Hothotレビュー

レノボ・ジャパン「YOGA TABLET 8」

~持って良し、立てて良しの8型Androidタブレット

YOGA TABLET 8
発売中

実売価格:27,800円前後

 レノボ・ジャパン「YOGA TABLET 8」は、スタンドを本体に内蔵することで3種類のスタイルで利用できることを売りとする8型Androidタブレットだ。本体片側に大きなシリンダー形状を設けており、平面的なデザインが多いタブレットの中でも異彩を放っている。

 そして、そのデザインにより、自立させた状態の「スタンドモード」、手で持つ「ホールドモード」、傾斜を付けてテーブルの上に置ける「チルトモード」の3スタイルでの利用が可能なことを売りとしている。その独特なフォルムが生み出す使い勝手や、Androidタブレットとしての実力をレビューする。

自立も可能なスタンドを内蔵

 YOGA TABLET 8の最大の特徴は、そのデザインにある。液晶パネルの片側に丸いシリンダー形状が設けられており、一見すると以前のVAIOシリーズで採用されていた「シリンダーデザイン」を連想する。タブレットは鞄に入れた際の使い勝手などが考慮されて、平面的で薄型を追求する製品が多い中、大胆なデザインであると言っていいだろう。

 このシリンダー内部にはカメラや電源スイッチの各ユニット、バッテリを搭載。そして、外装部は回転式のスタンドを搭載し、本製品のみで自立させることができる。机に向かってタブレットを操作する時、動画を見る時、キッチンでの利用など、タブレットを立てて使うシチュエーションは多く思い浮かぶし、スタンド内蔵タブレットケースなどがアクセサリメーカー各社から頻繁に発売されていることからもニーズの高さを推察できる。

 スタンドを使うには、シリンダーの中央部分を回転させることで起こすことができる。スタンドを一杯まで出した場合の角度はおよそ30度。スタンドはリニアに動かすこともでき、途中で止めることもできる。あまりに角度を付けるとタッチした際のバランスが悪くなるが、バッテリがシリンダーにあるおかけで重心が安定しており、おおよそ75度(接地面側から15度)ぐらいまでは傾けても、利用に不都合はなかった。

 ちなみに、タブレット部の外装は樹脂系素材なのだが、スタンド部にはアルミを用いている。そのため、接地面に擦れる音や、接地面によっては滑るということもあるだろう。これを避けるために、小さなゴム足を同梱している。個人的にはデザインを損ねる方が気になるので貼ろうとは思わないが、スタンドの機能性とデザインのどちらを重視するかによって選べるシンプルな手段を提供しているのは好印象だ。

スタンドモード
内蔵のスタンドで本体を自立させるスタンドモード
裏面にアルミ製のスタンドを内蔵。ちなみに爪を入れて開けるような窪みがあるが、レノボ・ジャパンではシリンダー部を持って回転させる開き方を推奨している
自立させた時に安定性を高めるためのゴム足も付属。必要に応じてユーザー自身が取り付ける

 このシリンダー設計とスタンドの内蔵は、ほかにもメリットを生んでいる。1つは手で持った時のホールド感の向上だ。平面的なタブレットは、(7~8型以下なら)安定性を高めるなら本体を挟み込むように持つが、この場合、タブレットを持っている手の親指での操作はほぼ不可能。一方、親指でも多少操作できるようにと考えると、指の付け根付近でタブレットの角を支え、指の先でタブレット裏面を支えるようにするが、こちらは安定性が今ひとつだ。実は筆者はこの方法で片手操作をしていて、Nexus 7を2度落としている(幸いにも致命傷は負っていないが)。

 このシリンダー形状は、指だけで非常に安定感のある片手持ちができ、持っている手の親指での操作もできるところに良さがある。もちろん8型サイズなので画面全てを片手でカバーするのは難しいが、Web画面のスクロールや電子書籍のページ送り程度の操作は安定して行なえる。また、シリンダー部に重心があることで、持った際に安定感も実感できるほか、思ったより軽く感じられるのもメリットといえる。

 一方で、重心が偏っていることが不利になるシーンもある。それを感じたのはカメラを使用する時だ。先述の通り、カメラはシリンダー部に内蔵しており、、横位置で撮影する場合は重心がある部分を上側にして、タブレットの薄い部分で本体を支える格好が標準的なスタイルとなる。重心が高くなって不安定なので、かなり気を遣うし、かといって、シリンダー部を下側にすると滑り落ちそうで、もっと気を遣う。

 この不安定さについては設計上の宿命といえるだろう。運用で解決すべく、ひとまず横位置での撮影時はスタンドを開いて、そこに指を掛けるようにして撮影している。もっと良い方法があるかも知れず、まだまだ模索中だ。

 ちなみに、カメラユニットの配置の関係で、縦位置で撮影する場合は、事実上、左手でタブレットを持つスタイルに限定される。もちろん画面は90/180/270度回転可能なので、カメラを使わないなら左手で持っても問題なく利用可能だ。

ホールドモード
シリンダーのおかげで片手で持った状態でも親指の可動範囲に余裕を持たせることができる
裏面。このように左手で持った際にカメラが上側に来るレイアウトとなっている
横位置でカメラを使う場合は重心が上部に来て不安定になるので、スタンドに指を掛けるなど持ち方を模索している

 本製品のシリンダー設計とスタンド内蔵が生むもう1つのメリットが、チルトモードと呼ばれるスタイルでの利用だ。これはPC用キーボードのチルトスタンドのように、傾斜を付けて平面上に置くスタイルとなる。とくにQWERTYモードで文字入力する際にキーボードと同様の姿勢で入力でき使いやすい。スタンドを開いた時と閉じた時の2パターンの角度を選べるのも面白いところだ。

チルトモード
スタンドを閉じた状態でのチルトモード
スタンドを開いた状態でのチルトモード

シリンダー部の厚みは約20mm

 次に本製品の主な仕様をチェックしておく。ディスプレイは8型IPSパネルで、解像度は1,280×800ドット。昨今めざましい高密度化の流れには載っていないが、8型としては標準的な解像度だ。IPSパネルということもあり視野角は十分。ただ、表面処理が光沢タイプで、この映り込みは少々激しい。屋外では輝度を最大にしても表示内容を視認できないことがあった。

 プロセッサはMediaTekのMT8125。クアッドコアCortex-A7のCPUとPowerVR series5XTのGPUを統合したチップで、1.2GHzで駆動させている。メモリは1GB。ストレージは16GBを内蔵する。スタンドの内側にmicroSDカードスロットも備えており、ストレージ16GBで不足を感じる場合でも拡張は可能だ。Androidのバージョンは4.2.2。

 インターフェイスはMicro USB、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth 4.0、前面160万画素/背面500万画素カメラ、音声入出力。前面にはステレオスピーカーを内蔵。ソフトウェアとしてドルビーデジタルプラスもインストールされており、小型のタブレットのわりには広がりのあるサウンドという印象を受けた。

 センサー類は、加速度センサー、光センサー、電子コンパス、GPSを搭載する。

 音量調整スイッチは本体側面に備えるが、本体/画面の回転に合わせてアップ/ダウンの機能が自動的に入れ替わる仕組みになっている。例えば、タブレットを横位置で利用した場合はボタンが縦方向に並ぶので常に上側のボタンが音量アップ、縦位置で使用した場合は画面に表示される音量バーのアップ/ダウンの方向に合わせてボタンの機能も入れ替わるようになっている。アップ/ダウンの機能が固定されたタブレットに慣れていたので最初は違和感があったが、この方が直感的で好ましい仕様だ。

 電源はシリンダーの脇にあり、この当たりもVAIOシリーズのシリンダーデザイン風。本体サイズは公称値で213×144×3~7.3mm(幅×奥行き×高さ)とされているが、この高さの値はシリンダー部を省いており、その直径は20mmほどある。カバンなどに入れる際にもそれほど気にならなかったが、狭いスペースに収納しようと考えている人は注意した方が良いだろう。重量は401gだが、先述の通りシリンダー部を持った場合には重心部分を手で持つことになるので、数字以上に軽く感じられる。

 付属のACアダプタはUSB変換タイプで、5V/1.5A出力の仕様。ケーブルも付属する。

 価格は実売で27,800円ほど。WWAN非搭載の7~8型Androidタブレットというカテゴリで見ると割高に感じるが、クアッドコアCPUを搭載するSoCを搭載する点や、製品の作り込みからすると、妥当な価格という印象を受けている。

1,280×800ドット対応の8型IPS液晶を搭載
液晶下部にはステレオスピーカーを内蔵。ドルビーデジタルプラスもインストールされている
左側面にはMicro USBと電源スイッチ
右側面にはヘッドセット端子と音量調整スイッチ
背面のスタンド内にはmicroSDカードスロットを装備
前面には160万画素カメラ
背面カメラは500万画素カメラ。レイアウト上の注意は先述の通り
5V/1.5A出力のUSB ACアダプタとMicro USBケーブルが付属する

 このほか、シリンダーを持つ独特のデザインであることから、純正で専用スリーブケースを発売する。カラーはブラック、ホワイト、オレンジ、グリーンの4色。液晶保護フィルムとクリーニングクロスも同梱される。実売価格は2,940円前後。

シリンダーを持つデザインをはみ出すことなく収納できる、純正スリーブケース
スリーブケースは4色をラインナップ

使用モードによって画面輝度などを自動調整できるサイドバー

 本製品のホームランチャーは独自のものが用意されている。標準のものと大きく異なるのは、アプリ一覧とホーム画面が分かれておらず、ホーム画面のみのランチャーとなっていることだ。例えば、ホーム画面上のアイコンを削除する操作を行なうと、アプリのアンインストールを促される。言い換えれば、ホーム画面のアイコンだけを削除するといったことはできない。アプリを多く入れるとホーム画面に大量のアイコンが並ぶことになるので、うまく整理する必要がある。

 整理する上でちょっと困るのはフォルダ機能がないことで、各アプリはホーム画面上に全て単独のアイコンとして存在させなければならない。ホーム画面は最大18枚まで追加できるので、これをうまく使って整理することになるのだが、ホーム画面が多くなると目的のアイコンに到達するのに時間がかかりがちなので悩ましい仕様だ。

 初期インストールアプリはGoogle標準のもののほか、先述のドルビーデジタルプラス、「電源管理」や「カメラ」、「機能ガイド」といったオリジナルアプリ、「ESファイルエクスプローラ」、「ノートンモバイルセキュリティ」、「Kingsoft Office」など。ちなみに下に示すホーム画面には「Yoga Tablet」というアイコンやウィジェットがあるが、これはプロモーションビデオが流れるだけだ。

初期のホーム画面

 独自機能としては、「スマート・サイド・バー」という機能も用意されている。これは閲覧したコンテンツや使用したアプリを表示するというもの。自動起動と手動起動を選択でき、自動起動時はスタンドモードやホールドモードなどの使用モードを変えたことを自動検知して起動。手動起動設定時は、縦位置なら左端、横位置なら右端をスワイプすると表示される。

 このスマート・サイド・バーにはもう1つ、スタンド/ホールド/チルトの各モードにプリセットされた、適切なディスプレイ設定と音声設定を行なうという機能がある。例えばスタンドモードであれば輝度は高くし、ドルビーデジタルプラスの設定を“映画”へ変更。ホールドモードなら輝度を落として、ドルビーデジタルプラスの設定を“音楽”へ変更してくれる。

ホームの管理画面
スマート・サイド・バー(縦位置時)
スマート・サイド・バー(横位置時)

 このほか、「電源管理」アプリでは、画面の明るさや各種機能のオン/オフでの消費電力管理のほか、画面を閉じた際のアプリの終了、画面オフ時に通信を行なうアプリなどを個別に指定したり、タブレットを使用する時刻を指定したりと、かなり細かい管理を行なえる。また、バッテリ残量からの推定残り駆動時間を、より正確に算出するための学習機能も備えている。

電源管理アプリ
プリセットされた設定のほか、カスタムモードでは各種機能を手動オン/オフできる
「スマート設定」と呼ばれる、アプリ終了や通信制御をアプリ毎に行なったりする機能も用意
推定残り時間を学習する機能も搭載

 カメラアプリも標準とは異なるものが搭載されており、HDR撮影やパノラマ撮影、物体を周囲から撮影できる多角ビュー、露出ブラケティング撮影などに対応。ただしフラッシュは搭載しない。

 アプリは、カメラとギャラリーが一体化したUIとなっているのが特徴。カメラ画面をスワイプすると撮影した写真のギャラリーへ移行、ギャラリーからカメラ画面もスワイプするだけで戻れ、シームレスに行き来できる。

 カメラの作例も掲載するが、細かい部分はつぶれて塗り絵のようになっており、過度の期待はしない方が良い印象だ。とはいえ、先述の撮影モードなど機能としては十分なものを持っている。

カメラアプリに用意された撮影モード
一般設定。画面に収まっていない範囲ではちらつき(フリッカー)防止の設定も備える
静止画の設定。シャッター音の選択(無音設定は不可)、格子線の表示機能なども搭載
動画の設定画面。ここは1画面に収まる
作例1:通常撮影、2,560×1,920ドット(※クリックすると800×600ドットの画像を表示します。元画像はこちら)
作例2:パノラマ撮影、2,224×704ドット(※クリックすると800×253ドットの画像を表示します。元画像はこちら)

旧Nexus 7を上回るレベルのCPU性能

 パフォーマンスのチェックには、「3DMark Ver.1.1.0.1179」、「AnTuTu Benchmark Ver.4.1」、「Basemark X Ver.1.0」、「Quadrant Professional Ver.2.1.1」を使用した。

 比較対象として、画面解像度、サイズなどが近い、「Nexus 7」の2012年モデル/16GB版で同じベンチマークを実行している。結果は下記に示す通り。

【表1】仕様比較
YOGA TABLET 8Nexus 7(2012)
プロセッサMediaTek MT8125(Cortex-A7クアッドコア、1.2GHz)Tegra 3(Cortex-A9クアッドコア、1.3GHz)
GPU(プロセッサ内蔵)PowerVR series5XTULP GeForce
メモリ1GB1GB
ストレージ16GB16GB
OSAndroid 4.2Android 4.3
【表2】3DMarkの結果
YOGA TABLET 8Nexus 7(2012)
Ice StormIce Storm score2,9273,535
Graphics score2,4773,121
Physics score8,0486,592
Ice Storm ExtremeIce Storm score1,4971,885
Graphics score1,2141,565
Physics score8,1066,638
Ice Storm UnlimitedIce Storm score2,5633,248
Graphics score2,1412,814
Physics score8,2737,055
【表3】AnTuTu Benchmarkの結果
YOGA TABLET 8Nexus 7(2012)
UXMultitask2,6232,903
Dalvik7781,075
CPUInteger1,8391,947
Float-point1,2701,308
RAMOperation1,1151,534
Speed504432
GPU2D graphics601773
3D graphics3,0232,359
I/OStorage I/O820470
Database I/O620135
【表4】Basemark Xの結果
YOGA TABLET 8Nexus 7(2012)
1,280×720ドットOn-Screen4.525 FPS6.164 FPS
Off-screen4.353 FPS6.139 FPS
1,980×1,080ドットOn-Screen3.893 FPS6.094 FPS
Off-screen2.084FPS3.070 FPS
【表5】Quadrant Professionalの結果
YOGA TABLET 8Nexus 7(2012)
Total4,8953,545
CPU13,46611,636
Memory3,4182,080
I/O4,7981,260
2D260247
3D2,5312,503

 全体に、GPU周りの性能ではNexus 7(2012)と同等以下の傾向が強いものの、CPUはAnTuTu以外では上回る結果となっている。また、ストレージの性能が非常に高い結果となった。もっともストレージに関しては、Nexus 7(2012)は使い込んだ個体でのベンチマークであることからフラッシュメモリの特性上、多少割り引いて見た方が良いと思っている。

 ベンチマーク以外の体感の面では、現状で全体にサクサク動いており、性能面での不満は全く感じていない。強いて挙げるようなところも特になく、非常に快適だ。

 バッテリ駆動時間は公称で約16時間。Wi-FiやGPSの各機能、液晶ディスプレイのオン/オフなどを繰り返しながら駆動時間を測定する「Battery Benchmark Ver.2.75」を用いて、液晶輝度を最大に設定してテストしてみたところ、15時間26分9秒という結果になった。Nexus 7(2012)も同条件でテストしてみると10時間32分29秒(やはり使い込んだ個体であることを多少割り引いて捉えて欲しい)。実感としても、バッテリの減りが遅いと思えるほどで、十分に長い駆動時間を有する製品と言って差し支えないかと思う。

シリンダーが生み出すメリットが想像以上に便利

 以上、機能や性能などをざっとチェックしたが、Androidタブレットとして求められる機能や性能は最低限有しつつ、シリンダー設計とスタンドによって新しいスタイルに挑戦してきた製品とまとめることができる。

 異端な印象を受けるデザインだが、このシリンダーとスタンドは、「本体を自立させられる」という点だけでなく、持った時の安定感も高めており、シリンダー部の厚みというデメリットを差し引いても、それ以上のメリットを生み出している。言葉や写真などでは実感として伝わらないところもあると思うので、ぜひ店頭などで本製品を見かけた時は触って試してみて欲しい。

 価格面でも、新型のNexus 7(2013)/16GB/Wi-Fiモデルと同等。Googleのリードデバイスとしての強味や液晶解像度などでNexus 7(2013)に及ばないところもあるものの、使い勝手という別の方向性で高い魅力を持つだけに、7~8型クラスのAndroidタブレットを選択する際の、有力な選択肢の1つと言える。

(多和田 新也)