富士通「LIFEBOOK AH570/5BM」
~3D撮影や3D放送の視聴が可能なノートPC



LIFEBOOK AH570/5BM

発売中

価格:オープンプライス(直販189,800円)



 2010年は「3Dテレビ元年」と言われているが、PC分野においてもも3D立体視への対応が注目されている。富士通やNEC、東芝がすでに3D立体視対応PCを発売しているほか、ソニーも2011年早々に3D立体視対応PCを発表するとされている。今回は、富士通の3D立体対応PCの最新モデル「LIFEBOOK AH570/5BM」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

●3D立体視対応の第2世代モデル

 LIFEBOOK AH570/5BM(以下、AH570/5BM)は、富士通のノートPCとして、初めて3D立体視に対応した製品だ。富士通の製品では、2010年夏モデルのデスクトップパソコン「ESPRIMO FH550/3AM」で初めて3D立体視をサポートしており、秋冬モデルとして登場したLIFEBOOK AH570/5BMとESPRIMO FH900/5MBおよびESPRIMO FH570/3BMは、同社の3D立体視対応PCとして2世代目となる製品だ。これらの秋冬モデルでは、新たにBS11などで放送されている3D放送の視聴にも対応するようになり、3D立体視の楽しみ方がさらに広がった。

 AH570/5BMのボディは、オーソドックスなデザインであり、ボディカラーは光沢のあるシャイニーブラックである。サイズは、384×266.3×31.8~40.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約3.1kgあるため、基本的には持ち運ばず据え置きで使うためのマシンだ。

 まずは基本スペックから見ていこう。CPUとして、Core i5-560M(2.66GHz)を搭載。メモリは標準で4GB実装しており、最大8GBまで増設が可能だ。HDDは750GBで、ノートPCとしてはかなり大容量だ。また、光学ドライブとしてBDドライブを搭載しており、Blu-ray 3Dコンテンツの再生にも対応する。単体GPUは搭載していないため、ゲーム用途には向かないが、それ以外の用途ならまず不満のない性能といえる。プリインストールOSは、Windows 7 Home Premium 32bit版だが、リカバリを行なうことで、Windows 7 Home Premium 64bit版を使用できる。

 また、地上/BS/110度CS対応の3波デジタルチューナを搭載していることも特徴だ。BSやCS放送の一部では、サイド・バイ・サイド方式による3D放送を開始しているが、AH570/5BMは、この3D放送に対応していることも大きな魅力だ。もちろん、3D放送の録画も可能である。

LIFEBOOK AH570/5BMの上面。カラーはピアノのような光沢のあるシャイニーブラックだ「DOS/V POWER REPORT」誌とLIFEBOOK AH570/5BMのサイズ比較。15.6型ワイド液晶搭載なので、フットプリントはかなり大きい
LEFEBOOK AH570/5BMの底面。中央にはメモリスロットカバーが、左下にはB-CASカードスロットが用意されているメモリスロットとして、SO-DIMMスロットが2基用意されている。標準で2GB SO-DIMMが2枚装着されており、空きスロットはないが、代わりに4GB SO-DIMMを装着することで最大8GBまで増設可能
B-CASカードスロット部分のアップCPUクーラーのダストカバーを外すことで、ヒートシンクに詰まったゴミやホコリを清掃できる光学ドライブとして、BDドライブを搭載

●偏光方式の3D液晶を採用

 AH570/5BMの最大のウリは、3D立体視に対応していることだ。PCやテレビでの3D立体視の方式は、偏光方式とアクティブシャッター方式に大別でき、それぞれ長所と短所がある。AH570/5BMは、偏光方式を採用している。

 偏光方式は、液晶に1ラインごとに偏光の向きを変えるパネルが設けられており、右目と左目の偏光板の向きを変えた専用メガネを通して見ることで、右目用の映像と左目用の映像を分離するという仕組みだ。液晶の表示を高速に切り替え、そのタイミングにあわせてメガネの液晶シャッターを切り替えるアクティブシャッター方式に比べて、メガネに電源が不要で、メガネを軽くできることや、コストが安くつくことがメリットだ。その反面、3D立体視が可能な視野角が狭くなったり、縦方向の解像度が半分になることが、偏光方式の弱点だ。AH570/5BMの液晶解像度は、1,366×768ドットであり、3D表示時の縦解像度は384ドット相当になる。専用3Dメガネが1つ付属しているが、追加のメガネも3,800円で販売されている。

 液晶パネルは、光沢タイプであり、コントラストや輝度は高い。2D表示時の表示品位は、一般的な液晶と変わらず、不満のないレベルだ。ただし、光沢タイプなので、外光の映り込みが気になることがある。

光沢タイプの3D立体視対応15.6型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットだ専用3Dメガネが1つ付属する。メガネは電源不要で軽い専用3Dメガネの収納用ケース

●3D静止画や3D動画の撮影が可能な3Dカメラを搭載

 3D液晶を備えていても、まだ3Dコンテンツはそれほど多くはない。しかし、AH570/5BMは、液晶上部に130万画素カメラを2基備えており、3D静止画や3D動画の撮影が可能だ。AH570/5BMで、3D静止画や3D動画を撮影するには、3Dカメラビューアーというソフトを利用する。3Dカメラビューアーの使い方は簡単で、撮影した静止画や動画に額縁やエフェクトなどをつけることもできる。もちろん、通常のWebカメラとして、テレビ電話などに使ったり、カメラに向けて手を動かすことで音楽や映像の早送りや停止などが可能なジェスチャーコントロール機能もサポートしている。

 また、富士フイルムの3Dカメラ「FinePix REAL3D W3/W1」で撮影した3D静止画や3D動画も、FinePiX用ビューアーの「MyFinePix Studio」の最新バージョン(2010年10月4日付けでバージョンアップ)で、偏光方式の3D液晶に対応したため、AH570/5BMでの3D表示が可能だ。

液晶上部に130万画素カメラを2基搭載しており、3D静止画や3D動画の撮影が可能3Dカメラビューアーで、3D動画を撮影しているところ。3Dメガネをかけて見ると、ちゃんと3Dに見える

●Blu-ray 3Dの再生やDVD-Videoなどの3D変換に対応、3D放送も見られる
「Fujitsu PowerDVD9 3D Player」は、Blu-ray 3Dの再生に対応しているほか、通常のDVD-Videoや動画、静止画を3D変換する機能も備えている

 高品質な3Dコンテンツとして注目を集めているのが、Blu-ray 3Dだ。日本で発売されているBlu-ray 3D対応タイトルはまだ数種類だが、今後はBlu-ray 3D対応タイトルの増加が期待できる。AH570/5BMにプリインストールされている、「Fujitsu PowerDVD9 3D Player」は、Blu-ray 3Dの再生に対応しているほか、通常の2DのDVD-Videoタイトルや動画、静止画を3D変換する機能も備えている(BDタイトルの3D変換には非対応)。

 2D→3D変換は、最初から3Dで作られたBlu-ray 3Dほどの立体感は得られないものの、タイトルによっては結構効果的だ。DVD-Videoの「トイ・ストーリー」を3D変換して見てみたが、ちゃんと3D効果が感じられた。Blu-ray 3Dについては、「モンスターハウス3D」と「タイタンの戦い3D」を再生してみたが、やはり3Dコンテンツだけあり、十分な立体感であった。

 さらに、AH570/5BMのテレビ視聴録画ソフトである「DigitalTVbox」は、BS11やスカパー!などで行なわれているサイド・バイ・サイド方式の3D放送にも対応している。BS11の3D放送を見てみたが、こちらも自然な立体感が得られた。

BS11で放送されている3D放送。サイド・バイ・サイド方式では、このように画面を半分に分割して、左目用と右目用の映像を同時に送っている3D放送時に3Dモードをオンにすると、1ラインごとに交互に右目用と左目用の映像が表示される全画面表示以外でも、3D表示が可能だ

●スクロールパッド装備で連続的な上下スクロールが可能

 キーボードはテンキー付きの全108キーで、キーピッチは約18.4mm、キーストロークは約3mmと余裕がある。配列も標準的で、キータッチもしっかりしており、快適にタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとして、タッチパッドタイプのフラットポイントを搭載する。フラットポイントの右側に、円形のスクロールパッドを備えており、指でクルクルと円周をなぞることで、上下に連続的にスクロールができるのも便利だ。また、キーボード上部には、サポートボタンとメニューボタンの2つのワンタッチボタンが用意されている。さらに、赤外線方式のリモコンやレーザーマウスも付属する。

キーボードは4列テンキー付きの全108キーで、キーピッチは約18.4mm、キーストロークは約3mmだ。配列も標準的で使いやすいキーボード上部に、サポートボタンとメニューボタンの2つのワンタッチボタンが用意されている
ポインティングデバイスとして、パッドタイプのフラットポイントを搭載。右側にある丸いパッドはスクロールパッドで、上下に連続的にスクロールが可能赤外線方式のリモコンが付属。離れた場所からも家電感覚で操作できる

●USB 3.0に対応するなど、インターフェイスも充実

 インターフェイスも充実しており、いち早くUSB 3.0に対応。USB 2.0×2とUSB 3.0×2を備えるほか、HDMI端子やExpressCardスロット、SDメモリーカードスロットも搭載している。無線LAN機能はIEEE 802.11b/g/n対応で、本体前面にワイヤレススイッチが用意されているので、素早く無線LAN機能の有効/無効を切り替えられる。

 バッテリは10.8V/2,000mAhの3セル仕様で、公称バッテリ駆動時間は約1.2時間と短いが、モバイル利用のための製品ではないので特に問題はないだろう。

左側面には、LAN、アナログRGB出力、HDMI端子、USB 2.0、USB 3.0×2、ExpressCard/34スロットが用意されている左側面のポート部分のアップ。青色のUSBポートがUSB 3.0対応だ右側面には、ヘッドフォン出力、マイク入力、BDドライブ、USB 2.0が用意されている
前面には、SDメモリーカードスロットが用意されている背面には、アンテナ入力端子が用意されている前面右側には、無線LAN機能の有効/無効を切り替えるためのワイヤレススイッチが用意されている
LIFEBOOK AH570/5BMのバッテリ10.8V/2,000mAhの3セル仕様であり、公称バッテリ駆動時間は約1.2時間と短いCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタのサイズはこのクラスとしては標準的だCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●Core i5搭載ノートとしては標準的なパフォーマンス

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にパナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」、レノボ「ThinkPad T410s」、デル「Studio 15 OPIデザイン」の値も掲載した。

 また、バッテリベンチマークソフト「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、1時間9分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。

 結果は、Core i5とHDDを搭載したノートPCとしては標準的な値であり、一般的な作業でパフォーマンス不足を感じることはまずないだろう。


LIFEBOOK AH570/5BMLet'snote J9ハイパフォーマンスモデルThinkPad T410sStudio 15 OPIデザイン
CPUCore i5-560M (2.66GHz)Core i5-460M (2.53GHz)Core i5-430M (2.26GHz)Core i5-430M (2.26GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアMobility Radeon HD 4570
PCMark05
PCMarks620977465677N/A
CPU Score7962714973756677
Memory Score5975562961845738
Graphics Score2734223926105234
HDD Score57962831942914646
3DMark03
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)49093345410110687
CPU Score1325114410681604
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH2722244524585991
LOW4186389338088933
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.398.2796.63100
HP99.9799.9799.97100
SP/LP99.9799.9710099.97
LLP99.9799.9799.97100
DP(CPU負荷)21292119
HP(CPU負荷)12131211
SP/LP(CPU負荷)10878
LLP(CPU負荷)9668
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード86.82MB/s189.4MB/s36.20MB/s60.85MB/s
シーケンシャルライト87.18MB/s154.6MB/s40.05MB/s60.53MB/s
512Kランダムリード32.97MB/s172.5MB/s23.30MB/s27.79MB/s
512Kランダムライト59.76MB/s106.2MB/s24.25MB/s40.09MB/s
4Kランダムリード0.411MB/s12.8MB/s0.425MB/s0.424MB/s
4Kランダムライト1.224MB/s20.91MB/s0.961MB/s1.399MB/s
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)1時間9分未計測4時間15分4時間6分
Lバッテリなし10時間15分なしなし
Xバッテリなしなしなしなし

●PCで3D体験をしたい人にお勧め

 AH570/5BMは、3D液晶と3Dカメラ、さらに3D放送対応デジタルチューナーを搭載したノートPCであり、市販のBlu-ray 3Dコンテンツはもちろん、3D放送も立体視で楽しめる。さらに、自分で3D動画や3D静止画を撮影でき、2DのDVD-Videoや動画、静止画を3D変換して楽しむこともできるので、せっかく3D液晶を備えていても、3Dコンテンツがなくて3D体験ができないという心配は無用だ。2010年はPCに関しても3D元年であり、3D対応PCの普及はまだまだこれからだが、今後、3D対応PCが少しずつ広がっていく可能性は高い。1台で3Dコンテンツの作成から再生までを楽しめるAH570/5BMは、一足先にPCで3D体験をしたいという人にお勧めだ。

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(2010年 11月 1日)

[Text by 石井 英男]