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ソニー「VAIO Tシリーズ15 SVT15119CJS」

~15.5型フルHDタッチパネル液晶搭載Ultrabook

VAIO Tシリーズ15 SVT15119CJS
発売中

価格:オープンプライス

 ソニーは、VAIOブランドのUltrabook「VAIO T」シリーズの新モデル「VAIO Tシリーズ15」を発売した。15.5型のフルHDタッチパネル液晶やBDドライブを搭載しつつ、Ultrabook準拠の薄型ボディを実現。ジャンルとしては、オフィスや家庭のデスクに置いて利用する、メインストリームノートに近いが、Ultrabook準拠ということで、比較的持ち運びしやすい点が特徴だ。市販モデルでは、搭載CPUや内蔵ストレージ容量の異なる2モデルがラインナップされているが、今回は上位モデルとなる「SVT15119CJS」を取り上げる。価格はオープンプライスで、実売価格は159,800円前後。

楽に持ち運べるメインノート

 Ultrabookといえば、薄型軽量ボディで、携帯性に優れるモバイルノートのジャンル、というイメージが強い。実際に、これまでに登場しているUltrabookは、13.3型以下の液晶を搭載し、携帯性を重視した製品が多数を占めている。しかし、14型以上の大型液晶や光学式ドライブを搭載するUltrabookもいくつか登場している。今回、VAIO Tシリーズの新モデルとして追加された「VAIO Tシリーズ15 SVT15119CJS」(以下、VAIO Tシリーズ15)も、その仕様を満たすUltrabookで、どちらかというとメインストリームノートに近い使い方を想定した製品だ。それでも、Ultrabook準拠ということで、一般的なメインストリームノートと比べるとボディは薄く軽いため、オフィスや家庭内で楽に持ち運べる。

 VAIO Tシリーズ15では、その型番にもあるように、15.5型の液晶が搭載されている。そのため、本体のフットプリントは、379×255mm(幅×奥行き)と、13.3型液晶搭載Ultrabookと比較するとかなり大きい。サイズ的には、まさにメインストリームノートそのものだ。また、高さは22.8mmとなっている。ちなみに、Ultrabookの仕様では、14型以上の液晶を搭載する製品の場合、高さは21mm以下と定義されているが、タッチパネルを搭載する場合には2mmまで厚さが増えてもかまわないことになっており、15.5型のタッチパネル液晶を搭載するVAIO Tシリーズ15はUltrabookの基準を満たしている。そして、この薄さであれば、デスクの薄い引き出しにも問題なく収納できる。

 本体重量は、公称で約2.35kg、実測では2,272gであった。携帯性重視のUltrabookと比較するとさすがに重く、本体サイズと合わせ、携帯性はかなり低いと言わざるを得ないが、メインストリームノートとして考えると十分に軽い。オフィスや家庭内での持ち運びはもちろん、操作性重視でメインストリームノートを持ち出す機会が多いのなら、VAIO Tシリーズ15に切り替えることで、持ち運びもかなり楽になるはずだ。

本体正面。側面が斜めに切り取られ、直線的なデザインも相まってシャープなイメージだ
左側面。後方はゴム足があるためやや厚くなっているように見えるが、突起部を除くと前方から後方までほぼフラット。高さは22.8mmと、タッチパネル搭載でのUltrabookの高さの基準を満たしている
後方。光沢の強いシルバーがアクセントとなっている
右側面。光学式ドライブを標準搭載している
VAIO Z SVZ13(左)と比較するとかなり厚いが、一般的な15型液晶搭載のノートPCと比較すると十分に薄い
天板部分。ヘアライン加工が施されたアルミデザインは、高級感が感じられる
フットプリントは379×255mm(幅×奥行き)。DOS/V POWER REPORT誌と比べても、かなり大きい
重量は、実測で2,272g。モバイルノートの領域を超える重量で、サイズも大きいため常時携帯はかなり厳しい

15.5型フルHDタッチパネル液晶を搭載

 VAIO Tシリーズ15に搭載される液晶は、フルHD(1,920×1,080ドット)表示に対応する15.5型液晶だ。パネルはTN方式のため、視野角はやや狭いものの、発色や輝度は十分に満足できる品質を確保している。パネル表面が光沢処理となっているため、外光の映り込みは激しいが、発色は鮮やかなので、映像やデジタルカメラの写真などはかなり高品質に表示できる。もちろん、サイズが15.5型と大きいため、フルHD解像度でも文字が小さく見にくくなるといったことはない。ExcelやWordなどのOfficeアプリを全画面で利用する場合でも、快適な視認性が確保される。文字入力が中心のビジネス用途でも、高解像度を活かして快適に利用できそうだ。

 また、パネル表面には静電容量方式のタッチパネルも搭載する。このタッチパネルは10点マルチタッチをサポートしており、タッチ専用のWindows 8 UIの操作も非常に軽快だ。ただし、タッチ操作を多用していると、液晶パネル表面の指紋の跡が気になるようになるため、頻繁に拭うなどの配慮が必要だろう。

 本体デザインは、他のVAIO Tシリーズとほぼ同等。ヘアライン処理が施されたシルバーの天板や、斜めに鋭く切り取られた側面部分など、非常にシャープな印象を受ける。

フルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の、15.5型液晶を搭載。また、表面には10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルも搭載している
液晶表面は光沢処理となっており、発色は鮮やかで輝度も十分に高い。ただし、TN方式のためやや視野角が狭い。また、外光の映り込みもかなり気になる
液晶上部中央には、131万画素のWebカメラを搭載する

19mmフルピッチキーボードはテンキーも用意

 キーボードは、VAIOシリーズでおなじみの、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用。キーピッチは19mmフルピッチで、特殊な配列は皆無。また、本体サイズの大きさを活かし、テンキーも標準搭載。Excelなど数字の入力が多いアプリを利用する場合でも、快適な入力作業が可能だ。さらに、キーボードには標準でバックライトが搭載されており、暗い場所になるとキートップの表記が明るく浮かび上がる。

 実際に操作してみると、キータッチやクリック感はまずまずしっかりしているが、ストロークの短さは若干気になった。こればかりは、本体の薄さを考えると仕方のない部分で、キーボードの打鍵感は一般的なメインストリームノートの方が上といえる。ある程度使っているうちに慣れてくるとは思うので、妥協できる範囲内ではあるが、キーボードの打鍵感を重視したいなら、購入前に量販店で実際に操作してみることをおすすめする。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載する。パッド面の面積は十分に広く、ジェスチャー操作によるWindows 8の操作にも対応しており、なかなか使いやすい。VAIO Tシリーズ15は、タッチパネル液晶を搭載しているものの、タッチパッドの使い勝手もしっかり確保されている点は嬉しい。

VAIOシリーズおなじみのアイソレーションキーボードを搭載。配列は自然で、使いにくい部分はない
本体が大きいため、標準でテンキーも搭載。数字が入力しやすい
キーピッチは19mmのフルピッチを確保。ストロークはやや短いが、慣れれば快適にタッチタイプ可能だ
キーボードバックライトも標準搭載。暗い場所でも快適に入力可能だ
クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載。面積が広く、ジェスチャー操作にも対応し扱いやすい

大容量HDDとキャッシュ用SSD搭載で高速レスポンスを実現

大容量の1TB HDDを標準搭載。HDDは底面の蓋を開けると簡単にアクセス可能。また、24GBのSSDも同時に搭載し、HDDキャッシュとして利用するため、HDDの大容量とSSDの高速性を両立している

 ストレージデバイスは、24GBの小容量SSDと、1TB HDDを同時に搭載する。そして、SSDはHDDのキャッシュとして利用する、いわゆるハイブリッドHDD仕様を実現。これによって、HDDDの大容量とSSDの高速性を両立している。全ての用途でSSDの速度が発揮されるわけではないが、OSやアプリの起動はSSD並に高速で、HDDのみのノートPCと比べると圧倒的に快適だ。しかも、HDDは1TBと大容量のため、多数の映像コンテンツを保存可能。例えば、ソニーのネットワーク録画機「nasne」で録画した番組を転送しておき、好きな場所で録画番組を楽しむことも余裕で行なえる。

 ところで、内蔵HDDには、底面の蓋を開けることで簡単にアクセス可能となっている。内蔵HDDの交換は保証対象外で、容量も標準で1TBと大容量なので、ユーザーが交換する必要性は低いものの、ビジネスシーンでは、HDDが交換可能という点が有利になる場合もあるだろう。

基本スペックはかなり充実

 基本スペックは、Ultrabook準拠のノートPCなので、他のUltrabookと大差はないが、今回試用したのは上位モデルということもあり、かなり充実した仕様となっている。

 CPUは、Ultrabook向けCore i7最新モデルのCore i7-3537U(2.00/3.10GHz)、チップセットはIntel HM76 Expressを採用。メインメモリは標準でPC3-12800準拠DDR3L SDRAMを8GB搭載。Ultrabookとしては珍しく、本体底面にはメインメモリ搭載用のメモリスロットにアクセスするための蓋が用意されているが、VAIO Tシリーズ15ではメインメモリが最大8GBまでの対応となっており、増設は不可能。メモリスロットは2スロット用意されており、標準で4GBモジュールが2枚取り付けられている。

 ストレージデバイスは、先述したように24GB SSDと1TB HDDを同時に搭載し、SSDをHDDのキャッシュとして利用するハイブリッド仕様を実現。また、本体右側面にはBDXLドライブを標準搭載。フルHDの大画面液晶を活用し、Blu-rayビデオを鑑賞するだけでなく、映像コンテンツの書き出しも可能。しかも、BDXL対応なので、長時間の動画も楽々扱える。もちろん、nasneで録画した番組の書き出しも可能なので、AVノート的な使い方も十分にこなせる。

 無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANおよびBluetooth 4.0+HSを標準搭載している。

 側面のポートは、左側面にUSB 3.0×1、Gigabit Ethernet、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力、ヘッドフォン/マイク共用ジャックが、右側面にUSB 2.0×2、前面にメモリースティックスロットとSDカードスロットがそれぞれ用意されている。ポート類は十分に豊富ではあるが、できればUSB 3.0はもう1ポートあるとよかったように思う。USB 3.0ポートは電源オフUSB充電機能に対応している。

左側面には、電源コネクタ、USB 3.0×1、Gigabit Ethernet、アナログRGB、HDMI、ヘッドフォン/マイク共用ジャックを用意
右側面には、USB 2.0×2を用意。光学式ドライブは右側面に内蔵する
前面左側には、メモリースティックスロットとSDカードスロットを用意
右側面に内蔵される光学式ドライブは、BDXLドライブとなる
底面にはいくつか蓋があり、内部へのアクセスなどが可能
メインメモリ用のSO-DIMMスロットは2スロット用意され、底面の蓋を開けてアクセス可能。ただし、標準で最大容量の8GB搭載しており、増設は不可

薄型軽量のメインストリームノートとしておすすめ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、セガの「ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版」の6種類。比較用として、NECの「LaVie X LX850/JS」、日本エイサーの「Aspire S7」の結果も加えてある。なお、PCMark Vantageは一部テストが正常に計測できなかったため、計測できたスコアのみを掲載している。

 VAIO Tシリーズ15LaVie X LX850/JSAspire S7
CPUCore i7-3537U (2.00/3.10GHz)Core i7-3517U (1.90/3.00GHz)Core i7-3517U (1.90/3.00GHz)
チップセットInte HM76 ExpressInte QS77 ExpressInte HM77 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000
メモリPC3-12800 DDR3L SDRAM 8GBPC3-10600 DDR3L SDRAM 4GBPC3-10600 DDR3L SDRAM 4GB
ストレージ24GB SSD + 1TB HDD256GB SSD128GB SSD
OSWindows 8Windows 8Windows 8
PCMark 7 v1.0.4
PCMark score363652414879
Lightweight score218253973048
Productivity score160441952177
Creativity score693699029609
Entertainment score307637413445
Computation score182871820918061
System storage score254353824955
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark SuiteN/AN/AN/A
Memories Suite593986437147
TV and Movies SuiteN/AN/AN/A
Gaming Suite8706106639352
Music Suite84231672012664
Communications SuiteN/AN/AN/A
Productivity SuiteN/AN/AN/A
HDD Test Suite122314327740386
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/A
CPU Score949591259150
Memory Score852672777802
Graphics Score269429002793
HDD Score90685168647585
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score526953395102
SM2.0 Score171517491665
HDR/SM3.0 Score220522412142
CPU Score367535483451
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.17.27.1
メモリ7.55.95.9
グラフィックス5.65.65.4
ゲーム用グラフィックス6.46.46.4
プライマリハードディスク5.98.08.1
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット258124962392
ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版
横1,280ドットフルスクリーン315304283

 結果を見ると、VAIO Tシリーズ15はSSD+HDDのハイブリッド仕様ということもあり、ストレージまわりのパフォーマンスは比較機種に劣っている。また、ストレージのパフォーマンスが大きくスコアに影響するPCMark 7の結果も、比較機種に比べやや低いスコアとなっている。ただ、PCMark 05の個別スコアを見るとわかるように、比較機種よりも上位のCPUを搭載しているために、処理能力は十分に優れる。また、ゲームベンチマークの結果も、わずかではあるが比較機種を上回っている。このあたりは、上位CPUの優位性と言っていいだろう。

 高負荷時の空冷ファンの動作音は、うるさいと感じるわけではないが、耳にはしっかり届く。負荷が低い状態ではほとんど聞こえないものの、動画のエンコード作業などを行なう場合には、若干気になるかもしれない。

 次にバッテリ駆動時間だ。VAIO Tシリーズ15は、ほかのUltrabookに比べると携帯性は求められないと思うが、念のため検証した。VAIO Tシリーズ15に搭載されるバッテリは、容量3,760mAhのリチウムイオンバッテリで、公称の駆動時間は約5.5時間。そして、Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、キーボードバックライトはオフ、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測してみたところ、約4時間43分であった。公称値には届かなかったが、最低輝度ではないことを考えると、納得できる。オフィスや家庭内で持ち運んで使う範囲内なら、ACアダプタを持ち歩く必要はほぼなさそうだ。

 ちなみに、Ultrabookとしては珍しく、バッテリは着脱可能となっている。ただし、ネジ止め式のため、積極的に交換できるように考慮されてはいない。そのため、交換式とはなっているものの、モバイル性を高めるものではないと言える。

着脱式のバッテリを採用。ただしネジ止め式のため交換は面倒。容量3,760mAhのリチウムイオンバッテリで、公称の駆動時間は約5.5時間
付属のACアダプタは、15型ノートPCとして標準的なサイズだ
ACアダプタと電源ケーブルを合わせた重量は、実測で260gだった

 VAIO Tシリーズ15は、Ultrabookのカテゴリに属する薄型ノートではあるが、15.5型の大型フルHD液晶のためフットプリントはかなり大きく、重量も約2.35kgと重く、携帯性に優れる製品ではない。特に、15.6型フルHD液晶搭載で薄さ12.8mm、1.6kgを切る軽量ボディを実現するNECのLaVie Xの存在を考慮すると、VAIO Tシリーズ15の位置付けは少々微妙に感じる。ただ、タッチパネルやSSDと大容量HDDの併用によるストレージ容量と速度の両立、BDXLドライブを標準搭載といった部分の優位性は十分にある。特に、AV用途での利用など、メインストリームノートがカバーする用途には、VAIO Tシリーズ15のほうが圧倒的に向いている。つまり、VAIO Tシリーズ15は、薄型で軽量なモバイルノートという、一般的なイメージのUltrabookとして見るのではなく、メインストリームノートを置き換える存在と考えるべきだ。

 ところで、実売16万円前後という価格は、競合するメインストリームノートと比較してやや割高に感じるかもしれない。売れ筋の15型液晶搭載ノートPCの相場は10万円未満であり、どうしても高く感じてしまうだろう。とはいえ、液晶はフルHD表示に対応するとともに、タッチパネルも搭載し、SSDと大容量1TB HDDのハイブリッド構成、BDXLドライブ標準搭載など、スペックを見ると納得できる価格で、決して高価というわけではない。特に、タッチパネル搭載のメインストリームノートが非常に少ないことを考えると、それだけでも魅力があると言える。

 コストを優先させたいなら、ややスペックの落ちる下位モデルを選択するか、84,800円からの直販モデル「SVT1511AJ」を予算に応じた仕様で購入するのがおすすめだ。ただ、スペックを重視するなら、今回取り上げた上位モデルがおすすめなのは言うまでもない。ビジネスやホビー、AV用途など、幅広い用途に利用でき、さらに持ち運びも比較的楽に行なえるメイン用途のノートPCを探しているなら、選択肢として考慮すべき製品だ。

(平澤 寿康)