明るくすると、ほぼ同じになりそうだ。
以上のように富士通「QH35/B1」は、Atom x5と128GBのストレージを搭載した2in1だ。カバー付きキーボード込みで1kgを切るのは同社の気合いを感じる。仕様の範囲で特に気になる部分もなく、このクラスとしての完成度は高い。
ただ税別店頭予想価格が8万円強と、他社と比べた場合、結構強気の価格設定だ。少々高くても大手国内メーカーの手厚いサポートを必要とするユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。