井上繁樹の最新通信機器事情

プラネックス「MZK-RP150N」
~マッチ箱サイズで1台3役の無線LANルーター



MZK-RP150N

発売中
価格:3,500円



 プラネックス「MZK-RP150N」は4月末に発売された非常にコンパクトな無線LANルーターだ。ただし、いわゆる「モバイルルーター」では無い。家庭に設置して使う無線LANルーターに無線LANコンバータ機能を追加してマッチ箱サイズに凝縮したもの、という説明がわかりやすいだろうか。モバイル回線に接続する機能も内蔵バッテリも無いがその分小さく軽いのが特長だ。

●小さく、軽く、低消費電力

 プラネックス「MZK-RP150N」はIEEE 802.11b/g/nに対応した無線LANルーターだ。内蔵アンテナは1本で対応周波数帯は2.4GHz、SSIDは最大5つまで登録して同時使用できる。無線LAN部分の理論上の速度上限は150Mbps(IEEE 802.11n使用時)。有線LAN部分は10/100Mbps対応でWAN(インターネット)ポートとLANポートを各1つずつ搭載している。WPSに対応しており対応機器の接続設定がボタン操作で簡単にできる。

パッケージはブリスターパック。MZK-RP150Nの小ささが一目でわかる同梱物は一覧。MZK-RP150N本体、LANケーブル、USB電源ケーブル、設定ガイド3枚他。詳細なマニュアルはWebでPDF版がダウンロードできる本体正面。Power、Wiress、Internet、LANの4つのランプが並ぶ。中央にはメーカーロゴ
本体背面。初期設定のSSID、ユーザー名、パスワードなど、使用する際必要になる情報がプリントされたシールが貼られている本体(正面から見て)下側面。有線LANポートが2つ並ぶ。左の黄色のがLANポート、右の青いのがInternet(WAN)ポート本体右側面。WPSとリセット兼用のボタンがある。3秒以上7秒以内押したときはWPSボタンとして、10秒以上押したときはリセットボタンとして機能する
本体上側面。給電用のmicro USB端子がある本体左側面。CEやFCC、VCCIなど適合規格のロゴがプリントされたシールが貼られている

 有線LANルーターを無線化するアクセスポイントとしても使えるほか、無線LAN機能を持たないネットワーク家電やネットワーク対応のゲーム機を無線化する無線LANコンバータとしても使える。また、無線LANの中継機としても使用可能で、WDSに対応した機器と組み合わせることで、電波の到達距離を伸ばしたり電波を遮る場所を迂回できる。一方、最近流行のUSB HDDをNAS化する機能やDLNAサーバー機能は搭載していない。

 本体サイズは42×55.2×15mm(幅×奥行き×高さ)で重量は27g。同梱しているケーブルは500mmのLANケーブルと300mmの給電用USBケーブルが1本ずつ。ACアダプタ等は同梱されていないので、使用する際にはPCのUSBポートかUSB給電できる機器やACアダプタを別途確保する必要がある。

省電力機能「グリーンAP」。無線LAN機能を指定した曜日、時間の間だけオンにする機能

 消費電力は待機時0.9Wで最大2.3W。実際にワットチェッカーで測ってみたところ待機時は計測不能(ワットチェッカーは1W以下は計測できない)だった。モバイルルーターが普及し、スマートフォンが無線LANルーター機能を搭載し始めている昨今では珍しい数字ではないのかもしれないが、初めて見る人は驚くのではないだろうか。なお、もともと省電力なMZK-RP150Nだが、就寝時など無線LANを使わない時間帯は無線LANをオフにするようスケジュール設定することでさらに消費電力を減らすことが可能だ。


●接続は手間要らず、ただしセキュリティはひと手間必要

 MZK-RP150NはLANルーター、アクセスポイント、無線LANコンバータの3つのモードで動作する。動作モードの切り替えは管理画面で行なえるが、接続した回線を調べて最適なモードに切り替える機能も搭載している。

 実際に箱から取り出して何の設定もしないまま無線LAN(11n)でルーターにつないで使ってみたが、PC上でアクセスポイントをリストから選択して、初期設定のパスワードを入力するだけでインターネットにもLANにも接続できるようになった。これくらい簡単だと出先で接続設定がうまくいかずに無為に時間を過ごす羽目になることもないだろう。

ログイン直後に開く管理画面。メニュー項目が並ぶ。ボタンとリンクで名前が同じものがあるが、どちらをクリックしても同じページが開く。表示言語は日英中の3種類で、右上のドロップダウンリストで変更できる動作モードは管理画面の「ステータス」→「モード」で変更できる。デフォルト設定はAutoモード無線LANの基本設定画面(「無線LAN」→「基本設定」)
接続中の無線LAN機器を表示する画面。1つ前の基本設定画面で「アクティブ中のクライアントを表示する」ボタンをクリックすると開く。仮想APに接続している機器は表示されない。インターネット(WAN)接続設定画面(「ネットワーク」→「WANセットアップ」。ルーターモード時)設定情報はファイルとして保存できる。保存時のファイル名は「config.bin」

 ただ、初期設定のパスワードや、暗号化キーはあまりに簡単なものなので、セットアップ終了後本格的に使い始める前に変更しておくべきだろう。加えて、セキュリティ設定についてはもう1つ、初期設定では有効になっている仮想アクセスポイントを無効にするか、セキュリティレベルを変更しておくべきだろう。初期設定のままだとパスワード無しで接続できてしまう上、そのままLAN内のPCにアクセス可能だからだ。

 それから、全般的に簡単操作で手間要らずな印象のMZK-RP150Nだが、モード変更については少々面倒なところがある。基本的には管理画面で操作するだけなのだが、モードが変わるたびに管理画面のIPアドレスも変わってしまう。例えば、ルーターのときは「192.168.111.1」、アクセスポイントのときは「192.168.1.250」、コンバータのときは「192.168.1.249」という具合だ。ガイドやマニュアルでは「http://rp.setup/」で管理画面を開くことを勧めているがうまく開けないことも多い。というわけで、頼りになるのはやはりIPアドレスなので、モード変更に伴うIPアドレスの変更には慣れるしかないようだ。

●MZK-RP150Nのベンチマーク結果

 ベンチマーク測定にはWindows PCを使用した。測定先PCの共有フォルダをネットワークドライブとして登録したものを「CrystalDiskMark 3.0.1」で測定した。測定元のPCはWindows 7 SP1、測定先のドライブがあるPCはWindows VIsta SP2。テスト環境は近隣に11b/g/nユーザーの多いワンルームマンションの一室。セキュリティ機能はいずれもWPA2-PSK(AES)を使用した。

 接続形態は次の通り。アクセスポイントモードではルーターの有線LANポートにMZK-RP150Nを接続し、同じく有線LANポートに測定先PCをスイッチングハブ(1Gbps対応)経由で接続した。ルーターモードではMZK-RP150NをPPPoEクライアント機能でインターネットに接続し、測定先PCをMZK-RP150NのLANポートにスイッチングハブ経由で接続した。コンバータモードはMZK-RP150Nを測定元PCに接続した場合と測定先PCに接続した場合の2通り。コンバータモードはどちらの場合もLANにつなぐためにアクセスポイントを1台経由している。

 ベンチマーク結果を見る限り11n使用時は、アクセスポイントモードは100Mbpsの有線LAN並みの速度が出ている。FTTHの速度と比較しても余裕のある数字で、インターネットの実効速度は有線と差が無い。DHCP接続時のルーターモードもアクセスポイントモードと同等の速度が出ている。PPPoE接続時のルーターモードの読み込み速度はその50%減、コンバータモードの読み込み速度は40%減となっている。

APモードのベンチマーク結果ルーターモード(DHCP接続時)のベンチマーク結果
ルーターモード(PPPoE接続時)のベンチマーク結果コンバータモード(測定元PCに接続)のベンチマーク結果

【表】アクセス速度測定結果

AP(アクセスポイント)モード

速度(Mbps)
接続規格読み込み書き込み
11n72.6392
11g22.6420.95
1Gbps(参考)328.37393.21
測定先PCのC:(参考)738.03713.27
11n(proFTPD、参考)84.8595.47
ルーターモード(DHCP接続時)

速度(Mbps)
接続規格読み込み書き込み
11n76.7792.86
11g23.0322.09
ルーターモード(PPPoE接続時)

速度(Mbps)
接続規格読み込み書き込み
11n36.4591.67
11g22.320.95
コンバータモード

速度(Mbps)
接続規格読み込み書き込み
11n(測定元PCに接続)43.187.83
11n(測定先PCに接続)71.8944.98

●まとめと感想

 MZK-RP150Nはコンパクトで非常に軽い。本体ケースは華奢なので丁寧に扱う必要があるが持ち歩き用途には最適だと言える。低消費電力なので、電源容量が限られている環境でも使いやすい。出先で有線LANポートしかないインターネット回線を無線化したり、出先で即席のLANを作って共同作業をしたり、といった用途には最適だ。

 ルーターとしての機能はひと通り揃えているので、家庭で使われているブロードバンド(無線LAN)ルーターとの置き換えも可能だ。ただし、ベンチマーク結果からもわかる通り、ルーターとして使うときは速度が落ちてしまうので、アクセスポイントモードで使うのがおすすめだ。

 コンバータモードについてだが、ルーターモード同様ベンチマークで速度低下は見られたがHD動画に必要な25Mbps以上は出ていた。設置場所とルーターの性能にもよるが充分実用的だと言えるのではないだろうか。

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(2011年 5月 17日)

[Text by 井上 繁樹]