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Mac標準アプリをAIアシスタントで操作!「Apple MCP」

 「Apple MCP」は、Mac標準アプリの「メール」や「カレンダー」などを、AIアシスタントから直接操作できるツールです。たとえば、「◯◯を買ってきてと誰々に伝えて」と自然な言葉で指示するだけで、バックグラウンドで「メッセージ」アプリが起動し、自動でメッセージを送信してくれます。インストールには「ターミナル」でのコマンド入力が必要ですが、どれも1行程度の簡単なものばかりです。この記事では、Apple MCPの基本的な使い方と、具体的な活用例を紹介します。

Apple MCPは、Macの標準アプリとAIアシスタント(ClaudeまたはCursor)を連携するツールです。オープンソースのソフトウェアとしてGitHubで公開されています

Apple Intelligenceが物足りないなら「Apple MCP」

 Apple Intelligenceの登場により、生成AIはより身近な存在になりました。

 すでに「作文ツール」でテキストの要約や校正を行なったり、「Image Playground」で画像を生成したり、Siriを通じてChatGPTにアクセスしたりと、活用している人も多いでしょう。

 今後のアップデートでは、Apple Intelligenceは複数のアプリを組み合わせたアクションの実行も可能になり、さらに高度なAIエージェントへと進化する予定です。

 しかし、現時点ではSiri経由で利用できるAI機能はまだ限定的で、期待されるような「AIアシスタント」としてはやや力不足に感じるかもしれません。

 そこで注目したいのが、AIアシスタントとMac標準アプリの橋渡しを行なうApple MCPです。

 Anthropicが2024年11月に発表した「MCP(Model Context Protocol)」の仕組みを利用するこのツールを使えば、AIアシスタントの「Claude」や「Cursor」から、Mac標準アプリ(「カレンダー」「メール」「リマインダー」「メモ」「連絡先」「マップ」「Safari」など)を直接操作できるようになります。

Apple MCPを利用するための事前準備

 Apple MCPは開発者向けに公開されているものの、事前準備をしっかりと行なえば一般ユーザでも簡単にインストールして利用できます。

 Appleが提供する開発ツールの「Xcode」をMacにインストールしていない場合は、Xcodeのコマンドラインツール「Xcode Command Line Tools」、macOSでソフトウェアパッケージのインストールを管理する「Homebrew」、そして「Node.js」と「npm」をインストールしましょう。

 すでにXcodeをインストールしている場合は、Xcode Command Line ToolsはスキップしてHomebrewとNode.js、npmをインストールするだけでOKです。

 もしXcode Command Line Toolsのインストールがうまくいかない場合は、古いバージョンのコマンドラインツールが残っている可能性があります。

 rm -rf /Library/Developer/CommandLineToolsというコマンドを実行して過去ログを削除してからxcode-select --installと入力して再インストールしましょう。

 なお、本記事は最新のmacOS Sequoia 15.6をベースに作成しています。筆者および複数のユーザの環境で正常に動作することを確認していますが、ご利用の環境によっては期待どおりに動作しない可能性があります。

 すべての環境での動作を保証するものではありませんので、その点はあらかじめご了承ください。

(1)Xcode Command Line Toolsのインストール

ターミナルを起動したら、xcode-select --installと入力して[return]キーで確定します
確認ダイアログで[インストール]をクリックして、使用許可に同意したあとしばらく待ちます
コマンドラインツールのインストールが完了すると「ソフトウェアがインストールされました」と表示されます
ターミナルを起動してxcode-select -pと入力してインストールされた場所を確認します。/Library/Developer/CommandLineToolsと表示されていれば完了です

(2)Homebrewのインストール

Homebrewの公式サイトにアクセスします。[インストール]欄の下にあるスクリプト脇のコピーボタンをクリックします
ターミナルに貼り付けて実行します(実行には管理者パスワードが必要です)。インストール中に[return]キーを押すように指示されることもあります
インストールが完了したら、brew -vと入力してバージョン名(図では「4.6.4」)が表示されていれば成功です。もしエラーが発生したときは、パスを設定するなど実行すべきアクションが表示されますので、指示に従って操作してください

(3)Node.jsとnpmのインストール

ターミナルにbrew install nodeと入力して実行し、JavaScriptの実行環境であるNode.js(バージョン18以上が必要)をインストールします。同時に、Node.jsのパッケージを管理するためのnpmもインストールされます
インストールが完了したらnode -vと入力してNode.jsのバージョンを確認します。v24などと表示されれば問題ありません。続けてnpm -vと入力し、npmのバージョンが11などと表示されるか確認します

Apple MCPとClaude Desktopのセットアップ

 事前準備が完了したら、いよいよApple MCPのセットアップです(ここでは、Claude Desktopを利用する場合を説明します)。

 Apple MCPのセットアップは通常Apple MCPサーバーを立ち上げて行なう必要がありますが、それよりもAIエージェント向けのアプリストア「Smithery(スミサリー)」を利用するほうが手軽です。

 ターミナルを起動してClaude用のコマンドを入力して実行すれば、Apple MCPのインストールと設定が自動的に行なわれます。

 そして次に、Claude Desktopを起動します。もしMacにインストールしていない場合は、公式サイトからダウンロードし、[アプリケーション]フォルダにコピーしておきましょう。

 なお、Claudeには無料プランと有料プランがありますが、Apple MCPの基本的な機能を試すだけであれば無料プランでも利用可能です(ただし、1日あたりの利用回数には制限があります)。

 また、Apple MCPをインストールした直後は、Claude Desktopを起動した際に複数のエラーメッセージが表示されることがあります。その場合は、いったんアプリを終了して再度起動してください。

 そのうえで[Claude]メニューから[設定]を開き、サイドバーの[開発者]をクリックして[ローカルMCPサーバー]の動作を確認します。青色のボタンに[running]と表示されていれば、正常に動作しています。

Claudeを利用する場合は、npx -y install-mcp apple-mcp --client claudeと入力して実行します。Install MCP server "apple-mcp" in claude?と尋ねられたら、Yと入力して確定します。そのほかのインストール作業を求められた場合は同じく許可します
Claude Desktopは公式サイトからダウンロードできます。[アプリケーション]フォルダにコピーしておきましょう
Claudeの設定画面を開き、[ローカルMCPサーバー]で[apple-mcp]の表示が[failed]となっている場合は、Apple MCPのインストール時にエラーが発生しています。アプリを再起動し、[running]と表示されるか確認しましょう
[ローカルMCPサーバー]の設定画面で[設定を編集]をクリックすると、Finderウインドウにjson形式の設定ファイルが表示されます。動作に不具合がある場合は、設定ファイルの内容が図と同じになっているかを確認してください

Claude Desktopでさまざまなタスクを実行してみよう

 Apple MCPのインストールとClaude Desktopの設定が完了したら、実際に動作を確認してみましょう。

 現在Apple MCPでは主な機能として、「メール」や「メッセージ」での送信、「リマインダー」や「カレンダー」におけるスケジュールやタスク管理、「マップ」での位置情報の検索、「Safari」でのWeb検索や写真検索などに対応しています。

 これらの機能に関連する内容を自然な言葉で入力して送信すると、Claudeがその意味を解析し、対応するアプリの操作を自動で実行してくれます。

 まずは「明日の午後2時に『Web会議』というリマインダーを作成してください」といった、シンプルな依頼から試してみるとよいでしょう。

 そしてきちんと動作することを確認したら、次に複数のアプリを連携させるような複雑なタスクにチャレンジしてみてください。

 複雑な指示では処理中にエラーが出たり、完了までに時間がかかったりすることもありますが、情報検索や予定管理といった日常的なタスクをAIが代わりにこなしてくれます。

 AIを単なる「ツール」としてではなく、「パートナー」として活用できる感覚をいち早く体験できるはずです。

テキスト入力欄に実行したいタスクを入力して送信します。初回の実行時はアクセス許可の確認が表示されるので、[常に許可する]をクリックします
Apple MCPから初めて利用するアプリはアクセス許可を求められるので[許可]をクリックします。次回以降はこの確認は必要ありません
「リマインダー」に予定を追加したというメッセージが表示されたので、「リマインダー」アプリを確認したところ正しく予定が追加されていました
「Safari」でWeb検索を行ない、それを「メモ」アプリへ保存するよう頼んでみました。処理時間はかかったものの、きちんと「メモ」に情報が集約されました。出力結果がうまくいかない場合は、チャット欄で追加の指示を出してみてください