西川和久の不定期コラム

着脱式キーボードを備えた10.1型2in1「Endeavor TN21E」

Endeavor TN21E

 エプソンダイレクトは8月23日に、着脱式の一体化キーボードも追加可能なWindows 10搭載の10.1型2in1「Endeavor TN21E」を発表した。実機に触れる機会が得られたので、試用レポートをお届けしたい。

10.1型でAtom x5を搭載した2in1

 10型前後の2in1は、Windows 8のころに一斉に出回り、ローエンドからハイエンドまでかなりの機種があったように思う。ここ1年は少し落ち着き、いろいろなPCの中の1つのモデルという感じになっただろうか。

 筆者はタブレット、2in1、ノートPC……などを持っているが、外出時に出番が多いのは2in1。軽くて薄いのが主な理由だ。タブレットは仕事後のごろ寝用、ノートPCはガッチリ仕事する時用と、何となくであるが使い分けている。

 今回ご紹介する「Endeavor TN21E」は、内容的にちょうど筆者が外出用で使っているのと同じ感覚の機種となる。主な仕様は以下の通り。

【表】Endeavor TN21Eの仕様
SoCIntel Atom x5-Z8350(4コア4スレッド、クロック 1.44GHz~1.92GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2W)
メモリ2GB/PC3L-12800 DDR3L 1600MHz SDRAM
ストレージeMMC 128GB
OSWindows 10 Home(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Mini HDMI
ディスプレイ10.1型1,280×800ドット(光沢あり)、10点タッチ/デジタイザ対応
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+EDR
インターフェイスUSB 3.0、microSDカードスロット、192万画素前面/503万画素背面カメラ、音声入出力
センサーGPS、ジャイロセンサー、地磁気センサー、加速度センサー、照度センサー
サイズ/重量約262×176×12mm(幅×奥行き×高さ)/約640g(タブレット時)、約1.3kg(キーボード装着時)
バッテリ駆動時間約8.2時間/リチウムイオンポリマーバッテリ(3.8V/8,200mAh)
価格67,800円(税別/送料別)

 プロセッサはAtom x5-Z8350。4コア4スレッド、クロックは1.44GHzから最大1.92GHz。キャッシュは2MBでSDPは2Wだ。x5のSKUとしては真ん中のクラスに属する。メモリはPC3L-12800 DDR3L 1600MHz SDRAMで2GB。ストレージはeMMCだが一般的なタブレットなどと比較して128GBと大容量だ。OSは64bit版Windows 10 Home(TH2)。Windows 10 Proも選択できる。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。外部出力用としてMini HDMIを装備。ディスプレイは10.1型IPS式で光沢ありの1,280×800ドット。静電容量方式の10点マルチタッチと、電磁誘導方式のデジタイザペンに対応。デジタイザペンも標準で付属する。

 インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+EDR、USB 3.0、microSDカードスロット、192万画素(前面)/503万画素(背面)カメラ、音声入出力。センサーは、GPS、ジャイロセンサー、地磁気センサー、加速度センサー、照度センサーを搭載する。

 サイズ/重量はタブレット時、約262×176×12mm(幅×奥行き×高さ)/約640g。キーボード装着時は約262×185×26mm/約1.3kgだ。合体時に1kgを超えるのは残念だが、タブレットとキーボードの重量比は約半分。キーボード部分も適当な重さがないと、パネルを傾けた時に倒れてしまうため、バランスを取っている関係で仕方ない部分でもある。

 バッテリ駆動時間は、8,200mAhのリチウムイオンポリマーバッテリを内蔵し、最大約8.2時間。10.1型のタブレットとしては標準的か。なお、キーボード側にはバッテリや汎用インターフェイスは搭載していない。

 価格はタブレット/Homeモデルが59,800円、タブレット/Proモデルが64,800円、2in1/Homeモデルが67,800円、2in1/Proモデルが72,800円。今回届いたのは2in1/Homeなので、67,800円となる(税別/送料別)。

前面。パネル中央上に192万画素前面カメラ。写真からは分からないが、パネル左上の脇に充電中LEDがあり、充電中は橙色に点灯する
背面。中央上に503万画素背面カメラ。下左右のメッシュ部分にスピーカー
上側面に音量ボタン。左側面にUSB 3.0、電源ボタン、3.5mmジャック、Mini HDMI、microSDカードスロット、電源入力
下側面にドッキングコネクタ、右下にストラップホールがある
着脱式でアイソレーションタイプのキーボード。主要キーのキーピッチは実測で約18mm。タッチパッドは1枚プレート型
ペン収納場所。キーボードの右側にペン収納場所があり便利。合体用のへこみ中央にドッキングコネクタ
タブレットのみの重量は実測で646g
キーボードの重量は実測650g
付属のACアダプタ。実測で約65×43×32mm(プラグなど含まず)、重量97g。プラグ部分は折り畳めない
Surface 3(10.8型)との比較。差は0.7型分だが結構違うのが分かる。合体時の厚みや重量はEndeavor TN21Eの方があるものの、キーボードの構造がまったく異なる

 筐体は一部ツヤありブラックだがほとんどの部分がツヤなしブラックで真っ黒。ここまで黒いのも珍しいかも知れない。タブレット時の持った感じは重量相応だが、合体時はズッシリ重く感じる。見た目のサイズと重量のバランスがそう錯覚させるのだろう。

 前面は、パネル中央上に192万画素前面カメラ。また写真からは分からないが、パネル左上の脇に充電中LEDがあり充電中は橙色に点灯、完了後消灯する。裏は、中央上に503万画素背面カメラ。下左右のメッシュ部分にスピーカーが埋め込まれている。

 上側面に音量ボタン。左側面にUSB 3.0、電源ボタン、3.5mmヘッドフォンジャック、Mini HDMI、microSDカードスロット、電源入力。下側面にドッキングコネクタ、右下にストラップホールがある。余談になるが、ストラップを通す時、先にペン側から行なわないと上手くいかないので要注意。付属のACアダプタは、実測で約65×43×32mm(プラグなど含まず)、重量97gとコンパクトだ。出力は12V/1.5A。ただしプラグは折り畳めない。

 着脱式のキーボードはアイソレーションタイプだ。本体下側面と、キーボード上のへこみにドッキングコネクタがある。磁石を使った固定式となっており、本体下側面、キーボードのへこみ部分に磁石があるため、カバンへ入れる時、財布の中のキャッシュカードなど、カード類は気を付けた方がいいだろう。

 キーピッチは主要キーで実測約18mm。ピッチや感触なども含め、ひと時はやった同クラスのネットブックに似ている。興味深いのは、右側にペン置き用にへこんだ部分があり、これでペンを置いたまま閉じることができペンが落ちない。タッチパッドは1枚プレート型だ。フットプリントが狭いので広さはないが、普通に操作可能になっている。

 10.1型のパネルはIPS式で視野角は広く、発色(少し青め)、明るさ、コントラストも良好。特にこれと言って不満はない。付属のデジタイズペンは写真からも分かるように細めで少し持ち辛いかも知れない。反応や追尾性は良く、ズレもなく、ストレスなく操作できる。今回WindowsはTH2だったが、Anniversary Updateにすれば、ペンの用途や使い勝手も向上するので、この手のデバイスにはベストマッチだろう。

 振動やノイズは皆無。ただ発熱に関してはバッテリ駆動時は気にならないものの、AC駆動時、ベンチマークテストを作動させると裏左半分が異様に熱くなった。PCMark 8では80℃近くまでプロセッサの温度が上がっているのでこの影響だろうが、これまでこのクラスでは体感したことのない温度でちょっと気になる部分だ(充電中は少し暖かくなる程度)。

 サウンドは、スピーカー自体が小さいのでほとんど低音は出ずシャリシャリ音であるがパワーは結構ある。3.5mmヘッドフォンジャックからの出力は、目盛80(WindowsのOn-Screen)でかなりの音量。レンジは狭めであるが、普通に音楽や動画を楽しむことができる。

Atom x5なのでライトな用途に

 OSは64bit版Windows 10 Home。冒頭で書いたがProも選択可能だ。初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面と+α。「EPSONのお勧めグループ」がプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルにまとめられている。操作感は、1世代前のAtomより若干速いが、クラス相応でライトな用途向けとなるだろうか。

 余談になるが、普段筆者はChromeブラウザを使う。どうも最近Facebookが重い。具体的には、スクロール時、下の見えない部分を描画するのに少し引っかかるのだ。これはCore i5搭載機でも(かなり低減されるものの)同じで、ある時、Edgeを使ったところ、この引っかかりがまったくなく、スッとスクロールした。Atomのように性能が低い場合、少なくともFacebookに関してはEdgeにした方が無難そうだ。

 eMMCのストレージは128GBのSamsung「DJNB4R」。C:ドライブのみの1パーティションで約115.24GBが割り当てられ空き101GB。結構な容量であり、microSDカードを使わなくても多くのケースで十分だろう。Wi-FiはBroadcom製。デバイスマネージャには、TPMやセンサーなども見える。

スタート画面
スタートにはEPSONの勧めグループがプリインストールされている
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。eMMCは128GBのSamsung「DJNB4R」。Wi-FiはBroadcom製。センサーなども見える
eMMCのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約115.24GBが割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「NAVITIME」、「楽天gateway」。デスクトップアプリは、「EPSON DIRECT」フォルダに、「i-フィルター30日版のインストール」、「PCお役立ちナビ」、「ウィイルスバスターのインストール」、「お客様満足度アンケート」、「バックアップツール」、「マニュアルびゅーわ」。

 ストレージの容量が多い割には控えめだろうか。「PCお役立ちナビ」はかなり前から同社のPCにインストールされている息が長いアプリケーションだ。

PCお役立ちナビ
ライブタイルのデザインが変わった楽天gateway

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)、BBenchの結果を見たい。参考までにGoogle Octane 2.0(Edge)とCrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)のスコアも掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 6、メモリ 5.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.95。メモリのバンド幅は7279.15133MB/s。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1326。Google Octane 2.0は6759。CrystalMarkは、ALU 22132、FPU 18814、MEM 17338、HDD 22613、GDI 3815、D2D 1930、OGL 3095。Atom x5としては一般的なスコアになっている。

 参考までにAtom x7-Z8700(4コア4スレッド、クロック 1.6GHz/2.4GHz)を搭載したSurface 3は、総合 4.8。プロセッサ 6.8、メモリ 5.9、グラフィックス 4.8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.8。メモリのバンド幅は11161.24147MB/s(4GB)。Google Octane 2.0は7987……と、ワンランク上のスコアになる。結構体感速度も違うので、できればx7クラスのラインナップも欲しいところか。

 BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残1%で45,144秒/12.5時間。いつもの残5%で12.4時間。仕様上の約8.2時間を大幅に上回った。ただし明るさ最小だと暗いので、実際はもう少し短くなるだろうか。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.1。プロセッサ 6、メモリ 5.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.95
PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)「1326」
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)/詳細。クロックは500MHz辺りから最大の1.92GHz。意外とWritingの負荷が高い。温度は約68℃から80℃と高め
BBench。バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残り1%で45,144秒/12.5時間。いつもの残り5%で12.4時間
CrystalMark。ALU 22132、FPU 18814、MEM 17338、HDD 22613、GDI 3815、D2D 1930、OGL 3095

 以上のように、エプソンダイレクトの「Endeavor TN21E」は、10.1型でAtom x5を搭載した2in1で、性能はそれなりだが、このクラスとしては128GBと大容量。そして、デジタイザペンに対応しているのも魅力的。

 キーボード合体時に1kg超えと少し重いのは残念ではあるものの、ライトな用途で10.1型ペン対応の2in1を探しているユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。