Hothotレビュー

ソニー「VAIO Pro 13 | red edition」

~世界最軽量13.3型Ultrabookの特別モデル

発売中

価格:オープンプライス

 ソニーは6月10日、VAIOシリーズの2013年夏モデルを発表したが、同時に赤い筐体の新シリーズ「VAIO | red edition」も発表された。VAIO | red editionの第1弾は、夏モデルとして発表されたVAIO Pro 13/11、VAIO Duo 13、VAIO Fit 15/14の5シリーズがベースとなる。VAIO | red editionは、特別な塗装が施されているだけでなく、ベースモデルよりも高いスペックを選べるほか、限定サポートプランや専用ケースなども用意されている。まさに、こだわり派のための特別モデルだ。

 今回は、VAIO Pro 13をベースとした「VAIO Pro 13 | red edition」(以下、VAIO Pro 13 red)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様、性能などが異なる可能性がある。

4層塗装+手磨き仕上げによって実現された深みのある赤色

 VAIO Pro 13 redのボディは、その鮮やかで深みのある赤色が素晴らしい。単に赤い色で塗られたノートPCは、過去にいくらでも登場してきたが、VAIO Pro 13 redの美しい赤色は、そうした製品とは全く異なる。それもそのはず、VAIO | red editionは、この赤色にこだわり、通常の塗装よりも、遙かに手の込んだ塗装が施されているのだ。それも、材質に応じて塗装方法を変える、念の入れようだ。VAIO Pro 13 redの場合、上面と背面はUDカーボン製で、4層塗装+手磨き仕上げが施されており、キーボードベゼル部分は、モールドなので、クリアコーティングを含む3層塗装が施されている。まるで高級車のような塗装の光沢と質感は、これまでのPCにはなかったものだ。

 VAIO Pro 13 red(およびベースとなったVAIO Pro 13)は、13.3型液晶搭載Ultrabookとして、世界最軽量を実現している。ベースモデルのVAIO Pro 13の本体サイズは、322×216×12.8~17.2mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.06kgである。13.3型クラスながら、重量は他社の11.6型クラスと比べても遜色はなく、手に持ってみても非常に軽い。携帯性を重視する人に向いた製品といえる。

VAIO Pro 13 | red editionの上面。VAIO Pro 13の天板はUDカーボン製であり、深い赤色を実現するために、4層塗装+手磨き仕上げが施されている
VAIO Pro 13 | red editionの背面。背面にもVAIOロゴがある。背面もUDカーボン製なので、4層塗装+手磨き仕上げによって深い色合いと光沢を実現している
「DOS/V POWER REPORT」誌とVAIO Pro 13 | red editionのサイズ比較。VAIO Pro 13 | red editionの方が、奥行きで7mm、横幅で45mm大きい
試用機の重量は、実測で1,069gであった

ハイスピードSSDや店頭モデルの2倍のメモリを搭載

 次に、基本スペックを見ていこう。VAIO Pro 13 redは、VAIOオーナーメードモデルと同じく、BTOにより仕様のカスタマイズが可能だ。CPUは、コードネーム「Haswell」こと、第4世代CoreプロセッサのCore i7-4500U(1.8GHz)またはCore i5-4200U(1.6GHz)から選択できる(店頭モデルはCore i5-4200Uのみ)。メモリ容量は8GB固定であり、こちらも店頭モデルの4GB固定に比べて、スペックが向上している。ストレージは、PCI Express接続のハイスピードSSDで、容量は512GBまたは256GBから選べる。店頭モデルは、SATA接続の128GB SSDであり、容量、インターフェイス帯域ともにVAIO Pro 13 redの方が上である。基本スペックを重視する人も、red editionを選択する意味があるだろう。今回の試用機は、Core i7-4500Uと128GB SSDを搭載していた(128GB SSDは、本来red editionでは選択できない。なお、後述のベンチマーク結果から、このSSDはSATA接続ではなく、PCI Express接続のようだ)。

 液晶は13.3型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応である。2013年夏モデルのUltrabookは、液晶の高解像度化が一気に進み、3,200×1,800ドット液晶や2,560×1,440ドット液晶を搭載する製品も登場したため、特に高解像度とはいえなくなった感もあるが、13.3型のフルHDというのは、ドットピッチがあまり小さくならず、バランスのとれた解像度であり、一度に表示できる情報量も1,366×768ドットや1,600×900ドットに比べて多いため、使い勝手がよい。液晶パネルはIPS方式なので、視野角が広く、斜めからみても色が変わらない。また、「トリルミナスディスプレイ for mobile」と呼ばれるプレミアム液晶が搭載されており、発色も優れている。液晶の表示品位に関しても、Ultrabookの中ではトップクラスといえる。液晶上部には、有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

今回試用したVAIO Pro 13 | red editionでデバイスマネージャーを開いたところ
液晶は13.3型で、解像度は1,920×1,080ドット。タッチパネル対応で、IPS液晶を採用しているため、視野角が広い
液晶上部に有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを搭載する

キーボードとタッチパッドの操作性は良好

 キーボードはアイソレーションタイプの全87キーで、キーピッチは約19mmと余裕がある。キーストロークは約1.4mmで、こちらもUltrabookとしては深めだ。配列も標準的で、不等キーピッチもないため、快適なタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。Ultrabookでは一般的な、パッドとボタンが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく操作しやすい。パッドには、NFCリーダーが内蔵されており、NFCデバイスとの間で非接触通信が可能だ。

 インターフェイスとしては、USB 3.0×2、HDMI出力、ヘッドフォン出力(ヘッドセット対応)、SDメモリーカードスロットを備えている。Ultrabookとしては標準的と言えるだろう。USB 3.0ポートのうち1つは、本体の電源がオフでも給電が可能なので、スマートフォンやデジカメなどの充電に便利だ。

 ワイヤレス機能としてはIEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0+HSをサポートする。

キーボードはアイソレーションタイプの全87キー。キーピッチは約19mmで、キーストロークも1.4mmとUltrabookとしては深い。キーボードベゼル部分はモールドで、クリアコーティングを含む3層塗装が施されている
キーボードにはバックライトが装備されており、暗い場所でもタイピングミスを防げる
ポインティングデバイスとして、タッチパッドを採用。Ultrabookでは一般的な、パッドとボタンが一体化したタイプだ。パッドのサイズが大きく、操作性は良好だ。パッドにはNFCリーダーが内蔵されている
左側面には、排気穴が用意されている
右側面には、SDメモリーカードスロットやヘッドフォン出力(ヘッドセット対応)、USB 3.0×2、HDMI出力が用意されている
右側面のコネクタ部分のアップ
後面の中央部にはSONYロゴが彫り込まれている

オプションとしてACアダプタと一体化できるワイヤレスルーターが用意

 付属のACアダプタは、VAIO Duo 13と同じくUSBポートを備えており、VAIO Pro 13 red本体に電力を供給しながら、同時にUSB給電によってスマートフォンなどの充電が可能だ。オプションとしてこのACアダプタとドッキングして使うワイヤレスルーターが用意されているのも面白い。今回は、このワイヤレスルーター「VGP-WAR100」も一緒に試用することができたので紹介しよう。

 VGP-WAR100は、コンパクトなワイヤレスルーターであり、VAIO Pro 13 redなどに付属するUSB給電対応ACアダプタから電源の供給を受けて動作する。VGP-WAR100は、ACアダプタと一体化できるので、持ち歩きにも便利だ。VAIO Pro 13は、有線LANには対応していないが、VGP-WAR100を利用すれば、その代わりとなる。出張などで、ホテルの部屋に有線LANしか用意されていない場合などに役立つ。

 また、オプションとしてHDMI出力をミニD-Sub15ピンに変換する「VGAアダプター」も用意されている。ミニD-Sub15ピンのみに対応したプロジェクターに接続する場合などに便利だろう。

付属のACアダプタはコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ
USB給電も可能になったので、出力は10.5Vと5Vの2系統となっている
新たにUSBポートが用意され、USB給電に対応したのは嬉しい
CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較
オプションの「ワイヤレスルーター」(VGP-WAR100)。小型軽量で、VAIO Pro付属のACアダプタに接続して利用する
ワイヤレスルーターの裏面。SSIDやパスワードなどが書かれている
ワイヤレスルーターをACアダプタに接続したところ。一体化してこのまま持ち歩けるので便利だ
オプションの「VGAアダプター」。HDMI出力をミニD-Sub15ピン(VGA)に変換する

オプションのシートバッテリ装着で、公称約26時間の長時間駆動が可能

 バッテリ駆動時間が非常に長いこともVAIO Pro 13の魅力だ。本体内蔵の標準バッテリは交換できないが、標準バッテリだけで公称約13時間の駆動が可能であり、オプションのシートバッテリを本体背面に装着することで、公称駆動時間は2倍の約26時間に延びる。

 本体背面の中央に、シートバッテリを装着するためのコネクタが用意されているが、そのコネクタにはカバーが取り付けられている。シートバッテリを装着する際には、カバーを外す必要があるが、シートバッテリの裏面にその外したコネクタカバーを装着できるようになっているので、カバーを紛失する恐れが少ない。シートバッテリを背面に装着すると、キーボードに適度な傾斜が付き、タイピングしやすくなる。シートバッテリを装着しても、重量は1,360g前後であり、十分携帯可能だ。ただし、シートバッテリのカラーはブラックのみなので、VAIO Pro 13 redとは色が合わないのが残念だ。

オプションのシートバッテリ。本体背面に装着する
シートバッテリの裏面
本体背面中央に、シートバッテリを装着するためのコネクタが用意されている。コネクタにはカバーが取り付けられているが、シートバッテリを装着する際にはカバーを外す
本体にシートバッテリを装着したところ。シートバッテリのカラーは黒しかないので、red editionとは色が合わないのが残念
シートバッテリは、7.5V、4,690mAhで、36Whという仕様だ
シートバッテリの裏面には、本体から外したコネクタカバーを装着できるので、コネクタカバーを紛失する恐れがない
シートバッテリを装着すると、適度な傾斜が付き、タイピングしやすくなる。また、横から見ると隙間が空いているが、これは放熱を考慮したためだ
試用機のシートバッテリ装着時の重量は、実測で1,357gであった

PCI Express接続でシーケンシャルリード1GB/sec

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ソニー「VAIO Duo 13」、「VAIO Fit 15」、ASUS「TransAiO P1801」のスコアも掲載した。

 結果は下の表の通りで、Core i5-4200Uを搭載したVAIO Duo 13と比べて、PCMark05やPCMark Vantage、PCMarkなどのスコアは全体的に高い。特に注目すべき点は、ストレージ性能である。PCMark05のHDD Scoreは、VAIO Duo 13が36043なのに対し、VAIO Pro 13 redは63337と1.8倍近く高い。CyrstalDiskMark 2.2の結果も、VAIO Pro 13 redのシーケンシャルリードは987.8MB/secで、VAIO Duo 13の2倍以上となっている。そこで、最新の「CrystalDiskMark 3.0.2f」を利用して、VAIO Pro 13 redのストレージ転送速度を計測したところ、シーケンシャルリードは実に1,013MB/secを記録した。今回試用したVAIO Pro 13 redのSSDは128GBで本来は選べない構成だが、SATA接続では1基のSSDで、600MB/secを超える転送速度は実現できないため、PCI Express接続となっているのであろう。さらに、VAIO Duo 13やVAIO Fit 15との比較では、グラフィックス描画性能が大きく向上していることもわかる。

 また、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、内蔵バッテリで10時間18分もの長時間駆動が可能になった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。さらに、シートバッテリを背面に装着した計測を行なうと、実に21時間もの駆動が可能であった。常時無線LAN有効でこれだけ持てば不満はない。

 VAIO Pro 13 | red editionVAIO Duo 13VAIO Fit 15TransAiO P1801
CPUCore i7-4500U (1.8GHz)Core i5-4200U (1.6GHz)Core i7-3537U (2GHz)Core i7-3770 (3.4GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000GeForce GT 730M
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/A
CPU Score82938203945314047
Memory Score67087302808211721
Graphics Score272225902777N/A
HDD Score633373604399398844
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score1572213238903811323
Memories Score7637775856667165
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailed
Gaming Score954910782834810339
Music Score1804913969120518585
Communications Score19798153301230015585
Productivity Score244481739172237891
HDD Score6224840338114314424
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score1365212335880910190
Memories Score7324751750297050
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailed
Gaming Score8514967071219252
Music Score1688513198106098012
Communications Score17580110951061114139
Productivity Score218961548769157075
HDD Score6335540919107114407
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score4500446839713708
Lightweight score3520314522762573
Productivity score2624241817852031
Entertainment score3097331629103467
Creativity score8456803976147109
Computation score10444112191577311906
System storage score5466507532512182
Raw system storage score636743871192670
3DMark03
1,024×768ドット 32bitカラー (3Dmarks)1360586771348629062
CPU Score201815601980計測不可
3DMark
Ice Storm34294151503743663692
Cloud Gate3923439941848120
Fire Strike5016545871143
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH7424639745656687
LOW1086288826760計測不可
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.9799.9710099.73
HP10099.97100100
SP/LP10099.9710099.97
LLP10099.9710099.97
DP(CPU負荷)4221124
HP(CPU負荷)321541
SP/LP(CPU負荷)301031
LLP(CPU負荷)28710
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード987.8MB/s477.9MB/s146.0MB/s171.4MB/s
シーケンシャルライト434.1MB/s134.3MB/s87.86MB/s167.9MB/s
512Kランダムリード604MB/s418.7MB/s114.6MB/s62.95MB/s
512Kランダムライト416.2MB/s132.4MB/s78.06MB/s52.86MB/s
4Kランダムリード28.42MB/s22.47MB/s11.22MB/s0.951MB/s
4Kランダムライト69.71MB/s48.69MB/s19.64MB/s0.894MB/s
BBench
標準バッテリ10時間18分12時間58分4時間17分N/A
標準バッテリ+シートバッテリ21時間なしなしN/A
CrystalDiskMark 3.0.2fの結果。シーケンシャルリードは1,000MB/secを超えている。SATAでは出ない速度だ

美しいだけでなく、Ultrabookとして高い性能を実現

 VAIO Pro 13 redの最大の魅力は、ボディの美しい塗装だが、店頭モデルでは選べないCore i7-4500Uを選択でき、ハイスピードSSDを搭載するなど、Ultrabookとしての基本性能もトップレベルだ。重量も13.3型Ultrabookとして世界最軽量であり、バッテリ駆動時間も、シートバッテリ装着時は実測で21時間を記録するなど非常に優れている。ベースモデルに比べて価格は高くなるが、その深く鮮やかな塗装を一目見れば、その価格差も納得できる。基本性能とデザイン性、携帯性を重視する人に最適な製品であろう。

(石井 英男)