ベンチで検証! CPUのキキどころ

3世代9種類のCPUで「XSplit Broadcaster」のゲーム配信負荷を検証

「OBS Studio」

 今回テストするのは、SplitmediaLabsのライブ配信ソフト「XSplit Broadcaster」。このソフトを使って、ゲームをライブ配信したさいのCPU負荷がどの程度のものなのか、3世代9種類のCPUでテストする。

 テストするCPUとそのほかの機材は以下のとおり。

【表1】テストするCPUのおもな仕様
プロセッサー・ナンバーCore i9-10900KCore i5-10600Core i3-10100Core i7-6700KCore i5-6600KCore i3-6100Core i7-2600KCore i5-2500KCore i3-2105
世代第10世代第6世代第2世代
CPUアーキテクチャComet LakeSkylakeSandy Bridge
製造プロセス14nm14nm32nm
コア数1064442442
スレッド数20128844844
ベースクロック3.7GHz3.3GHz3.6GHz4.0GHz3.5GHz3.7GHz3.4GHz3.3GHz3.1GHz
最大ブーストクロック5.3GHz4.8GHz4.3GHz4.2GHz3.9GHz3.8GHz3.7GHz
L3キャッシュ20MB12MB6MB8MB6MB3MB8MB6MB3MB
対応メモリDDR4-2933 (2ch)DDR4-2666 (2ch)DDR4-2133/DDR3L-1600 (2ch)DDR3-1333 (2ch)
PCI ExpressPCIe 3.0 x16PCIe 3.0 x16PCIe 2.0 x16
TDP125W65W65W91W91W51W95W95W65W
対応ソケットLGA1200LGA1151LGA1155
【表2】テスト機材一覧
CPUCore i9-10900KCore i5-10600Core i3-10100Core i7-6700KCore i5-6600KCore i3-6100Core i7-2600KCore i5-2500KCore i3-2105
コア数/スレッド数10/206/124/84/84/42/44/84/42/4
パワーリミット (PL1)125W65W65W95W95W51W95W95W65W
パワーリミット (PL2)250W134W90W118.75W118.75W63.75W118.75W118.75W81.25W
パワーリミット (Tau)56秒28秒28秒8秒8秒8秒1秒1秒1秒
マザーボードASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI) [UEFI:1001]ASUS Z170-A [UEFI:3802]ASUS P8Z68-V PRO [UEFI:3603]
メモリDDR4-2933 8GB×2 (2ch、21-21-21-47、1.20V)DDR4-2133 8GB×2 (2ch、15-15-15-36、1.20V)DDR3-1333 8GB×2 (2ch、9-9-9-24、1.50V)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 2080
システム用SSDCrucial MX500 500GB (SSD/6Gbps SATA)
アプリケーション用SSDSanDisk Ultra 3D SSD 1TB (SSD/6Gbps SATA)
電源CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 451.48 DCH (27.21.14.5148)
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 2004 / build 19041.329)
電源プラン高パフォーマンス
室温約25℃

1080p/60fpsの配信+ローカル保存でCPU負荷を計測

 XSplit Broadcasterでは、フルHD(1,920×1,080ドット)かつ60fpsでライブ配信とローカル保存を行なったさいのCPU負荷を計測する。ここで言うローカル保存とは「ローカル ドライブにレコーディングを自動で保存」を利用したもので、配信用にエンコードしたデータをローカルにも記録するものだ。テストに用いたXSplit Broadcasterのバージョンは4.0.2007.2909。

 配信画面は、フルスクリーンのゲーム映像を背景に、Webカメラの映像をワイプで表示した。背景となるゲーム映像には、バトルロイヤルTPS「フォートナイト」を、フルHDかつ高画質設定(描画品質「最高」、DirectX 12、FPS制限なし)で実行したものを表示し、ワイプの映像は1280×720ドット/60fps。

 今回は、GPU内蔵のハードウェアエンコーダー「NVENC」を利用した場合と、ソフトウェアエンコーダー「x264」を使った場合の2パターンでテストを実施した。

「NVENC」利用時のCPU使用率

 まず、GPU内蔵のハードウェアエンコーダー「NVENC」を使った場合のCPU使用率からチェックする。

 以下のグラフでは、ゲームのみを実行したさいのCPU使用率と、XSplit Broadcasterでライブ配信を行なったさいのCPU使用率のほか、ローカル保存された動画のフレームレートから算出した記録できていないフレームの割合「フレームスキップ率」をまとめている。また、ゲームの平均フレームレートが60fpsを下回った条件では、CPU使用率の数値を赤太字で表記している。

 4スレッド以下のCPUでは、使用率がほぼ100%に達しているものが多いものの、録画データからはフレームスキップの発生はほぼみられなかった。ただし、Core i3-2105に関してはゲームのフレームレートが60fpsを割り込んでいるので、ゲームの映像自体が滑らかさを欠いた映像になっている。

XSplit Broadcaster「配信中のCPU使用率 (NVENC/1080p60/CBR-9Mbps)」

「x264」利用時のCPU使用率

 ソフトウェアエンコーダーの「x264」を使って、CPUでエンコードを行なったさいのCPU使用率をまとめたものが以下のグラフだ。

 NVENCの時点でCPU使用率が100%近くに達するCPUが見られたことからも予想できた結果ではあるが、4スレッド以下のCPUはすべて8割を超えるフレームスキップ率を記録している。CPUによってフレームスキップ率に多少の違いはあるが、いずれも視聴できるものではないレベルで破綻した映像であることには変わりない。

 フレームスキップが生じなかったのは第10世代CoreプロセッサとCore i7-6700Kの4製品のみで、その中でも4コア8スレッドCPUのCore i3-10100とCore i7-6700Kは、CPU使用率が97%以上に達している。

XSplit Broadcaster「配信中のCPU使用率 (x264/1080p60/CBR-9Mbps)」

ゲーム側のフレームレートもチェック

 参考データとして、背景映像に利用したフォートナイトの平均フレームレートを紹介する。

 GPUのハードウェアエンコーダーであるNVENCを使った場合でも、CPUのコア数が少ないほどフレームレートが大きく低下する傾向がみられる。エンコード処理をハードウェアエンコーダーに任せるとしても、ライブ配信ソフトを稼働させればCPUの負担は増えるということだ。

フォートナイトの平均フレームレート (XSplit Broadcaster)

 NVENCを使えばコア数の少ないCPUでも破綻の無い配信映像を用意することは可能だが、余力の少ないCPUではゲーム側のフレームレートが大きく低下してしまうこともある。今回の結果を見ると、フルHDかつ60fpsでプレイ動画の配信を行なうのであれば、Core i3-10100やCore i7-6700Kのような、新しいアーキテクチャを採用した4コア8スレッドCPUを最低ラインと考えるべきだろう。予算が許すのであれば6コア12スレッドや、それ以上のコアを備えたCPUを選びたい。

[制作協力: インテル]