井上繁樹の最新通信機器事情

バッファロー「WZR-HP-G450H」
~450Mbps接続に対応、USB機器のLAN内共有が可能



WZR-HP-G450H

発売中
価格:15,700円



 2011年に入って450Mbpsに対応した無線LANルーター製品が市販されはじめた。ところが、450Mbpsに対応した無線LAN子機がなかなか出てこない。一体いつになるのかと気をもみながら待っていたところ、450Mbpsの無線LANに対応したノートPC「HP EliteBook 8540w Mobile Workstation」と併せて「WZR-HP-G450H」を借りる機会があったので、これを紹介してみたい。

●概要

 バッファロー「WZR-HP-G450H」は2.4GHz帯のIEEE 802.11b/g/nに対応した多機能な無線LANルーターだ。送信側受信側共に3本のアンテナを使って3本のデータ通信を同時に行なうことで最大450Mbps(規格値)の接続速度に対応する。AOSSおよびWPSに対応しているので、ボタン操作だけで接続設定を済ますことが可能だ。有線部分はINTERNET側含めすべて1Gbps接続に対応。LAN側は4ポート搭載している。

同梱物一覧。WZR-HP-G450H本体、アンテナ×3、LANケーブル、ACアダプタ、立て置き/壁掛け兼用のスタンド/フック、スタンド固定用のネジ×2、セットアップ用CD、セットアップシートなどの冊子類本体正面。上からAOSSボタン、POWERランプ、SECURITYランプ、WIRELESSランプ、ROUTERランプ、DIAGランプ(点灯していないので見えていない)、MOVIEエンジンランプ、MOVIEエンジンスイッチ背面。上から、ROUTERスイッチ、USBイジェクトボタン、USBランプ(点灯していない)、USBポート、1Gbps対応のLANポート×4とINTERNETポート×1、DCコネクタ
天面と正面から見て右側の側面。天面にはアンテナコネクタ×3正面から見て左側の側面。初期設定が印刷されたシールが2枚貼られている。左下はID、パスワード、IPアドレス、右下はSSID、PINコード、MACアドレス。壁掛け時はスタンドを中央の2つの細長い穴に引っ掛ける底面。スタンドが装着できる。左側にある小さな穴がRESETボタン

 本体背面のUSB 2.0端子にストレージをつなぐとNAS化できるほか、オンラインストレージ化、メディア(DLNA)サーバー化、BitTorrentクライアント化ができる。また、データ通信カードを使ったインターネット接続が可能で、他にもプリンタやスキャナ、スマートフォンなど、各種USB対応機器をLAN内で共有利用できる「USBデバイスサーバー」機能を搭載している。USB Hubは1つだけならも利用可能で、データ通信カードとストレージを同時接続する、といった使い方ができる。

 そのほかでは、PPTPサーバー機能を搭載しており、外出先からLANに接続できるVPN環境を簡単に構築できるのがポイントだろう。

●11n倍速と1Gbps有線のベンチマーク

 ベンチマーク測定には「CrystalDiskMark 3.0.1」を使用した。測定には共有フォルダをネットワークドライブとして登録したものを使用した。測定先のPCはWindows Vista SP2(64bit版)、測定元のPCはWindows 7 Professional SP1(32bit版)。どちらもWZR-HP-G450Hにつないだ1Gbps対応の有線LANハブに接続して使用した。なお、参考データの測定にはExt4形式でフォーマットしたHDDにインストールしたUbuntu 11.04マシンを使用した。

ベンチマークの測定には「HP EliteBook 8540w Mobile Workstation」を使用した。450Mbpsの11nに対応した無線LANユニット「Intel Centrino Ultimate-N 6300」を搭載している倍速モードを使わないときは217Mbpsが上限
倍速モードは450Mbpsが上限「HP EliteBook 8540w」の倍速モードの設定はドライバーの「詳細設定」タブにある(「バンド2.4用802.11nチャネル幅」の値を「自動」に変更)。

 測定に使用したPCについてだが、測定元は450Mbps対応の無線LANアダプタを内蔵した日本ヒューレット・パッカードのSandy Bridge搭載ノートPC「HP EliteBook 8540w Mobile Workstation」を使用した。測定先のVistaマシンは本連載で何度か登場しているがハードウェアをSandy Bridge搭載のものに更新した新しいものを使用した。テスト環境は近隣に11b/g/nユーザーの多いワンルームマンションの一室。無線LANのセキュリティ機能はいずれもWPA2-PSK(AES)を使用した。

 450Mbps接続時のベンチマーク結果は、読み込みは約140Mbps、書き込みは約90Mbpsが最高速度だった。ハードウェアも変わっているし誤差もあるので単純には比較できないが、300Mbpsモデルと比較すると読み込み速度は向上したものの書き込み速度は低下していた。300Mbpsモデルが登場したときもそうだったが、有線LANのように規格上の数字並に速度が向上することはないようだ。

 1Gbps有線LAN接続時のベンチマーク結果は、読み込みは約332Mbps、書き込みは約94Mbpsが最高速度だった。こちらもハードウェア、誤差の問題もあるので単純には比較できないが読み込み速度は向上したものの書き込み速度は低下していた。

 無線、有線共に書き込み速度が低下している件については、参考で掲載している他OSでは向上しているので、WZR-HP-G450Hの問題というより、ハードウェアやOS等その他の要素が原因だと考える方が自然だ。

【表1】PC間のアクセス速度測定結果
アクセスポイント(ブリッジ)モード


速度(Mbps)
接続規格ファイルシステム上 限読み込み書き込み
11nNTFS217106.7891.45
11n x2NTFS45088.0680.31
11n x2Ext4(参考)45069.41151.21
1000BASE-TNTFS1,000324.5893.73
1000BASE-TExt4(参考)1,000453.17672.79
ルーターモード(PPPoE接続時)


速度(Mbps)
接続規格ファイルシステム上 限読み込み書き込み
11nNTFS21797.6473.06
11n x2NTFS450130.9989.75
11n x2Ext4(参考)45080.5394.68
1000BASE-TNTFS1000331.5593.57
1000BASE-TExt4(参考)1000451.95695.12

11n倍速接続時のWindows共有フォルダのベンチマーク結果(ルーターモード)1Gbps有線LAN接続時のWindows共有フォルダのベンチマーク結果(ルーターモード)

●NAS系機能とベンチマーク

 WZR-HP-G450Hは本体背面のUSB 2.0端子に接続したUSBストレージをNASとして使用可能だ。対応フォーマットはFAT32とXFSの2種類。ストレージのフォーマットはWZR-HP-G450Hでも可能だが、32GB以上のストレージについては、WZR-HP-G450HもWindowsもFAT32形式でフォーマットできないので、別途専用のソフトを入手する必要がある。

NAS機能の設定画面。FAT32形式でフォーマットした1TBのUSB HDDがつながっている状態NASをオンラインストレージ化する「WebAccess」の設定画面WebAccessの使用例。フォルダを開いて画像ファイルをプレビューしている
DLNAサーバーはPS3上ではアイコン付きで表示される。ライブラリデータは自動で更新されるので手間要らず。手動更新も可能BitTorrent機能ではダウンロードの進捗状況が表示される

 さらに、WZR-HP-G450Hは、接続したUSBストレージをNASとしてだけでなく、他にも3種類の方法で活用できる。1つ目がメディアサーバー機能(いわゆるDLNAサーバー機能)で、NASのフォルダに保存した画像/音楽/動画ファイルをネットワーク対応のTVやゲーム機で再生できる。WindowsであればWindows Media Player 11以降を使えば利用可能だ。

 2つ目の活用方法が「WebAccess」機能で、インターネット経由でどこからでもNASにアクセスできる。Webブラウザを使ってファイルのアップロードやダウンロード、プレビューが可能だ。「WebAccess」機能はこの種の機能としてはセットアップが簡単な部類だと思うが、場合によってはWZR-HP-G450Hをルーターモードにする必要があるなど、1ハードルが無いわけではない。

 3つ目の活用方法が「BitTorrent」機能だ。ファイル名の末尾に「.torrent」がつくファイルを入手して「BitTorrentダウンロードマネージャー」に登録すると目当てのファイルをNASのフォルダにダウンロードしてくれる。P2P方式を採用しているので「アクセスが集中している」「容量が大きい」などの理由でダウンロードしにくいファイルのダウンロードに向いている。PCを使わずダウンロードできるのでその間PCの電源をオフにできるメリットもある。

 NAS機能のベンチマーク結果は以下の通り。ベンチマークの測定には1TBのUSB 2.0対応HDDを使用した。大雑把に見ると、無線LAN接続時は読み込み40Mbps後半、書き込み30Mbps前半というところだろうか。有線LAN接続時は読み書き共に110Mbps前後だった。

NAS(FAT32)の11n倍速接続時のベンチマーク結果(ルーターモード)NAS(FAT32)の1Gbps有線LAN接続時のベンチマーク結果(ルーターモード)

【表2】NAS機能のアクセス速度測定結果

アクセスポイント(ブリッジ)モード


速度(Mbps)
接続規格ファイルシステム上 限読み込み書き込み
11nFAT3221751.9440.27
11n x2FAT3245050.9331.57
1000BASE-TFAT321000110.91109.62
11nXFS21747.8435.53
11n x2XFS45052.6836.14
1000BASE-TXFS1000111.88110.18
ルーターモード(PPPoE接続時)


速度(Mbps)
接続規格ファイルシステム上 限読み込み書き込み
11nFAT3221749.4537.15
11n x2FAT3245047.2730.79
1000BASE-TFAT321,000110.81109.64
11nXFS21738.0636.8
11n x2XFS45052.9937.72
1000BASE-TXFS1,000110.73109.3

●その他機能について

 WZR-HP-G450HのUSB 2.0端子はストレージ以外にも、データ通信カードをつないでインターネットに接続することが可能だ。データ通信カードについては専用の項目が管理画面にある(「Internet/LAN」→ 「データ通信カード」)。また、プリンタなどのUSB対応機器をつないでLAN内で共有利用できる「USBデバイスサーバー」機能を搭載していて、WindowsもしくはMacにインストールした専用のソフトを使ってLAN経由でUSB機器を共有利用できる。

 隠れた目玉機能とも言えるのがPPTP(VPN)サーバー機能で、インターネット経由で離れた場所にあるPCをLANに参加させることができる。さらに、VPN接続した状態であればリモートデスクトップ機能もLAN内で使う場合と同じ感覚で利用できる。

 それから、来客時に便利な機能として無線LANのゲストポート機能がある。インターネット接続のみできるアクセスポイントを設定するもので、以前からあるマルチSSID機能から来客時向きの機能をピックアップして再構築したもののようだ。

 そして昨今の電力事情を考えると忘れてはいけないのが「エコモード」。週間スケジュールで電源設定を変更できるもので、使わない機能を時間を指定してオフにできる。デフォルト設定では無効になっているが、今後は積極的に使っていきたい機能だ。

「データ通信カード」の設定画面ゲストポート機能の設定画面USB「デバイスサーバー」の設定画面
PPTPサーバー機能を使って自宅PCに接続している状態エコモードの設定画面

●まとめと感想

 WZR-HP-G450Hは無線、有線共に高速な2.4GHz帯対応の無線LANルーターだ。その上多機能で、他社製品を含めて目ぼしい機能はほぼ入っているほぼ全部入りのモデルだ。5GHz帯の無線LANに特にこだわりが無いのであれば、迷ったときの選択肢として覚えておいて損は無い。

 速度についてだが、無線LANは450Mbpsという規格値ほど劇的な数字は出なかったが、速くなっていることは確かだ。今回のベンチマーク結果では300Mbpsモデル比べて書き込み速度が遅くなるケースもあったが、それでも90Mbps以上は出ている。インターネットを使う分には無線と有線の差を感じることは無いだろう。

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(2011年 6月 28日)

[Text by 井上 繁樹]