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ASUS 「PadFone2」

~タブレットにもなるSIMロックフリースマートフォン

ASUS 「PadFone2」
発売中

価格:オープンプライス

 ASUSは、タブレット型のドッキングステーションに取り付けることでタブレットとしても利用できるスマートフォン「PadFone 2」を、日本でも発売した。日本で発売されるスマートフォンは、携帯電話キャリア経由での販売となるのが一般的だが、PadFone 2はASUSが直接販売するとともに、SIMロックフリーでの販売となり、ユーザーが利用する携帯電話キャリアを自由に選択できる点も特徴となっている。

初代からドッキングの機構を変更

 PadFone 2は、ASUSが「スーパーフォン」と呼ぶタブレットとしても利用可能なスマートフォン「PadFone」シリーズの最新モデルだ。初代PadFoneは、日本では正式販売されなかったため、PadFone 2が日本での初登場モデルとなる。

 PadFone 2の最大の特徴は、スマートフォンとしてもタブレットとしても使える、独特のドッキングスタイルだ。PadFone 2には、スマートフォンであるPadFone 2本体に加え、10.1型液晶搭載のドッキングステーション「PadFone 2 Station」が付属する。PadFone 2 Station背面には、PadFone 2を取り付ける専用のスロットが用意されており、そこにPadFone 2を装着することで、10.1型タブレットとして動作するようになるのだ。

 この仕組みは、初代PadFoneと同じだ。ただ、初代PadFoneでは、蓋付きのスロットにスマートフォン本体を取り付けるようになっていたのに対し、PadFone 2のスロットでは蓋がなくなっている。これにより、タブレットとして利用している場合に着信があっても、サッと本体を取りだして受話できるようになっている。筆者は、COMPUTEX TAIPEIで開催された発表会などで初代PadFoneを触ったことがあるが、それと比べるとPadFone 2ではスマートフォン本体の着脱が簡単に行なえ、使い勝手が向上したと感じた。

PadFone 2本体。単体では通常のスマートフォンと同等に利用可能
付属のPadFone 2 Station。10.1型液晶搭載で、PadFone 2とドッキングさせることでタブレットとして利用可能となる
PadFone 2 Station背面には、PadFone 2本体を取り付けるスロットが用意されている
2011年のCOMPUTEX TAIPEIで発表された、初代PadFone。背面のドッキングスロットには蓋が付いている
PadFone 2では、上からスライドさせてドッキングさせる仕様へと変更。着脱がやりやすくなり、使い勝手が向上

最新のハイエンドスマートフォン同等のスペックを搭載

 ではまず、スマートフォンであるPadFone 2の本体を見ていくことにしよう。

 PadFone 2は、4.7型液晶を採用するスマートフォンだ。本体サイズは、68.9×137×9mm(幅×奥行き×高さ)となっており、4.7型液晶採用スマートフォンとしては若干大きい部類に入る。特に、手の小さな女性には、かなり大きいと感じられるかもしれない。

 本体デザインは、本体下部が約3.3mm、上部が約9mmと、下部から上部に向かって厚さが増している、くさび型のデザインを採用している。また、側面や角はカーブが取り入れられており、手にフィットしやすく、持ちやすい印象を受ける。背面は同心円状の細かな溝が掘られており、手触りも独特だ。このくさび型のボディや裏面の同心円状のデザインは、Ultrabook「ZENBOOK」シリーズの流れを汲むもので、ASUSらしさが強く伝わってくる。

 本体単体での重量は、公称で135g、実測で134.5gとなっている。4.7型液晶搭載スマートフォンとしてはかなり軽い部類で、実際に手に持ってもなかなかの軽さが実感できる。

 物理ボタンは、右側面の電源ボタンとボリュームボタンのみで、ホームや戻るなどのボタンは全てセンサー式となり、液晶画面内の下部に表示される。下部には、PadFone 2 Stationとの専用接続端子、上部にはトレイ式のmicro SIMカードスロットとヘッドフォン/マイク共用端子を備える。専用接続端子はMicro USBおよびMHL接続にも対応しており、通常のケーブルをそのまま接続可能だ。

 内蔵バッテリの充電は、この専用接続端子に付属のACアダプタと専用USBケーブルを利用して行なうのが基本だが、一般的なMicro USBケーブルを利用した充電や、PCのUSB端子や汎用のUSB ACアダプタ、ポータブルバッテリを利用した充電も可能。このあたりは、一般的なスマートフォンと同じだ。

 CPUは、QualcommのクアッドコアプロセッサAPQ8064を採用。動作クロックは1.5GHzで、最新のハイエンドスマートフォンにも広く採用されているものだ。メモリは2GBと大容量で、メモリ不足で動作が重くなる懸念は少ない。実際にいくつかのアプリを利用してみたが、動作は非常に軽快で、全くストレスを感じることなかった。

 液晶の表示解像度は1,280×720ドットのHD解像度となっている。2012年12月にKDDIから登場したHTC J Butterflyや、NTTドコモの2013年春モデルでは、5型フルHD液晶を搭載する製品がいくつか登場しており、それらと比較すると精細感はやや劣る。とはいえ、実際に利用する場合には、表示品質に不満を感じることは全くないだろう。また、液晶方式はIPS方式で、視野角が広く発色も鮮やか。ちなみにASUSは、この液晶パネルのことを、高輝度かつ発色性能に優れる「Super IPS+」と呼んでいる。

 ストレージは64GBと、こちらも大容量。PadFone 2ではmicroSDカードスロットがなく、ストレージ領域の強化は行なえないが、標準でこれだけ大容量のストレージを搭載していれば、不安は少ないだろう。

 通信機能は、W-CDMA(HSDPA) 900MHz/2,100MHzの3G機能に対応し、LTEは非対応。また、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANおよびBluetooth 4.0も標準搭載する。カメラは、背面が1,300万画素、液晶面が120万画素。センサー類は、GPS、加速度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサー、近接センサー、光センサーを搭載。防水防塵、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線など、日本向けのスマートフォンに搭載される機能は搭載していない。OSはAndroid 4.1となる。

 内蔵バッテリは容量2,140mAhで、最近のスマートフォンとしては標準的な容量となっているが、着脱は不可能。バッテリ駆動時間は、公称で3G連続通話最長約16時間としている。

PadFone 2本体。正面から見たデザインは、一般的なスマートフォンと大きく変わらない
HTC J Butterfly(左)との比較。フットプリントは68.9×137(幅×奥行き)mmと、4.7型液晶搭載スマートフォンとしてはやや大きいが、5型液晶搭載のHTC J Butterflyよりはコンパクトだ
左側面。高さは下部が約3mm、上部が9mmと、くさび型のデザインとなっている。背面などの角は丸く切り取られており、手にフィットする
HTC J Butterfly(左)との比較。最厚部ではPadFone 2の方がわずかに厚い
上部側面。中央にヘッドフォン/マイク共用ジャック
ヘッドフォン/マイク共用ジャックの横にはmicro SIMカードスロットを用意。スライド型で、付属のピンを利用して開閉する
右側面。こちらには電源およびボリュームの物理ボタンを配置
下部側面。中央にはPadFone 2 Stationとの接続や、付属のACアダプタを接続する13ピンの専用コネクタを用意。一般的なMicro USBやMHLケーブルの接続にも対応している
内蔵バッテリの充電は、付属のACアダプタを利用するか、汎用のUSB ACアダプタやPCのUSBポート経由での充電も可能
背面。背面はややラウンド形状となっていることがわかる。また1,300万画素のカメラも搭載
背面には同心円状の細かな溝の加工が施されている。このデザインは、ZENBOOKシリーズのデザインを踏襲したものだ
液晶面には120万画素のカメラも搭載
PadFone 2本体の重量は、実測で134.5gだった
1,280×720ドット表示対応の4.7型液晶を搭載。高輝度かつ発色性能に優れるSuper IPS+パネルを採用しており、表示品質は良好だ

PadFone 2 Stationは10.1型液晶を搭載

 次に、ドッキングステーションのPadFone 2 Stationだ。PadFone 2 Stationの裏面にはPadFone 2をドッキングさせる専用のスロットが用意されている。PadFone 2 Stationには、10.1型のタッチ液晶とバッテリ、前面の100万画素カメラ、スピーカのみを内蔵しており、その他のタブレットとして動作させるために必要となるパーツは一切搭載しない。スマートフォンのPadFone 2本体を取り付けてはじめてタブレットとして動作するようになる。

 ドッキングさせた状態でも、PadFone 2裏面のカメラはPadFone 2 Station側から利用可能。ちなみに、横位置で利用する場合には、PadFone 2本体は縦となっているため、カメラのセンサーが縦位置の状態で横向きにクリッピングした撮影となり、約550万画素相当での撮影となるが、カメラアプリの下部に表示されるアイコンで撮影の向きを変更すれば、センサーをフルに使った撮影も可能だ。

 物理ボタンは、左側面にボリュームボタン、上部側面に電源ボタンを備える。また、下部側面にはPadFone 2本体に用意されているものと同じ専用接続端子がある。この専用接続端子には、通常のMicro USBケーブルも接続可能だが、PadFone 2本体と異なりMHLケーブルは非対応となっている。ただし、SDカードスロットなどは用意されないため、ストレージの増量は不可能。できれば、PadFone 2 Station側にはSDカードスロットを用意してもらいたかったように思う。

 PadFone 2 Stationのサイズは、263×180.8×10.4mm(幅×奥行き×高さ)。ただし、横から見ると、ドッキング用のスロット部分が周囲よりやや厚くなっている。高さ10.4mmは、このドッキング用のスロット部分以外を指しており、スロットにPadFone 2本体を取り付けた場合の最厚部は、実測で13mm弱であった。ただ、実際に手に持つ場合にはこの厚くなる部分をつかむことはほとんどなく、その厚さを感じることはないだろう。

 搭載する液晶は、1,280×800ドット表示対応の10.1型液晶で、こちらは一般的なIPSパネルを採用。発色性能はPadFone 2本体の液晶の方が優れるが、視野角が広く、実際に使ってみてPadFone 2 Stationの液晶の表示品質が大きく劣るとは感じなかった。それよりも、表示解像度がPadFone 2本体よりも80ライン分だけしか広くなっていない点が残念に思う。最近の10.1型タブレットではフルHDクラスの液晶を搭載する例が増えていることを考えると、PadFone 2 Stationでも同様の対応液晶を搭載してもらいたかった。

 PadFone 2 Stationに内蔵されるバッテリの容量は、5,000mAh。PadFone 2本体内蔵バッテリの2倍以上の容量となっており、ドッキングさせることでバッテリ駆動時間を大幅に延長できる。公称では、3G待ち受け時間はPadFone 2単体で約336時間、PadFone 2 Stationドッキング時で約800時間となっている。ただし、ビデオ再生時間はPadFone 2単体時は約9時間となっているのに対し、PadFone 2 Stationドッキング時には約7時間と、逆に短くなる。これは、PadFone 2 Stationの10.1型液晶の方が消費電力が大きくなるためで、ドッキングさせれば、常にバッテリ駆動時間が長くなるわけではないということは、頭に入れておく必要がありそうだ。

 PadFone 2 Stationの内蔵バッテリの充電には、付属のACアダプタと専用USBケーブルを利用した充電が基本となっており、PCのUSBポートや汎用のUSB充電アダプタを利用した充電は行なえなかった。そのため、PadFone 2 Stationを持ち出して長時間利用する場合には、付属のACアダプタも同時に携帯するようにしたい。

 PadFone 2 Stationの重量は、単体で約514g。実測では505gであった。PadFone 2本体と合わせた重量は、実測で640g。10.1型タブレットとしては標準的な重量となっており、合体形式を実現していることを考えると、まずまずの重量と言えそうだ。

PadFone 2を取り付けることでタブレットとして利用可能となる、PadFone 2 Station
7型液晶搭載のNexus 7との比較。フットプリントは、263×180.8×10.4mm(幅×奥行き×高さ)と、一般的な10.1型液晶搭載タブレットとほぼ同等の大きさだ
下部側面。高さは10.4mmとされているが、中央部分のPadFone 2本体を取り付けるスロット部分は若干厚くなっており、この部分の高さは実測で13mm弱であった
左側面。横から見ても、ドッキングスロット部が盛り上がっていることがよく分かる。また、こちらにはボリュームボタンも用意されている
上部側面。PadFone 2本体のヘッドフォン/マイク共用ジャックがそのまま利用可能。また、PadFone 2 Station側に電源ボタンが用意されている
右側面。こちらにはボタンやコネクタなどはない
背面。PadFone 2本体は液晶面が内側になるように取り付けるため、本体の背面カメラはタブレットモードでも利用可能
タブレットモードで背面カメラを利用する場合、横向きでは最大約550万画素の撮影となるが、カメラアプリ下部のアイコンで撮影の向きを変更すれば、フル解像度での撮影が可能となる
背面にはスピーカーも搭載
1,280×800ドット表示対応の10.1型液晶を搭載。パネルはIPS方式で、PadFone 2本体と比べると若干表示品質が劣るものの、大きな差はない
内蔵バッテリの充電は、付属のACアダプタを利用する必要があり、汎用のUSB ACアダプタやPCのUSBポート経由での充電は行なえない。底面側に用意されている接続コネクタは、PadFone 2本体のコネクタと同じ形状のもので、汎用のMicro USBケーブルも接続可能だが、MHL出力には非対応
付属のACアダプタはコンパクトで、持ち運びは苦にならない
こちらは付属の専用USBケーブル。本体接続側のコネクタが独自形状となっている。PCのUSBポートに接続してデータ送受信などが可能
PadFone 2 Station単体の重量は、実測で505gだった
PadFone 2本体とPadFone 2 Stationを合わせた重量は、実測で640g。10.1型タブレットとして標準的な重さだ

3G周波数帯域はドコモおよびソフトバンクのサービスに対応

ドコモMVNOの「IIJmio高速モバイル/Dサービス」のSIMカードを取り付けてみたが、問題なく通信可能だった

 先に紹介したように、PadFone 2の3G通信機能は、900MHz帯域および2,100MHz帯域のW-CDMA(HSDPA対応)に対応している。また、SIMロックフリーとなっており、任意のSIMを取り付けて利用可能となっている。日本でこの周波数帯域のW-CDMAを利用する通信キャリアはNTTドコモとソフトバンクモバイルだが、ソフトバンクモバイルのSIMは単体で入手できないため、基本的にはNTTドコモのSIMを取り付けて使うのが中心となるだろう。また、NTTドコモのFOMAネットワークを利用するMVNO事業者のSIMカードも同様に利用可能なはずだ。なお、ASUSはどの通信キャリアでの利用が可能かは公表していない。対応するSIMカードの形状は、micro SIMとなる。

 今回は、筆者が利用しているドコモMVNOである「IIJmio高速モバイル/Dサービス」のSIMカードを取り付けてみた。MVNOのSIMカードを利用する場合には、APNの設定を手動で行なう必要があるため、少々面倒ではあるものの、問題なくデータ通信できた。

 ただし、MVNOを含め、NTTドコモのSIMを利用する場合、800MHz帯域を利用するFOMAプラスエリアには対応しないため、NTTドコモが取り扱うスマートフォンよりも利用できるサービスエリアが狭くなる点は注意が必要だ。

ドッキング時の着信通知やバッテリの挙動は細かく設定可能

 PadFone 2にプリインストールされるアプリは、キャリアが扱うスマートフォンやタブレットと比べるとかなり少なくなっている。ASUS独自のメモアプリやファイル操作アプリに加え、Office互換アプリ「Kingsoft Office」や電子書籍アプリの「BookLiveReade」などで、ASUS製Androidタブレットに付属するアプリとほぼ同等となっている。

 日本語入力には富士ソフト製の「FSKAREN for Android」を採用。フルキー、フリック、手書き入力対応で、使い勝手はまずまずだ。

 PadFone 2専用としては、「PadFone Station Assistant」というウィジェットが用意されている。これにより、ドッキング時の充電設定や着信時の挙動などを設定できる。充電設定では、双方のバッテリを効率良く利用したり、PadFone 2 Stationから本体に常に電力を供給するなどの設定が可能。どちらのモードを頻繁に利用するかによって、設定を柔軟に変更できる点は嬉しい。

 通話設定では、着信時に本体を取り出したら自動的に通話状態に移行するかどうか、Bluetoothヘッドセットを使った応答にするか、といった設定が行なえる。また、本体とPadFone 2 Station双方のバッテリ残量を表示するウィジェットも用意され、ひと目でバッテリの状況をチェックできる。単純にスマートフォンとタブレット双方の形状で利用できるだけでなく、形状を切り替えても使い勝手を損なわないような仕組みを用意している点は好印象だ。

ASUS独自のメモアプリ
こちらはオリジナルのファイル操作アプリ
電子書籍アプリ「BookLive! Reader」もプリインストールされている
利用モードに応じて再生モードを切り替えるユーティリティも付属
日本語入力は、富士ソフトの「FSKAREN for Android」を採用。フリック入力、フルキー入力、手書き入力に対応している
フルキー入力時も、フリックで大文字や機能などの入力が可能
充電方式や着信時の動作などを設定するオリジナルウィジェットを用意
スマートフォン単体での長時間利用を優先するなど、使い方に応じて簡単に充電モードが変更可能だ
着信時にPadFone 2本体を外すだけですぐ通話できるような設定が可能

設定次第で、着脱後もアプリの継続利用が可能

 PadFone 2の単体で利用している状態では、液晶にはスマートフォン向けのUIが表示され、PadFone 2 Stationにドッキングさせると、タブレット向けUIへと切り替わる。こういった仕様が実現できているのは、Androidがバージョン4.0でスマートフォン向けOSとタブレット向けOSを統合したことが大きな理由と言えるだろう。

 切り替わっているのはUIのみなので、インストールされているアプリやアカウント情報などの各種設定は同一のまま。スマートフォンとタブレットを別々に利用している場合には、それぞれの機器でアカウントの登録や設定、アプリのインストールを行なう必要があるうえに、ゲームなどアプリによっては設定を共有できない場合もある。しかしPadFone 2なら、どちらのモードでも全く同じ環境でアプリが利用できる。これは、実際に利用してみると非常に便利で、これまでこういった使い方ができなかったのが不思議なぐらいだ。ただし、利用モードによってUIが異なることから、ホーム画面に置くアイコンやウィジェットは、モードごとの個別管理となる。

 PadFone 2着脱時の挙動だが、切り替わりの時間は1~2秒ほどと、ほとんど待たされる感覚はないが、着脱前に利用していたアプリについては、そのまま継続して利用できるものと、自動的に終了してしまうものがある。着脱時のUIの切り替えのことをASUSは「ダイナミックディスプレイ切り替え」と呼んでいるが、実際にPadFone 2の着脱を行なうと、初期設定では「ダイナミックディスプレイ切り替えに対応していないアプリは自動的に終了する」という旨のメッセージが表示されるようになっている。

 ただ、これは標準設定での挙動で、設定メニューに用意されている「ダイナミックディスプレイ切り替え」という設定項目では、切り替え時に動作を継続するアプリを選択でき、挙動を変更可能だ。例えば、プリインストールアプリの「YouTube」は、標準ではチェックが外され、着脱時に自動的に終了するものの、チェックを入れておくと、アプリの継続利用が可能となる。ちなみに、YouTubeアプリでは動画再生中に着脱を行なった場合、アプリは終了しないものの、動画の再生は止まってしまう。

 ダイナミックディスプレイ切り替えの設定でチェックを入れても、着脱時に挙動がおかしくなる可能性も十分に考えられる。そのため、あらかじめ利用するアプリごとに着脱時の挙動を確認した上で運用した方が安全だ。

標準設定では、PadFone 2をPadFone 2 Stationに着脱させると、このようなメッセージが表示され、一部アプリは自動的に終了してしまう
設定メニューの「ダイナミックディスプレイ切り替え」で、チェックの入っているアプリについては、着脱時に自動終了しなくなる。YouTubeアプリなどは、標準ではチェックが入っていないが、チェックを入れると着脱時でも自動終了しなくなることを確認した
ダウンロードしたアプリは、全てをまとめて起動したままにすることも可能
【動画】PadFone 2を操作している様子

パフォーマンスは現役スマートフォン最強クラス

 ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークアプリは、「Quadrant Professional Edition Version 2.1.1」と「AnTuTu Benchmark v3.0.3」、「Silicon Studio MOBILE GPUMARK Version 1.0」の3種類。PadFone 2では、単体とドッキング時双方で計測。比較用として、Nexus 7とHTC J Butterflyで計測した結果も加えてある。ただし、Nexus 7とHTC J Butterflyは、筆者が普段利用しているもので、双方とも初期状態とは異なる状態で計測した結果となっている点はご了承願いたい。

 結果を見ると、プロセッサが1.5GHz動作のAPQ8064、RAMが2GBと、基本的なスペックがほぼ同等のHTC J Butterflyとほぼ同等か若干凌駕するスコアを記録している。総合結果のみの比較では、QuadrantではHTC J Butterflyがわずかに優れる結果となっており、Antutu BenchmarkではPadFone 2が上回った。ただ、双方の細かなスコアを見ると、CPUやメモリのスコアはほぼ同等となっているのに対し、グラフィックのスコアはPadFone 2の方が上回るという、ほぼ共通の傾向が見られる。これは、液晶の表示解像度がHTC J ButterflyがフルHDなのに対し、PadFone 2はHDと低解像度であるため、負荷が軽くスコアが高まったと考えられる。

 MOBILE GPUMARKの結果では、その差がさらに顕著となっており、PadFone 2はHTC J Butterflyの2倍ほどのスコアとなっている。表示条件が異なるため、横並びでの比較は本来難しいが、ゲームなどの3D描画アプリでは、パフォーマンス差を体感できるものが出てくる可能性がある。

 ただ、ブラウザや2D描画の一般的なアプリを使う場合では、PadFone 2とHTC J Butterflyとの間のパフォーマンスの体感差はほとんどない。実際に同じアプリを双方の端末で使ってみたが、筆者にはほとんど体感差が感じられなかった。

 ちなみに、PadFone 2の単体とドッキング時の結果に若干の差が見られる。ただ、ベンチマークアプリによって傾向が異なっており、差に一貫性が見られない。

Quadrant Professional Edition Version 2.1.1
AnTuTu Benchmark v3.0.3
Silicon Studio MOBILE GPUMARK Version 1.0

 次に、バッテリ駆動時間だ。先に紹介したように、動画再生時のPadFone 2のバッテリ駆動時間は、単体よりもPadFone 2 Stationドッキング時の方が公称の数値が短くなっている。そこで今回は、実際にPadFone 2単体と、PadFone 2 Stationにドッキングさせた状態で、ストレージに保存したフルHD動画を連続再生させた場合の駆動時間を計測することにした。利用したHD動画は、映像ビットレートが4MbpsのH.264形式の動画ファイルで、バックライト輝度を最低に設定し、無線LANオン、Bluetoothオフの条件で計測した。

 結果は、PadFone 2単体では約7時間26分、PadFone 2 Stationドッキング時で約8時間55分であった。今回の計測では、バックライト輝度を最低に設定したこともあってか、公称と違いPadFone 2 Stationドッキング時のほうがやや長くなったが、ドッキングによってバッテリ容量が大きく増えるにもかかわらず、1時間30分ほどしか増えていないのは、やはり10.1型液晶の消費電力が大きいからだ。おそらく、液晶バックライト輝度を高めて計測すると、公称値のように駆動時間が逆転する可能性が高い。

 外出時に長時間利用したいのであれば、タブレットモードでの利用を極力減らす方が良いが、動画連続再生で9時間弱の駆動時間があるので、それほど気にする必要はない。

 PadFone 2は、単体でスマートフォン、付属のPadFone 2 Stationとのドッキングでタブレットとして利用できる、これまでにはない仕様を実現する、非常におもしろい製品だ。LTEに対応していなかったり、防水防塵やおサイフケータイなど、国内向けスマートフォンに用意される機能が搭載されない点、PadFone 2 Stationの液晶解像度が1,280×800ドットと、やや低い点など、やや気になる仕様もある。また、通信キャリアが独自に用意するサービスの利用が難しかったり、通信を行なうまでに少々面倒な設定が必要になるという点も、頭に入れておく必要はあるだろう。しかし、キャリアに縛られず利用できるという点は、非常に大きなメリットで、特に日本国内だけでなく海外でも使いたいという場合には、かなり魅力があるだろう。

 実売で70,000円前後という価格については、若干高いという印象を受けるかもしれない。しかし、現役ハイエンドクラスのスマートフォンとタブレットを別々に購入することを考えると、安価とも言える。キャリアが用意する割引き施策が利用できないため、通信コストを含めたトータルでのコストは高くなるかもしれないが、少なくともハードウェアに関してはかなり安いと言ってもいいだろう。

 初心者には少々おすすめしにくいのも事実だが、PadFone 2のようなSIMロックフリー機が普通に売られるようになれば、取り巻く環境も徐々に改善されていくだろう。今後日本でのSIMロックフリー機の普及を高める可能性があるという意味でも、PadFone 2の登場は大いに歓迎したい。

(平澤 寿康)