バッファロー「WZR-HP-G300NH」
~今こそ、11n対応無線LANルーター導入のとき



品名バッファロー「WZR-HP-G300NH」
購入価格11,800円
購入日2009年12月
使用期間2週間

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

●有線LANと無線LANでは差が出ないインターネット接続

 LANと言えばケーブルがまず最初に頭に思い浮かび、自宅ではGbEでLANを構築している筆者だが、この度IEEE 802.11n(以下11n)対応無線LANルーター「WZR-HP-G300NH」を導入した。

「WZR-HP-G300NH」に縦置きスタンドを付けて斜め前から見たところ。前面(左側)に状態表示ランプが並ぶ。ランプの上にAOSSボタン、下にMOVIE ENGINEスイッチがある。MOVIE ENGINEはブロードバンド放送視聴の際に起きる音とびやコマ落ちを低減させる機能上面には角度を変更できるアンテナが2本ある
本体斜め後ろから見たところ。底面に横置き用のゴム足がある本体裏面。USB端子にUSB接続ハードディスクをつなげばNASとしても使える

 11nは、現在一般向けに対応機器が販売されている無線LAN規格としては最速の規格であり、2009年9月にようやく正式に策定さればかりの規格でもある。もっともドラフト版の規格に対応した機器が流通してすでに久しく、対応機器によっては生産終了になったものもあるくらいだから、すでに多くの人にとっても馴染み深い規格でもある。

 さて、唐突だが実は11nは画期的な規格である。何が画期的かというと、インターネットの接続速度がワイヤレスながらケーブルに追い付いたことだ。すでに家庭内LANでもGigabit Ethernetが普及して久しいが、一歩インターネットの外へ出れば上限100Mbpsなのが現状だ。11nは実効速度100Mbpsを目指した規格なので、インターネット接続に関してはケーブル接続と差が出ない。

 また、近頃では下り最大200Mbpsの次世代型FTTHサービスが始まっているが、一般的なサービスと比べるとまだ高めだし、それだけの帯域が必須なサービスは見当たらず、普及が急速に進むとは考えにくい。つまり、インターネット接続で100Mbps以上の速度が当面必要になることは無い。

 つまり、今11nルーターを買って無駄になることは当面無い。

 これまで、ケーブル派だった御仁が今更と言ってはなんだが宗旨替えして、無線に乗り換えても、しばらくは新規格の為に追加出費を強いられることは無い、ということだ。

●携帯ゲーム機を使ってもセキュリティレベルが落ちない

 一昔前の無線LANルーター/アクセスポイントでは、セキュリティレベルが一番低い機器に合わせて変更される仕様のものが多かった。例えばWEPにしか対応していない携帯ゲーム機を繋ごうとすると、暗号化機能はWEPのみ使われるようになるので、大切なファイルを保存したPCをつないでいるユーザーは、少々不安な思いをする必要があった。

「マルチセキュリティー」機能は本体設定画面の「無線設定→基本(11n/g/b)」でオンオフできる。「隔離機能」も同じ画面で設定できる

 「WZR-HP-G300NH」には「マルチセキュリティー」と呼ばれる機能が搭載されていて、前述のような不安とは無縁だ。この機能は、接続する無線LAN機器から見て、あたかも3つのアクセスポイントがあるかの様に振る舞うことで実現している。それぞれ分身ごとに異なるセキュリティレベルが設定されているので、複数のセキュリティレベルで同時に複数の機器を接続できるという仕組みだ。

 また、セキュリティレベル毎に、LAN内の機器へのアクセス許可を設定できる「隔離機能」が搭載されている。セキュリティレベルの低い機器は、LAN内のPCにアクセスできないようにしておけばより安心だ。

 というわけで、ケーブル派の懸念事項であるセキュリティ面でもワイヤレスはケーブルに追い付いてきたと言えるだろう。

●ベンチマークソフトを使った速度計測結果

 ここでは「CrystalDiskMark 2.2」を使ってファイルの転送速度を計測した。接続元はWindows Vista SP2(フロンティア「FRNV504」、Celeron 723)、接続先はUbuntu 9.10 Desktop(Athlon X2 BE-2400+ASUS M2A-VM)で、Ubuntu側の共有フォルダを、Windows Vistaでネットワークドライブとして登録して使った。

 また、11n接続のテストではWindows Vista機内蔵の無線LAN子機機能を、11g接続のテストではUSB接続の外付け子機(プラネックス「GW-US54GXS」)を使った。Ubuntu側はいずれもGigabit EthernetでHubを介して「WZR-HP-G300NH」につないだ状態で計測を行なった。セキュリティ機能はどちらもWPA2-PSK(AES)を使用した。

ローカルハードディスクのベンチマーク結果(参考)1Gbps有線LAN接続時のベンチマーク結果(参考)
11n接続時のベンチマーク結果11g接続時のベンチマーク結果

 結果は、11nの速度は読み込みで約8MB/sec(約66Mbps)、書き込みで約7MB/sec(約57Mbps)で、理論値100Mbpsの有線LANと比較すると、読み書き共に6割前後の速度だった。また、11gとの比較では読み書き共に3倍前後の速度だった。なお、参考までに付したローカルHDDやGigabit Ethernet接続の計測結果と比較すると、11nの速度はおよそ7分の1~15分の1だった。

 実効速度が下り30~50MbpsとされているFTTH回線を基準に比較すると、FTTH回線の能力を活かし切るには11gではやや力不足で、11nなら多少余裕を持って対応できるという結果になった。

●バッファロー「WLI-UC-G300HP」を使った11n倍速モード接続

 「WZR-HP-G300NH」には通常の倍の帯域を使って通信速度を安定化・高速化する「倍速モード」が搭載されている。「倍速モード」を使うには、「倍速モード」に対応した無線LAN子機が必要だ。そこで、ここでは、倍速モードに対応した無線LAN子機「WLI-UC-G300HP」(バッファロー)を使って、11nの倍速モードの速度を計測してみた。

バッファロー「WLI-UC-G300HP」。折り畳み式のアンテナが付いたUSB接続の無線LAN子機だアンテナの可動範囲は180度
「WLI-UC-G300HP」同梱ソフト「クライアントマネージャV」のステータス画面。通常モードのリンク速度は130Mbpsだった同じく「クライアントマネージャV」のステータス画面。倍速モードのリンク速度は270~300Mbpsだった
11n通常モード接続時のベンチマーク結果11n倍速モード接続時のベンチマーク結果。書き込みのみ1.4倍の速度が出ている

 結果は、書き込みは通常モードの1.4倍速になったが、読み込みに関しては通常モードとほぼ同じ速度だった。倍速モードは使えば必ず速くなるものではないようだ。

 ちなみに、リンク速度は、内蔵の無線LAN子機で150Mbps、「WLI-UC-G300HP」で通常130Mbps、倍速モード時270~300Mbps(変動)だった。

●悪条件下での「WLI-UC-G300HP」を使った11n倍速モード接続

 先のテストでは、無線LAN親機と子機が同じ部屋にある、条件の良い状態で行なった(電波状態は100%表示)。そこで、今度は倍速モードの安定性を見るために、無線LAN子機を部屋からベランダの外に出し、条件を悪くして11nの速度計測をしてみた(電波状態は30%前後表示)。

悪条件下での11n通常モード接続時のベンチマーク結果悪条件下での11n倍速モード接続時のベンチマーク結果。通常モードの1.5倍の速度が出ている

 結果は、読み込み書き込み共に、倍速モードは通常モードの1.5倍速前後だった。2倍速とまではいかなかったが、悪条件下では倍速モードは有効で、その強さがはっきり分かる結果になった。

 ちなみに安定性の強化については他にも親機に指向性アンテナをつなげたり、しっかりしたアンテナの付いた無線LAN子機を使うなどの方法がある。

接続用ハード接続規格readwrite
MB/secMbpsMB/secMbps
FRNV504内蔵Cドライブ56.46462.5203257.14468.09088
FRNV504内蔵1Gbps54.96450.23232109.1893.7472
理論値100Mbps12.2070312510012.20703125100
FRNV504内蔵11n8.0666.027527.06657.884672
WLI-UC-G300HP11n4.67638.3057927.74463.438848
WLI-UC-G300HP11n×24.88340.00153610.8889.12896
GW-US54GXS11g2.48920.3898882.55920.963328
WLI-UC-G300HP11n(電波状態30%)1.8815.400962.80422.970368
WLI-UC-G300HP11n×2(電波状態30%)2.74922.5198084.32335.414016


●PS3を使ったビデオ視聴テスト

 個人でLANを使う上で最も帯域を使うのが動画ファイルのストリーミング視聴だろう。そこで実際に視聴テストして11nの実用性を確かめてみた。テストにはPS3(初代60GBモデル)とWindows Vista機を使用した。

 PS3にはDLNAクライアント機能が搭載されており、DLNAサーバーが稼働している、HDDレコーダや、PCの録画ファイルを視聴できる。テストには、DLNAサーバーは「PS3 Media Server」を使った。下の表は1,920×1,080サイズ(フルHD)のWMV動画サンプルと1,440×1,080サイズのMPEG-2動画サンプルを視聴した結果だ。×印は速度不足で再生が途切れ途切れになったことを示している。

「PS3 Media Server」は、PS3上では緑の再生ボタンとして見えるビデオ視聴テスト結果表

 簡単にまとめると、11nはハイビジョン画質のファイルの再生用途でも実用的に使えた。ただし、PS3の無線LAN機能(11g/b)では速度が不足するので、PS3側はGigabit Ethernetで接続する必要があった。

 ちなみに、動画視聴に必要な速度はフルHDでも25Mbps程度(MPEG-2形式の場合)なので、数値だけ見ると11nとGigabit Ethernet接続で差が出ないように錯覚するかもしれないが、サムネイル生成(再生中にコントローラーの□ボタン)にかかる時間や、早送り巻き戻し操作のレスポンスなど、応答速度=快適さの面で差はある(その差が表の○と◎の違い)。

 とは言え、CMを飛ばすためにたまに早送りする程度の使い方なら、大差無いと言っていい。

●まとめ

 11nが正式版になったのは2009年9月だが、ドラフト版が世に出て久しく、実力も実証済の規格だ。当面新しい規格が誕生することもないようなので、乗り換えを考えている人にはオススメだ。特に、FTTHの様な高速回線や、ハイビジョン画質の動画視聴を考えている人で、LANを無線で構築したいと考えているのなら、11n環境への移行を一度は検討するべきだろう。速度面でのメリットは大きい。

 また、速度をそれほど重視しない人でも、本稿で紹介した「WZR-HP-G300NH」のように、セキュリティ機能が向上しているなどのメリットがあるので、11nに対応しているような新機種への移行検討をオススメしたい。

 それと、本稿では詳しく紹介しなかったが、「WZR-HP-G300NH」には、USB接続のHDDをつなぐだけでNASの機能が使える機能が搭載されている。安くなったとは言え、NASも単体で購入すればそれなりの値段のものだ。低コスト化と省スペース化は狭い島国日本の永遠の課題。おまけと侮れない機能だ。11nへの移行検討の際はチェックポイントの1つとして覚えておいた方がよいだろう。

(2010年 1月 7日)

[Text by 井上 繁樹]