西川和久の不定期コラム
HP「Z1 G3 Workstation」
~23.6型IPS式4Kパネルを搭載した一体型ワークステーション
(2016/5/31 11:00)
日本HPは5月24日、新型のノートPCやワークステーションなどを発表した。今回はその中から、23.6型IPS式4Kパネルを搭載した一体型ワークステーション「Z1 G3 Workstation」を事前に試す機会を得たので、試用レポートをお届けしたい。
XeonやNVIDIA Quadroにも対応した4K 一体型ワークステーション
今回発表のあったHP「Z1 G3 Workstation」(以下、Z1 G3)、実は2012年4月、初代に相当する「Z1」を試用している。どちらも同じシリーズの一体型なので一見よく似ており、XeonやQuadroに対応したワークステーションだ。
特徴の1つとして、ツールレスでのメンテナンスを挙げており(これは現在も引き継がれている)、初代Z1はスタンドを折りたたみ、画面をテーブルのように水平とし、車のボンネットを開けるように持ち上げると内部にアクセスできる……という変わった構造で、当時その動画も掲載している。
こうなった理由は写真を見ると明白で、HDDやグラフィックス、そのほかのコンポーネントが結構大きく(おそらく重量もそれなりにある)、本体に負荷をかけずツールレスにするにはこれしか方法がなかったのだろう。
それから4年経って登場した「Z1 G3」(「Z1 G2」もあるが「Z1」と同じ構造)は、各コンポーネントが小型軽量化され、複雑な変形なしでツールレスのメンテナンスが可能となった。主な仕様は以下の通り。
【表】HP「Z1 G3」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Xeon E3-1225 v5(4コア/4スレッド、クロック 3.3GHz~3.7GHz、キャッシュ8MB、TDP 80W) |
チップセット | Intel C236 |
メモリ | 16GB/DDR4-2133 SO-DIMM×4 (最大64GB ECC DDR4-2133 SDRAMまたは64GB non-ECC Unbuffered DDR4-2133 SDRAM) |
ストレージ | 1TB SSD(ただし現在BTOにはないデモ用仕様) |
OS | Windows 7 Professional |
ディスプレイ | 23.6型(非光沢)、IPS式3,840x2,160ドット/4K、タッチ非対応 |
グラフィックス | Quadro M1000M(2GB/GDDR5)、DisplayPort出力 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.2 |
インターフェイス | USB 3.0×6、Thunderbolt 3×2、SDカードリーダ、1080p Webカメラ、音声入出力 |
サイズ/重量 | 596.9x210.8x546.1mm(幅×奥行き×高さ)/10.51kg |
価格 | 190,000円から |
プロセッサはIntel Xeon E3-1225 v5。4コア4スレッドでクロックは3.3GHzから最大3.7GHz。キャッシュは8MBでTDPは80W。さすがにXeonクラスだけあってTDPは高めだ。BTOでは、このほか、Intel Xeon E3-1270 v5、Xeon E3-1245 v5、Core i7-6700、Core i5-6500、Core i3-6100なども選択することができる。
チップセットはIntel C236。メモリは8GB/DDR4-2133 SO-DIMMを2枚搭載し合計16GB。スロットが4つあり最大64GB。またECCにも対応。ストレージは1TBのSSD。ただしこれはデモ用の特殊仕様であり、従来は、500GBから1TBのHDD/7,200rpm、256/512GBのSSD、NVMe PCIe SSDなどからの選択となる。OSはWindows 7 Professional。Windows 10 ProやHP Linuxにも対応している。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics、NVIDIA Quadro M1000M(2GB)に加え、ミドルレンジ用にNVIDIA Quadro M2000M(4GB)も用意。予算や用途に応じて選択が可能だ。
ディスプレイは、非光沢の23.6型IPS式3,840x2,160ドット/4Kのパネルを採用。ただしZ1とZ1 G2は27型だったので、少し小さくなった。タッチには非対応。外部出力用としてDisplayPortも装備している。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n/ac。Bluetooth 4.2にも対応。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×6(Side×2、Back×4)、Thunderbolt/USB 3.1(USB Type-C)×2、SDカードリーダ、1080p Webカメラ、音声入出力。
サイズは596.9x210.8x546.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量10.51kg。価格は19万円から。内容が内容なだけに高価なのは仕方ないところか。
筐体は前面がマットで若干グレー気味のブラック、背面がマットなブラック。このサイズの一体型だけに持ち上げるとかなり重い。
前面はパネル中央上にWebカメラ。また写真からは分かりづらいが、そのすぐ上にカメラを塞ぐレバーがある。下のメッシュ部分にスピーカーを内蔵。左側面上から電源ボタン、Thunderbolt 3×2、USB 3.0×2(下側がPowered)、SDカードリーダ、音声入出力を配置。右側面には何もない。この構造から光学ドライブを内蔵することはできないが、昨今困ることはないだろう。
バックパネル凹みの部分上にACコネクタ、右にDisplayPort出力、Gigabit Ethernet、USB 3.0×4、マイク入力。スタンドの下にあるレバーを押すと簡単にスタンドを外すことが可能となっている。
ディスプレイは非光沢の23.6型IPS式3,840x2,160ドット/4Kのパネルを搭載。明るさやコントラスト、視野角は十分だが、発色は少しあっさりめだろうか。後半の画面キャプチャをご覧いただきたいが、この解像度でWindows 7を普通に動かすと文字などはかなり小さくなる。スタンドは左側に回転させれば縦向き表示にも対応。写真から分かるように、高さや角度もある程度自由に調整でき、加えて台を軽く押すだけで360度回転するので設置は容易だ。
そして本機の特徴であるツールレスのメンテナンス機構は、本体下側中央にあるレバーを右に引きつつ、バックパネルを少し上にずらせば、サクッと外れる機構になっている。実は、当初、(Z1の印象もあり)外し方が分からず、いろいろ悩んだが、分かってしまえばデスクトップPCのパネルを外すよりも簡単だった。構造上、スタンドを付けたままでもパネルを外すことはできるが、スタンドを外し、ディスプレイ面を下にして置き、外すのが無難そうだ。
内部構造からも分かるように、各コンポーネントが非常にコンパクトになり、Z1やZ1 G2のような複雑な構造にしなくてもツールレスのメンテナンスが可能に。と同時に性能は大幅にアップ。4年の歳月でここまで進化したと思うとちょっと感動するものがある。
内部は左側に2.5インチのマウンタが2つ。1つはSSDが搭載済み。右側はSO-DIMM用のスロットが4つ。その下にM.2 SSD用のコネクタがある。また一般的なファンをプロセッサの上に装着する高さが確保できないため、中央上に2基配置したファンへ熱を逃がす構造になっている。
振動やノイズは試用した範囲では問題なく、また熱に関しても上部が温かくなる程度で十分許容範囲だった。
サウンドは、パワーはそこそこあるものの、「dts Studio Sound」のオーディオ拡張をオン(標準設定)にすると、中域にフィルタがかかったような妙な音がする。オフにするとある程度緩和されるが、極度に”かまぼこレンジ”な感じだ。用途的に問題はないが、もう少し普通の音でいいような気がする。
Windows 7搭載機としては満点に近い高性能
OSは64bit版のWindows 7 Professional。メモリ16GB、ストレージがSSDということもあり、快適に操作できる。初回起動時のデスクトップは、壁紙の変更と、左側面にショートカット3つを追加とシンプル。ただ前半にも書いたが、4Kで標準設定のままWindows 7を動かすとかなり文字などが小さくなる。個人的には2ディスプレイ構成にして、外部ディスプレイは普通の解像度で通常オペレーション用、4KにはPhotoshopなど、メインで使うアプリを全画面で配置したいところ。
ストレージは1TBのSSD「MTFDDAK1 T0MBF-1AN1ZABHA」。見たことのない品番だが、調べてみるとOrigin Storage製だった。ただし冒頭に書いたように、デモ用の特殊仕様であり、BTOのメニューにはない。実質C:ドライブのみの1パーティション(D:ドライブはリカバリ用)で938GBが割り当てられており、空きは876GB。
Gigabit Ethernet、Wi-Fi(Intel Dual Band Wireless-AC 8260)、BluetoothはIntel製だ。グラフィックスは、Quadro M1000M。CUDAコア512/GDDR5で2GB搭載している。
プリインストールのソフトウェアは「HP Performance Advisor」以外、デバイス系のツールとなる。ワークステーションという位置付けなので、当然の構成か。
そして、この「HP Performance Advisor」。以前記事にした初代「HP Z1」にもインストールされている。細かいバージョンは違うと思うが、なかなか息の長いシステムアプリケーションと言えよう。特にコンピュータ/ブロック図は、何がどこに接続されているのが一目で分かり興味深い。
ベンチマークテストはエクスペリエンス インデックスと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、CrystalDiskMark。またCrystalMarkの結果も掲載した(4コア4スレッドと条件的に問題ない)。3DMarkは試したものの作動しなかった(映像まで来ない)ので省略した。
エクスペリエンス インデックスの結果は、総合 7.6。プロセッサ 7.6、メモリ 7.9、グラフィックス 7.6、ゲーム用グラフィックス 7.6、プライマリハードディスク 7.9。Windows 7の場合、7.9が最大なので、かなりハイレベルでバランスが取れている。
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3873。CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 534.0/Write 462.6、4K Q32T1 Read 365.3/Write 335.0、Seq Read 487.0/Write 420.6、4K Read 32.18/Write 146.4(MB/sec)。CrystalMarkは、ALU 83230、FPU 70299、MEM 97078、HDD 43271、GDI 23927、D2D n/a、OGL 105339。
SSDがデモ用仕様なのでPCMark 8のスコアは参考程度に。さすがにQuadroだけあってOGLのスコアは桁違いの物凄い値になっている。
「Z1 G3」は、プロセッサはCore i5からXeon、グラフィックスはQuadroも含む数パターン、加えてさまざまなタイプのストレージを、予算や用途に応じて選ぶことができる。ツールレスで簡単にメンテナンスできるのも魅力的だ。
仕様上、特に気になる部分もなく、一体型のワークステーションを探しているユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。