西川和久の不定期コラム
「Raspberry Pi3 Model B」で遊んでみよう! Part 1
~OSのインストールから環境構築まで軽く試す編
2016年6月9日 06:00
6月は、普段のPC試用レポート的な記事とは違い、「Raspberry Pi3 Model B」を使っていろいろ遊んだ結果を4回に別けて掲載することになった。筆者自身、初Raspberry Piと言うこともあり、楽しみながら1回ずつお題を決めて挑戦したい。
なお、4回掲載予定の記事は、Raspberry PiやLinux、プログラミングなど、Raspberry PiやLinuxの初心者向け内容となるので、既にバリバリ使っているパワーユーザーにとっては物足りないかもしれない。予めご了承いただきたい。
初「Raspberry Pi」は意外と簡単!
Raspberry PiはARMプロセッサを搭載した1ボードコンピュータで、イギリスのラズベリーパイ財団が開発している。初代は2012年2月29日に発売。現在までに複数モデルあり、価格は当初から30ドル前後だ。主にプログラミングなどを学習する教育用コンピュータ的な位置づけとなる。
全モデルの詳細については、Wikipediaでまとめられているので参考にして欲しいが、今回使用する「Raspberry Pi3 Model B」は、最も高性能で、搭載するデバイスも多いモデルとなる。
そういう筆者もRaspberry Pi自体の存在は昔から知っていたものの、実機を触るのは今回が初めて。「どうすればよいのやら……」と、思っていたが、起動して触れるようになるまでは非常に簡単だった。詳細は後述するが、Windows 10をインストールするより楽かも知れない(笑)。
【表】「Raspberry Pi3 Model B」の仕様 | |
---|---|
SoC | Broadcom BCM2837 CPU:1.2GHz クアッドコア Cortex-A53 ARMv8 64bit GPU:デュアルコア VideoCore IV 400MHz(3D 300MHz) |
メモリ | 1GB(DDR2) |
インターフェイス | Ethernet、IEEE 802.11 b/g/n、Bluetooth 4.1+LE、USB 2.0×4、microSDカードスロット、HDMI、音声/コンポジット出力コンボ、GPIO、Camera interface (CSI)、Display interface (DSI) |
OS | Raspbian(Debianベース)、Ubuntu MATE、Snappy Ubuntu Core、OpenELEC、OSMC、Arch Linux、PiNet、RISC OS、Windows 10 IoT Coreなど |
サイズ | 85×56×17mm(幅×奥行き×高さ) |
電源(消費電力) | Micro USB Bコネクタ 5V/2.5A(約12.5W) |
まずは「Raspberry Pi3 Model B」の概要を。主な仕様は表の通り。「Raspberry Pi2 Model B」からの強化ポイントは、CPUが64bit対応、4コアは同じだがクロックが1.2GHz(GPUも若干Up)へ。そしてWi-FiとBluetoothがオンボードとなっている点だ。ただその分、消費電力が増え、5V/2.5Aが必要。
この電源部分が割と厄介だ。Raspberry Piのほかのモデルは2A未満の普通のUSBタイプのACアダプタが使えるものの、Raspberry Pi3の2.5A(できれば3A)となると、多くのケースで別途ACアダプタを購入することになるだろう。ネットで情報収集していると、2Aタイプだと作動が不安定になるケースもあるようだ。
一方、Raspberry Piの特徴として、USBなど汎用ポートに加え、GPIO、Camera interface (CSI)、Display interface(DSI)を搭載していることが挙げられる。
特にGPIOは、GPIO×26 3.3V/16mA、UART、I2C、SPI、I2S、PWM、5V、3.3V/50mAで構成され、いろいろなデバイスやセンサーなどを取り付け、Raspberry Piでコントロールすることが可能となる。個人的にはI2SへDAC ICを接続し、ミュージックサーバー的に使うのが面白そうだと思った。
本体のほかに用意するものは、先に挙げた「5V/2.5A(以上)USBタイプのACアダプタ」、そしてOSをインストールする「microSDカード1枚」。今回は32GBを使用した。ケースはあってもなくても作動するのでお好みで、と言ったところ。サイズは、扉の写真からも分かるように85×56×17mm(幅×奥行き×高さ)と非常にコンパクトだ。
「Raspberry Pi3 Model B」のハードウェア的な説明はここまでであるが、スペック的には4コア/1.2GHz、1GB/32GB、USB 2.0×4、Ethernet、Wi-Fi、Bluetooth、HDMIと、Windows 10が動きそうな勢いである。初代がシングルコア/700MHz、メモリ256MB、EthernetやHDMIなしだったことを踏まえると、随分PCっぽくなった感じがする。変な例えだが、予算1万円で購入できるHDDやSSDの容量が年々増えるのと同じように、Raspberry Pi自体も価格変わらず、徐々にパワーアップしている感じだ。
ただ、国内価格はAmazonで調べると、本体、ケース、32GBのmicroSDカード、5V/2.5A出力のACアダプタ、全て揃えてみると約1万円ぐらいは掛かりそうだ。Windowsを搭載したスティックPCの価格が随分下がっていることもあり、実用面で考えると(何かをコントロールするなど用途にもよるだろうが)、あまりコストパフォーマンスは良くないかも知れない。あくまでも学習または遊び用と割り切った方がいいだろう。
セットアップ
Raspberry Pi3 Model Bは、入手してもこのままだと単なる基板でしかないので、まずはOSをインストールする必要がある。
公式のダウンロードサイトを見ると、NOOBS、RASPBIAN、Ubuntu MATE、Windows 10 IoT Core……など、いろいろなOSが並んでいるが、ここはオーソドックスな「RASPBIAN」をインストールしてみたい。
「RASPBIAN」は、「RASPBIAN JESSIE」と「RASPBIAN JESSIE LITE」の2種類あり、前者がGUIあり、後者がGUIなしとなる。今回使い方としては「RASPBIAN JESSIE LITE」で十分だったものの、GUIの画面キャプチャを撮る目的のためだけにフルバージョンを選択した。
OSイメージのzipファイルをダウンロード、展開するとimgファイルが取り出せるので、「DD for Windows」を使ってmicroSDカードへイメージを書き込む。この時、DDwin.exeを管理者権限で実行する必要がある。
書込み終了後、microSDカードを「Raspberry Pi3 Model B」にセットし、HDMIケーブルでディスプレイと接続。USBポートにキーボードとマウス、Ethernetからルーターなどのケーブルを接続し、Micro USBへ電源を接続すれば、システムが起動する準備が完了する。
一般的なLinuxのセットアップだと、初期起動時、rootのパスワードだったり、ネットワークの設定など、いろいろ入力項目があるのだが、このRASPBIANは、一切何もなく、いきなりデスクトップが起動した。これにはちょっと拍子抜けしてしまった。
IPアドレスは、DHCPサーバーが動いているルーターから自動的に割り当てられる。ネットワークのプロパティや、ルーターのIPアドレス割り当てテーブルなどから、RaspberryのIPアドレスを知ることができる。デフォルトでsshが動いているので、
$ ssh pi@192.168.11.13
password: raspberry
※id: pi、password: raspberry がデフォルトでセットされている
※@以降は割り当てられたIPアドレス
これでほかのPCからログイン可能になる。ssh系のプログラムがない場合でも、Google Chromeの拡張機能「Secure Shell」を使えばいいだろう(掲載した画面キャプチャにも使用)。
この状態でほかのPCからRaspberry Piを操作できるので、以降、ディスプレイ、キーボードやマウスなどは「Raspberry Pi3 Model B」側には必要ない。電源を切る時は、sshから
$ sudo shutdown
※sudoはroot権限でコマンドを実行するという意味
と打てばOK。完全に電源が落ちたかどうかはEthernetコネクタにあるLEDが消灯するので、それで確認することができる。
以上で、OSのインストール、起動/終了の確認は完了だ。冒頭に書いたように、ある意味、Windows 10をインストールするより簡単だった。また、何か触り過ぎてOSがおかしくなった時も(データは消えるが)、microSDカードへイメージを書き直すだけで良く、リカバリーも容易。気軽に試すことができる。
LAMP環境を作りWordPressを入れてみる
無事OSも起動したので、取りあえず何を試そうと考えたが、Linuxと言うこともあり、日頃仕事で使っているLAMP(Linux+Apache+MySQL+PHP)環境を作り、WordPressでも動かしてみるかと、必要なパッケージをインストールしてみた。
「RASPBIAN」はDebian系のOSで、昔からCentOSを使ってる筆者はやや苦手。パッケージの管理はapt-getコマンドを使う。
$ sudo apt update
$ sudo apt-get install apache2 php5 mysql-server phpmyadmin
上記のコマンドは、念のためパッケージリストの更新を行ない、その後、一気に、Apache、MySQL、PHP、そしてMySQLをWeb UIで操作できるphpMyAdminをインストールする、というものだ。MySQLとphpMyAdminに関しては、インストール途中でrootのパスワードを決める部分があるので、該当するパスワードを入力する(忘れないよう、メモした方が無難)。
インストール完了後、作動確認は、掲載した画面キャプチャの通り。全て正常に作動している。また、ネットの情報によれば、「Raspberry Pi2 Model B」ではphpMyAdminが重いと言う話もあったが、「Raspberry Pi3 Model B」では割と普通に操作でき、ストレスは感じなかった。
WordPressのインストールに関して詳細は省略するが(特殊なことはしていない)、管理画面も含めphpMyAdmin同様、重くなく普通に操作可能で、個人レベルのブログであれば、十分対応できそうな速度で作動した。
この程度のプログラムが動作するのであれば、NASとしても使えそうだが、いかんせん有線LANがGigabit Ethernetではなく、なおかつストレージの接続はUSB 2.0までなので、(ある程度の性能が必要な)実用レベルには厳しそうだ。残念……。
筆者の感覚で速い、遅いと書いても信憑性に欠けるため、参考までにUnixBenchの値を掲載する。インストールと実行方法は以下の通り。
$ wget http://byte-unixbench.googlecode.com/files/UnixBench5.1.3.tgz
$ tar zxvf UnixBench5.1.3.tgz
$ cd UnixBench
$ make
$ ./Run
「Raspberry Pi2 Model B」など、比較できるデータがないので、興味のある人はネットなどで調べて欲しい。ラズベリーパイ財団の発表によると、「Raspberry Pi3 Model B」は、「Raspberry Pi2 Model B」と比較して、1.5倍の性能を実現しているとのことだ。
今回Part 1は、筆者自体も初Raspberry Piと言うこともあり、セットアップと軽く使った内容などをご紹介した。セットアップ自体は非常に簡単ということがお分かり頂けたと思う。またDebian系のコマンドが使えることも、確認できたのではないだろうか。
次回はいよいよRaspberry Piの特徴であるGPIOを使って、何かをコントロールする予定だ。お楽しみに!