Hothotレビュー

ソニー「VAIO Pro 11」

~11.6型フルHD液晶搭載で約770gを実現した薄型ノートPC

ソニー「VAIO Pro 11」
発売中

価格:オープンプライス

 ソニーのVAIOシリーズは、これまで多くのシリーズが存在したが、2013年夏モデルでは製品ラインナップが整理され、製品の特徴を表す英単語がシリーズ名に入ることで、より製品の位置付けがわかりやすくなった。

 夏モデルとして新登場した「VAIO Pro」は、オーソドックスなクラムシェル型ノートPCだが、モバイル利用を重視し、薄さと軽さ、バッテリ駆動時間にこだわったマシンだ。VAIO Proは、液晶サイズによって、13.3型液晶を搭載したVAIO Pro 13と11.6型液晶を搭載したVAIO Pro 11の2シリーズがある。両製品は兄弟機であり、スペックも似ている。

 13.3型液晶搭載のVAIO Pro 13の特別モデル「VAIO Pro 13 | red edition」についてはすでにレビューしたが、今回は、VAIO Pro 11を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様などが異なる可能性がある。

タッチパネル搭載モデルと非搭載モデルを用意

 VAIO Pro 11は、店頭モデルとしてタッチパネル搭載モデルとタッチパネル非搭載モデルが用意されていることも特徴だ(VAIO Pro 13は、VAIOオーナーメードモデルのみタッチパネル非搭載を選択可)。タッチパネル搭載モデルと非搭載モデルでは、それ以外の機能は同一だが、重量は前者が約870g、後者が約770gとなる。タッチ操作を取るか、軽さを重視するかといったところだ。

 今回試用したのは、後者のタッチパネル非搭載モデルであるが、やはりその軽さは驚異的だ。片手でも楽に持てる携帯性の高さは、2009年10月に登場したVAIO Xの店頭モデルと比べても遜色はない(VAIO XのVAIOオーナーメードモデルでは、バッテリを2セルにすることで約655gまで軽くできる)。ちなみに、以前はタッチ操作に対応していなくてもUltrabookの要件を満たしていたが、Haswellこと第4世代Core iシリーズを搭載したUltrabookではタッチ操作が必須となったため、VAIO Pro 11のタッチパネル非搭載モデルはUltrabookの要件を満たしておらず、Ultrabookのロゴシールも貼られていない(VAIO Pro 11タッチパネル搭載モデルは11型クラスのタッチパネル搭載Ultrabookとして世界最軽量を実現)。

 VAIO Pro 11のボディデザインは、兄弟機のVAIO Pro 13と共通であり、薄さが強調されたものとなっている。店頭モデルのタッチパネル非搭載機のボディカラーはブラックのみだが、タッチパネル搭載機はブラックとシルバーの2色が用意されている。VAIO Pro 11非タッチモデルの本体サイズは、285×197×11.8~15.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は前述した通り約770gだ。なお、タッチパネル搭載モデルの本体サイズは、285×197×13.2~17.2mm(同)であり、厚さが1.4mm増している。

VAIO Pro 11の上面。マットなブラックにシルバーのVAIOロゴが映える
VAIO Pro 11の背面。中央には、オプションのシートバッテリ装着用コネクタが用意されている
「DOS/V POWER REPORT」誌とVAIO Pro 11のサイズ比較。横幅はVAIO Pro 11のほうが8mm大きく、奥行きはVAIO Pro 11のほうが12mm小さい
試用機の重量は、実測で767gであった

フルHD解像度のIPS液晶を搭載

 次に、VAIO Pro 11の基本スペックを見ていこう。CPUとして、第4世代Core i5-4200U(1.6GHz)を搭載し、メモリは4GB固定である。ストレージはSATA接続の128GB SSDであり、このクラスのUltrabook(タッチパネル非搭載モデルはUltrabookではないが、基本スペックはタッチパネル搭載モデルも同じ)では、標準的なスペックといえるだろう。

 液晶は11.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応だ。13.3型フルHD液晶と比べるとやはりドットピッチは狭いが、WindowsのDPI設定を変えることで、文字などのサイズを変更できるので、やはり解像度が高いほうが嬉しい。IPS液晶を採用しているため、視野角が広く、タッチパネル搭載モデルに比べて、外光の映り込みが抑えられていることも評価できる。液晶パネルは、「トリルミナスディスプレイ for mobile」と呼ばれるもので、鮮やかな発色を実現している。また、液晶上部には、有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

液晶は11.6型で、解像度は1,920×1,080ドットである。タッチパネル非搭載だが、その分、外光の映り込みは抑えられている。IPS液晶を採用しているため、視野角が広い
液晶上部に有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを搭載する

NFCリーダーをタッチパッドに搭載

 キーボードはアイソレーションタイプの全87キーで、キーピッチは約17mmである。ボディが一回り大きなVAIO Pro 13のキーピッチは約19mmなので、2mm小さくなっているが、キー配列は標準的で、不等キーピッチはないので、それほど窮屈さは感じない。特に手が大きな人でなければ、十分快適にタイピングが可能であろう。キーストロークは約1.4mmで、こちらはVAIO Pro 13と同じだ。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。Ultrabookでは一般的なパッドとボタンが一体化したタイプで、クリック操作にやや慣れが必要だと感じた。タッチパッドには、NFCリーダーが内蔵されており、NFCデバイスとの間で非接触通信が可能だ。

 インターフェイスとしては、USB 3.0×2、HDMI出力、ヘッドフォン出力(ヘッドセット対応)、SDメモリーカードスロットが用意されている。インターフェイスについても、VAIO Pro 13と同じで、この種の製品としては標準的といえる。また、USB 3.0ポートのうち1つは、本体の電源がオフでも給電が可能なので、スマートフォンやデジカメなどの充電に便利だ。

 ワイヤレス機能としてはIEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0+HSをサポートする。

キーボードはアイソレーションタイプの全87キー。キーピッチは約17mmで、VAIO Pro 13の約19mmに比べると狭いが、不等キーピッチはなく、キー配列も標準的なので快適にタイピングが可能だ。キーストロークは約1.4mmである
キーボードにはバックライトが装備されており、飛行機の中などの暗い場所でも快適に利用できる
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを採用、Ultrabookでは一般的な、パッドとボタンが一体化したタイプで、NFCリーダーも内蔵されている
左側面には、排気穴とDCコネクタが用意されている
右側面には、ヘッドフォン出力(ヘッドセット対応)やUSB 3.0×2、HDMI出力が用意されている
右側面のコネクタ部分のアップ。右側のUSB 3.0ポートは、本体の電源がオフでも給電が可能だ
前面には、SDカードスロットが用意されている
前面のSDカードスロット部分のアップ
後面中央には、SONYロゴが彫り込まれている

USB給電が可能なACアダプタが付属

 付属のACアダプタは、VAIO Duo 13やVAIO Pro 13に付属するものと同じで、USB給電が可能になっている。USB給電は1A出力に対応しており、対応製品なら急速充電が可能だ。VAIO Pro 13 | red editionのレビューで紹介した、ACアダプタと一体化できるオプションのワイヤレスルーターを利用することで、ホテルの部屋に有線LANしか用意されていない場合なども、スマートにインターネットを利用することができる。ACアダプタはコンパクトで軽く、本体とあわせても重量は1kg程度なので、気軽に携帯できる。

付属のACアダプタはVAIO Duo 13やVAIO Pro 13に付属するものと同じ新型である
側面にUSBポートが用意されており、USB給電が可能だ
出力は10.5V(本体用)と5V(USB給電用)の2系統で、USBポートからは最大1Aの給電が可能だ
ACアダプタの重量は、実測で241gと軽く、本体とあわせても1kgをわずかに超える程度だ

公称約11時間のバッテリ駆動時間を実現

 VAIO Pro 11は、バッテリ駆動時間が長いことも魅力だ。Ultrabookタイプの製品なので、内蔵バッテリは交換できないが、内蔵の標準バッテリだけで公称約11時間の駆動が可能で、オプションのシートバッテリを装着することで、公称駆動時間は約23時間に延びる。兄弟機のVAIO Pro 13は、ボディが大きく、標準バッテリ容量も大きいため、標準バッテリで公称約13時間、シートバッテリ装着時は公称約26時間の駆動が可能だが、VAIO Pro 11も十分に長い。なお、シートバッテリは、VAIO Pro 11とVAIO Pro 13で共通のものを利用する。

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ソニー「VAIO Pro 13 | red edition」、「VAIO Duo 13」、「VAIO Fit 15」、ASUS「TransAiO P1801」のスコアも掲載した。

 結果は下の表に示したとおりで、同じCore i5-4200Uを搭載したVAIO Duo 13に比べて、PCMark系のスコアは低いが、3DMark系のスコアは高くなっている。今回試用したのは試作機なので、あくまで参考程度と考えて欲しい。実際の使用感は非常に快適であり、パフォーマンスに不満はなかった。

 また、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、内蔵バッテリで8時間5分もの長時間駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。VAIO Pro 13に比べると2時間ほど短いが、無線LAN常時オンで、これだけ持てば満足できる。今回はシートバッテリ装着時のテストは行なっていないが、VAIO Pro 13 | red editionの結果から、同条件で19時間程度は持つと推測される。


VAIO Pro 11VAIO Pro 13 | red editionVAIO Duo 13VAIO Fit 15TransAiO P1801
CPUCore i5-4200U (1.6GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)Core i5-4200U (1.6GHz)Core i7-3537U (2GHz)Core i7-3770 (3.4GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000GeForce GT 730M
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score786482938203945314047
Memory Score997867087302808211721
Graphics Score2144272225902777N/A
HDD Score55122633373604399398844
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score128811572213238903811323
Memories Score71067637775856667165
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailedFailed
Gaming Score7025954910782834810339
Music Score157441804913969120518585
Communications Score1493419798153301230015585
Productivity Score16209244481739172237891
HDD Score507846224840338114314424
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score119441365212335880910190
Memories Score69947324751750297050
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailedFailed
Gaming Score75548514967071219252
Music Score149621688513198106098012
Communications Score1350817580110951061114139
Productivity Score15325218961548769157075
HDD Score511576335540919107114407
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score40164500446839713708
Lightweight score48923520314522762573
Productivity score38352624241817852031
Entertainment score26453097331629103467
Creativity score83128456803976147109
Computation score997010444112191577311906
System storage score53175466507532512182
Raw system storage score5679636743871192670
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー (3Dmarks)101281360586771348629062
CPU Score1655201815601980計測不可
3DMark
Ice Storm2731234294151503743663692
Cloud Gate34613923439941848120
Fire Strike4695016545871143
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH67327424639745656687
LOW99381086288826760計測不可
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.9799.9799.9710099.73
HP10010099.97100100
SP/LP99.9710099.9710099.97
LLP10010099.9710099.97
DP(CPU負荷)124221124
HP(CPU負荷)6321541
SP/LP(CPU負荷)4301031
LLP(CPU負荷)328710
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード481.2MB/s987.8MB/s477.9MB/s146.0MB/s171.4MB/s
シーケンシャルライト139.3MB/s434.1MB/s134.3MB/s87.86MB/s167.9MB/s
512Kランダムリード419.4MB/s604MB/s418.7MB/s114.6MB/s62.95MB/s
512Kランダムライト140.7MB/s416.2MB/s132.4MB/s78.06MB/s52.86MB/s
4Kランダムリード33.36MB/s28.42MB/s22.47MB/s11.22MB/s0.951MB/s
4Kランダムライト99.30MB/s69.71MB/s48.69MB/s19.64MB/s0.894MB/s
BBench
標準バッテリ8時間5分10時間18分12時間58分4時間17分N/A
標準バッテリ+シートバッテリ未計測21時間なしなしN/A

携帯性とバッテリ駆動時間を重視する人にお勧め

 VAIO Pro 11は、ソニーがこれまでVAIOシリーズの開発で培ってきた技術が注ぎ込まれた、完成度の高いモバイルノートPCである。常に持ち歩いても苦にならないノートPCが欲しいという人には、有力な選択肢となるだろう。VAIO Pro 13も魅力的なマシンだが、持ち運ぶ機会が多いのなら、よりコンパクトで軽いVAIO Pro 11のほうがふさわしい。今回試用したのは、タッチパネル非搭載モデルだが、Windowsストアアプリを使うことが多いなら、タッチパネル搭載モデルもお勧めだ。

(石井 英男)