Hothotレビュー

VAIO ZとOn-Lap 1303Hで作るマルチディスプレイ環境

~オフィス並みの作業環境を、中長期の滞在先で構築するコツとは

VAIO Z(VJZ13A1、左)とOn-Lap 1303H(右)でマルチディスプレイ環境を構築した状態

 モバイルワークやノマドワークといった言葉が普及してしばらくになるが、ネット閲覧やメールの送受信だけならまだしも、オフィスで行なっている作業すべてを出先で行なうのはかなり難易度が高いことも、徐々に認知されてきたように思う。時間をかければ決して不可能ではないものの、作業効率があまりにもよくないため、結局一部の作業は仕事場に戻って片付けるという「なんちゃってノマド」になりがちだ。

 中でも作業効率で差が付きやすいのは、仕事場でマルチディスプレイを使用しているケースだ。普段からマルチディスプレイ環境にどっぷり浸かっていると、外出先で使うノートPCのスペックに不足がなくとも、ディスプレイが1画面しかないことで、恐ろしく作業がしにくく感じてしまう。贅沢な悩みに思われるかもしれないが、「一度慣れると元に戻れない」のは、マルチディスプレイが孕んでいる最大のデメリットと言っても過言ではないように思う。

 さて筆者は現在、数カ月に1度のペースで国内各所に短期滞在しつつ、その間も通常通り仕事をこなす生活をしている。今回はそんな筆者なりに辿り着いた、出先でマルチディスプレイ環境を構築する際のポイントや、具体的な機材を紹介していきたい。筆者はフリーランスゆえ企業のセキュリティポリシーなどの制約はなく、また機材の調達時に起こりうる稟議や予算云々の制限がないため、会社などで長期出張に赴く方々に比べると条件は緩いはずだが、参考にしていただけるところはあるはずだ。

 直近の例として、つい先月、国内某所に2週間ほど滞在した際の作業環境を示したのが以下の図である。メインマシンは2月16日に発表されたばかりの「VAIO Z」、それに組み合わせたのが13.3型のサブディスプレイ「On-Lap 1303H」で、これらを用いて構築したマルチディスプレイ環境が冒頭の写真である。これがWAN経由で自宅のNASに繋がり、データのやりとりを行なうわけだ。以下、順を追って紹介していきたい。

今回の作業環境。VAIO Zのみメーカーからの借用機。そのほかは全て自前の機器および環境である。なお本文では言及していないが、出先にはiPhoneとタブレットも持ち込んでおり、NASからダウンロードしたデータを参照するなどの用途で使用している

「On-Lap 1303H」=画面を手軽に拡張するフルHDのサブディスプレイ

 サブディスプレイを追加することで作業領域を広げるマルチディスプレイの利便性は、敢えて説明するまでもないだろう。画面が広くなればそれだけウィンドウを切り替える手間が減り、本来の作業に集中できる。特にテキスト入力や資料の作成では「見ながら入力」、「参照しながら探す」といった“ながら作業”が可能になるので、作業効率は格段にアップする。

 そんなマルチディスプレイの最大のデメリットは、冒頭でも述べたように、一旦その環境が当たり前になってしまうと、元のシングルディスプレイの環境になかなか馴染めないことだ。オフィスではマルチディスプレイを使っているが、外出先ではノートPC1台だけという場合、感じるストレスは並大抵ではない。

 こうした事情が背景にあるのかどうかは分からないが、ノートPCと組み合わせるUSB接続のサブディスプレイは、新製品が定期的にリリースされる人気カテゴリだ。著名なのはセンチュリーの「plus one」シリーズで、かつては4型クラスだったのが、現在は8~10型クラスを主力としている。これとは別にiPadやAndroidタブレットをサブディスプレイ化するアプリも人気があり、昨年暮れにはほぼ遅延なしで使えるMac用アプリ「Duet Display」が話題になったのは記憶に新しい。

 そんな中、昨年秋にリリースされ、その高スペック振りが話題になったのが、GeChic(ゲシック)の「On-Lap 1303H」だ。ノートPCと同等サイズの13.3型、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、かつMicro HDMI、Mini DisplayPort、ミニD-Sub15ピンと豊富な接続端子を備えつつ、3万円台の低価格を実現した製品だ。

「On-Lap 1303H」。重量は本体のみ599gと、13.3型というサイズを考えるとかなり軽い
背面スタンドは輸送時のケースを兼ねており、ディスプレイと向かい合わせにすれば画面を覆った状態で持ち歩ける
接続端子はmicroHDMI、Mini Display Port、ミニD-Sub15ピンと豊富。電源はUSBで給電する
今回のVAIO ZのようにHDMI端子を持つPCとは添付のケーブル1本で接続が可能。Mini DisplayPortおよびミニD-Sub15ピンでの接続には変換アダプタが必要
右側面には電源スイッチのほか、輝度調節およびメニュー操作用のボタンがある。ふだん使うのは基本的に電源ボタンのみ
背面スタンドはマグネットで支柱を固定する構造で、角度は3段階で調節できる。持ち歩く際はフラットに畳む

 実は筆者は本製品の1つ前の世代のモデルを所有していたのだが、サブディスプレイで最も重要なポイントである左右の視野角に難があり、すぐに手放してしまった経緯がある。その点、今回の製品はIPS液晶を採用しており、視野角は左右178度と広い。ベゼルの広いデザインはお世辞にもスタイリッシュとは言えないが、ノートPCとの組み合わせで使える高解像度のサブディスプレイを探していた筆者としては、迷わず飛び付いたというわけである。

 実際に使ってみると、デザインや重量面は改良の余地があるにせよ、反転させるとカバーになる一体型スタンドは持ち運びに適しており、出先で使う目的にはベストマッチである。タブレットをサブディスプレイ化するアプリは応答速度に難があることがほとんどだが、本製品は動画を再生してもコマ落ちはほぼ皆無だ。添付のUSBケーブルは被覆が硬く取り回しにくいため、巻取ケーブルなど薄く柔らかいタイプに変更すれば、モビリティをさらに上げられる。

「VAIO Z」=オフィスの作業環境をそのまま持ち出せるノートPC

 オフィスの作業環境と同等の使い勝手を出先で実現できるノートPCとして、今回はVAIO Z(VJZ13A1)を選択した。実はこの記事は、当初全く別のノートPCと組み合わせることを想定していたのだが、発表されたVAIO Zのスペックがこちらの要求仕様とあまりにも合致していたので、候補を差し替える形でメーカーから試作機を借用したのである。

 さて、デスクトップPCで構築した普段の作業環境を出先に持ち出す場合、まずネックになるのは画面サイズだ。モバイルノートの多くを占める12型以下の画面サイズでは、画像処理などあらゆる作業をこなすには荷が重いし、あまり小さな画面サイズで解像度が高いと、眼精疲労の原因となる。デスクトップPCの画面サイズに及ばないのは仕方ないにせよ、せめて13.3型クラスの画面サイズを備え、かつ重量は1kgを切るのは難しくても、1.5kgまでに収まるのが理想と言える。

 昨今は軽いだけのノートPCなら選択肢は豊富だが、ここにもう1つ、解像度がフルHD以上という条件も加わる。1,366×768ドットではマルチディスプレイ云々以前に縦方向が窮屈であり、1,440×900ドットでもかなり我慢して使う形にならざるを得ない。今回サブディスプレイとして組み合わせる「On-Lap 1303H」は1,920×1,080ドット/13.3型なので、この解像度とサイズに揃えられれば、理想的なマルチディスプレイ環境が構築できる。

 この条件に合致する機種として浮上してきたのが、ほかならぬ新生「VAIO Z」である。画面サイズは13.3型、解像度はフルHDを超える2,560×1,440ドットということで、解像度は逆に1段階落とさなくてはいけないのだが、前述のOn-Lap 1303Hと並べた際、これだけバランスの取れたマルチディスプレイ環境を構築できる製品も少ない。

製品外観。今回借用したのは上位モデル「VJZ13A1」。本体色はシルバー
天板およびキー盤面の手前にVAIOのロゴが刻印されている。このほか「MADE IN AZUMINO JAPAN」の刻印もある
左側面にHDMIコネクタを備えており、今回組み合わせるOn-Lap 1303Hとはダイレクトに接続可能。隣にはイヤホンジャックが見える
HDMIコネクタの後ろには排気口を挟んで電源ジャックがある
右側面にUSB 3.0ポート×2を備える。ちなみにUSBポートはこの2つのみ
背面には音量調節キーを備えるが、ディスプレイを開くとふさがってしまう。後述のタブレットモードでのみ利用できるボタンということになる
キーボードはアイソレーションタイプ
タッチパッドのサイズはかなり大きめ
背面の素材はアルミニウム。フラットなことでスタイリッシュなイメージが強調されている

 このVAIO Zと「On-Lap 1303H」を組み合わせてマルチディスプレイ環境を構築したのが、本稿冒頭の写真である。スタイリッシュなVAIO Zに比べて、ベゼルが野暮ったいOn-Lap 1303Hはデザインこそ不揃いだが、同じ画面サイズ、同じ解像度ということで、マウスのポインタがディスプレイを跨いでも平行に動くなど、画面サイズと解像度のマッチングのレベルはかなり高い。HDMIケーブルも添付品がそのまま使えるので、アダプタを用意する必要もない。給電もUSBケーブル1本で済む。

 VAIO Zはモバイルノートというくくりで見るとやや大柄なサイズだが、重量は1.34kg、またACアダプタも小型で可搬性が高く、On-Lap 1303Hを足しても合計で2kgをわずかに超える程度で、バッグに入れての持ち運びは容易だ。長期滞在の途中で宿を変える場合も普通にバッグに入れて運べるのはありがたい。

ACアダプタはコンパクトな部類に入る
USBポートを備えており機器の充電などに活躍する
VAIO ZとOn-Lap 1303Hを、付属品および接続ケーブル一式とまとめた状態。重量も2kgをわずかに超えた程度で、十分に持ち歩ける
VAIO Zはバッグに入れての持ち運びも容易だ。使用時に感じる画面サイズに比べ、その小ぶりなボディには驚かされる

実環境で使って感じたVAIO Zの実力

 今回は「出先でマルチディスプレイ」というテーマに沿った使い方しかしておらず、タブレットモードやペンによる手書きなど、VAIO Zの全機能を網羅する形でチェックは行なっていないが、なにせ発売直後の注目製品であり、むしろそちらの意味で興味をお持ちの方も多いはずなので、実環境でしばらく使用して感じた点をまとめておきたい。なお今回使用しているのは試作機なので、製品版と相違のある可能性はご了承いただきたい。

 まず性能面だが、今回の試用中で最もヘビーな用途は、フルHD動画の再生や、写真画像の編集といった程度でしかないので、あまり参考にならないのだが、さすがにこの程度では作業に差し支えることは皆無だ。パフォーマンス優先のモードではCPUに長時間負荷がかかると左右両サイドのファンが回転するケースも何度か見られたが、ファン音自体が小さいほか、運転時間もごくわずかなので、ファン音がストレスになることはない。回転が始まった直後にふと気付く、という程度だ。

 キーボードは、13.3型のノートとしてはむしろキー間隔が広すぎるように感じるほどで、打鍵感も含めて秀逸だ。キー配置は、音量調節や画面の輝度調整はFnキーと組み合わせとなるが、配列そのものには違和感は感じない。各所のレビューを見ていると、従来モデルと比べてストロークの浅さを指摘する声もみられるが、筆者は(従来モデルの使用経験がないこともあり)特にネックとは思わなかった。パームレスト部の発熱も特に感じなかった。

 画面が回転するマルチフリップ機構は、写真撮影のためにギミックを確認しただけだが、この手の機構にありがちなひ弱さは感じない。本製品は奥に行くほど厚みが増しているので、ディスプレイが表になるよう折りたたむと奥が少し持ち上がった状態になるが、スタイラスと組み合わせて手書きを行う場合は、むしろこの方が使いやすいだろう。強いて言うならば、タブレットモードでは画面がグレア加工であることが目立つので、ノングレアの保護シートなどを用意するのも手だろう。

 ユニークなのは本体底面にあるカメラを用いたドキュメントスキャナ機能で、ホワイトボードや書類を撮影すると、本体内蔵のアプリ「CamScanner」で台形補正を行なってファイルとして保存できる。ただ直立した状態のホワイトボードを撮るならまだしも、デスク上に置いた書類を撮るとVAIO Z本体の影が写り込むことが多く(天井に照明があるのだから当然である)、機能としてはやや不完全という印象を受けた。コンセプト自体は秀逸であり、今回の筆者のように出先ですべての作業を完結させたい場合には重宝する機能なので、今後のブラッシュアップに期待したい。どこか1つだけ改善できるとすれば、筆者はこの点を挙げる。

デスクトップ画面。OSはWindows 8.1 Pro Update(64bit版)をプリインストールする。なおこの画面は1,920×1,080ドットに調節した状態のもの
アプリの一覧。作業の関係でDropboxとChromeをインストールしている以外は素の状態。プリインストールソフトは控えめで、かなりすっきりしているのが好印象だ
システム画面。CPUはインテルCore i7-5557U プロセッサは3.10GHz、メモリはオンボードの16GBというハイエンドな仕様
CPUおよびファンは、パフォーマンス優先もしくは静かさ優先のどちらかを切り替えられる。キーボードモードとタブレットモードで別々の設定にすることも可能
画面を最大限開いた状態。完全にフラットにならないのは致し方ないとして、膝の上に乗せて作業をする場合など、もう少し開いてほしいというのが個人的な感想
本体底面にはカメラが搭載されており、書類を撮影してスキャナ代わりに使うことも可能。目立たない位置にあるのでなかなか気づかない
マルチフリップ機能のギミックも紹介しておこう。まずはヒンジ部にある「RELEASE」ボタンをスライドさせてロックを外す
ディスプレイをそのまま後ろに倒す
完全に反対側を向いた状態で手前に倒すとタブレットモードが完成する
タブレットモード。重量はややあるが、13.3型という画面サイズを考えればそれほど法外ではなく、またキーボードが完全に隠れるので誤操作が起こらないのも秀逸だ
タブレットモード時に側面から見た状態。やや段差はできるが、実際に手に持つとそれほど違和感は感じない

自宅のNASからデータを取り出せるリモートアクセス機能

 今回の作業環境では、業務に必要なデータはその時々に応じて自宅のNASから取り出して使用している。もともと筆者は仕事で使う全ファイル(テキスト、画像、動画など)はNASに保存しており、Dropboxで同期している作業中のテキストファイルを除けば、PCのHDDに保存しているデータはほぼ皆無だ。

 こうした環境では、ネットワークさえ確実に利用できれば、後は自宅NASのリモートアクセスをきちんと設定しておくだけで、出先からでもデータをダウンロードして作業が行なえる。NASは複数メーカーの製品を併用しているが、出先で必要になるデータは主にQNAPとSynologyの2台のNASに保存しているので、この両製品について外出先からルータ越しにアクセスできるようにしておけば事足りる。

自宅のNAS。メインで使っているのはSynologyの「DS415play」(左手前)と、QNAPの「TS-419P II」(右奥)。いずれも4ドライブ構成のLinuxベースのNASだ

 複数メーカーのNASの中でこの2台をメインに使用しているのは、リモートアクセスの使い勝手に優れているからだ。ダイナミックDNSを使用してアクセスする仕組みはどのメーカーもほぼ同じだが、国内メーカーのNASの多くはリモートでアクセスすると専用の画面が表示されるので、普段から使い慣れていないといざという時に戸惑う。またフォルダの共有設定はローカル環境でしか行なえないので、事前に設定し忘れると出先からは何もできない事態に陥りがちだ。

 その点、この2社の製品はローカルからアクセスするのと同じコンソール画面にリモートからもそのままログインできるので戸惑うこともなく、また管理者権限でログインすれば、出先からの権限変更や共有設定も容易だ。出先に赴く前にあらかじめ必要なデータをノートPCにコピーしておかなくとも、必要な時にデータを引き出せる。また画面に直接ファイルをドラッグしてのアップロードが行なえるなど、シームレスな操作も行える。

 筆者はこの作業環境で、必要なデータ一式をダウンロードしてローカルで編集を行ない、作業が終わったら速やかにNASにアップロードしてローカルからデータを消去するという作業を繰り返すのが常となっている。ファイルの容量が大きい場合、夜中のうちにダウンロードしておくなど運用上の工夫は必要だが、かつてはあらゆるデータをローカルにコピーしてから出先に赴いていたことを考えると、利便性は天と地ほども違う。

Synology「DS415play」のコンソール画面。PCのデスクトップを模したデザインで分かりやすい。QNAP「TS-419P II」もそうだが、リモートでアクセスした場合もローカルと同じ画面なので戸惑わずに済む
WANからアクセスするためにはダイナミックDNSを用いる。この辺りの仕組みはSynologyやQNAP、また国内メーカーの同クラスの製品も変わらない
QNAPも同様にDDNSを用いてリモートアクセスする。ちなみに今回はVPNは使用していない

 また、今回は最後まで出番がなかったが、NASのデータをクラウドと同期していざという時に参照できるようにしておくと、回線トラブルなどの際に役立つ。最近の台湾ベンダーのNASは、PCを経由せずにオンラインストレージと同期できる製品が多く、Amazon S3など業務ユースのサービスのほか、DropboxやOneDrive、Box.netなどともデータの同期が行なえるので、簡易なDR(Disaster Recovery)対策も兼ねられて重宝する。

 中でもSynology製品は、DropboxやBoxだけでなく、他社のNASでは対応しないOneDriveとも同期が可能なので、ふだん使っているこれらのアカウントをそのまま使ってクラウドへのバックアップが行なえる。逆にオンラインストレージのサービスが停止するなどのトラブルに備えて、NASをクラウドのバックアップ先として使うのも有用だろう。

PC抜きでオンラインストレージとデータを同期する機能は、Synology製品に一日の長がある。中でもOneDriveと同期できるのは今のところ同社製品にしかないメリット
NAS内の任意のフォルダとオンラインストレージを同期できるので、災害からデータ消失を防ぐDR対策としても有効。特定のファイルタイプを除外する設定も可能だ
今回はWi-Fiルータとして、プラネックスの「ちびファイ2ac」(MZK-UE450AC)を使用している。2.4GHz帯と5GHz帯の同時利用には対応しないが、モバイルに適したコンパクトさでありながら11acに対応する、現時点では貴重な製品

モバイルノートの用途は今後変わるのか

 日中にオフィス外で一時的に作業を行なうのと、今回の事例のように中長期に渡って出先で腰を据えて作業を行なうのとは、同じ「外出先での作業」として一括りに扱われがちだが、実際には似て非なるものであり、必要な機器も全く異なる。

 今回紹介した後者のケースは、機器単体だけではソリューションとして完結せず、また法人ユースであれば企業ごとのセキュリティポリシーや回線に左右される部分も多く、モデルケースが紹介されることはあまりない。それでも転勤や短期出張に伴うホテル暮らしや、出張で地方の営業所に間借りして作業を行う場合など、類似したニーズは少なからずあると考えられる。

 今回は筆者なりの方法を紹介したが、ほかにVPNの利用など、通信速度やセキュリティを考慮すればさらに望ましい方法もあるだろうし、機器や回線の冗長性など、突っ込みどころはいくらでもあるはずだ。あくまでも現実的な落としどころということでそのあたりはご容赦いただきたいが、同じ「外出先での作業」でも、ブラウジングやメール送受信などの軽作業がスマートフォンやタブレットに取って代わられつつある現在、モバイルノートは今回のような用途でニーズが増えていくように思わなくもない。マルチディスプレイにさらに適した製品の登場や、NASの進化など、いずれドラスティックな変化があった時点で、また続編をお届けできれば幸いだ。

(山口 真弘)