西川和久の不定期コラム

手堅いレノボの14型ノート「ThinkPad T470s」

~期待を裏切らないThinkPadクオリティ

ThinkPad T470s

 レノボ・ジャパン株式会社は2月8日、T/X/13/Lシリーズといった主力ThinkPadを刷新。今回はその中から「T470s」を試用する機会を得たので、レポートをお届けしたい。また別売となる「ThinkPad WiGig Dock」も試用できたので合わせてご紹介する。

Kaby Lakeを採用し構成が自由に選択できるThinkPad Tモデル

 約1年前の2016年1月に、前モデルに相当する「ThinkPad T460s」が発表された。Skylake世代のプロセッサを搭載し、初代の「ThinkPad X1 Carbon」と変わらない薄さと軽さを実現した、なかなか意欲的なモデルだった。

 その後継機が今回ご紹介する「ThinkPad T470s」。前モデルの特徴そのままに、Kaby Lakeを採用したのが主な違いだ。ただし前モデルでは、プロセッサ内蔵GPUに加え、ディスクリートGPUとしてGeForce 930M(2GB)も選択可能だったが、今回は内蔵グラフィックスのみとなった。

 主な仕様は以下の通り。

ThinkPad T470s
プロセッサCore i7-7600U(2コア/4スレッド、2.8~3.9GHz、キャッシュ4MB、TDP 15W)
メモリ16GB(8GB×2)/PC4-17000 DDR4 SDRAM/最大24GB
ストレージPCIe NVMe SSD 1TB(OPAL対応)
OSWindows 10 Pro
ディスプレイ非光沢IPS式14型フルHD(1,920x1,080ドット)、10点タッチ対応
グラフィックスIntel HD Graphics 620
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1、WiGig
インターフェイスUSB 3.0×3(内1つは常時給電)、USB Type-C、HDMI、720p HDカメラ、メディアリーダ、音声入出力
バッテリ/駆動時間3セル+3セル リチウムイオンバッテリ (固定式)/約11.1時間
サイズ/重量約331×226.8×16.9-18.8mm/約1.32kgから
価格153,000円(税別/量販店ベーシック・パッケージ)から。
※今回の試用機の構成では345,600円

 プロセッサはKaby Lake世代のCore i7-7600U。2コア4スレッドでクロックは2.8GHzから最大3.9GHz。キャッシュは4MBでTDPは15Wだ。メモリは8GB×2の計16GB。ストレージはM.2 PCIe NVMeタイプの何と1TB。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載する。

 GPUはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 620。外部出力用にHDMIを装備している。ディスプレイは非光沢でIPS式の14型フルHD(1,920x1,080ドット)。10点タッチに対応だ。

 ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1、WiGig。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×3(内1つは常時給電)、USB Type-C、720p HDカメラ、メディアリーダ、音声入出力。

 前モデル同様、バッテリの構造が少し変わっており、3セルを2つ前後に搭載している。一般的にこのような場合、どちらかがホットスワップに対応し交換可能なのだが、本機はどちらも着脱できない。おそらく内部のスペースやバランスを考慮したものと思われる。バッテリ駆動時間は最大約11.1時間。

 サイズは約331×226.8×16.9~18.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.32kgから。価格は今回の構成だと345,600円だった。

 直販モデルのオプションは非常に多く、プロセッサにCore i5-7200U/7300U、Core i7-7600。OSは64bit版 Windows 10 HomeかPro。ディスプレイがIPS式フルHDタッチあり/なし、IPS式QHD液晶(2,560×1,440ドット)。メモリ8GB/12GB/16GB/20GB/24GB。キーボードが日本語/英語と各バックライトあり。ストレージはSSD 128GB/256GB/512GB/1TBで256GB以上はPCIe NVMe(OPAL対応)となる。

 また、ACアダプタも専用コネクタの45Wタイプに加え、USB 45W/65Wタイプも用意されている。そのほか、指紋センサー、NFC、スマートカードリーダ、WWANなどの有無も選択可能と、物凄い数の組み合わせとなる。

 執筆時点で販売サイトを見ると、直販モデルのミニマムは、Core i5-7200U、メモリ8GB(4GB×2)、256GB SSD、フルHDタッチなし、WiGig非対応、日本語キーボード・バックライト付きで184,680円だが、E-クーポン適用後147,744円(税込・送料無料)だった。Tシリーズで15万円を切るとThinkPadとしては安い方と言える(ただし100台限定)。

 なお、量販店モデルについてはベーシック・パッケージ、バリュー・パッケージ、ハイパフォーマンス・パッケージと3モデルあり、Core i5-7200U搭載(Windows 10 Home/4GB/SSD 128GB/フルHD/WiGig対応など)のベーシック・パッケージが153,000円(税別)となっている。

前面はパネル中央上に720p HDカメラ。正面側面は鋭角で何もない
裏面は手前両側面の長細いスリットがスピーカー。中央付近にドックコネクタがある。前後に2つあるバッテリは着脱できない
左側面。電源コネクタ、USB 3.0、音声入出力、メディアリーダ。パネルは180度傾く
右側面。ロックポート、SIMスロット、Gigabit Ethernet、USB 3.0(常時給電)、HDMI、USB 3.0、USB Type-C、スマートカードリーダ
キーボードは10キーなしのアイソレーションタイプ。中央にTrackPoint、手前中央にTouchPad、その右上に指紋センサー
キーボードバックライトはオフと強弱の2段階の切り替えが可能
かなり薄いのが分かる。ロゴのThinkPad、“i”のドットが赤く光る
付属のACアダプタはサイズが約92×40×23mm(同)、重量161gの専用電源コネクタ45Wタイプ
キーピッチは実測で約19mm
重量実測で1,399g
裏面のネジ5本を外したところ。前後にバッテリが2本あるのが分かる

 筐体はマットブラックで質感共まさにThinkPadそのもの。14型の割に厚みは16.9~18.8mmと薄く、また約1.4kgと軽いため持ち運びは楽だ。

 天板にはThinkPadのロゴがあり、“i”のドットの部分が赤く光る。前面はパネル中央上に720p HDカメラ。正面側面は何もなく鋭角なのが見て取れる。左側面に電源コネクタ、USB 3.0、音声入出力、メディアリーダ。右側面にロックポート、SIMスロット、Gigabit Ethernet、USB 3.0(常時給電)、HDMI、USB 3.0、USB Type-C、スマートカードリーダを配置。

 裏面は手前左右の細長いスリットにスピーカー、中央付近にドックコネクタがある。メモリなどにアクセスできる小さいパネルはないものの、ネジ5つ外すだけで内部が現れ、メンテナンスも容易だ。前後にある3セルバッテリ2つは固定されており着脱できない。付属のACアダプタのサイズは約92×40×23mm(同)で重量161g。

 ディスプレイは非光沢で14型のIPS式でフルHD(1,920×1,080ドット)。映り込みが少ないので非常に見やすく、明るさ、コントラスト、視野角も良好。発色は非光沢なのでギラギラ感がないものの、落ち着いた感じで、と言って地味でもなく素直で好感が持てる。10点のタッチもまったく問題ない。

 キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ。たわみもなく、打鍵感も良く、ThinkPad独特なフィーリング。明るさを2段階に切り替え可能なキーボードバックライトも高ポイントだ。主要キーのキーピッチは約19mm。面積が広めのTouchPadと、これぞThinkPadと言えるトラックポイントも健在だ。

 試用した範囲で、ノイズや振動はほぼ皆無。発熱もベンチマークテスト中に各所に触ってみたものの(季節柄もあるだろうが)ほとんど熱を持っていなかった。サウンドはスピーカーが下にあるので机などに反射するタイプだ。抜群とは言わないまでもそれなりに鳴り、パワーもそこそこある。

 総じて変な例えだが、「はいThinkPad渡すね!」と言われ受け取り「やっぱりThinkPadだ!」とイメージするThinkPadそのもの。いい意味でそれ以上でもそれ以下でもない。期待を裏切らないThinkPadクオリティだ。

無線でインターフェイスを拡張できる「ThinkPad WiGig Dock」

「ThinkPad WiGig Dock」。上に電源ボタン。正面にThinkPadのロゴ、左側面にUSB 3.0×2(下側が常時給電)、ロックポート。サイズ約82×82×85mm、重量389g

 本体と同時に「ThinkPad WiGig Dock」も届いたので、軽くご紹介したい。商品名からも分かるようにWiGigを使ったワイヤレスのドックステーションだ。

 WiGigの仕様上、極近距離でしか使えないが、拡張されるポートが、USB 2.0×2、USB 3.0×3、Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、音声入出力ということもあり、机のどこかにあればいいので距離は特に問題にならないだろう。サイズは約82×82×85mm(同)と机にあっても邪魔にならない。

裏に、USB 2.0×2、音声入出力、USB 3.0(常時給電)、Ethernet、DisplayPort、HDMI、電源入力。右側面には何もない
あまり見えないのに底面にだけ赤と凝ったデザイン。厚みはサイズ+3mm分に相当
使用するACアダプタ。ThinkPad T470sとまったく同じ45W型

 接続方法はMiracastなど、Wi-Fiを使ったディスプレイアダプタとほぼ同じで、「Intel Wireless Doc Manager」から接続/切断を行なうだけとシンプル。接続すると、先に挙げたポートが全て有効となる。もちろん遅延は皆無で、まるで有線接続のように操作可能だ。

 直販価格は32,400円(税込・送料無料)。少しポートの数が多い「ThinkPad ウルトラドック - 90W」が24,840円(税込・送料無料)なので、1万円未満の差。検討の価値は十分あると思われる。

Intel Wireless Doc Manager
Intel Wireless Doc Manager / 接続完了
ドック管理
タスクバーにIntel Wireless Doc Managerが常駐する
設定 / ディスプレイで2画面に
デバイスマネージャにThinkPad Wigig dock USB audioとUSB Ethernetが追加される

文句なしの高性能

 OSは64bit版のWindows 10 Pro/RS1。スタート画面(タブレットモード)は1画面+α。アプリはLenovoグループに「Companion」と「Settings」のタイルが追加されている。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。左側に追加のショートカットもない。Core i7、メモリ16GB、そしてNVMeの1TB SSDを搭載しているだけあって、もう快適そのもの。

 SSDは容量1TBで3bit MLC(TLC) V-NAND、PCIe3.0 x4 NVMeの「Samsung MZVLW1T0HMLH」。C:ドライブのみの1パーティションで約952,62GBが割り当てられ空き926GB。Wi-FiとBluetooth、Gigabit Ethernet、全てIntel製。またWiGig用のドライバが組み込まれているのが分かる。

タブレットモードのスタート画面
Lenovoグループに「Companion」と「Settings」のタイル
起動時のデスクトップ。壁紙のみの変更、左側にごみ箱のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDは容量1TBで3bit MLC(TLC) V-NAND、PCIe3.0 x4 NVMeの「Samsung MZVLW1T0HMLH」。Wi-FiとBluetooth、Gigabit Ethernet、全てIntel製。またWiGi用のドライバが組み込まれている
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約952,62GBが割り当てられている
トラックポイント/タッチバッドの設定。ThinkPadお馴染みのドライバ。タッチパッドの詳細設定はSynaptics

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは「Lenovo Settings」と「Lenovo Companion」。前者は、スマート設定、電源状況、入力、ネットワーク&ワイヤレス、オーディオの設定、カメラ、ディスプレイの設定を行なえるアプリ。後者は、システム更新、保証&サービス、ハードウェアスキャン、THINKPADを最適化します、ご使用のTHINKPAD T470s向けアクセサリといった管理系だ。

 昔はいろいろ機能別にWin32アプリとなっていたが、それらをストアアプリ2本にまとめてスッキリさせている。なお、この2本ともストアから無料でダウンロードできるものの、該当機種以外では動作しないので注意されたい。

 デスクトップアプリは、Intelのシステムツール系以外はなし。ストアアプリ2本とデスクトップアプリなしは少し珍しい構成だ。コントロールパネルの「プログラムと機能」を確認してもほかにこれといって入っていなかった。

Lenovo Settings / Home
Lenovo Settings / 電源状況
Lenovo Companion / Home
Lenovo Companion / THINKPADを最適化します

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、CrystalDiskMarkの結果も見たい。バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドと条件的に問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 6.4。プロセッサ 7.7、メモリ 8、グラフィックス 6.4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 9.3。メモリのバンド幅は26381.23183MB/s。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3069。

 CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 3283/Write 1785、4K Q32T1 Read 663.0/Write 554.8、Seq Read 1821/Write 1727、4K Read 48.52/Write 182.8(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 61535、FPU 60778、MEM 71208、HDD 63487、GDI 21254、D2D 7449、OGL 17949。

 プロセッサとメモリのスコアは同クラス相応だが、ストレージの速さは異様だ。winsat formalで9.3は見たことない上、CrystalDiskMarkの値が尋常ではない。初めて起動した時に「ん?」っと思ったのは気のせいではなかったようだ。

 BBenchは、バッテリ節約機能オン、キーボードバックライトオフ、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で36,132秒/10時間。仕様上、最大約11.1時間なので、ほぼ近い値となった。バックライト最小だと少し暗ケースもあるので、実際はもう少し短くなるだろうか。

「winsat formal」コマンド結果。総合 6.4。プロセッサ 7.7、メモリ 8、グラフィックス 6.4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 9.3
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3069
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated(詳細)はCPUクロックは600MHz辺りから最大の3.9GHzまで激しく上下している。温度は40℃ちょっとから最高で76℃近辺まで上がる
CrystalDiskMarkの結果。Seq Q32T1 Read 3283/Write 1785、4K Q32T1 Read 663.0/Write 554.8、Seq Read 1821/Write 1727、4K Read 48.52/Write 182.8(MB/s)
BBenchの結果。バッテリ節約機能オン、キーボードバックライトオフ、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果。バッテリの残5%で36,132秒/10時間
CrystalMarkの結果。ALU 61535、FPU 60778、MEM 71208、HDD 63487、GDI 21254、D2D 7449、OGL 17949

 以上のようにレノボの「ThinkPad T470s」は、Kaby Lake世代のCore i5もしくはi7を搭載し、軽くて薄い14型のThinkPadだ。直販モデルの場合、パネルの解像度やタッチの有無、メモリやSSDの容量、そのほかいろいろな構成を用途や予算に応じて選択できポイントが高い。

 最大構成にすると価格もそれなりだが、試用した範囲で気になる部分は一切なく「さすがThinkPad!」と言ったところ。往年のThinkPadファンのみならず、14型で扱いやすいノートPCを探しているユーザーにお勧めしたい1台だ。